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防災テック最前線!行政や企業が注目する超早期予測とは?(全2記事)

2025.07.31

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大雨で被害が出る1時間半前に避難指示… 能登半島豪雨での課題と、最長2週間先の「超早期」リスク予測を活かした対策 [1/2]

提供:株式会社ベルシステム24

近年、大雨や台風などの気象災害が多発している日本。被害額も数兆円規模にまで膨らみ、企業や自治体に深刻な打撃を与えています。そんな気象災害を起こす激しい気象現象は、実は“早期に想定可能なリスク”に予測技術が進化しつつあります。本記事では、線状降水帯を3日前に9割以上の精度で捉えた最新テクノロジー「気象防災シグナル」を紹介。前編では、事業継続のカギとなる「超早期予測」の裏側について専門家が解説します。

キャリア23年のベテラン気象予報士が登壇

川崎佑治氏(以下、川崎):みなさんこんにちは。「防災テック最前線! 行政や企業が注目する超早期予測とは?」と題して、ベルシステム24からお届けしております。

今みなさんがいらっしゃる地域のお天気はどうでしょうか? 今日は、気象予報士でもある森山さんと一緒にお届けしてまいりたいと思います。森山さん、よろしくお願いします。

森山知洋氏(以下、森山):よろしくお願いします。

川崎:まず、ベルシステム24について簡単にお話しすると、「AI時代の事業成長を支える総合BPOパートナー」ということで、実に幅広いビジネスを展開しております。

今日はなんと気象の話ということですね。気象テックの最前線がどうなっているのかということを、みなさんと一緒に勉強し、新しいことに驚きながら、自分のビジネスにも活かしていく。あるいは、行政の方でしたら行政に活かしていく。そういった内容になればと思います。

私はベルシステム24の川崎と申しまして、クリエイティブ&プロモーション局の局長を務めております。そして森山さん、自己紹介をお願いいたします。

森山:ベルシステム24 コンテンツ事業部で気象予報士をしております、森山といいます。気象予報士になって23年ほどキャリアがある中で、実は気象庁の認可を受けている民間の気象予報業務許可事業者でもあるんですけれども。気象の防災ソリューションの開発だけではなくて、過去には放送局で気象キャスターとして災害報道などにも関わってきた経歴がございます。

川崎:いわゆるバックに天気図などがワーッとうごめいている中、「ここの雲がですね」というのをされていたと。

森山:そうですね。お天気の(マークが付いた)スティックを持って、解説などもした経験があります。お昼前のお天気コーナーなどを担当しておりました。

川崎:ちなみにベルシステム24は、気象庁から……?

森山:はい。気象庁から気象業務許可を取得している事業者なので、独自に予測を発表したり、情報を作ったりできます。

川崎:許可を得ていないと、気象予報を独自に発表してはいけないんですね。

森山:そういうことになります。独自に気象予報士を置いて、独自の情報を出す許可を持っています。

川崎:ちなみに今日は当社の本社がある、東京・虎ノ門の神谷町ビルからお届けしています。隣が気象庁のビルなんですけども、これはまったくの偶然?

森山:まったくの偶然です。ご縁があると思っています(笑)。

川崎:(笑)。わかりました。じゃあ、今日の本題に入っていければと思います。

2週間先までの天候を予測できる「超早期予測」

森山:今日のタイトルは「超早期予測」というところになると思うんですが。

川崎:「超」が付くのはスーパー早期ということですが、普通の早期予測はどれくらいですか?

森山:災害のリスク予測という点で言うと、72時間先くらいのものはけっこうあるんですけれども。それよりも前もって、そして的確にというものになります。

川崎:72時間をどれくらい超えるんですか?

