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過剰負担でもう限界?管理職のやりがい再生のカギを徹底解説(全2記事)

2025.05.14

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管理職が疲弊する“やって当たり前”のカルチャー やりがいを取り戻すマネジメントサイクルの回し方 [3/3]

提供:株式会社タバネル

管理職の心理的資本を高める関わり方

橋本:先ほどの4つの要素を分解しながら、簡単に見ていきたいなと思います。まず「Hope」、希望の視点で見ていきましょうと。

ポジティブな場合は、最適な目標を具体的に示したり、自己決定を促す。本人の意志を尊重する。奥田さんのパートでも、意見をちゃんと聞くことが大事だというのはありましたが、その上で応援者であろうとする姿勢も大事かもしれません。

ネガティブになるとこんな状況ですね。すべての決定を下して、「このとおりやりなさい」というふうにしてしまっていると。この状況は良くないので、こんな関わり方はどうでしょう。

まず管理職自身が会社の目指すものや事業の目的、自らの役割、どこまで本人たちが自分の仕事をしっかり理解して納得できているかを問うてみたいなと思いますね。そこをしっかり、膝を突き合わせて話す機会を持てていますかということです。けっこう持てていないことってあるんですよね。

あと、ご自身や部下に対しての適切な目標設定や、目標に向けた方法や手段を複数イメージできているかどうかも問うてみるといいかなと思います。

この2つが揃ってくると、先ほどの希望「Hope」は高まっていきます。管理職をフォローしたり、対話の機会も重要だという話や4つの戦略もありましたけれども、そこを丁寧に持っていただきたいなと思います。

「Efficacy」の視点はどうでしょうか? トライアンドエラーですね。試行錯誤を善とする姿勢を、会社や組織として持っていくことが重要ですよね。適切な目標設定で達成体験を促していく。そしてポジティブフィードバックをしていく。これらをしっかりやっておくと、「Efficacy」は上がっていきます。

“管理職だからやって当たり前”に陥っていないか

橋本:一方で、「(心理的資本を)下げてしまうような関わりをしていないですか?」ということを見ていきたいなと思います。

例えば達成が困難な目標や行動を強要してしまったり、できていないところばかり指摘したり。一般の世の中の会社でよく聞く話なんですけども、管理職って本当に褒められづらいんですよね。できていないところを厳しい感じで言われてしまうと、どんどん自分の自信がなくなっていくことだってあるんですよね。

過度なストレス環境や心身の健康を無視したような状態。「管理職なんだから、やって当たり前でしょ?」なんて言われてしまうと、どんどん疲弊していってしまいます。これって「Efficacy」を下げていくやり方なんですよね。

なのでやはり管理職としての自信につながる試行錯誤と達成体験。ある程度失敗も許容できるような姿勢を組織として持っておきたいなというところですね。

それで管理職がメンタリングを受けられるような場もぜひ作ってあげてほしいです。横のつながりを作っていくことも大事ですし、斜めの関係もいいかもしれないですし、外部を頼ることもいいかもしれません。

忙しすぎて振り返る余裕がないとかポジティブなフィードバックをもらえない。常に緊張感で張りつめて、過度なストレスを与えてしまっていないか。そういう状況をちょっと見直していただけるといいのかなと思います。

コントロールできないことは手放し、できることに集中する

橋本:今度は「Resilience」の視点でいってみましょうか。これは、リスク要因を現実的に捉えて相談に乗る機会を持てていますかということです。乗り越えるための資産に注目できていますか?

しんどい時は視野が狭窄してしまうので、なかなか自分の強みやリソースに気づけなかったりします。対話などを通じて、そこをしっかりとひもといていく機会も持てたらいいんじゃないかなと思います。

「できないやつが悪い」と突き放してしまったり、「自分で考えろ!」ということばかりやっているとなかなかうまくいかないです。失敗を許さず、追い込んだり詰めたりすると、そりゃあ弱っていきますよという話なんですよね。

なので、やはり自らの資産や強み、新たなリソースが開発できるようなトレーニングの場を提供していくこともいいかもしれません。

個人的には、「Optimism」も管理職で特に重要かなと思っています。コントロールできないことにモヤモヤ、イライラしてしまうと、ついつい心の余裕がなくなって小さなことにも感謝する姿勢が持てなくなり、将来を肯定できず常に不機嫌になってしまう。そうすると、ハラスメントのような言動につながってしまうわけなんですよね。

