BtoBマーケティングの現場で今あらためて注目されているのが、メール配信による効率的かつ継続的な顧客接点の構築です。配信本数は月30本超、コンテンツは受け手のフェーズに応じて緻密に設計──。SATORI株式会社と、『配配メール』を提供する株式会社ラクスが、成果を出すための運用のリアルとKPI設計の極意を明かします。
顧客接点を効率良く作り出せるのがメルマガ施策の強み
菊池貴行氏(以下、菊池):今日はまさにメールマーケティングの最先端を地で行っていらっしゃる2社さんに、メルマガについてお話を聞くという、かなりリッチなセッションになっております。
メルマガ自体は取り組んでいらっしゃる企業さん自体はかなり多いですし、マーケティングの中でも本当に懐が深いというか、プレイヤーの方も(たくさん)いらっしゃると思います。
本当に使い方次第ではどんなところにも効いてくるという、まさに奥深い面もありますので、そういったところも踏まえて、成果に直結させるためにどうすればいいのかをお聞きしながらやっていければと思います。よろしくお願いいたします。
では、1つ目のテーマからいきたいなと思うんですけれども。SATORIさん、ラクスさんが「メルマガ施策をどう位置付けられていますか?」というところで、スライドに記載していただきました。

こちらをもとにお話を聞いていければなと思います。さっそくで恐縮ですけれども、ラクスの高嶋さん宛てに、ちょっとお聞きしたいなと思います。「配配メール」さんで、メルマガを送ることの意義やメリットをどう位置付けられているかというところを、ご説明いただいてもよろしいですか?
高嶋洋氏(以下、高嶋):はい、ありがとうございます。基本的にはメルマガ施策はお客さまとの接点を作るという立ち位置でやっておりまして、特筆すべきは効率性だと思っております。

例えば営業の方が、自分の契約者さま全員を回るのは、本当に1年とかかかってしまうくらいだと思うんですが、メールであればそれが一瞬で終わるというメリットがあります。そういった、放置されるお客さまをなくすという意味合いで使っているところはあります。
あとは自然現象として、我々がアプローチする・しないにかかわらず、検討意欲が浮上することがあります。例えば部署の変更などで(ニーズが)自然発生した時に、ちゃんと他社さまとの比較対象としてラクスを認識してもらう、思い出してもらうというところになるんですけれども。
自然に意欲が上がった時に、ちゃんと我々の製品を思い出していただいて、お問い合わせをいただくタイミングを作るという位置付けでメール配信を行っております。
菊池:そうですよね。今強調していただいた効率とか、ナーチャリングのところのお客さまの購買タイミングは、やはりBtoBであればあるほど、こちらでコントロールするのはすごく難しいところですよね。
高嶋:そうですね。こちらでコントロールするのと自然発生して問い合わせていただくのでは、(商談の)難易度がまったく違うので、やはりまずは自然発生するものをしっかり取っていくところは重要視しております。
安価で継続して施策を実施できるメリット
菊池:漏らさずしっかりセンサーのようにタイミングをつかんでいくというところですよね。そうしましたら、ぜひ堀さんにもうかがえればと思います。いかがでしょうか?
堀康佑氏(以下、堀):よく似たことが書いてあるので、そんなに変わらないかなとは思いますが、我々はBtoBで見込み客に対してアプローチをしています。高嶋さんにも書いていただいているとおり、やはり見込み客に効率良く届けられることが一番かなと思っています。
我々だと、手紙やFAXDMや普通の郵送のDMなどももちろんやるんですけど、まあまあコストが高くてですね。反応率を考えて、例えばピンポイントで「この会社のこの人に会いたい」だったら手紙などもありかなとは思うんですけど。
やはり安価に一定のお客さまに情報を届けるという意味合いです。これは何のためかというと、お客さまが態度変容された時に、我々の会社を思い出していただける関係性作りとしてメルマガを位置付けています。
顧客との接点を持つという意味合いにおいて、DMや手紙やFAXDMとはちょっとまたアプローチの質も違うと言いますか。そういう意味だと、安価に、かつ安定して顧客との接点を続けられるものかなと思っています。
菊池:そうですね。今キーワードとして安価にできるというところを堀さまからもいただいたんですけれども。やはりコストをかけずにできる施策って、マーケターにとってはけっこうありがたいですよね。
堀:そうですね。最終的にROIみたいな話になった時に、やはりそこは重要なポイントかなとは思います。
菊池:今ご説明いただいた部分だけでも、やはりいろんな側面でメールマーケティングに取り組む意義を伝えられたんじゃないかなと思っています。ぜひこういった観点もあるんだというところをみなさんも意識しながらやっていただくと、またROIみたいな観点を振り返る時にも参考になるんじゃないかなと思います。
課題感が明確な顧客とそうでない顧客への対応の分け方
菊池:2つ目はちょっとなかなかのタイトルかなと思うんですけれども、「月30本以上の配信を実現する運用体制・企画の工夫とは?」というところで聞かせていただければと思います。
もう少し具体のところで、「メルマガ運用をどうやっていますか?」というところを、SATORIさんとラクスさんにいろいろ聞いていきたいなと思います。
まずラクスさんの配信体制について、社内でどれぐらいの通数だったり、どんな組織体系でどんなコンテンツを送っていらっしゃるのかを高嶋さまにもお聞きできればと思います。どんな感じで進めていらっしゃいますかね?
高嶋:そうですね。記載をしているとおりではあるんですけれども、基本的にはMQLとSQLという2系統に分けて運用しております。横文字なのでわかりづらいと思うのですが、すごくわかりやすく言うと、「課題感が鮮明でない方とはっきりしている方」です。

