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なぜプロジェクトは難しいのか ーチームで旅するプロジェクトマネジメントー(全2記事)

2024.02.19

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「誰もやったことがないことを期限までにやれ」 無理ゲーなプロジェクトを任された時の「失敗」の考え方 

提供:サイボウズ株式会社

変化の激しい社会で成長を続けるため、新規事業の立ち上げに乗り出す企業が増えています。そんな中、タスクの進捗管理・日程調整・社内外との交渉など、多岐にわたる仕事を抱え、責任者としての重圧に悩んでいるプロジェクト担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、DXサービスの新規事業を立ち上げた、エン・ジャパン株式会社の高橋淳也氏がゲストに登場。業務改善のためゼロからDXを勉強し、最終的にサービス化するまでに至った高橋氏が、プロジェクトマネジメントの課題を解決するヒントをお届けします。前編は、プロマネの仕事にまつわる誤解や、プロジェクトにおけるチームの重要性について語られました。

サイボウズ社員の4人に1人が受けた、人気のプロマネ勉強会

小林悠氏(以下、小林):それではみなさま、こんにちは。「なぜプロジェクトは難しいのか ーチームで旅するプロジェクトマネジメントー」という40分間のセッションを始めていきたいと思います。

みなさんは仕事をしている上で「なんかうまくいかないな」って思ったこと、きっとあると思います。上司がわかってくれない、新しいことをやりたくても前に進まない、自分だけが空回りして周りが協力してくれない……そんなふうに感じることはあるんじゃないでしょうか。

それはみなさんが働いている会社のせいなのか、それとも理解してくれない上司のせいなのか。それとも「自分が無能なのかな」と、どんな理由でうまくいかないのか、ちょっと悩んでしまうかもしれません。

「そんなみなさまのお悩みが、もしかしたらプロジェクトマネジメントで解決するかもしれない」という気づきを得ていただくためのセッションでございます。

たくさんのことを学んでいただくセッションにしたいと思いながら、今日はゲストの方もお招きしつつ、だいたい20分ぐらいお話しをします。じゃあ残りの20分はどうするのか。みなさまからのリアルな質問にお答えしていきたいと思います。

あらためまして私、サイボウズ株式会社の小林と申します。所属は経営支援本部、そしてマーケティング本部のアナリストをしております。大手のITベンダーにSEとして新卒入社をいたしまして、そこで10年ほど働いていました。そのあと転職をして、製造業でITプロジェクトマネージャーを2年半務めて、2018年から現職になっております。

経営本部の人かなって思うかもしれないんですが、私はサイボウズのプロマネ勉強会の講師をしてきた人間です。前職がプロジェクトマネージャーだったことから、プロジェクトマネジメントの勉強会を社内で自主的に開催していました。

ところが思ったより好評だったため、人事本部長の勧めで社内展開をして、1年半ずっと毎週のように講義をしていました。20回、5コマなので実際には100回ぐらいやったんですけども、社内研修の参加者は200人を超えました。当時の社員の4人に1人が受講してくれた計算になります。

日々の改善業務は「プロジェクト」ではない

小林:ちょっとここで質問なんですけれども、今日いらしてるお客さまの中で、「プロジェクトマネージャーという肩書きで仕事してるよ」という方はいらっしゃいますか? 手を挙げてみてください。

(会場挙手)

10人ぐらい見えました。ちょっと少ないかもしれませんね。ところで初めに用語の確認をしておきますと、「プロジェクト」「プロジェクトマネジメント」「プロジェクトマネージャー」、この3つの単語を今日はさらっと紹介するんですけど、正しく理解できているでしょうか。

「プロジェクト? 仕事のジャンルの1つだよね」「プロジェクトマネジメント? まあ、その進め方?」「プロジェクトマネジャーって、なんか偉い人だろ。俺はまだ若手だしな」となるかもしれません。順番にご説明していきます。

「プロジェクト」。教科書的な説明ですと「独自性と有期性のある仕事」です。ラテン語では「前に投げる」という意味だそうです。例えば「2023年末までに新しいデジタルサービスを提供開始する」「11月から新しいSaaSを社内導入する」「kintoneを導入する」。

ポイントは期日が決まっている有期性。それから今までやったことがない、新しいものを導入する独自性。最近ではこういう不確実な新しいことをする人が増えてると思います。これがプロジェクトです。