その手の問題は、もうここに集約されているかなと思います。なので、やはりコントロールできないことに執着しないようにしましょうと。できることに集中しましょうということですね。

今あるものに感謝する姿勢を持ったり、やりたいことをやり切ることを考える機会を持ちましょうというお話です。物事の良い側面に気づけるようなサポートをしていきましょうというところですね。

ここがすごく重要なんですけれども、管理職という役割は1つの大きな領域ですが、新任管理職なんかはもうできなくて当然なんですよね。そこで達成体験を積むことでようやく、先ほどの自己効力感の「Efficacy」が上がっていくわけなんです。

さらに今は多様な問題に対応していかないといけなくて、新しいやり方や仕事もどんどん入ってくる状況です。なので、たくさんの新しい領域や分野を常に抱えながら進んでいるのが今の管理職の方々じゃないかなと思うんです。

一つひとつがまだまだ開発中なんだよという認識で、会社としてもしっかりサポートしていく。評価のところも考えなくちゃいけないかもしれないですよね。自信をつけていってもらうことが非常に重要かなと思います。

やりがいを高めるサイクルの回し方

橋本:なので、マネジメントサイクルと先ほどの「HERO」を考えていくと非常にいいかなと思います。目標設定をして、行動して振り返ってフィードバックをする。この一連が試行錯誤のサイクルだと思うんですけれども、これを繰り返すことで、それぞれの分野や領域の熟達度や経験値が積み上がって、自信につながってくるわけなんです。

目標設定をする時には、ちょっと「Hope」を高める視点でサポートしてください。行動して、振り返る時には「Optimism」の視点で内省、リフレクションを支援してください。

さらにフィードバックを伝える時には、ポジティブフィードバックで「Efficacy」を高める関わり方をしてください。目標を立て直す時とか問題を乗り越える時には「Resilience」を高めるサポートをしてくださいと。

このサイクルを繰り返すことで、やりがいを確実に高めることができますので、お試しいただけたらなと思います。

その上で、制度や決まりごと、ツール類や人の支援を、先ほどお伝えした性弱説の前提でいろいろ整えていただけたらなと思います。そうすれば、できる施策はまだまだあるはずと考えます。

心理的資本のトレーニングによって起きた変化

橋本:これは、ある企業のマネジメントラインの心理的資本にちょっと介入した事例なんですけれども。1点だけ事例をお伝えしておくと、やはりこの会社の管理職のみなさんも確固たる自信はなかったり、会社の進んでいる方向に自分は合っているのかとか、いろいろな不安を抱えながら仕事をしていらっしゃったんですよね。

そんな中で、まず部門長の方の心理的資本の介入をして、後日、各部門の課長・係長・主任といった、マネジメントラインにも同時に心理的資本介入トレーニングを行いました。

そうすると職場内の共通言語化が起こりました。「こういうふうにやっていこうよ」というところも、心理的資本という言葉でうまいことできるようになったり、結果として管理職同士の横のつながりが生まれたり、生まれやすくなったり。

さらに上司に対する提案や試行錯誤もご本人たちが積極的に行うようになったということで、非常に喜ばれております。これはまさしく生産性や業績につながることですよね。

みなさんの周囲を見渡せば、こんなトレーニングをしなくても、生まれつきヒーローみたいな人がいるんですよね。もうすごいできるなと。めちゃくちゃ成果が上がるし、困難も簡単に乗り越えていくようなスーパーヒーローみたいな人がいます。

きっとそういう人たちも大人になるまでの間に、先ほどの「HERO」を高めるような思考やプロセスを自然と経験しながらやってきたんだと思うんですけれども。大半はそうではないです、という前提を置いておきたいなと思います。

「スーパーヒーローのような人」の弱点

橋本:余談なんですけども、逆にこういうことが自然とできるスーパーヒーローみたいな人が、言語化できなかったり再現性がなかったりもするんですよね。だから、実は部下に伝えられないケースもあったりします。時々、人の弱さを理解できない方もいらっしゃいますが、私はそれも人の弱さゆえだと思っています。

