2024.11.29
“マニュアル作成が進まない問題”をAIで解決 管理者の負担も軽減できる、先進AIツール活用法
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川崎佑治氏(以下、川崎):評価軸でよくあるのが統計上のマジックで、自分に都合のいい五角形を作ろうと思ったらいくらでもできてしまう。実際に物事を決める時にゆがんだ情報になってしまうかもしれないということがあるんですが、つまりこの五角形は、ユーザーさんのよく評価されている軸ということですか?
天野博之氏(以下、天野):まさにクチコミから取り入れたデータをベースにしているというのが、すごく大事なポイントです。要は「こういう五角形の要素が、この商品に対してクチコミの中で多く出ているよ」という話が言えるので。
川崎:じゃあ、「ユーザーがこう見ている」ということなんですか?
天野:そうです。そこ(クチコミから取り入れたデータ)を大事にしていることが比較軸になる。つまりは、ユーザーさんがそこを気にしているということになるわけです。
川崎:ということは、言い換えてみれば、ユーザーさんの頭の中の評価軸がこういうふうに可視化されていると言えるわけですか?
天野:そうです、それに近いかなと思っています。先ほど申し上げたように、やはり化粧品は嗜好性が高いものなので、一人ひとり聞いていくとキリがないんですよ。でもどこかで区切りをつけようと思った時に、頼るべきはやはりクチコミ。
先ほどおっしゃったように、AIを使いながら(クチコミを)どういうふうにまとめるか。でも、まとめすぎると想像になってしまいます。ファクトをベースにした時に、想像にならない幅の中できちんと可視化していくというギリギリのラインが、今の時点ではこのニーズ比較の五角形に表れていると捉えてもらえればいいのかなと思います。
川崎:藤縄さん。今の天野さんのポイントは非常に興味深いなと思ったんですが、(クチコミデータを)まとめすぎると良くないですよね?
藤縄義行氏(以下、藤縄):そうですね。特徴が削られていくところはありますし、かと言って細かすぎると解釈ができないので、そこをどういう単位でまとめていくかが大きなポイントだと思います。
川崎:ちょうど五角形ぐらいが解釈しやすいという感じですか?
藤縄:そうですね。見た限りでも、5つを抜き出してきて、さらに他社との比較の中でどういうふうに見られているのかというのは、非常にわかりやすいグラフになっているんじゃないかなと思います。
川崎:右側の「クラスター分析」は?
藤縄:左上は平均的なユーザー像になっていますので、実際は本当にさまざまなユーザーのグループが存在しています。
軸としては、購入の回数と金額という2つの軸になっています。見ていただくと、「高価格品質重視派」とか「トラブル改善重視のスキンケアユーザー」という表示がありますが、どういったニーズのユーザーが、購入の金額、回数で分布をしているのかがわかるようなものになっています。
平均的なユーザー像だけではなくて、実際にはさまざまなユーザーのグループがあります。さらにそのユーザーのグループに対して、生成AIが自動でラベルをつけますので、ここで「平均的なユーザー像」と「どういうふうにグループがあるのか?」を同時に確認することができる機能になっています。
川崎:なるほど。押野さん、ブランドのマネージャーから見ると、これはどんな読み解き方をされるんですか?
押野卓也氏(以下、押野):まず、自社で持っているターゲットユーザーのイメージがあると思っていて。こういうユーザーにこういうポイントで刺したいので、この商品を売り出しているんだが、ペルソナから見るに、その想定がまず合っているのかどうか。間違っているとしたらどこなのかを可視化できるということだと思っています。
例えば、真ん中の下の「ニーズ比較」のところで、赤いグラフの効果の持続のところがまったく評価されていないですよね?
川崎:はい。
押野:ただし、もしこのブランドの担当者が「効果もぜんぜん期待できるんだけどな」と思った時に、「あっ、じゃあぜんぜん伝わっていないんだ」というヒントになると思っていて。
「じゃあ、マーケティングの仕方が変わるよね」かもしれないし、もしかしたら同じように「浸透力は重視していなかったけど、意外とそんなに評価されているんだ」ということであれば、バリューチェンジといいますか、そういった見せ方や売り出し方の参考になるようなデータになってくるんじゃないかなと思います。
川崎:すべてのブランドマネージャーの方は、仮説を持っておられる。思いを持ってプロダクトをお出しになるんですが、実際のブランドは受け止め側の頭の中にしかないとよく言いますけれども、それと仮説を照らし合わせるような作業ができると。
押野:そうですね。
川崎:そういうことなんですね。天野さん、これはかなり画期的なことですか?
