2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
kintone AWARD 2024②<中国・四国地区>株式会社LILE THE STYLE 谷川実 氏/木原隆太 氏(全1記事)
提供:サイボウズ株式会社
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谷川実氏(以下、谷川):こんにちは。LILE THE STYLEの発表を始めます。私たちのテーマは「介護業界をkintoneで変えてみよう!」です。私たちは介護事業をしており、主に高齢者の方に住まいの提供や介護支援を行っております。設立は2014年、部屋数は25床、従業員は21名となっており、介護施設ではわりと小規模な事業です。
申し遅れました。私は谷川と申します。実は介護歴が16年あり、現場の介護職員、そして管理者と、幅広い経験をしてきました。
そしてもう1人が……。
木原隆太氏(以下、木原):LILE THE STYLEで情報システム担当として働いております、木原と申します。現在はグループ会社で、グループ全体の情報システム担当として従事しております。kintone歴は6年でございます。
谷川:こちらは業界別のDXの実情です。介護は、数ある業界の中でも最もDXが難しいと言えます。なぜならば、DX化を「これまでも実施していない」し、そして「今後も予定なし」といった意向を持っています。まさにDXが難しい介護業界。じゃあどうやっていくのか、今からお話ししたいと思います。
介護現場では、記録を手書きで書いて残したり、スケジュール管理に関しては大きなカレンダーでメモを残したり、情報に関してはファイルに納めて書庫に納めたりと、なかなかアナログな手法から抜け出しにくいです。
そこで私たちに与えられたミッションは「介護DXの実現」でした。つまり、日々の業務をデジタル化して、情報により人が自ら判断し、行動ができる仕組みを作ることでした。
谷川:そして私、谷川は現場に入り、業務を洗い出して課題を見つける。その課題に対して木原がアプリを作る。この2人で介護のDXをやっていこう、という担当になりました。
ところが事態は最悪な状況でした。8年間で管理者が6回変わる上に、半年間でなんと従業員が8名も退職しました。そして僕が最も恐れていたのは、従業員が持っている情報をすべて失ったことです。
必要な情報・データがどのパソコンにあるかわからない。どのように管理するか、ルールがわからない。そして入居されている利用者、その家族の必要なデータなどがどこにあるかわからない。誰に聞いても正しい情報を持っていない状況でした。
さらに売上は過去最低をマークしました。じっくり長期間かけてkintoneでDX化する時間の余裕はなくて、ルールを作り、仕組み化をして、すぐにでも効率を上げなければ会社としても危険な状況でした。
そこで、kintoneをより早く現場に使ってもらうために考えたことは、まず触ってもらうことです。介護DXの必要な要素は、一人ひとりが持っている情報を共有することです。そのためには、触ってもらうことに抵抗をなくすことが必要でした。
谷川:そこで、みんなが使う頻度が高い業務を置き換えた時に、出庫記録という業務がありました。出庫記録とは、利用者が必要とする日用品を施設から出して販売するものです。
今まではこの情報をノートで管理していました。これをkintone化することによって、誰が誰に、いつ何を出したのかがわかりますし、在庫もわかる。そして月末の請求に関しては集計もできるということで、一石三鳥のアプリになると期待していました。
さっそくスタッフを集めて「よし、キックオフミーティングしようよ」ということでやりました。kintoneを本格運用するために、まずは目的、そして未来のビジョンをみなさんと共有しました。もちろん、この出庫記録に必要な操作説明のレクチャーも行いました。
「よし、これでいけるぞ」と思ったのですが……使ってもらえませんでした。「現場では紙のほうが楽だし早い」「使い方が難しい」「いや、私はもうやり方を変えません。紙一本です」みたいな(笑)。そういったことが起きました。すると現場は大混乱です。
冒頭で、「DXが最もうまくいかないのは介護業界だ」とお話ししました。それはやはり、こういうことが課題にあるからだと思います。
これによって、新しいことにチャレンジしにくい風土があると思いましたので、再び作戦会議をしました。
木原:とにかくkintoneに触ってもらいたい。そのためにこんな改善をしました。まずはバーコードを入力、そしてQRコード読み取りによる入力、そして音声入力など。
また、スマートフォン、タブレット、パソコンなどデバイスも増設し、現場の至るところに設置して、物理的に入力できる機会を増やす。そうすれば使ってもらえるだろうと思っていたんですが、それでも使ってもらえません。
木原:なぜ使ってもらえなかったのか。よくよく聞いてみると、こんな答えが返ってきました。「目的のアプリにたどり着けないから入力を諦めた」。
また、出庫記録を入力する時に品目マスターから品目を選ぶんですが、「品目を探すのが大変だから入力を諦めた」という答えが返ってきました。「諦めたって何だよ」と思うんですが、現場ではこういう要望が上がってきました。
結局「使いやすい」の答えは、日々パソコンに向かって開発をしている我々ではなくて、現場のスタッフが持っているんだということに、あらためて気付かされました。
