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NRF 2025 APAC徹底レポート NRFで見えた小売の未来:グローバルリテール最前線と日本へのヒント(全2記事)

2025.08.28

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小売の「経験と勘と度胸」を定量化 意思決定の精度を高める、“データ×製品ライフサイクル”の新スタンダード [1/2]

提供:セントリックソフトウェア株式会社

2025年6月にシンガポールで開催された、アジア最大級のリテールカンファレンス「NRF 2025 APAC」。同イベントに出展したセントリックソフトウェア株式会社が、最新のAl搭載ソリューションから注目のリテールテックトレンドまで解説します。後編では、海外進出の壁となりがちな規制への対応や、適切な価格戦略、正確でスピーディな意思決定を行うためのヒントをお届けします。

前編はこちら

社内外のコミュニケーションを一本化・効率化する

テレサ・ジャン氏(以下、テレサ):(商品企画開発の工数の課題のほかに)もう1つの側面として、特に小売のお客さまは、ベンダーさんと密にやり取りしなければいけないんですね。例えば見積もりや試作品やサンプルだったり。

逸見光次郎氏(以下、逸見):商社との繊維商品の調達の話のところですよね。

林拓人氏(以下、林):全部Excelでやっています。

テレサ:こちらのPLM(製品ライフサイクル管理)には、サプライヤポータルが実装されていますので、ベンダーさんと同じシステムを使えるようになっているんですね。

小売のお客さまでしたら、例えば見積もりを取ったり、実際の試作品がもうできているのであれば、いつ出荷したかや追跡番号(もわかります)。場合によっては、先ほどの部材情報もサプライヤーさんからもらっているので、サプライヤーさんにここに入って打ち込んでいただくといった思想で弊社の閲覧システムがありまして。

あるいは、最近は実際にベンダーごとにアップロードするといったような仕組みも展開されてきています。

橋永重弘氏(以下、橋永):今までですと、Excelを誰か社内の人が入れなきゃいけないみたいな(笑)。

逸見:CSVで流す人もいました。

橋永:データを入れるために人を雇ったりしていたんですが、そういったことが一切なくなります。

逸見:そうです。

林:1品新発売するだけで、1,000人ぐらいの人が動き出すんですよ。

逸見:サプライチェーンに関わる人全員が、後ろでね。

林:全員がマスター登録し始めるから、間違いがある。

テレサ:そういった社内のコミュニケーションの一本化・効率化と、社外とのコラボレーションの効率化。全体的にはものづくりの加速ですね。

さらに消費財はアパレルに限らず、同じような構造で、食品や飲料も複数のカテゴリーを横断してサポートされてきています。

なので、加工食品の中でマカロンを例としますとレシピ情報ですね。まさしく商社さん、メーカーさんからもらってくるようなケースが多いかなと思いますので、食品の対応もしっかりされているという感じになっていきます。

調味料などの海外での規制もデータベースで早期にチェック

テレサ:もう1つ、最近お話が挙がってきているのが、海外展開する時に多くの時間を使っている規制対応です。

逸見:規制の成分表を確認しなきゃいけないんですよね。調味料などに多いですけど、その国の規制で使えるものと使えないものがある。

テレサ:おっしゃるとおりです。一生懸命開発されていて、海外事業部のほうは「最近欧米で日本食が流行っていますので、欧米展開してみましょうね」とか、「日本食が受けているアジアの諸国で展開していきましょう」と。

それに応じて開発してきているんですが、3ヶ月かけて開発が終わって、品質保証部門に渡します。品証がひと通りスクリーニングしたら、「この国だったらダメですよ」と。そうしたらまた手戻りしてやり直して。

逸見:スタートに戻る感じですよね。

テレサ:そうですね。こちらの規制チェックの機能なんですが、早い段階でレシピ開発していくと、システムの中で各国の規制をデータベースとして管理したり、あるいは外部のこういう規制データベースと連携して、チェックできるようになっています。

今、こちらの「規制ルールを反映する」というボタンを押したんですが、販売予定となっているこの3つの国では、この成分の中で引っかかったかどうか、といったようなチェックを、早い段階でクイックにやることができます。

逸見:レシピの分量は後で調整するけども、何を使うかは、実は最初に決めていますもんね。

テレサ:そうなんですよね。なのでそういうところが、1回出来上がりましたら、もうこの3ヶ月の手間を早期の段階で(チェックできます)。

逸見:まず最初にこれをかけておいてから、味の調整とかをすればいいんですもんね。

テレサ:そうなんです。最終的には、必ずまた品証に最終チェックをしていただく必要があるんですが。同じくアイデア出しや開発の早期の段階で、いかにそういった後出しの問題を防止して、サイクルを速くしていくのかというところですね。

橋永:一番最後に来ると、もう逆にポリスみたいなかたちでしっかりやらなきゃいけないので(笑)、ものすごく時間がかかると。あるお客さまは、やはり1つの国に対する規制を調べてひと通りスクリーニングすると、ほぼ1ヶ月かかると言っていたんですね。