天野:そうですね。おそらく今までブランドさん側としては、デプス調査やユーザーヒアリングという調査をして、そこにたくさんの時間と労力をかけられていたと思うんです。
そこで見えてくることも当然あったと思うんですが、ある種クチコミがユーザーの代弁している声だとするならば、そこまでそこにコストと時間をかけずに、ある程度の方向性はもうこれで見えてしまう。そういった画期性はすごくあるかなとは思いますね。
川崎:だって考えてみたら、商品が発売されるじゃないですか。下手したら、商品発売の日から@cosmeさんでレビューがつき始めるんですよね。
天野:物によっては。
川崎:そうですよね。相当なスピードで(クチコミが)溜まっていかれるわけです。
天野:そうです。
川崎:溜まっていくと、こういう表示が可能になる?
天野:そうです。もちろん量によって分析の精度は変わるとは思いますが、もしマーケティングがうまくいって、本当に発売直後からクチコミがどんどん溜まってくるようなことがあれば、それをベースに早め早めに分析がかけられます。まさにマーケティング観点においても、商品観点においても、PDCAが素早く回せることも大きな利点になるかなと思います。
川崎:実は圧倒的なコスパとタイパが実現できるんじゃないかなという気がするんですが、藤縄さん、これが「ブランドを知る」でしたっけ?
藤縄:はい。
天野:その先に行く前に、誤解なきよう1点だけ補足したいのが、セグメントのところの0から5段階の評価は、必ずしも@cosme上で星をつけて7段階評価しているものとは関係ないです。
あれはユーザーがつけている星なんですが、AIがクチコミを読み取った時に「この商品に対してどう思っているか」を類推して評価のスコアをつけているので、そことは連動していないです。
川崎:そういうことなんですね。あくまで定性から読み取ったグレーディングで、ユーザー自身がつけたグレーディングとは別のものとして解釈するということですね。
天野:そうです。
川崎:わかりました。
川崎:藤縄さん、今のが「顧客を知る」でしたっけ?
藤縄:はい。その画面になっています。
川崎:もう1つあるのは?
藤縄:もう1つが「顧客に聞く」という画面になっていまして、続いてご説明ができればと思っています。今、ここで2つの商品を選択していて、自社の商品と他社の商品があります。そこで作ったペルソナに対してヒアリングをするという機能がありますので、次にご説明をしていきます。
川崎:作ったペルソナに対してヒアリングをするんですか?
藤縄:はい。先ほどのクチコミのデータから仮想のユーザー像を作っていきますので、そこに対して自然言語で、話し言葉でやり取りをしながら施策の立案等を行うことができる。課題解決を行うことができる機能になっています。
川崎:実際には(ユーザーは)いないですよね?
藤縄:はい、実際にはいないです。クチコミの中からの集合体としてのユーザー、AIが作ったユーザーに対してヒアリングをするという機能ですね。
川崎:なるほど。AIが作り上げたペルソナまではけっこうあると思うんですが、そのペルソナに対して質問したら、AIがそのペルソナが答えそうなことを答えてくれる。
藤縄:はい。そういう機能になっています。
川崎:実際に聞いてみますか?
藤縄:わかりました。「メッセージ」のところで入力をしていきます。実際には、後ろ側のAIのペルソナに対して回答を用意して、返ってくるという仕組みになっています。
川崎:「なぜこの商品を購入しましたか?」「クチコミでの評価が非常に高かったからです。特にこういう点やこういう点が良かった」と。
藤縄:はい。例えば商品を知った理由とか、どういったチャネルからこの商品を知ったのか、本当にいろいろ深掘りして確認することができます。
川崎:これはすごいなと思います。
川崎:ちなみにこのアイデアの出発点は、シンカー側から「こんなこともできますよ」だったのか、あるいはアイスタイルさん側から「そういうのができたらいいな」なのか、(提案は)どっちが先だったんですか?
