
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
提供:株式会社スタディスト
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───日本経済の低迷や生産性の低さは、長く問題視されている一方で、なかなか変化が見られない状況です。DXなども徐々に進んできてはいますが、どうすれば本当に実効性のある取り組みができるのでしょうか。今回は、二人の識者の方々をお迎えしてヒントをいただけたらと思います。まず、入山さまから自己紹介をお願いします。
入山章栄氏(以下、入山):入山と申します。僕はいろんなことをやっているんですけど、本業は早稲田の教授です。
それ以外の仕事としては、社外取締役を5つやっているんですね。僕がアドバイスするなんて偉そうなことはできないんですけど、お飾りは嫌なので企業に入り込んで、悩んでいる社長さんと一緒に意思決定をしています。
こういう仕事は、これからすごく重要だと思っています。コンサルや短期的に上場を目指すプライベートエクイティも経営改革はできるんですが、僕はプロ社外取締役だと思っているので、社長に寄り添って長期で会社を変えていく仕事をしています。
───ありがとうございます。続いて庄司さま、自己紹介をお願いいたします。
庄司:あらためまして庄司といいます。今現在はスタディスト副社長と、兼任でリーンソリューション事業部という部門の統括もしています。
私自身も起業家の1人として、スタディストを立ち上げて14年目になります。その前の10年ぐらいは、株式会社インクス(2013年にSOLIZE株式会社に社名変更)という製造業の業務改善を行う会社にいました。
私もいわゆるアドバイザーとしてのコンサルではなくて、現場に入り込んでがっつり改善したいと考えていたので、当初から一貫して、お客さまの工場の中に常駐するようなスタイルでやっていました。
今も期間の長短はあれど、お客さまの業務そのものを見たり、「リーンソリューション」という名のもとで、マニュアルを直接作り変えるお手伝いをしています。汗をかいて、手を汚すワークスタイルが性に合っているので、「現場が何に困っているか」といった手触り感はすごく持っているんじゃないかなと思っています。
───ありがとうございます。さっそくですが、昨今の企業での生産性向上についてのお考えや、注目されていることをうかがいたいと思います。
庄司:まず「生産性」という言葉は、いわゆる分母の「投入資源」と分子の「付加価値」の割り算で表現しますが、言い換えると、「投入した資源に対して生み出した価値」という言い方になると思います。それをどういう指標で評価するかはいろんな見方がありますが、基本的には「投入した資源(ヒト・モノ・カネ)に対して価値を最大化しましょう」という観点には変わりはないと思っています。
ただ、私は生産性向上というのは、人が「ダイエットしなきゃダメだ」と言うのと同じように、ずっと以前から言い続けられているにも関わらず、やっていないものという感覚ですね。もちろん、ごく一部の人はやっているんですけど、多くの人は「痩せなきゃ」と言っているのに、ほぼ何も変わっていないように見えます。
入山:日本のDXが5周ぐらい遅れているのは間違いないですね。例えばDXでいくと、今はDXがけっこう進んだ後に入れなきゃいけないようなグローバルなベンダー企業さんが日本に来ているんです。
具体的にはレッドハットさんやSnowflakeさんとかですね。僕はそういう感じの企業の日本法人に関わったことがありますが、買ってくれるお客さんがまだ少なくて、みんな優秀なのに営業で苦労しています。DXが2~3周くらい進んだ会社なら「便利だね」となるんですけど、そこまでいっていないと(使いこなせなくて)苦労するという。
入山:ただ、僕はこれからはだいぶ変わると思います。たぶん今までの「生産性」は、基本的にはコスト削減に向かっていたんですよね。当然、分母は恒常的に下げなきゃいけないんだけど、やはり分子を増やして付加価値を上げていかないとならない。
要するに、今までの日本は『両利きの経営』でいう「知の探索」をやって、もっと儲かる事業をやることが圧倒的に足りていなかったわけです。僕は10年くらい「両利きの経営」と言い続けてきましたが、2023年の後半からだんだん変わり始め、2024年には明らかに潮目が変わってきています。
その最大のポイントの1番目は円安です。円安で日本が安いので世界中が買ってくれる。2番目にデカップリングです。特に製造業は、中国でビジネスをするリスクが高いので、半導体事業がみんな日本に来ているみたいになっていますよね。
3番目はIoTの時代になるからです。今まではいわゆるスマホの中の競争だったんだけど、そこが飽和状態になっています。僕は「IoH(Internet of Human)」と言っていますが、サービス業の人たちがウェアラブルセンサーをつけたりして現場の仕事が楽になると、日本のおもてなし感覚が活きてくる。
現場とデジタルがつながることで、もともと日本の強みだった「現場力」をさらに発揮できる時代になるんですよ。日本企業は大局的な取り組みが苦手なので、今までは現場の地道な改善を重ねてコストだけを下げていたんですけど、現場力で価値を出せる時代になってきたのは超チャンスなんです。スタディストは現場の改善をしていく会社なので、僕はすごく期待しています。
これら3つに加えて、実は最大のポイントは、コーポレートガバナンスの変化なんですね。「もっと長期でしっかり『両利きの経営』をやらないとダメだよね」という経営者と、それを支持する社外取締役が現れてきています。
先々週くらいに野村證券の奥田(健太郎)社長と食事する機会があったんですけど、海外投資家を集めてやる野村證券のイベントでは、海外投資家の人数が2023年と比べて倍になっているそうです。今ようやく日本にチャンスが来ていて、ここでうまく変われたら生産性も上がってくるので、この2024年はすごく重要な1年だと思っています。
───変わろうとする企業にとって、今は追い風が吹いているということですね。企業が生産性向上に取り組む上で気をつけるべきポイントや、陥りがちな失敗パターンはありますか?
