適切な在庫移動ができれば、値下げせずに売り切れる
逸見:計画でのロスがなくなった上に、期中でのロス修正もできるから。どこで値下げして売り切っていくかというのもすごく正確に出せるんですよね。しかも、どの店で、どのエリアでというところまでですよね。
テレサ:おっしゃるとおりです。まさしく期中に入りましたら、特に品番数が多過ぎるというお話があると思うんです。
逸見:そうですね。
テレサ:1個1個、SKU(最小管理単位:Stock Keeping Unit)ごとに人に調整してもらうのは、もう無理だと思うんですよね。やはりそれは機械を使って、計画に対して実績がどんどん入ってきて、実際の店舗の売れ行きに応じて、需要予測を調整していくようなかたちになってきています。
なので基本的な考え方としては、売れ行きに応じて予測をしていく。全部が全部売れれば(また仕入れて)買えばいいというわけではないので、当初計画を立てている仕入れ予算があったら、追加オーダーしてみましょうねとか。
逸見:そうですね。
テレサ:売れていなかったら、過剰在庫をプロモーションしたり、販売のチャネル間で在庫移動したりといった提案ですね。
逸見:意外と在庫移動するだけで売り切れるんですよね。
テレサ:そうなんです。
逸見:値下げする前に、在庫移動なんですよね。この同類店舗が見えていないと本当はできないんですよ。
テレサ:こういうリアルタイムでの各店舗ごとの売れ行き、経由ごとの売れ行きが見えていないとできない。
逸見:そうです。
「経験と勘と度胸」を定量化するには
テレサ:サプライチェーンネットワークは、システムで反映できるようになりますので、店舗からDCに、そしてセントラルDCに、サプライヤーさんにと。この需要のカスケード(段階的な進行)と、入ってきた供給は同じくカスケードしていて、ここは特に膨大な計算をしているだけです。画面自体は格好良くないんですが(笑)、でも……。
逸見:「店舗とセンターとどういうふうに動かしていく? 転換振替(在庫の調整や商品の入れ替え、商品や販売チャネルの変更)をどう切っていく?」みたいな話ですもんね。
テレサ:これをExcelでやろうとすると、たぶんだいたいExcelが壊れかけて。
逸見:そうです。固まります。1地域だけで(処理するのが)精いっぱいになっちゃうよね。全国なんて無理です。
テレサ:国をまたいでグローバルで、そのようなデータをですね。
橋永:これもまたやろうとするとすごくスキルが要るし、その人がずっとやらなきゃいけないとなると、「私、いつまでこれをやらなきゃいけないんだ?」ということで、本当に優秀な方が結局Excelワークで残業を強いられたり。
逸見:そうです。いや、まさにそこの話で、今までやっていることが無駄だと言っているわけじゃなくて、現場は人が足りなくなっているんですよね。人件費が上がっているんですよ。小売だって7パーセントずつみんな上がっているわけですよね。
その中で、「人は何をやって、何を自動化する?」ということをやらないと、本当に回らないんですよね。だから、まさに人がやらなきゃいけないところに時間を作るためにこういう道具を使うことが、本当にこれから必須になってくると思っているんですよね。

しかも経験知が反映されているから、ベテランにこの数値を見てもらうとだいたい納得してもらえるんですよ。「俺が言いたかったのはこれなんだよ」と(笑)。だから、経験と勘と度胸は間違っているわけじゃないんですよね。ただ定量化できていないだけなんですよね。
日本企業の海外進出は死活問題
テレサ:そういうことでやはり、日本の企業にとっては、これからどんどん人口(減少)の話の一方で、海外進出しなければいけない。
逸見:そうです。
テレサ:早く行かなければいけないといったプレッシャーの中で、非常にもう死活問題になってきていると思いますので。
逸見:しかもインバウンドが入ってきて、需要予測がずれますからね。5兆円〜6兆円はインバウンドで売れているわけですから、小売のうちの数パーセントからだんだん2桁パーセントがそっちに振れてきた時に、どうやって需要予測するか。まさにこういうリアルタイムで追っていかないと損しちゃいますよね。
橋永:そうですね。
逸見:好みも変わってきますしね。
テレサ:商品のライフサイクルを通じて、最新の数値(を知ることができるということ)ですね。
橋永:今日は本当に限られた時間なので、まずはみなさんにちょっと興味を持っていただきたいなというところです。少しだけまとめのスライドを持ってきました。今4つのシナリオでご紹介をさせていただきました。今回中身は説明しませんが、我々がソリューションマップと呼んでいるものです。

一番大きなビューで見ているんですが、商品の計画から開発までの過程ですね。実際に販売に関わる部分では、どうやって情報をECにプッシュしていくかも我々のソリューションの中に含まれております。左側は、一番最初にお見せしたCMI(Centric Market Intelligence)のトレンド分析で、これがソリューションマップになります。
これは業務マップになりまして、どのへんをやりたいですかというところを我々のお客さまとお話しします。

1番から、2番、3番、4番というふうにご紹介して。




スライドの絵で言うと、このあたりの業務は、左側がファッション、右側が食品とかをイメージしているんですが、ここの部分ってほとんどみなさん、Excelでやっていますよね。