天野:シンカー社さんからのご提案ですね。
川崎:「こんなことができますよ」と。
藤縄:そうですね。この生成AIの使い方のようなかたちで、社内でいろいろ議論をしていました。ただ、もともとはユーザーからアンケートをとって、そこでペルソナを作ってヒアリングをするという感じで考えていたんですが、@cosmeさんに関してはクチコミのデータでも十分代替ができるだろうと。それくらい質の高いものだったので。
川崎:なるほど。
藤縄:「もっとクチコミのデータからこの仕組みが使えるんじゃないか?」という議論になっていきました。
川崎:本来だったらユーザーにインタビューを取りにいかないと、ペルソナを作るためのデータが不十分であるということですよね。
藤縄:はい。先ほど天野さんがおっしゃったとおりで、まずはユーザーに聞いて、それを集めて確認するのが本来の目的というか、代替するものでした。それが、すでに取れている@cosmeの膨大なクチコミのデータで使われるところが非常に大きなポイントだと思っています。
川崎:なるほど。坂宗さん、でも、裏側のデータベースはすごいことになってそうですね。
坂宗純治氏(以下、坂宗):そうですね。顧客を起点にすべてのデータがつながっているので、基本的にはアナリティクスエンジニアとしては非常に使いやすいようなデータが存在していた、というかたちになりますね。
川崎:シンカーのいろんなプロジェクトの中で、まずはそこの整理から始めるということはよくありますもんね。
坂宗:基本的にはありますね。
川崎:そこの整理がかなり膨大だったり、大変だったりするわけですが、アイスタイルさんの場合は整っていらしたんですか?
坂宗:そうですね。アイスタイルさまに関しては、たぶん実際にやられている統合データ基盤を作るというのが、まさしくプロジェクトだと思いますので。
川崎:なるほど。
川崎:押野さん、このあたりは最初からそうだったわけではないということですか?
押野:我々のアセットが、メディア、EC、店舗とあった時に、それぞれのデータベースは別なんですよ。ただ、その中にIDという1つの起点があって、IDを起点にそれを3つ合わせると、すべてがつながって見えるようになるんですね。それをシステムで構築しようと思っているのが、今作っているデータ統合基盤なんです。
それぞれのデータを、例えばシンカーさんぐらいの会社さんにお渡しすると、紐づけて全部技術的に回してくれるんですよね。なので、坂宗さんからするときれいなんですが、僕らからするとそれを紐づけるだけでも技術的にはけっこう大変だよというのが、ギャップがあるかなと思います。
川崎:「きれい」の感じ方の違いがあるわけですね。
押野:そうですね。
川崎:「データがきれい」を1つ取っても違いますね。
坂宗:今回はテストデータとしていただいて、実際に弊社の基盤に格納して、PoCをさせていただきました。
川崎:そうなんですね。でも、今後はどうするんですかね?
藤縄:本開発の時にはもっと大量にデータを入れます。ただ、データの形式はサンプルデータのタイミングで我々も把握していますので、あとは量をどれだけ処理をしていくかという対応になるかなと思っています。
川崎:データ構造を本番のあの大量さでどのように実現して、コンピューティングを回したかは、データの裏側ということでまた別の回でお聞きしてもいいですか?