例えばメール配信ツールみたいなものを検討する時に、「そもそも、うちにそれが必要なのか?」というフェーズと、「必要だと思うけど、それって今でいいんだっけ?」というフェーズの2段階があると思っています。
どちらかと言うとぼんやり「何かを改善したい」と思っている方に、いきなりオプションの紹介をしてしまっても何も生まれないし、なんならちょっと解除されてしまうリスクが高まってしまうところがあります。
まだ興味の薄い方に関しては、もう少し汎用的なセミナーや展示会のお話、調査結果やホワイトペーパーのような、誰もが興味はあるでしょうみたいなものを配信させていただいております。
月30本以上のメルマガ配信を実現するノウハウ
高嶋:配信頻度は、弊社ですとだいたい1コンテンツで3回くらい配信することを徹底していて、このセッションのテーマにもある「30本以上」というところに言及すると、ここの回数がけっこうポイントかなと思っております。
弊社のシステムをご導入いただく方って、だいたい1つのコンテンツを1回送って、「次のコンテンツ、どうしよう?」と悩まれる方が多いんです。ただ、そもそも見ていない方とかもいらっしゃいますし、見たようで見ていない方もいらっしゃるので、けっこうガンガン配信していいものだと我々は定義しています。
それを円滑に行うために、興味が薄めの方と濃いめの方という大分類だけはした上で、それぞれの方が送られてきて迷惑でないものをだいたい3回くらいに分けて配信する感じですね。
顕著に思うのは、やはりセミナーなどで言うと、明確に毎回メールで参加者が増えていくんですね。もちろん最初の配信でドンと来て、そこから徐々に増えていくかたちではあるんですが。
そこで参加が増えるということは、(それまでのメールは)認知されていなくて、「2回目で初めて見ました」と。「それで興味があったので参加します」という方がいらっしゃることになるので、ちゃんと伝えるという意味合いで、3回行っているところはありますね。
まとめると、2系統に分けて解除率をある程度抑えながらも、同じコンテンツを複数回配信することを徹底しております。
菊池:ありがとうございます。弊社もやはり毎月固定のテーマでセミナーをやったり、複数回メルマガを送って集客をしたりしているんですけど。1コンテンツで3回ぐらいは送っていいよという言葉を聞いて、今ちょっとほっとした自分がおりまして(笑)。
逆にお客さまから見ても、その時間に一発送っただけで「見てよ」というのも、なかなかお忙しい中で難しい話でもあると思うので、定期的にお送りすることでしっかり伝えていくと。そこはコンテンツの送り手側としても意識しないといけないところとして、非常に参考になったかなと思っています。
高嶋:そうですね。
3ヶ月先までを見越して、属性に合ったコンテンツを配信
菊池:ありがとうございます。そうしたら、ぜひSATORIさんも配信体制のところを教えていただきたいなと思います。堀さん、このあたりはいかがでしょうか?
堀:そうですね。配信に関しては書いてあるとおり、大きく4つの区分に分かれています。コンテンツとセミナー、イベント関連は、我々で言うとマーケがやっていて、1to1に関してはIS(インサイドセールス)がやっています。30本送るというところで言うと、マーケが担当しているかたちです。

マーケの活動は、もう3ヶ月先まで何をするかがだいたいイベントも含めて決まってきています。逆に言うと、セミナーやイベントへの集客が必要な配信スケジュールが決まっているので、基本はイベント関連の集客とお礼を全部当て込んでいって、「じゃあ、残っているところにコンテンツ配信をしよう」というかたちで運営をしています。
その中の潜在層や顕在層というのは、一応MAツールなので、スコアやお客さまの行動によって属性を分けて配信をしているイメージですかね。
1to1に関しては、先ほど高嶋さんがおっしゃっていただいたとおり、一定の行動パターンやセグメントに該当したユーザーだけ、ISに連携するようになっています。
そこからアプローチする際に、ここに書いてあるようなお電話をさせていただいたり、顧客に対してメールでアプローチをするような体制を取らせていただいています。
メルマガの“ネタ不足問題”への対応策
菊池:かなり綿密にスケジュールを先倒しで引かれていて、その中で送れるコンテンツ自体も、御社だと本当に豊富にあるのでこういったことができるのかなと思うんですけれども。
新規のコンテンツみたいなものも、やはりどんどん量産されていらっしゃるかたちになるんですかね?
堀:そうですね。おっしゃるとおり、オウンドメディアもありますので、そこで作っているコンテンツを、新しいコンテンツとしてユーザーに周知するために使っていたり。
後でも話しますが、メールは冒頭お話ししたとおり、第一想起を取るものとして活用していますので、メルマガとして全部読んでいただくというよりは、CTAに対してアクションをしていただくことを基本メインとしています。なので、ブログに飛んでいただくかたちだったり。
あとは今日のような共催セミナーやウェビナーの企画やコンテンツ作りはずっと続けています。そういう意味で言うと、新しいセミナー企画を立ち上げることは、お客さまにお送りする情報としても作り続けているのかなというふうには思います。
菊池:コンテンツ作成とデリバリーの両方を回していくという、この両輪があってこそですね。
堀:はい、おっしゃるとおりです。