森山:そうですね。最長2週間というところで、ちょっとこの後(お話しします)。

川崎:3日(前の予測)が14日(前に予測できるということ)で、超早期予測。今、そういうところまで技術は進んでいるんですね。

森山:そこがちょっと、今日みなさんにぜひ知っていただきたいポイントでもあります。今週は九州北部から、昨日は関東地方まで、北陸も含めて続々と梅雨入りしましたが、九州を中心に早々に大雨に見舞われています。鹿児島県では、一昨日の月曜日にこのような線状降水帯が発生しました。

川崎:どこかが線状になっているんですね。

森山:そうですね。赤い雨雲があると思うんですけど、東西に連なるように、1つの積乱雲だけではなくて、いくつもの積乱雲が同じような場所に流れ込むと。これが線状降水帯というものです。

川崎:積乱雲というと、たくさんの雷や雨を降らす雲。それが1個だけじゃなくて複数、どんどん行列で流れ込んできて、めちゃくちゃ雨が降るよと。

森山:そうですね。いわゆる短時間で集中豪雨をもたらすということです。

川崎:これはちょっと危ないやつということですね。

森山:そうですね。今回、鹿児島なども一部被害が出てしまいましたけれども、今回の一連の雨は、いったん落ち着いてきたかなというところになります。台風1号も発生したりしているので、これからの大雨シーズン突入というタイミングで、ぜひお役に立てるところがあればと思っています。

川崎:そうですね。これからどんどん。

2018年に日本が「世界でワースト1位」になったこととは

森山:ちょっと1つ、私からクイズです。これは「○○○○の世界ランキング」なんですが、日本が2018年に何の世界ランキングで1位になったかというものです。

川崎:みなさん考えましょう。これは4文字ですか?

森山:そうですね。ヒントは漢字4文字です。

川崎:え? 「新進気鋭」。

森山:あー、ちょっとそういう分野ではないですね(笑)。

川崎:お相撲さんがよく言う感じの4文字ではなくて。

森山:そうですね。冒頭でもヒントはけっこうあったかなと思うんですが、四字熟語ではなく。

川崎:気象的なことですね。

森山:正解を見ていきましょう。正解は「気象災害」の世界ランキング。

川崎:2018年の気象災害のランキングで日本が世界1位?

森山:ワースト1位ですね。悪いほうなんです。

川崎:たくさんの災害が起こっていると。

森山:ドイツの研究機関が、経済的損失や死者を総合的に算出して発表しているものがあるんですけれども。

川崎:他の国ではこんなに災害が起きてないんですか?

森山:この年に限っては、日本は圧倒的に悪かったと。それだけ気象災害の影響を受けてしまったということです。この年に何があったかというと、西日本豪雨です。みなさんも記憶にあるかなと思うんですけれども、写真にもありますように、7月は岡山県倉敷市の河川の氾濫、広島では土砂災害がありました。

川崎:屋根の上に登っていらっしゃる方々の映像ですとか、本当に呉市の土砂災害も、家屋が全部のみ込まれてしまってというような。

森山:そうですね。大変な災害で、犠牲者の数も250人近くになってしまいました。この年は西日本豪雨だけではなくて、実は「関空台風」とも呼ばれた台風21号で、50メートル以上の猛烈な風が吹いたり。あとは熱中症による死者で、犠牲者が1,500人以上。

数兆円もの経済的損失をもたらす、大規模な水害や台風

川崎:熱中症なども気象災害に含まれるんですか?

森山:そうですね。気候リスクですとか気象災害です。一連の経済的損失や死者数などをトータルして、日本は残念ながら一番悪かったというところになります。注目していただきたいのが、経済的損失です。

川崎:1兆4,100億円と出ていますが。

森山:そうです。これは水害だけに限っての被害総額です。

川崎:水害に絞って、1兆4,000億円。すごいですね。

森山:この額の被害が起きてしまったというところなんです。この年だけではなくて、実は翌年も令和元年の東日本台風がありました。

川崎:2兆1,800億円。さっきより1兆円増えている感じですよね。

森山:これは関東も含めて、人口の多いところで、より一層被害が大きかったということもあったんですが、これだけの規模の被害が出てしまいました。これだけの経済的損失をもたらしているというところを見ていきますと、あらゆるところで起きているという、もう1つの視点がありますね。

川崎:局所的にどこかのエリアに固まっているんじゃないよと。この赤いところは何ですか?

