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kintone AWARD 2024④<北海道・東北地区>株式会社北斗型枠製作所 渡邉 克史 氏(全1記事)

2024.12.23

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全社の業務時間を80%削減、利益率換算で25%アップ 部署横断のkintone業務改善プロジェクトの極意

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2024」。同イベントでは、全国のkintoneユーザーの中から選ばれたファイナリストたちが活用事例を発表する「kintone hive tokyo vol.20/kintone AWARD」が行われました。本記事では、営業、製造、総務・経理の3部門の改革を通して、全社の業務時間を80%削減、利益率換算25%アップに導いた、株式会社北斗型枠製作所の渡邉克史氏が紆余曲折を語りました。

身近なコンクリート製品の型枠製作所

渡邉克史氏(以下、渡邉):みなさん、こんにちは。株式会社北斗型枠製作所の発表を始めさせていただきます。

まずタイトルはこちらです。「人を巻き込みながらの業務改善」ということで、私自身、アプリの構築が非常に得意なわけでもなく、社内の業務の隅々まで把握しているわけではありません。では、どのようにして成果をあげられたかを発表させていただきます。

まず会社のご紹介です。株式会社北斗型枠製作所、福島県郡山市に本社工場があり、岡山県長船市に岡山工場があります。この2拠点から全国に向けて出荷させていただいております。



営業種目は、コンクリート二次製品用の鋼製の型枠を作っている製造業です。型枠とはということで、コンクリート製品を作るための鉄の枠です。

型枠はプリンに少し似ています。食べるほうのプリンではなく、外側の容器のほうです。こちらが実際の型枠の写真なんですが、こちらにコンクリートを流し込み固めると、このようなコンクリート製品が出来上がります。

先ほどのプリンも、あの容器がなければ美しい形は形成されません。コンクリート製品も同じです。身近にある側溝や縁石、テトラポッドなどは、我々が作る型枠があるからこそ、あのような美しい形が形成されます。

自己紹介させていただきます。渡邉克史、40歳、入社12年目。部署は型枠営業部と、いつの間にかシステム担当をしております。担当エリアは東北、関東、北陸、九州、沖縄と全国各地担当しておりまして、最近では出張先は日本地図をめがけてダーツで決めてます(笑)。



趣味は社内の仲間と行くゴルフと、スニーカーの収集をしております。月に1足、2足靴が届くので、妻と娘から「お前はムカデか」とよく突っ込まれます。

部署ごとに最適化されたソフトはあれど、最後に手間が残る状態

渡邉:弊社の各部署の仕事をざっくりご紹介いたします。営業、製造、総務・経理の3部署ということで、営業はお客さまからのお問い合わせに対する見積もりの作成と社内への発注。あと製造は大きく4工程。経理・総務については、納品書・請求書関係の発行となっております。



kintone導入前、営業と製造、総務・経理すべて最適化されたソフトはあったんですが、営業と製造につきましては一部連携、総務・経理についてはまったく違うソフトを使っていたため、結局最後に手間が残るという状態でした。

各部署の課題です。営業部は見積もり関係はソフトを使ってやっていたんですが、資料作りに表計算ソフトを主に使っていたため、資料が見つからないという状況でした。こちらは1回あたり、あくまで自分調べですが、57.3秒探しておりました。

製造につきましては進捗状況が見えないということで、製缶板金業あるあるの「経験と勘」で仕事をしておりました。そのため、製造部長が実際に現場に走っていってヒアリングをしておりました。1回あたり620秒と、10分以上かかっていました。

総務・経理についてはそもそもソフトが違うため、同じ名前を何回も入力していて、1回あたり194秒。このせいで総務からは、いつもため息が聞こえていました。


社長に託された、システム変更の「4つの課題」

渡邉:2022年の春、社長からミッションが出ました。「システムを根本的に変更しよう」というお話がありました。正直、当時最適化されたソフトがありましたので「またイチから作り直しか」という気持ちにはなってしまったんですが……。

私が社長からミッションをいただいた時の回答の選択肢は3つです。①「YES!」②「はい!」③「喜んで!」ということで、体育会系でやらせていただいてます(笑)。

社長から最初に4つ課題をいただきました。「一気通貫できるシステム」「二重入力の禁止」「早い数字報告」「資料作りに時間をかけない」ということでした。



そのために私のほうで社内に「北斗の強みは?」というアンケートをとりました。上位2つがこちらです。「社員が若い」こと。平均年齢36.2歳と、製缶板金業にしては非常に若い会社です。

2つ目は「全社員にiPadを支給している」。以前より情報共有などでみんなでiPadを使っておりまして、iPadの操作には慣れておりました。

社長にも聞いてみたところ、「みんな素直だよね」という回答がありました。この3つを武器に、kintoneにチャレンジしようと決断しました。

「やらされている」感から脱却するノウハウ

渡邉:kintone導入に伴い、最初の2大項目がチームワーク開発「ワイガヤ」と、メンバーの選定「各部署のキーマン・匠」です。

まずはチームワーク開発。ワイガヤという言葉はあまり聞きなれないかと思うんですが、このような4つの定義があるので、一部を簡単にご説明させていただきます。



業務改善を進める上での1つの戦略です。仕事というのはやはり前後のつながりがあるため、そのつながりがうまくいかないと全体最適にはならないこと。部署・役職関係なく「これがダメなら次はこれ」という、チャレンジしてみようという考え。