一方でプロジェクトじゃない仕事の例。「オペレーション」って言うんですけど「毎日お店でお弁当を売る」とか「週に1回勉強会の講師をする」。ずっと繰り返すタイプのお仕事は、プロジェクトとは呼びません。

ところがよくある誤解として、チームの壁を越えたメンバーでやる仕事を、かっこつけて「プロジェクト」と言いがちなんですね。「改善プロジェクト」のように、期限なく改善を続けるような日々の改善業務はプロジェクトと呼ばないので気をつけてください。

プロジェクトは、ものによっては多少のミスが許される

小林:では続いて「プロジェクトマネジメント」とはどんな仕事でしょう。仕事の進め方はそうなんですけれども、「プロジェクトに期待されている価値を最大化するためのスキル」をプロジェクトマネジメントと言います。

マネジメントってかっこいい響きがあるんですけれども、一番近い日本語は「なんとかする」。プロジェクトをなんとか終わらせることがプロジェクトマネジメントという仕事です。

どんな仕事なのかと言うと、例えばタスクや進捗のチェックをするとか、プロジェクトのメンバーに情報伝達をする。それからお客さんからの「これもやってよ」という追加要求を断ったり、受け入れたり。それから関係者をうまく巻き込むのもプロジェクトマネジメントです。

よくあるのが、プロジェクトをちょっと学ぶと「品質・コスト・納期の3つが大事だよ」と言われるんです。大事だからもう全部完璧にするしかないよねって、めちゃくちゃ無理をしちゃうんですけれども、プロジェクトってものによっては多少のミスが許されるんです。

この3つを全部、うまく満たすことはかなり不可能です。なので優先順位をつけなきゃいけないんです。この優先順位をうまくつけるのが、プロジェクトマネジメントという仕事です。

ミスなく少ないコストで早くプロジェクトを完成させたいですけど、「早くすると品質が落ちますよ」とか「早くするにはちょっとお金がかかりますよ」という妥協をしながら進めていくお仕事です。

「プロジェクトマネージャー」という役割へのよくある誤解

小林:最後、「プロジェクトマネージャー」。プロジェクトの責任者、通称プロマネって呼ばれますけど、これはどんな人か。一番教科書的な説明になるんですけども「プロジェクトをなんとかまとめあげる人」がプロジェクトマネージャーです。

この人の仕事の9割はコミュニケーションと呼ばれたりします。でもよくある誤解として「偉いんでしょ」「権力者でしょ」「あらゆることに詳しいんでしょ」「業界もめちゃくちゃ長いんでしょ」と思われるかもしれません。

大企業でよくある、ABC社のシステム構築プロジェクトの体制図です。

IT部門のA部長がプロジェクトマネージャーとして体制図に君臨しています。そしてアプリチーム、インフラチーム、総務部、このメンバーをまとめあげるA部長がプロジェクトマネージャーです。

でもちょっと忙しいので、新人のBさんに事務局業務をやってもらいます。日程調整とか議事録の作成、会議の資料作成、請求書チェック。この時Bさんは雑用係と思われがちなんですけれども、プロジェクトをなんとか進めてるのは、実はBさんです。教科書的には、プロジェクトマネージャーはBさんなんです。

よくある誤解なんですけど、(役職は)別に偉い必要はないんです。人材マネージャーとちょっと似てるけど、ぜんぜん違う仕事です。あらゆる事項に精通してる必要もなくて、調整がうまければいいんです。そして業界も別に長い必要はありません。プロジェクトマネジメントって汎用的なスキルなので、業界は関係ありません。

今日この場に来てる方は、サイボウズ製品とか新しい製品を使って自分たちの会社、自分の仕事を良くしたいって考えてる方が多いんじゃないかと思っています。もしかしてみなさんは、無自覚にプロジェクトマネージャー的な仕事をされていたんじゃないでしょうか。

もう1回聞きますよ。この中に「さっき手を挙げなかったけど、やっぱり自分はプロジェクトマネージャーじゃないかな」って気づいちゃった方、いらっしゃいますか? 手を挙げてみてください。

(会場挙手)

気持ち増えたかなというところですが、ちょっと話の展開上「倍ぐらいの人が手を挙げた」と認識しておきます(笑)。

プロジェクトマネジメントはセンスではなくスキル

小林:ここまできて気づいた方は、もしかするとあんまりプロジェクトマネジメントをマークしてなかったかもしれません。プロジェクトマネジメントは、しっかり体系の決まっているスキルです。スキルなので、学んで伸ばすことができます。