藤縄:はい、ぜひお願いします。これから坂宗が取り組んでいく生成AIには、当然コスト(の問題)と、UIにとってどれくらいのタイミングで返ってくるのかが非常に大きなポイントになると思いますので、そのあたりもぜひまたお話しできればと思います。
川崎:そうですよね。すべてのデータをコピーしてくるのか、コピーせず都度利用のかたちで持ってくるのかによっても(変わってきます)。今は日本のいろいろなデータ系のエンジニア全員が気にされている領域かと思いますので、ぜひお聞きしてみたいですね。
川崎:でも、すごいですね。天野さん、人がやったらこういうふうに返ってくるというユーザー体験って、今までなかなかないことかなと思うんですが。
天野:そうですね。どの業界においても、これを今までやっていたのが、いわゆるデプス調査というものだと思うんですよね。なので、必ずしもこのツールがそれをすべて網羅する、補完するとは、我々も思っていなくて。
ただ、例えばデプス調査をするにしても、コストも時間もかけずにこれを使っていただければ、「おおよそこういうことを聞いたら、こういうことが返ってくるんじゃないか」とか「だからこそ逆にデプスではこういうことを聞いてみよう」というふうに、当たりをつけていただくことにも使っていただけます。
本当に時間がない場合はこれを信じていただくということも、メーカーさんやブランドさんの意志だと思うんですが、いろんな活用の仕方があると思うので、そこはみんなで一緒に考えていきたいなとは思っています。
川崎:じゃあ、デプス調査の補完的にも使えるし、あるいはタイミングによっては、これである程度当たりをつけることもあるだろうと。
天野:そうですね。PDCAは早く回していくに越したことはないと思いますし、この業界も移り変わりがすごく早いので。
川崎:そうですよね。季節も変わっていきますし。
天野:まさにそうです。なので、これはもう日本だけの話じゃなくて、グローバルで見た時に、最近だと韓国コスメが大変人気じゃないですか。韓国コスメの生産工程と日本のブランドさんの生産工程って、時間軸がぜんぜん違うんですよ。
川崎:そうですか。韓国コスメはどうなんですか?
天野:早いんですよ。
川崎:早いんですか。
天野:はい。やはり彼らも、ああいう業界の中で独自の理論で高速でPDCAをやられていたりします。日本のマーケットをもっともっと盛り上げていくという観点で見れば、今まではすごく時間がかかって次のアクションが打てなかったところを、これを使って少しでも早くしていただければいいなと思います。
天野:もちろん我々の提供価値もこのAIツールだけではなくて、もっと裏側のデータはさらにあるので、そういったものを駆使してコンサルティングをしたり、アドバイスをさせていただいたり。そういったお手伝いも、今後さらに付加価値は広がっていきます。
でも、こういうことが1つの価値やフックになって、一緒に改善に取り組めたり、新しい商品を作ったり、業界にもたらす価値として我々自身もすごく楽しみにしている部分ですね。
川崎:ちなみに、ブランドの方にこれをチラ見せされたりしましたか?
天野:しました。
川崎:(反応は)どうだったんですか?
天野:やはりいろんな反応があるんですが、みなさん総じて「これはもう本当にありがとう」と。
川崎:「これはもう本当にありがとう」。
押野:(笑)。
川崎:感謝から入る?
天野:そうです。その理由は先ほど申し上げたように、ありがたいこと本当にクチコミをずっと見ていただいているんですよね。
川崎:毎日、「@cosmeで自社のブランドをどのように見ているだろう?」と、クチコミが気になるから見ちゃうんですね。
天野:そうなんです。ですからそういう人にとっては、今まではできないと思っていたような、あらかじめ自分たちが見たい観点をある程度サマることができる機能なので、「ありがたい」と言われることが多いです。
川崎:「ありがとう」なんですね。
天野:本当にそうなんですよ。だからこそ我々もちょっと背筋が伸びる部分として、@cosmeとして「クチコミの品質をどう守っていくか」ということは、企業理念として最も大事にしていることなので、そこに対しての品質は絶対に落とすことはできないと思います。
天野:一方では、質が高くても量が少なかったら意味がないので、量もしっかり広げていくということで、メディアはもちろんECも店舗もどんどん強化しているんです。
こういうふうに、もちろん我々は多くのクチコミやユーザーと接点を持つことにも投資をしているので、まさにそういったことが価値にどんどんつながっていく。会社としては、この循環をもっと強化していきたいなとあらためて感じているところですね。
川崎:リリースの目途はいつなんですか?
天野:2025年中には……どうかな(笑)?