だからこそ、環境作りや対話や支援を絶やさないでほしいなと思いますし、成長や成果を期待するからこそ、厳しさを乗り越えられるようにする。やはり管理職は大変な仕事だと思うんですよ。だからこそ、セーフティネットは準備することをお勧めしたいなと思います。

なので、性弱説を前提にすることと、心のエネルギーをプラスにする関わり方・思考法を掛け合わせて施策を考えていただきたいなと思います。

最後に私から簡単にご案内をしたいなと思うんですが、心理的資本を高める方法を学ぶ「PsyCap Master認定講座」というオンライン講座もやっておりますので、関心を持っていただけましたら、ぜひ受講いただけたらなと思います。

併せて、組織のセーフティネットとして、AIキャリア相談室の「HERO Me(ヒロミー)」を展開しております。

管理職の方も、孤独にさいなまれたりすることが非常に多いんです。その時に思いを吐露するだけでも救われることもありますし、「具体的にどうしていったらいいの?」という時に、先ほどの「HERO」の視点で思考整理を手伝ってくれる仕組みになっております。こちらもお問い合わせいただけたらなと思っております。心理的資本の診断もこの中でできることになっております。

というわけで、ご視聴ありがとうございました。では、また奥田さんにバトンをお戻ししたいなと思います。みなさんありがとうございます。

「自分でなんとかしなきゃ」という考え方の弊害

奥田:橋本さん、ありがとうございました。では、「こんな時どうする?」ということについて、橋本さんと一緒にディスカッションしていきたいなと思います。

橋本さんからもかなり具体的なお話があったんですが、私からご質問させていただきたいと思います。課長のやりがいにとって、上司や周囲に相談するのが非常に大事だと言ったんですが、とはいえなかなか相談できないなと。

管理職の方が、孤立感を抱いて疲れてしまっている組織が多いように感じますが、このあたりは橋本さんはどのようにお考えでしょうか?

橋本:そうですね。この孤独感を感じる人は実はめちゃくちゃ多いなと思っています。ある調査でも50パーセント弱の人が孤独感を感じているというデータがあるんですが、やはり評価も気になりますしね。

「相談したらどう思われるだろう?」みたいなことがあったり、同じ立場で同じ話ができる人がいなかったり、気づいていなかったりしている人もいますけれども……そういう状況が考えられるんですよね。

私自身も同じことに陥ったことがあるのでよくわかります。非常にメンタルが落ちますし、なんとかしないといけない問題なんですけれども。

相談できる人が灯台下暗しでいるけれども、やはり相談しないんですよね。個人的には「自分でなんとかしなきゃ」という考え方をそもそもなんとかしないといけないなと思うんですけれども。どうですかね、そういう方、多いですよね?

奥田:多いですね。

橋本:「なければならない」というのは、方法が1個しかわかっていないというか、1個にこだわりすぎているということでもあるんですよね。実はほかの人に相談したら簡単に解決できる問題があったり、話してみると頭の中が整理されて気持ちが楽になったりすることが大いにあるんですよね。

「Resilience」の中の観点であれば、資産焦点型戦略という方法があるので、問題を乗り越える時に、そういった資産に気づくことができるんですよね。だから、個人的にはそれを思い出していただきたいなと思います。この問題を乗り越えるためには人とのつながりも資産になり得るというところですね。

「管理職はこうあるべきだ」からの脱却

奥田:ありがとうございます。心理的資本の側面からいうと、確かに「Resilience」が非常に大事だなと思うのと同時に、私の観点でいうと、組織側の取り組みとして何が大事かを考えてみたいんですけども。

最近、従業員エンゲージメントやDX、心理的安全性などのさまざまなテーマについて、「管理職がキーマンです」とだいたいの提言で言われるんですよね。この認識を改めないといけないんじゃないかなと。

確かに管理職が何か動けば、それに対してプラスの影響を及ぼすことは正しいと思うんですが、私も管理職育成に携わっているので自戒を込めて言うと、管理職に理想の姿やキーマンを求めすぎていると感じています。

橋本:はい。

奥田:これをちょっと改めないといけないんじゃないかなと。私も管理職をやっていましたが、経営と現場と板挟みになったり、部下は育成したいけど業績は求められるしとか。

長期・短期の葛藤とか、年齢的にもキャリアとか健康とかいろいろ悩みがある。橋本さんの言葉を借りると「性弱説である」ことを前提に組織や管理職と向き合っていかないといけないんではないかなと思います。