例えば案件の最後のほうに偉い人が来てちゃぶ台返しをしてきたり、現場の担当者がこっそり追加依頼してくるからついつい受け入れて、全体の整合性が崩れて遅延しちゃう。もしこの方がプロジェクトマネジメントの議論・理論である「ステークホルダー管理」「変更管理」というスキルを知っていれば、(そんな事態を)防げるかもしれません。

というわけでプロジェクトという言葉は、独自性と有期性がある仕事。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトをなんとかまとめてゴールに誘導する役割。そしてセンスが必要なわけじゃなくて、学べる技術だということを覚えておいてください。

ここからは実際に現場でプロジェクトのマネジメントをされていた方をゲストにお招きして、お話を聞いていきます。ではここからバトンタッチして、現場の方にご登場いただきます。それではよろしくお願いします。

DX推進の新規事業を立ち上げた、エン・ジャパンの高橋氏がゲストに登場

高橋淳也氏(以下、高橋):みなさん、こんにちは。ここからは実際にプロジェクトマネジメントをする時のコツとか、考え方をお伝えできればと思います。

あらためまして、自己紹介をさせてください。エン・ジャパン株式会社の高橋淳也と申します。本名でXもやっておりますので、ご興味があればぜひフォローをお願いいたします。

役割としては事業推進統括部、DX推進グループ・グループマネージャーです。エン・ジャパンの主力事業、「エン転職」という転職サイトとか、最近は無料で採用ホームページを作れる「engage」というサービスが主力なんですけれども、そちらの事業部内のDX担当でございます。

なので情シスでもなんでもなくて、この私のキャリアを見ていただいてわかるとおり、2006年にエン・ジャパンに入社しまして10年間、ずっと求人広告の取材と制作をしてきた現場の者でございます。

叩き上げで2016年から企画部に異動しまして、そこから業務改善しなきゃいけないという話になって。ゼロからkintone、ノーコード、RPAとかもいろいろ勉強して、ゴリゴリ業務改善・DX推進してきました。

今一緒に仕事をしているメンバーが、元事務・元営業のメンバーをリスキリングしながら組織を作っております。育成体制が整ってきたのでポテンシャル採用できるということで、未経験者を採用しDX組織を作っております。ですので私のプロジェクトの旅は、このメンバーと一緒に過ごしております。

育成ノウハウが整いましたので、今はこれを新規事業としております。「エンSXリスキリング」という名前で、DXの推進とかDXの人材育成をサービス化してしまいました。社内の業務改善から始まったDXが、最終的にサービス化したよ、というふうにとらえていただいてもいいかなと思います。

実際にどんなご支援をしているかちょっとご紹介すると、静岡の社員100名の製造業の会社です。2ヶ月でSFAとCRMをkintoneで作っちゃおうということで、現場の営業の方・現場の事務の方2名にゼロからkintoneを覚えていただいて、しっかり構築できました。

そのあと「心配だったら伴走しましょうか」と言ったら「もう私たちでいけます」と言われて、ちょっとうれしいような悲しいような感じだったんですが(笑)。子どもが育つ親の感情なんですかね。とても誇らしかったです。

これからの時代はプロジェクトマネジメントのスキルが不可欠

高橋:じゃあ、なぜこれ(kintone導入支援)が成功したかと言うと、弊社はkintoneのアプリを作り倒しておりまして。右上にアプリを作った数が出てるんですが、最近数えたら4,700ぐらい作っております。ですので「たくさん作ってきたよ」ということと、もう1つが「ベースのスキルをちゃんと教えられる」というところだと思うんです。

プロジェクト管理、問題解決の研修を社内でしっかりやっていて、これをkintoneのプロジェクトの中でしっかり伝えているので、成功してるんじゃないかなと思っております。

(会場からの質問を見て)さっそくご質問をありがとうございます。社内で勉強会をやってるんですよ。問題解決研修というのをやって、What/Where/Why/Howっていう問題解決のフレームワークやロジックツリーの作り方、プロジェクトとは何かという話とか、WBS。

WBSは『ワールドビジネスサテライト』ではなくて(笑)。「Work Breakdown Structure」の略でございます。それからプロジェクトにおける時間管理とかコミュニケーションを社内でしっかり研修しております。

なんで社内の研修講師を自ら手を挙げてやったのかと言うと、理由は2つあって。1つは、これからはプロジェクトマネジメントのスキルは絶対に必要だからですね。高度経済成長期みたいな、10年先を見据える時代じゃないじゃないですか。今は世の中が見えないんですよ。