(一同笑)
藤縄:それで対応してまいります(笑)。
天野:というのも、今回藤縄さんにお見せいただいたものは実はプロトタイプで、我々のクチコミデータの何千分の1とか何万分の1なんですよ。それでこの状態なので、さっき「データが大変なことになるでしょう」とおっしゃいましたが、桁が変わってくるので、まさにここからが本番なんですよね。
川崎:そうですよね。
天野:そうなると、たぶん見せ方や見え方とか、示唆もだいぶ変わるはずです。
川崎:深さも影響を与えそうですね。
天野:そう思っています。なので、ここからやってみてどれぐらい時間がかかるかというのは、まさに今、鋭意やっております。
川崎:どうやらすごいインパクトをもたらしそうだ、というところですよね。なんで、こういう開発を一緒にやってみようかという話になったんですか?
藤縄:もともと天野さんから、こういったBtoBの事業のところをやっていくと(いう話がありました)。それに対してクチコミのデータ、特にデータの統合を含めていって、これをどうマネタイズしていくのか。決算書にも書かれていますが、マネタイズという表現をされていたところがありました。
藤縄:最初に我々からご提案したのは、どちらかというと直接的なデータの開示に近かったというか。「ダッシュボードを作ってレポートを出しましょう」という話からだったんですが、当然、ブランドさんとしても直接のデータの開示はできないという側面がありました。
生成AIが間に入ることによって、先ほどのように細かすぎない、すべてを伝えたいわけではないんだけれども、解釈性が高くて理解はできる状態が生成AIで作れるようになった。そこは本当に議論してきましたね。
川崎:ある程度の匿名化が必要だったということですか?
藤縄:そうですね。匿名化もそうなんですが、例えば「この商品が別のブランドで検討を同時にされていて、いくらの売上でした」とは、当然@cosmeさん、ブランド側も開示はできないので。ただ、その人たちがどういう傾向の方なのか、どういう考えをお持ちの方なのかは知りたい情報ですので、うまく生成AIを使ってアウトプットが作れたというかたちですね。
川崎:じゃあ、あくまで個人の特定には一切つながらないわけなんですが、「こういった状態の方にはこういう好評を得ている」とか、あるいは「ここをもうちょっと伸ばしてほしいと思われている」という、ある種本音の部分だけを抽出していくということですね。
藤縄:そうですね。なので、一人ひとりのユーザーのヒアリングも非常に重要なポイントになっています。ただ、それをグループとして、傾向として把握するというのは一番施策としては打ちやすい単位になりますので、それを実現したかったということです。
川崎:生成AIの活用のお話で言いますと、長文をある程度まとめるようなことはあると思うんです。ただ、クチコミって、いわゆる「クチコミ群」とも言う、ある種の群れのデータといいますか、商品のクチコミ群の中にはいろんなお肌タイプによるデモグラ的なカテゴライズ、群、グルーピングがあったりします。
あるいは「いいと思っている派」と「そうでないと思っている派」という評価のグルーピングもあったりします。いろんなグルーピングが同時に存在しているから、データとして考えた時にややこしいなというか、扱いづらくて。「どこを切り口にしたらいいんだろう?」という感じがしますよね。
天野:別に社会貢献と言うつもりはないんですが、クチコミのデータは我々のデータだけではなくて、一般ユーザーが見られるもの、すなわち誰でも見られるんですよね。だからこそ今のブランドさんたちも、ユーザーのみなさんも、特にブランドのみなさんが自分たちでご覧いただいてまとめたりしています。
天野:ブランドさんによっては、ChatGPTとかに「@cosmeのクチコミ」と検索いただく方もいらっしゃるみたいなんですね。ほかの企業さんでも、一般公開されているクチコミを自分たちでスクレイピングをかけて、まとめて販売するということもちょっと出てきたりしているんです。でも、それって危ないなと思うんですよ。
川崎:危ない?