論破は禁止。わいわいガヤガヤ、時間を決めてあくまで和談でワイガヤを行うこと。最後に「忙しいから話し合いはムダ」という考えはなしという、この4つの定義のもとやっております。

ワイガヤ導入以前、問題が発生すると役職者が集まり打ち合わせをしておりました。ワイガヤ導入以降は、問題が発生すると現場担当者が集まり、ワイガヤを開催するという仕組みとなりました。



このため、決められたプロセスをやるのではなく、自分たちで決めたプロセスを実行するという文化の醸成ができました。「やらされている」から「さあ、やってみよう」という意識改革につながりました。

常に後工程を考えて仕事をしている社内の“匠”たち

渡邉:続いてkintoneプロジェクトの組閣です。同じ福島県に強力な助っ人がいました。有限会社矢内石油の矢内哲さん。彼は2018年のこのkintone AWARDでグランプリを取られた方です。


今も支援というかたちでアプリの構築や改善をお手伝いいただいているんですが、彼と最初に出会った頃に言われた、忘れられない一言がこちらです。「ちゃんと次のランナーに丁寧にバトンを渡すようなフローを組みませんか?」というお話がありました。

丁寧にバトンを渡すようなフローを組むために、このようなプロジェクトマップを組みました。製造、あとは匠から私のほうでヒアリングさせていただいて、支援の場で矢内さんと共有。そこでアプリの構築・改善を進めて、匠を介して現場に戻すというやり方をしました。



必要に応じて製造・匠・現場の方を支援の場に呼んで、ワイガヤを開催して改善を進めました。結果、運用の渡邉と構築の矢内ということで、2人の仕事が明確になりました。

先ほどから出ている各部署のキーマン、匠です。匠とはということで、私の脳内辞書を書かせていただいてるんですが、簡単に言うと「職人気質のベテランのおじさんたち」です。

もっとわかりやすく言うと「職人気質の面倒くさいおじさんたち」です。みなさんの会社にも何人かいらっしゃると思います(笑)。



なぜ各部署のキーマン・匠を入れることが大事だったかというと、やはり匠は長い経験と幅広い知識から、頭の中では常に改良・改善をしています。

しかしそれをなかなか外に出すこともできなかったり、出す場がなかったりということがあり、彼らの頭の中の経験と知識を外に出すのが今回のプロジェクト成功には不可欠でした。

匠と一緒にやったことということで、今思い返すと匠は自部署のことではなくて、常に先のことを考えていて、後工程のことを考えながら仕事をしているということがあらためてわかりました。

部署間のステータスと進捗率を可視化するコツ

渡邉:匠とのワイガヤで成功した事例を発表させていただきます。弊社は、製造管理でプラグインの「KANBAN」を使っています。使っている製造業の会社さんは多いと思うんですが、弊社では運用の方法が少し違います。

通常であれば、自分の部署が終わったらステータスを移すというやり方をやられると思うんですけど、弊社では「一番わかりづらいところは何か?」とワイガヤを開催してヒアリングしたところ、「次の部署が着手するタイミングがわかりづらい」という話がありました。

なので弊社では、次の部署が着手できるようになったらステータスを移すという運用方法にしました。


さらにこのカードの中には情報の制約があり、なんでも書けるわけではありません。その中で「一番みんなが知りたい情報は何か?」とヒアリングしたところ、「設計の進捗率」という話がありましたので、こちらはゲージに表示をしました。


さらにはこの数字にも意味を再定義しまして、「48パーセント」と記載があるんですが、こちらはお客さまから承認前。お客さまから承認がくると50パーセントになって、各工程が一気にスタートする。

ということでこのステータスは、どこにいても常に設計の進捗率がわかるという仕組みとなっております。さらには組み立ての進捗率も知りたいということで、タイトルに表示させました。

他部署の改善は、いずれ自部署にもプラスの効果に

渡邉:最後に「終わったら消えていく運用」ということで深掘りさせていただきます。こちらの左の赤枠には、各工程が書いてあります。



8工程あるところが、右にいくと3つ消えています。これはチェックボックスを使っております。最初に工程ごとにチェックが入っている状態で始まって、自分の工程が終わったらチェックを外すという意味です。


これは現場の方も含めて一番やりやすい、わかりやすいやり方を、みんなでワイガヤをして決めました。「取り扱う情報の意味づけと運用方法を徹底して協議したこと」ということで、やはり他部署の改善の波及は自部署にいずれ訪れることがわかりました。

納品が集中する日は必ず残業していた経理部門

渡邉:営業・製造はkintoneのおかげで連携しました。最後の砦は経理です。経理への業務の流れは、まずは納品登録です。kintone導入前、紙で回ってきた発注書に一字一句すべて手入力しておりました。納品が集中する日は必ず残業になっていました。