そうすると、プロジェクト型業務がどんどん会社の中で増えていきます。それを担える人材を育てなきゃいけないということと、私自身事業会社で10年以上仕事をする中で「なんちゃってプロジェクト」にいっぱい巻き込まれてですね。

笑っていただいてる方にはきっと共感されると思うんですけど、なんかプロジェクトって立ち上がるんですよ。「プロジェクトって何なんだろう」とよくわからなくなって自分で勉強して、自分の後ろを歩む人たちには同じ苦労をしてほしくないという思いで、勉強会をしております。

1人で進めた方が気楽なのに、なぜプロジェクトチームが必要なのか

高橋:ということで、ここからはその社内でやっている研修を一部抜粋しつつ、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。ここからの時間は私が一方的に話すというよりは、みなさんと一緒に考えたいなと思っております。

立ち見のみなさんもありがとうございます。プロジェクトの疑問を一緒に考えていきたいなと思いますので、私から「こういうこと、どうですか」って問いかけをさせていただきます。みなさんもぜひご自身の経験とか自社のことを振り返っていただいて、そこから私なりの見解を伝えるという流れで進めていきたいと思います。

まず「プロジェクトでチームって何で必要なんですかね」という、この講演にケンカを売るような質問から始めてみたいと思うんですけど(笑)。プロジェクトってチームで進める必要があるじゃないですか。何でわざわざチームを組む必要があるんですかね。

1人で進めたほうが気楽じゃないですか。何でチームが必要なのか、みなさんの中にお答えはありますでしょうか。

私なりの答えで言うと、私もいっぱい悩んだんですよ。「たくさんいると大変だな」とか思ったんですけど、結論は「早く行きたければ1人で進め。遠くまで行きたければみんなで進め」という言葉かなと思います。これはアフリカの有名なことわざなんですが。

例えば近場の旅行だったら、プロジェクトチームを組む必要はないと思うんですよね。日帰りで1人でバーって行っちゃえばいいじゃないですか。でもみなさんが世界一周の船旅に出なきゃいけないってなったら、プロのコックさんとか欲しいですよね。みなさん『ワンピース』を見てますか? ルフィはなぜコックを仲間にしたのか、遠くまで行くためですよね。

なので、こういうふうに自分自身に言い聞かせるようにしています。「チームを組むのは1人じゃ行けない所、遠くまで行くためなんだ」と。「1人では対処できないことをやるためには多くの力を借りなきゃいけないので、チームで挑むんだ」と自分自身に言い聞かせております。

プロジェクトの「本当の失敗」とは

高橋:次、プロジェクトの「本当の失敗」って何でしょう。プロジェクトでは想定外の連続ですよ。先ほど小林さんから独自性と有期性という言葉がありました。「誰もやったことがないことを期限までにやれ」って、まあ無理ゲーなわけじゃないですか。そうしたら予想外のこととか、遠回りすることは当然起こります。「これって失敗ですか?」という問いですね。

私はどう考えてるかと言うと、「旅の終着点にたどり着けない」ことが本当の失敗だと思うんですね。ただ、たどり着き方ってプロジェクトチームで決めればいいと思うんですよ。

みなさん、旅したことありますか。なんか事件とかドラマが起こるじゃないですか。うちも新婚旅行でトラブルとかもあったんですけど(笑)、今思い返すとすごく良い思い出になっていたりして。「ドラマがあって、(困難を)乗り越えて、良い新婚旅行だったな」と思ったりしています。

それで、終着点にたどり着くことが大事ですよね。その中で絶対守らなきゃいけない条件があれば、先に決めておきましょうねと。例えば「予算はここまでしか使えないよ」とか「絶対この日までにはたどり着くんだ」とか「このクオリティは絶対維持するんだ」。逆に到達点にたどり着ければ、守らなきゃいけないものは多少崩れたっていいんですよ。

日本人は完璧主義の方が多いと一般的に言われます。ですのでミスゼロにしたいと考える方が多いですが、プロジェクトは性質上「独自性と有期性」があるので、どうしても失敗はつきものだと思うんですよね。

ですのでミスゼロを目標にしてもいいんですけど、多少のかすり傷は勲章だととらえるぐらいのほうが、気楽に楽しんでプロジェクトに挑めるんじゃないかなと思っております。

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