天野:はい。というのも、今回やっていただいているように、100パーセントきれいに、きちんとクチコミの要素を理解した上で、整理整頓した状態でAIに考えさせている状況かどうかはわからないじゃないですか。
川崎:確かに。その前提がわからないまま結果が出てくる。
天野:そうです。しかもこれは表面的なものであって、我々のデータを提供してAIに勉強させているわけなので。もちろん(投稿者が)誰かわからないという個人情報の面を考慮しながらも、100パーセント純粋な我々のデータとユーザー情報を、きちんとしたかたちでお出ししていることが価値だと思います。
世の中の情報がどんどんバーッと集まって、「@cosmeのクチコミのデータです」みたいになって、間違った情報が業界にはびこってしまうと、クチコミを書いていただいているユーザーさんにも申し訳ないです。当然ながらブランドさんのマーケティングも変わってきてしまうので、やはりこれは良くないなと思います。
そういうのも正していきたい……と言ったらちょっとおこがましいですが、どうせだったら我々がこれはちゃんとやるべきだなと。
川崎:本当のユーザーの声を正しい状態のまま、ちゃんとお届けするということですね。
天野:はい、そうです。そこはすごく価値があるし、我々の責務だなと思っている部分は大きい。
川崎:アイスタイルさんならではの使命感といいますか、やはりユーザーと向き合っておられるところを感じますよね。
藤縄:SNSのデータから同じようなペルソナを作るというサービスがあるんですが、やはり元のデータの質と信頼度ではまったく違いますので、そこは本当に大きな価値になってくるのかなと思います。
川崎:藤縄さん。今回はアイスタイルさんの膨大なクチコミデータということだったんですが、お声や感想といった非構造化データをどういうふうに扱っていくのか、今後はどんな未来があるんでしょうか?
藤縄:資料でもご説明させていただきたいと思いますが、左側に「メディアの課題」という書き方をしています。大量のお客さまのテキスト化されている非構造化データは、本当は種類がたくさんあると思っています。
例えば、音声データをテキスト化したものもそうですし、チャットやアンケートもそうですし、今回はクチコミのデータもあります。これをどういうふうに価値にしていくのか。
特にユーザー体験としては、それを見て商品の選定を行うところで、すでに十分活用はされているんです。ただ、BtoBの事業として、今回のアイスタイルさまのように活用していくのかというのは、大きな課題があったと考えています。
もう1個。じゃあ、どのように顧客の情報を集めるのかというのは、メーカー側、ブランド側から見た時に大きな課題になっています。それに対する方法としては、アンケートをとっていくとか、コミュニティを作る。これは当然、コストと時間が非常に大きくかかります。
それに対して生成AIを使うことによって、定性のデータを定量化してグラフ化していく。それによって解釈性を高めていくことができるようになってきていますし、自動でグループ分けをしていって、さらにクチコミの内容から自動でラベルをつけることもできるようになってきます。
これをもとに、今までできていなかったBtoBの事業としても収益化が可能になるというのは、大きなポイントだと思っています。今、外部にある生成AIの活用というのは、やはり業務の効率化の話が非常に多くて。生成AIを使っていって、価値を作って収益化をしていくというのは、まだまだ本当に事例として少ないと思っています。
川崎:今回のアイスタイルのように、@cosmeのクチコミをもとにブランドさん側に価値を届けるみたいなものは、やはりまだ少ない。
藤縄:非常に少ないと思っていますし、本当に新しい事例だと思います。
藤縄:今までの業務効率化のように「社内でChatGPTで文章を(作成)」という話ではなくて、ツールとしてまとめていく。価値として、それが実際にアイスタイルさん側としてもマネタイズの1つのポイントになるというのは、非常に新しい取り組みかなと考えています。
今回のような分析ツールの収益化のポイントとして、左側に会員、中央にメディア、右側にBtoBのメーカーのパートナーという記載をしています。
オレンジの色が濃くなっているところが、今回アイスタイルさまで対応されているものです。特に、商品開発支援、自社と競合の分析、マーケティング側で言えば広告クリエイティブの開発で使われようとしていると認識しています。
ただ、VoC(顧客の声)の分析をAIでやっていくことに関しては、もっと幅広い使い方があると考えています。メーカー側にとってはアンケートの代替という考え方もありますし、広告の事業としても、クチコミのデータからユーザーのセグメントを作って、ターゲティングの軸としていくという考え方も1つあると思っています。
メディア企業としては、メディアの会員の分析ツールとして活用していただくというのもあると思いますし、会員・ユーザー向けに対して提供することもあるかなと思っています。
実際にアイスタイルさまからご意見もいただいたんですが、自分で検索をして、自分で聞きたいクチコミが取り出せるものに関しては、ユーザーにとってもメリットがあるんじゃないかというお話もいただきました。なので、それをプレミアムサービスとしてユーザー側に対しても提供する可能性も出てくると思っています。
あとはレコメンドの仕組みとして、今までのような購買のデータ、閲覧の商品のデータからのレコメンドではなくて、クチコミの情報からレコメンドをしていく仕組みを作れるかなと思っていますので、新しいユーザー体験として提供できる可能性もあるかなと思っています。
川崎:天野さん。今までクチコミデータはなかなか扱いづらい非構造化データだったんですが、技術の進化によって、どうやらいろんな立場の人にどんどん役立てるかたちにできそうだという、希望とか期待はありますか?