今現在では匠たちが安定運用してくれたおかげで、ワンクリックで納品書を作成できるようになりました。このアプリが完成した時、弊社の総務は全員泣きました。泣いてるように見えました。



続いて請求書の発行です。同じくこちらも匠たちが情報を安定運用してくれたおかげで、ワンクリックで発行できました。こちらは入力作業、発行時間の削減ということで、一切入力なしで進めることができました。



ついでに請求書のフォーマットも変更しました。売掛金や前月入金の情報、ハンコもすべてこのタイミングでやめました。こういったタイミングでやめるのもありだと思います。



最後に売掛金の処理です。このように営業、製造、総務・経理とデータを一貫して管理できるようになったので、業務の流れがスムーズになりました。


業務データと会計データは、最終的に「経営データ」に変わる

渡邉:業務データ、会計データとくると、最終的には経営データに姿を変えます。こちらは何かといいますと、我々が日々使っているkintoneのアプリとなっております。



営業の活動情報であったり見積もりの見込み情報、ヒアリング情報と、こちら1つの経営管理表にひとまとめにすることにより、経営に影響を及ぼすようになりました。

こちらが弊社で使っているkrewDataのフロー図となっております。さすがにここまでくると、ちょっと気持ち悪いです(笑)。ただ改善を重ねていくと、どうしてもやはりこのような形になってしまいます。



私は「krewDataのサグラダ・ファミリア」と呼んでます。ちょっとまたこれディス(っているように見)られちゃうんで、次にいきます。

このようにkintone導入後、営業、製造、総務・経理、「レポトン」「KANBAN」「krewData」等あらゆるプラグインを駆使して、一気通貫できるアプリとなりました。


全社的な業務時間は80%削減、利益率換算25%アップ

渡邉:続いて各部署の成果です。営業部、資料作成時間。年間228時間が、現在では18時間。92パーセントの削減。

製造部、こちらは業務のヒアリング等の時間。年間816時間かかっていたところ、現在では176時間。78パーセントの削減。

総務・経理、入力時間は年間396時間かかっていましたが、現在は96時間の入力作業となっております。こちらは75パーセントの削減。

全社でいくと1,440時間が290.4時間となり、トータルで80パーセントの削減となりました。



こちら年間の利益率に換算すると、25パーセントアップとなりました。



4つの気づきです。自分だけの知識、経験、アイデアには限界があります。孤軍奮闘ではなく、人も巻き込みながらアプリを作ること。衆知を結集すれば人もアプリもつながり、業務改善は加速します。プラグインを駆使すれば一気通貫するソフトは作れることがわかりました。


kintoneの目的は、アプリを作るよりも運用すること

渡邉:最後ですが、私は冒頭でもお伝えしたように、アプリの構築が得意なわけではありません。なんならどちらかというと今、社外にほぼほぼお願いしている状態です。

その代わり私は社内の定義やルール決めに注力しました。やはりkintoneというのは作るのが目的ではなく、あくまで運用するのが目的だと思っております。

そのkintoneを作成していく中で、社内でしっかり明確に合意形成をして、kintoneを作る、アプリを作るプロセスの中でチームワークの構築につながったと感じております。私からの発表は以上となります。ご清聴ありがとうございました。

司会者:渡邉さん、ありがとうございました。サグラダ・ファミリア、大丈夫ですよ。ディス(っているとは見)られないですよ。

渡邉:ディスられないですか、大丈夫ですか(笑)。

司会者:(笑)。ありがとうございます、質問させていただければと思います。渡邉さん、本当にプラグインの使い方が秀逸だなと思いました。

特にKANBANのところは、1つの画面でさまざまなタスクの進捗が見える。これはすばらしいなと思って感動して聞いていたんですが、プラグインの設定はどのように進められてるんですか?

渡邉:今はもう外部にお願いしている状態で。やはりkintoneはアプリは簡単に作れると思うんですけど、だんだんつなげていくとどうしても複雑になってきてしまうと思うので。

それで悩んでる会社さんもありますし、導入を踏みとどまってる会社さんもあると思うんですが、今はこれだけ世の中にkintoneが浸透しています。なので、各エリアにもうプロがいらっしゃると思いますし、札幌のhiveでも匠と言われる方が……あ、うちの匠とは別ですけど、いらっしゃいましたので。

司会者:別々の(笑)。ややこしいですが、別の匠。

渡邉:そういった方がいらっしゃると思うので、もうこれからの時代は外部にお願いするのも1つの手段・方法かなと思いました。

司会者:なるほど。(2018年kintone AWARDグランプリの)矢内さんですよね?

渡邉:矢内さんです。

司会者:矢内さんと業務フローを一緒に考えながら、適切なプラグインのご相談もされて、設計も矢内さんが一緒にやっていらっしゃると。

渡邉:はい、そうです。

司会者:すばらしいですね。社外の方を巻き込みながらの業務改善、すばらしいと思います。ありがとうございます。

渡邉:ありがとうございます。

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