この左側のExcelの部分は、けっこう問題があると思いますので、この業務をシステムに載せることでいろいろ良くなるんじゃないでしょうかということですね。
真ん中のところ、左上はとにかく分断されていますので(笑)。これをシステム化することで、情報が流れるようになりますよというお話になります。
さまざまな業界の顧客を10年以上支援してきた実績
橋永:マルチカテゴリーのところも少しお話しさせていただければと思うんですけど。もともとファッションのところから始まったということで、今日はお洋服のデモが多かったですが、実際は雑貨や家電や化粧品、食品と(展開しています)。
ここでポイントになるのは、みなさんも商売をしていらっしゃるとわかると思うんですけど、やはり食品は食品の、化粧品は化粧品の経験知みたいなものがあって、いきなりほかの商品は扱えないんですよね。システムも同じで、システム開発しようとすると大変なんですよ。

ただしCentricに関しては、いろいろなお客さまと、もう過去10年以上やってきた実績があります。今ご覧いただいているようなシステムのデータベースの構造がありますので、ご安心いただければと思います。下は(商品)共通の部分ですね。
プランニングに関しては今お話ししたので飛ばしていきますが、このような業務がある中で、計画があって、実行があって、振り返りをする。そのサイクルを速くしていきましょうというところで、プレシーズン向けのソリューションとインシーズン向けのソリューションがあり、このうちの4つをお見せしました。
いかに速く正確な意思決定ができるか
橋永:そろそろまとめに入ります。英語だとPLMという、商品や製品のライフサイクルを「Product」と言っているんですけど、我々は最近は製品だけじゃなくて事業のライフサイクルになるんじゃないかなと思っています。
逸見:なりますよね。
橋永:例えば計画自体にもライフサイクルがあるし、商品開発においてもライフサイクルがあります。在庫であれば、例えばリバランスなんてありますが、物を仕入れてくるところから最終的には再発注など、在庫のライフサイクルもあれば価格のライフサイクルもあると。

どういうプライシングにして、場合によってはマークダウンとか、売れているんだったら値上げしてもいいかもしれないという話ですね。そして、コマーシャライゼーションのライフサイクルがあるかなと思っております。
右側のほうに少しまとめたんですけど、1つ目の価値は、情報が一元化される・集約されるということです。これ自体に意味があるということです。
2つ目は、そうして集まった情報をチームで処理できるということですね。整流化できるということ。
逸見:そして可視化されていることですよね。
橋永:可視化されること。そして、そのようなプロセスを回せるようになると、今度はより早く正確な意思決定ですね。これをするためには正しい情報が必要だし、マーケットのトレンドも把握しなきゃいけない。
例えば、ちょっと昔とは違って「値上げなんですよ」「じゃあ別のにしよう」というマーケットから取れる情報もあるし、社内の情報もあるし、サプライヤーさんの情報も含めて意思決定をしていくということですね。これをしたら、今度は自動化の世界に入ってきます。

結果として、我々は「クローズドループ(顧客からのフィードバックを収集・分析し、それに基づいて製品やサービスを継続的に改善していく)」という言い方をさせていただくんですが、それ(プロセス)が全部つながったような状態。
先ほどコメントの中で、日本の場合はわりとDXの方が多くて、海外の場合は業務系の方が多いというのは、やはり「全体としてどうクローズドループを作るか」ということを考えている方が多いんじゃないかなと思っています。
何かすごく新しいことは言っていないんですけど。そもそもアイデアがあって商売をしていくというのは、やはり売れるか売れないか。(そこで売れるようにするために)財務計画とアイデアを結びつけていくことを実現します。
今後の小売ビジネスのスタンダードとは
橋永:あとは品揃えですね。例えば駅前の大きな店舗とロードサイドで品揃えが違います。日本も北と南では違うかもしれないし、国が違えば違ってくると。
じゃあ、その品揃えをどこに(どう)揃えるのか。全体のラインナップに対してどうやってソーシングするんだという話で、企画と開発、調達をサプライヤーさんと一緒にやっていくためのコンプライアンス対応ですね。
例えば、サステナビリティやグリーン調達など、いろいろあるかと思います。先ほどの食品規制もその中の1つになりますね。
あとは、どうやって販売していくかというところですね。これは販売の方に言うと怒られちゃうんですけど、やはり一番最後のポイントの顧客に売るところをがんばるのは当たり前なんですけど、そもそも売れるものじゃなかったら売れないし。
これがクローズドループになっているという話になります。今までプレシーズン、インシーズンというお話をしてきました。
最後に、ちょっとコンセプチュアルなんですけど、我々の中では、コンカレント・コマーシャライゼーション(製品開発から販売までの各プロセスを同時並行で進めることで、開発期間の短縮やコスト削減を目指す戦略)と呼んでいます。

昔よくコンカレント・エンジニアリングという言葉があったんですが、今はプレシーズンとインシーズンというのが限りなく近づいていて。
ここに書いてある需要シグナルもおもしろいなと思ったんですけど、テレサがちょっとお見せしたサンプルを「こんなイメージ、どうですか?」とインスタで投げて、需要シグナルみたいなものをもう取れる時代になっているんですよね。
いろいろな裏付けを取りながら、商品開発を実際に行っていく。「Temu」や「SHEIN」は、残反(工場で製品を生産する過程で余った生地)でやっているんですけども、それに近いようなことがもうできるようになってきていて。
全部がこれに置き換わるわけじゃないんですけど、おそらく考え方としては、マーケットのトレンドや、半年前に企画したものが今でも有効なんだろうかというところを(考えに)入れながら調整をしていく。そういったことが、今後の小売のビジネスの中では行われてきますし。
逸見:今は1本になっていますけど、これが複数シーズンで複数商品が走っているわけですからね。このコンカレントは、それらを全部束ねて見ていくという話ですよね。
橋永:そうですね。これはちょっとまだコンセプトかなとは思うんですけど、部分的にはもう実現できるようなソリューションがあります。こういったものを、我々は真面目にやっていかなきゃいけないなと考えているところです。