ここから目的のアプリにたどり着けるようにするために、kintoneを開いて一番最初に出てくるお知らせ掲示板にメニューを作成しました。よく使うアプリは上から順番に、そしてまたアイコンは大きく目立つように設置することで、誰でも迷わない状態を作りました。
そして、出庫記録の入力時ですね。利用者さんが入力されたら、その利用者さんの品目別の購入料を過去のレコードから再計算し、品目マスターの「総出庫」というフィールドを自動更新するようにしました。
そうすることで、利用者さんを入力して品目をルックアップで選ぶ際は、その利用者さんが多く購入する品目から順番に並ぶという状態ができました。
この改善をすることで利用率は上がったんですが、何が原因だったのかというと、私と介護現場で「入力しやすい」「使いやすい」の視点が違ったことが大きな原因でした。
介護現場からすると、「日々忙しい業務の中で、いかに手早く入力できるか」が大事だったんですが、私からすると「データを多く貯めておくことで、後々業務が楽になるから使うべきだ」というふうにずっと考えていました。結局、「このアプリは誰が使うものなのか」という視点が抜けていたんですね。
なので、それからは現場スタッフと一緒に「このアプリは誰が何のために、いつ使うのか」というところを、一緒に考えて構築することを心がけました。これによりkintoneの利用率は8割までアップしました。
谷川:ところが、まだ2割残ってるんですね。この2割もなんとかしたい。
谷川:どうすれば全員に使ってもらえるのか、再度考えました。出た答えが「徹底的に伴走する」ということです。
使えない方の隣に席を配置して、常に教えてあげられる環境を作ることで、わからないタイミングがなくなりました。それと、すぐに教えてあげられるので、その方に対して成功体験を積み重ねることができました。
これによりkintoneが一気に加速しました。例えば入居管理をアプリ化して、Excelや写真データ、そのほかのファイルをここで一元管理できるようになりました。
そして、ヒヤリハット・事故報告、クレーム報告をアプリ化しまして、入居者管理に関連レコードを表示させることによって、過去の記録から利用者に対してどういったことに気をつけるべきか、誰でもわかるようになりました。
今まで管理者が1人で行っていた業務をアプリ化することによって、業務の俗人化もなくなりました。こういった活動を2年間続けた結果、なんと売上が2倍になりました。
そして、DX化した施設を魅力に思い、なんと辞めたスタッフが3名帰ってきました。さらに職員が知り合いを紹介して、5名を採用することができました。
谷川:ここで最も効果が出た事例を発表します。LILE THE STYLEの事務員さんは74歳の方が1人で行っています。介護施設の請求書を作るのはとても大変で、入居費用、介護保険、医療保険、実費、日用品、こういったものを全部まとめて1つの請求書を作らないといけないんです。これを作るのに、なんと105時間かかっていたんですが、10時間に改善しました。
木原:この74歳の事務員さん、今までは請求書を作成する時に、いろんなところに散らばってた情報を掘り起こして請求書を作成していたんです。
それがkintoneの中に日々の記録としてデータが入っているので、それを請求書作成アプリに統合することで、一番時間がかかっていたノートからの転記作業、そして請求額の計算作業、集計の確認作業が大幅に削減されました。
谷川:結果のまとめです。2年間取り組んで、アプリ数は30個に増えました。残業はほぼなくなり、育児休暇、有給休暇、希望休など働きやすさも改善。売上は2倍。採用に関してはリファラル採用ができました。
最も良かったのが、会社の風土が変わりました。今までは「新しいことにチャレンジしたくない」「デジタル化は苦手だ」と言っていた職員が、アプリを作ったり、データ化したり、それをみんなで共有したり、デジタル化を楽しめるようになりました。
我々のように、こういった失敗や悩みを抱える方は少なくないと思います。我々はkintoneを通じて介護のDXを実現し、この介護業界を変えたいと思います。
そこで、我々は見学も受け付けています。広島なんですが、ぜひ何かのヒントになればなと思いますので、もしよければお話しいただけたらなと思います。LILE THE STYLEの発表はこれで終わります。ご清聴ありがとうございました。
木原:ありがとうございました。
司会者:谷川さん、木原さん、ありがとうございました。
谷川:ありがとうございました。
司会者:それでは、1点質問をさせていただければと思います。今日の登壇の中で大きなポイントだったと思う小田さんについて、おうかがいしたいです。小田さんがkintoneをしっかりと運用してくださるまでに、何か特別なことは実施されていらっしゃいましたか?
谷川:伴走するところの画像があったと思うんですが、あれは小田さんなんですね(笑)。実は何ヶ月もかけて伴走してきましたが、やはりちょこちょこつまづくんです。そのたびにすぐに聞ける環境を作ってあげる。
「わからなかったら教えてね」ということがよくあると思うんですが、あれでは教えてくれないんですよ。伴走することによって、「詰まっているな」「ここ、こうやるんだよ」というふうに、常に教えてあげられる環境(を作れたこと)が成功の要因になったかと思います。
司会者:ありがとうございます。使ってくださる方たちからの声がけの前に、困っているところを探しに行かれていたということですね。すばらしいです。では、お二人のご登壇は以上となります。ありがとうございました。
木原・谷川:ありがとうございました。
サイボウズ株式会社
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