逸見:そうです。

橋永:なので、やはり1プロダクトを、1つの国に対応するだけで1ヶ月かかるって、やはり今日前半でお話しいただいたアジアのビジネスのスピード感とちょっと違うんですよね。

逸見:はい。トレンドは見えているけど物が追いつかないっていうね。

橋永:そうですね。

使えない材料があればAIが代替品も提案

逸見:でも、今のプロセスでは誰も悪くないんですよね。

橋永:そう。みんな一生懸命仕事をしているだけなんですが。このお話をすると、ほとんどのお客さまから「これだけでも買えますか?」という話で、すごくニーズが高いので、一例としてお話しさせていただきました。

例えば食品もそうですし、化粧品なんかも規制がありますので、同じ考え方でご紹介できるのかなと考えています。

林:オーラル(ケア)などの生活用品もやはりニーズがあるし。

テレサ:そうですよね。

橋永:そうなんですよ。

林:なんか微妙に既存の泥くさいオペレーションのアップデートのようにも見えるし、まったく新しいやり口でテクノロジーを入れているようにも見えるので、これぐらい変えちゃったほうがいいかもしれませんね。

逸見:すごくいいでしょ、PLM(製品ライフサイクル管理)。

(一同笑)

林:ぶっちゃけ、もう100回ぐらい説明を受けていたんですけど、これは本当に本心で、毎回感動するんですよね。すみません。

テレサ:いえいえ。

橋永:どうしたらびっくりしていただけるかというのを、今日も持ってきていますので。

テレサ:(使おうと思っていた材料で)そういったNGが出てきましたら、ちょっと代替する材料がありますかとか。「海外ではどういった成分がよく入っているんですか」というのも、AIエージェントに聞いてみるんですね。

橋永:ちょっと今ここでお話を補足すると、各国の規制という話をしましたが、もちろん言語としては日本語、中国語、英語、タイ語、ベトナム語、主要な言語には対応しておりますので、サプライヤーさんは現地の言葉でお使いいただけます。

サプライヤーにとってのメリット

橋永:あとは日本のお客さまと話すと、「サプライヤーさんが使ってくれるかな?」というふうにすごく心配されるんですけど、サプライヤーさんからするとすごくありがたいと。なぜならば、ここを見ればこの会社から来ているすべての見積もり依頼やサンプル依頼、かつステータスがわかると。

一方で、サプライヤーさんの立場だと、営業が何人かいて部署が違うと、いろいろな人がメールしていて、その人がたまたま見落としたりすると、やはり抜け落ちちゃうんですよね。これは別に悪気はないんですよ。

でも、そういったことがないようにできるということで、サプライヤーさんにとってもすごくメリットがあります。

逸見:本当に関係者は全員、得すると思いますよ。

橋永:我々も日本のお客さまはたくさんいらっしゃいますが、思ったよりもサプライヤーさんの評判がいいというのは、意外な驚きでしたね(笑)。

逸見:サプライヤーさんが一番苦労している。言葉を選ばずに言えば、本当に下請け扱いされちゃっているので、「いつまでに見積もり出して」と言って、それを見落としていたら「えっ?」という話になってくるので、まさにこういうもので共有されていれば、みんな効率がいいですよね。

橋永:あとは、今度はお客さまの中の話なんですけども、やはり「いつ頃仕上がるの?」みたいな生産管理という業務があって。やはり、どうしても納期を調べなきゃいけない。「ちゃんとやってくれているよね?」というのを確認するのも含めてなんですけど、週の後半のところ。

逸見:みんな個別でやり取りしているから、すごいメールの量になっていますよね。

橋永:その作業が一切なくなったと。なぜならばここを見れば全部入っているからですね。そういったところで正確な情報が苦労せずに手に入る。

逸見:一時期はみんなスプレッドシートに置き換えていたんですけど、そうすると今度はアクセス権限の話になって、セキュリティが厳しい会社は入れないとかね。

テレサ:そうなんですよね。

橋永:そこはまたExcelに逆戻り(笑)。さっきの「バージョンを間違えた」みたいな話ですよね。本当によくある話です。今(講演のプログラムの)3番ですけど、あと4番までありますよね。

テレサ:はい、10分でやり切ります(笑)。

(一同笑)

“坪単価が悪かったら閉店”が正しいとは限らない

テレサ:ありがとうございます。最後に計画系の話があるんですけれど、これを話し出すと3時間でも足りないので、いったんさわりだけ話していきます。

今までは物中心で話していたんですが、やはり今日日(きょうび)のお客さまについて、忘れてはいけないのは数字の世界なんですね。

ものづくりの企画と並行したプランニングですね。例えば予算はどのぐらいありますとか、各店舗で何を売っていくのか、いつ売っていくのか、いくらでどのぐらい売っていくのか。それに対して仕入れをしていくといった計画や、数字の世界をサポートするソリューションもございます。

物を作っていくとどれを品揃えに選択しているのか、いつどのぐらいで仕入れてくるのか。今までは、そういった鉛筆なめなめの属人化されていた世界があると思うんですが。

逸見:そうですね。

テレサ:この精度を高めていきます。なぜかというと、既存の販売の実績や計画のデータに基づいて計画できるようになってきていますので。

そして、大量のデータですね。Excelや人間が処理し切れないところはAIを活用して、こうしたらよいのではないかといったようなソリューションを提案するようになってきています。