天野:もちろんあります。冒頭からお話しさせていただいているように、やはり扱いづらいデータってあると思うんですよ。物はいいけれども、どう扱えばいいかわからない、どう見ればいいかわからない、どうまとめればいいかわからないというものは、たぶんクチコミ以外にもたくさんあると思うんですよね。
今の世の中、新聞を開けば毎日AIという言葉がたくさん出てきますし、だからこそ「とりあえずAIを使いたい」とかじゃなくて。目的をすごく考えた時に、手段の1つとしてAIを使ったらどうなのか? というふうに逆算していったんですよね。
こういうことをしたいから、そのためには手法論として何が一番いいのか。AIというものが1つあって、今回はシンカーさんと一緒にPoCをやってこういう成果が出たので、「じゃあ」ということで本開発も決めていたりします。なので、今後はそういう考え方が必要なんじゃないかなと思います。
川崎:わかりました。押野さん、今後の方向性といいますか、「こういうふうに進化していきたい、本開発ではもっとこんなことが可能になるんじゃないか」というのはどのようにお考えですか?
押野:我々アイスタイルという組織をBtoBとBtoCで分けた時に、私も天野も今はBtoB側に属しています。なので、BtoBに使うにはどうかで振り切って、今のシステムやデータベースを構築しているんですよね。
ただ一方で先ほど資料にもあったとおり、「じゃあ、そのデータをBtoCのユーザーさんに活かすには?」というポイントは、これからの残された論点だと思っています。それがどう還元できて、BtoBとBtoCの循環をどう作るのかが、今後の大きな課題になるのかなと思います。
川崎:わかりました、ありがとうございます。
川崎:藤縄さん、最後にこういった課題を持たれている方に(向けて一言お願いします。)1年前や2年前を考えても、シンカーができることはどんどん増えていっていますよね。非常にエキサイティングじゃないですか?
藤縄:本当にそうだと思います。特に生成AIが出てきて、テキスト化された非構造化データが、いよいよこれから大きなトレンドになっていくと思いますし、それをどういうふうに扱っていくのか。価値として提供できていて、さらにそれが収益につながるんだというところは、非常に大きな事例だと思います。
このAIの仕組みは共通のものがありますので、ぜひ我々としても、ほかの業界のお客さまに対しても提案の活動を進めていきたいなと思っています。
川崎:ありがとうございます。我々ベルシステム24グループといたしましても、実はお電話だけで年間5億コールお受けしているという、大量に非構造化データの宝の山が積んだままの状態にしてあります。
天野:そうですよね。
川崎:こういったところも今後の技術の進化によって収益化したり、いろんな立場の方々のお役に立てるようなサービス提供ができるんじゃないかなということが垣間見えました。どうやら未来が明るそうですね。
ご覧いただいているみなさまは、どのようにお考えになられましたでしょうか。本日のウェビナーのアンケートにお答えいただければ、「もっと突っ込んで聞いてみたいよ」「こういったテーマも聞いてみたい」といったことに、今後ぜひお答えしていきたいなと思っておりますので、ぜひアンケートにご協力をお願いいたします。
今後も、さまざまな新しいイノベーションについてのウェビナーを開催していく予定でございます。ぜひよろしくお願いいたします。みなさん、本日はどうもありがとうございました。
天野:どうもありがとうございました。
川崎:新しい未来のお話をおうかがいすることができました。ではみなさん、さようなら。
株式会社ベルシステム24
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