そういう意味でも、経営が現場の意見を聞くのも大事ですし、管理職同士の横の関係を築くのも非常に大事かなと思います。管理職はキーマンなんだから、何でもかんでも自分でがんばりなさいでは……ということですね。

橋本:そうそうそう(笑)。神話みたいになりますよね。

奥田:そうなんですよ、本当に。

橋本:なんか「管理職はこうあるべきだ」というのがいっぱい世の中にあって、会社もそれを求めているので、「こうあらねばならない」。それにがんじがらめになってしんどくなっている管理職の方はめちゃくちゃ多いなと。

奥田:いやぁ、思います。いい人を選抜して教育したらできるという感じなんですけど、そうではないんですね。

やはりみなさん、さまざまな悩みも持たれるので、最近の育成の場面でも研修でグループワークをしたり情報共有する時間を作ってくださいとか、定期的にそのグループで話し合う機会を持つようにされる会社も増えてきたなと思っています。

橋本:それ、めちゃくちゃいいですよね。「同じような悩みを持つ仲間が身近にいたんだ」となると、相談相手ができるというか、思いを吐露できる相手が見つかるので非常にいいなと思いますね。

過去の振り返りや正しい現状認識が、未来の意志につながる

奥田:そうですね。では最後に1つ、自分の意志を持つって非常に大事だなというところですね。私から言うと、OKRの導入などもしているのですが、実は特に大企業さんで難しさを感じています。

意志は未来に持つもので、それに向けてやっていこうということなんですが、これまでは言われたことをきちっとやることが良しとされていたのに、急に「(意志を)持て」と言われてもけっこう難しかったりします。

橋本:はい。

奥田:そこで大事になってくるのは、未来に対する意志の前に、過去に対して意味を見い出すことが大事なのではないかなと。

過去の反省とか、足りなかったことだけに目を向けるんじゃなくて、達成できたことや達成できなかったけどうれしかった部分を自分なりに解釈して、自分の言葉でしゃべっていく。

意味を見いだせると次の意志につながっていくのではないか、そういうことが非常に大事ではないかなと思っています。橋本さん、このあたりはいかがでしょう? 

橋本:いやぁ、もう奥田さんがおっしゃるとおりで。キャリア研修などで、よく「Willを持ちましょう」みたいな話がありますけど、本当にみんな持っていないというか、考えたことすらない人が多いので。「会社って言われたことをやる場所でしょ?」と思っている人がやはり多いんですよね。

これは「Hope」の希望の考え方なんですけども。「Optimism」の楽観性のところで、奥田さんがおっしゃったように、過去をまず振り返ってみたり現状を正しく認識するところをまずやってもらいたいなと思うんですよね。

何かというと、過去を振り返った時に、うまくいったことも失敗したことも含めて、「自分がコントロールできたことは何かな?」と客観的に分析していくと、「どうしようもないこともあったよね」とか。

「あっ、ここは次に活かせるよな。これはもしかしたら自分の経験の資産になっているんじゃないかな」というものを見いだせたり。現状に感謝することからも、自分の「あっ、自分はこれはすごくうれしかったな。こういう時があった時に喜びを感じるな」というところから、Willを持つきっかけになることもある。そんなサポートをしてもらうといいんじゃないかなと思いますね。

こまめな振り返りをした上で、意見や意志を出していく

奥田:ありがとうございます。もうおっしゃるとおりですよね。やはり振り返りが大事で、小まめな振り返りとしてウィンセッションというものがあります。うれしかったことをみんなで共有しましょうとかですね。

あとはチームの目標を立てる時も、KPT(Keep、Problem、Try)と言って、いいところと悪いところをみんなで出し合って、そこで次に何をやりたいかの意見を出し合いましょうと。そうやって振り返りをした上で、自分の意見や意志を出していく。

橋本:そうですね。

奥田:こういう繰り返しをしていただくのは非常に大事ではないかなと思っています。

橋本:まさしく、本当に未来につながる過去の振り返りですね(笑)。

奥田:そうですね。ではお時間になりましたので、橋本さん、今日はありがとうございました。

橋本:はい。もっといっぱい話したい気分ですけども、ありがとうございました(笑)。

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