ここは本当に、最初の予算立案から実際の販売計画や品揃え戦略、最後は期中の予算の調整や需要予測に応じた在庫の調整計画まで、エンドツーエンドで実施していくかと思うんですが、本日は代表的な活用例を1つお見せしていきます。

例えば、最初は店舗の売上分析やトップセラーの分析をよくされているかと思います。従来はExcelでされていたので、坪売上を見ていく時は、坪単価が悪かったら、「閉店しましょうね」といった分析があると思うんですが。

弊社の「Centric Planning」といった計画ですと、多次元の組み合わせで分析できるようになっているんですね。なので、売上と面積の比ではなくて、例えば地域の天気、あとは路面店はロードサイドの左側にあるのか、右側にあるのかでも案外違うと聞いたんですよね。車で運転する時に入りやすいのかどうか。

逸見:右左折の話ですよね。左折は入りやすいけど右折は入りにくいんですよ。

テレサ:ですね。属性として全部構造化(されたデータ)を持つことができるようになるので(多角的な分析ができるようになります)。

多角的なデータに基づき、精度の高い意思決定ができる

テレサ:あとは商品のカテゴリーといったところですね。またすごく数字ばかりの世界になっていくんですが、店舗やカテゴリー、ラインごとに、さまざまな坪単価の分析が見えるようになっています。

なので坪単価が悪かったらなぜ悪いのか、どこが坪単価に影響する要素になっていくのかを細分化して分析できるようになります。そうしたら、実はこのカテゴリーがこの店舗でよく売れているんですが、このカテゴリーの分量を増やしていきましょうねといった、実データに基づく意思決定(が行えるようになるわけ)ですね。

逸見:これが見えるとおもしろいのが、今まで店舗を類型立てて、同じチェーンの中でも、ロードサイドとかインストアとかで同じだと見ていたものが、こういった特性で見えるわけですよね。

テレサ:そうなんですよ。

逸見:そうすると正しい類似店舗が見えてくるから、施策が整理できてきて、予算の精度が上がっていくわけですよね。

テレサ:しかもクラスタリング、グルーピングというのがいろいろな軸でできるようになりますので、地域だけではなくて、店舗の特性ですね。あと、こちらは時間軸でも分析できるようになります。

例えば旅行のハイシーズンだと、空港などにある店舗は、実は旗艦店と同じような動き方をするんですね。そうしましたら、週や月などの時間軸でそういった予想を立てるとか、計画を精緻化していくことができるんですね。

逸見:今までは経験と勘でわかっていたことが定量化されると、より数字に落とし込みやすくなるんですよね。

テレサ:そうなんです。まさしく今まで属人化されているところが、数字でちゃんと裏付けされているんですね。

あとはアパレルでよく、まず型数の計画をしていって、型数に商品をはめていって、最後にどのぐらいの数量を置いていくのかというところがあるんですが、これも属人化の世界なんです(笑)。

逸見:1型当たりどれぐらい売れるか、サイズをいくつ作って、カラーバリエーションをいくつ作るかというね。

在庫の最適化や施策の検証も可能

テレサ:こちらは基本、過去の販売実績に基づいてシステムがいったん提案してくれますと。例えば各部門の中でも、今はドレスと靴なんですが、部門によってセグメントすべき軸が異なってくると思いますので。

例えばドレスだったら、ちょっと色を見てみたいとか、靴でしたらソールの形といった多次元ですね。価格帯も今はマトリックスになってきているんですが、この価格帯のこのカテゴリーでしたら、過去にこのぐらいの品番数がありました。

また、さらにシステムが提案できるのが、過去の計画でこのぐらいの型数があったんですが、実は利幅がそんなに良くなかったんですよね(というケースです)。

そうしたら、ちょっと減らしていって、利幅の良かったところの型数をもう少し増やしていきましょうねといった分析をして提案してくれるんですね。やはり最終的には人間の判断が入るんですが、こういった下敷きですね。

逸見:そうです。これがあるから。

テレサ:ここにくっついている情報が入っていきますと、その裏付けですとか。

逸見:今まではロットの中で枚数は決まっているんだけど、それをどう調整するかとか、新しいのを入れてみるとか、だいたい失敗するわけですよね。でも、正しい数字が見えていると、それに基づいた予測になっていくから、後で検証ができるんですよね。

テレサ:そうなんです。まさしく今、検証の話が大事だと思いまして。計画化システムに入っていきますと、期中で実績が入ってきますから、その予実は常に分析をしていて。

来期の計画を精緻化すべきなので(サイクルを)回していきますと、どんどん精度が高まっていくので。それで的中率が高いと在庫の最適化にもつながっていきます。

逸見:そうです。それが見えていると在庫をどの段階から値下げして売り切っていくかというのも全部計画に落とし込めますもんね。

テレサ:そうなんです。

林:すごくロス率が改善されそうでお勧めなんです。

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