庄司:そうですね。我々はふだん「生産性を向上したい」という課題が顕在化しているお客さまとお会いするんですけど、やはり一様に「あれもこれもやらなきゃいけないけど、何からやっていいのかわからない」と。
まさに「減らす」と「増やす」のどちらからやったらいいのか。減らすなら減らすで、何からやればいいのかという順序づけや、全体像を組むのが苦手な会社さんがとても多いなと思います。
そうした時に、まさに両利きなり、2〜3軸の取り組みを同時に走らせてもいいんですけど、日本の会社は不器用なので「今はこれです」「次はこれです」とやっていかないと、収拾がつかないというか。
いい意味での二枚舌、三枚舌を使うことができなくて、社内で「今『減らす』って言ったのに、なんで増やすんですか?」という声が出てきたりします。企業の中で、本来の正しい戦略が取りにくいところが根っこにある気がしています。
入山:そうですね。僕は、いい会社の要素って2つあると思うんですけど、1つは「矛盾」していることなんですね。
庄司:そうなんです。
入山:両利きの経営って、そもそも矛盾なんですよ。「探索」と「深化」という真逆のことを同時にやれと言っているわけだから。一方で減らしたら一方で増やすんです。そういう感覚がわからない人たちは「なんで減らしてるのに、ほかで増やしているんですか?」と言うわけですよ。
矛盾していることを同時にやるのはすごく重要で、いい会社やいい経営者はみんな矛盾しているんですね。「一貫性」とか言ってるのが一番良くないんですよ、本当に。
庄司:(笑)。
入山:矛盾が超重要なんです。それから2つめは「朝令暮改」。世の中は変化するし先も見えないから、誰だって失敗するんです。だから、とりあえずやってみてまた変えればいいんですよ。
僕は今でも、大学の仕事でも経営でもたくさん失敗していますよ。失敗したと思ったら、「すみません、間違えました。次はこちらにしてください」と言うんですけど。いい会社ってみんな朝令暮改なので、この2つがすごく重要だと思います。
入山:それなのになぜできないかというと、やっぱり最大のポイントは「習慣化」なんです。人間の心理として、やったことがないから怖いんですよ。やってみて、失敗しても方向転換すればいいということを続ければいいんです。
日本の会社は、そういう「変化する習慣化」「矛盾していることを同時にやっていく習慣化」をやってきていないんですね。でも、やり始めると、だんだん慣れてきて「多少やらかしても大丈夫だ。どうにかなるな」とわかってきます。僕から見ると、これが日本の現場を変える最大の鍵です。
習慣化ができないのは、そもそもやってこなかったことと、企業が長期経営をやっていないからだと思っています。社長の任期が3〜4年の会社がけっこうありますが、そういう会社は絶対に変革ができないんですよ。
「きっと失敗もあるだろう。だけどあっちに向かって、みんなで長期でやっていこうぜ」という経営をしていかないとならないのに、社長が目の前の3~4年のことしか考えないと、「この期間できっちり結果を出せ」となってしまう。そうすると付加価値の創出ではなくて、知の深化だけに収まっちゃうんですね。
まだあまり詳しくは言えないですが、今後は省庁も関わるかたちで「社長の任期を長くしよう」という動きが起こってくると思います。ただし社長の任期を長くすると言っても、暴君が長くいてもしょうがないから、そこは適切に交代をさせていく役割が必要です。
一番いいのは「いい社長なら長期経営できる」という状態です。それを担保するための社外取締役の仕事は、社長に交代を迫れることなんですよ。日本の諸悪の根源はガバナンスです。それが見直されることで日本の現場が改善され、イノベーションを起こしていく「習慣化」ができるようになる。そういう流れです。
───スタディストさんでは業務のマニュアル化という事業もされていますが、組織の「習慣化」にコツはあるんでしょうか?
庄司:そうですね。我々のTeachme Biz(ティーチミー・ビズ)には、マニュアルを作りたいというお客さまがお声がけくださるんですけど、入山先生がおっしゃったように、マニュアルというものに対する認識が真逆なんです。「1回決めたら後生大事に守り続ける御本尊のようなものを作りたい」という方も、やはり一定数いらっしゃいます。
でも、企業は目の前のやり方そのものを疑ってかからないとならないし、マニュアルも然るべきタイミングでどんどん書き換えなきゃいけない。「正しく決めたものも必要なら壊す」という、矛盾した側面をやっていかなきゃいけないなと思っています。
我々のサービスは、そういったデータを全部クラウドで一元管理できて、整合性を取れるところが強みですが、一度決めたらそれきりというのは、やはりおかしいなと思いますね。
入山:おっしゃるとおりですね。以前、御社のカンファレンスでお話しさせていただいた時もたぶん挙げているんですけど、僕がいい会社だなと思うのは良品計画なんですね。庄司さんには釈迦に説法ですけど、やはり「MUJIGRAM」というマニュアルの強さがあって。
僕の『世界標準の経営理論』という本にも書いていますが、「MUJIGRAM」の強さはマニュアルを作るところじゃなくて、アップデートするところなんです。「おかしいな」と思ったら、社員が誰でも現場のマニュアルを書き換えられるわけですよ。
今までは良品計画しかやってなかったことを、今はデジタルの力でスタディストさんが広めようとしている。僕から見ると、「MUJIGRAM」のような強みを日本中というか世界中に普及しようというのが、スタディストさんのやられていることの一番大きなミッションの1つだと思うんですよね。
現場のマニュアルを自分たちで変えられるようになると、従業員の参加意識が高まって、組織文化も「常に変化していいんだ」というふうになっていく。要は組織文化って、企業にとっての習慣なんですよ。
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