森山:これは2011年~2020年までの10年間で、日本全国の市町村の中で、赤いところは10年間に10回以上水害が発生したところです。

川崎:では、1年に1回ペースで水害が起きていると。

森山:そうですね。ほぼ毎年のようにというところが、これだけあります。日本全体の97パーセントほどが、この10年間で実際に水害が起きていると。

川崎:だから「災害大国ニッポン」という感じですよね。

森山:そうですね。まさにそういうふうに取っていただきたいと。

川崎:つまり我々の命も脅かされているし、当然、経済活動もその影響下にあると。

日本で大きな被害や損失が出てしまう理由

森山:これだけの広いエリアで(災害に)遭遇してしまっているということです。地震大国とも言いますけれども、世界全体の地震の中で、マグニチュード6以上の地震の2割が日本付近で起きています。地震のリスクも高いし、気象災害のリスクもこれだけ毎年のようにということになります。

川崎:日本はその意味ですごい国だったんですね。

森山:実はそうなんですね。あらためて見てみると、これだけ損失や被害が出やすいのはなぜかというところ。このデータもちょっとトレンドかなと思います。

川崎:非常に激しい雨の回数。

森山:そうですね。これは1時間に50ミリという、本当に滝のようにゴーッと降るような雨です。

川崎:ざーっと「バケツをひっくり返したような」とか、前も見えないぐらいの雨でしょうか?

森山:そうですね。都市の排水が追いつかなくなるような。

川崎:それがこんなに増えているんですか?

森山:ここ最近の10年間で、1980年代ぐらいの時と比べて1.5倍になっています。

川崎:なぜ増えているんですか?

森山:これはやはり、温暖化も含めた気候変動の影響が大きいです。気温が大気全体で1度上がると、(空気中に)含むことができる水蒸気量が平均的に7パーセント増加するという関係があります。

川崎:暖かくなっているということは、空気中の水蒸気量が増える。増えれば降ってくる雨が多くなると。

森山:そうですね。ひとたび雨雲が発達すると、その分だけ激しい雨になりやすいということになります。

川崎:なんか理科ですねー。

森山:本当に「飽和水蒸気圧」というキーワードで習ったのが、まさにその関係なんですが。あともう1点の注目は、空気の温度だけじゃなくて、海水温も同時に上がってきていることです。

川崎:確かに、捕れる魚も変わってくると言いますよね。潮の流れが変わっているのもあるし、だんだん北上していると言いますけども、これも天気に関係してくるんですか?

森山:そうですね。海水温が上がると、そこから補給される水蒸気量が、より暖かく湿ったものになります。なので、先ほどの線状降水帯のような雨雲も、より一層激しくなりやすいという傾向がありますね。

「気象の両極端化」が進む可能性が高い

川崎:大気もそうだし、海もこういう災害をもたらす規模の雨雲がどんどん発達しやすくなっていると。だから増えているんですね。ということは、今後もしばらく増えていきますか?

森山:そうですね。残念ながら、今後も温暖化は少しずつ進行してしまうことが予想されますので、より雨は激しくなり、降らない時はちょっと長く降らないということで、気象の両極端化が進んでしまう可能性が高いです。

川崎:降らない時に降らないというのは、干ばつ的なことですか?

森山:そうですね。農家のみなさんは激しい雨も増える一方で、干ばつの影響もあるということです。

川崎:今、米の値段がという話もありますけども。米だけじゃなくて、いろんな農作物がすごく豊作だったり凶作だったりと、波が激しくなって相場も動いて、家計も直撃しているわけですけれども。そういうことも全部関わってきますね。

森山:そうですね。すべて天気がつながっていると言っても過言ではないですね。

川崎:なるほど。

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