2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:SAPジャパン株式会社
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堀越勇雄氏:今度は、現場従業員の視点でお話ししてみたいと思います。 現場従業員の視点では、社員情報の見える化の先にある、社員を理解することによって、パーソナライズされた成長の機会をどんどん提案したい、もしくは組織を越えたコラボレーションをご覧いただきたいと思います。
どんどん多様化する、自社の従業員を正しく理解していく必要があります。これまでも、経歴や評価結果、保有する資格といったものは、みなさまの管理の中で情報としてあるかと思います。
それ以外にも従業員のみなさまにはワークスタイルとか、「リモートで働きたい」とか「オンサイトで働きたい」とか、もしくは強みや弱みや好み、「将来こうなりたい」といった思考など、いろんな要素があるかと思います。
これらの従業員を構成するすべての要素を、成長ポートフォリオというかたちで管理することが始まっています。ただし、従業員のスキルや能力はけっこう難しいなと思うところがあります。
時間が変わると新しいスキルを習得していたり、どんどん変わってくるものだったりします。ですので、一時的に従業員を理解できても、すぐに情報が古くなってしまって活用できなくなるという課題が従来からありました。
こうした課題を解決するために、この成長ポートフォリオにAIの技術を組み込むことにしました。AIによる従業員の理解と成長機会の提案を、これからご覧いただきたいと思います。
こちらは、ある従業員の成長ポートフォリオです。 ここでは、従業員のさまざまな個性やスキル、能力を確認できます。3万件以上あるスキルデータベースから、AIが従業員の日々の行動を分析し、スキルや能力をリコメンドします。
今回は、「Microsoft Teams」上での従業員の行動をもとに、スキルデータベースから、この従業員が持っていると思われるスキルをAIが提案しています。
従業員は、提案されたスキルから、「これは自分に合っているな」というものを選んでレベルをつけて、特に伸ばしたいと思っているものは「いいね」のハートマークをつけて追加すると、AIが提案したものを自分のスキルとして簡単に追加できるようになっています。
こうしてAIによって最新化された成長ポートフォリオを活用して、さらにAIが社内のさまざまな成長機会を提案してきます。
ここでは、AIが従業員におすすめの成長機会を提案しています。従業員のスキルや能力、学びたいと思っている興味のある項目が表示されています。先ほど追加した「データ・AI活用戦略」というスキルも、興味ありと表示されていることがわかります。
こうした従業員のスキルや「これを伸ばしたい」という興味関心に基づいて、おすすめの社内プロジェクトや募集中の社内公募、受講できる社内のeラーニング、それから集合研修やメンターとか、メンタリングプログラム、さらに「これから目指すキャリアのおすすめはこれですよ」といったものを提案してくれています。
今追加したDX、データ・AI活用というスキルで社内プロジェクトを絞り込んでみると、簡単にこのスキルを伸ばすための社内プロジェクトが出てきます。
プロジェクトに求められるスキルレベルです。「こういうスキルレベルが必要なんだ」というのもこの(システムの)中でわかるので、足りていない部分があってもチャレンジ的に応募できるようになっています。
応募動機を書いて応募します。ただし、実はこの「データ・AI活用戦略」のスキルが足りていないのですね。この足りていないものに対して、同様に提案されている研修コンテンツから、このAIに関する研修コンテンツを受講することができます。
この研修コンテンツの中身では、足りていなかった「データ・AI活用戦略」が含まれていることが分かるので、ここで「このスキルが伸びるよ」ということを確認することができます。
こちらを見ながら、eラーニングを受講していきます。今回は少しカットしているので、いきなりeラーニングのテストの画面になってしまっていますが、eラーニングのテストを受講し、無事にAIに関するコースが終わったということで、「コースの終了」を送ります。
すると、研修を受講したことによって、このDXの「データ・AI活用戦略」という伸ばしたかったスキル、かつ足りなかったスキルのレベルが1つ上がったことが見えてきます。2と1ということで、一緒に他の2つのスキルも伸びています。
この追加されたスキルは、同様に成長ポートフォリオの中に追加されていきます。成長ポートフォリオによって、AIを使いながら社員の理解を深め、「SuccessFactors」の中で研修コンテンツや社内プロジェクトなど、いろいろな活動をしていくと、さらに成長ポートフォリオが変化していきます。
これにより、さらに新しいプロジェクトや成長機会をどんどん提案していくサイクルを回せるようになってきます。
次に、このDXプロジェクトの進捗も見ていきたいと思います。社内のプロジェクトは弊社にもたくさんあるのですが、これまではシステムの外で管理していることが多く、社内でどんなプロジェクトが進んでいて、誰が参加してるのかが見えていませんでした。
参加してもボランティアで評価につながらないとか、目立つ人だけにスポットライトが当たって、他のメンバーはむしろモチベーションが損なわれてしまうといった問題点があったのですが、今後はこういった多様なメンバーがコラボレーションしてプロジェクトを進めることが不可欠になってきますので、弊社の中でも仕組みを用意しています。
ここでは、従来の上司・部下とは異なり、他部門のさまざまなメンバーとチームを組んで、社内プロジェクトを推進できるようになっています。
社内プロジェクトの推進にあたっては、目標・進捗をOKRで管理できるようになっています。この例では、「イノベーションを促進するアイデアを生み出そう」という目標と「顧客のニーズを把握する」という2つの目標に対して、キーとなるリザルト、数値目標を設定して進捗を管理していけるようになっています。
もしチームメンバーの進捗があったら、この数値を変更すれば「Key Result(キーリザルト)」がどんどん変わっていって、達成できたらチームの他のメンバーにも通知がいくようになっています。
なので、社内プロジェクトをシステム内でもきちんと残していって、誰がそういうところに手を挙げてくれているのかを見ていくことができるようになっています。
プロジェクトが終わった後は、参加したメンバー同士でフィードバックし合う仕組みも用意しています。今日は、日々利用している「Microsoft Teams」のアプリから、DXプロジェクトの内容について、プロジェクト参加メンバーにフィードバックをリクエストしたいと思います。
「SuccessFactors」は、下のほうにハートマークのアイコンがあります。Teamsのアプリに入っているので、これをクリックするとフィードバックのリクエストができるようになります。
フィードバックをリクエストする人を選んで、「DX推進プロジェクトのフィードバックをください」と依頼を送信します。これでフィードバックの依頼ができました。
リクエストを受け取ったメンバーは、同じようにTeamsのアプリにポンと通知がやってきます。右下です。バッチにも1件通知があるのがわかるので、こちらをクリックします。今フィードバックのリクエストを送ったものが出てきていますので、ここから直接返信したいと思います。
良かった点や悪かった点、それから、「他にもっといろいろ意見がありますか?」と書いてフィードバックを送り返します。この内容は「SuccessFactors」の中に自動的に連携されて溜まっているので、「SuccessFactors」上でも見られますし、Teamsのアプリで登録しても、「SuccessFactors」に自動的に反映されます。
また、この内容は年度末評価の時に参照したり、上司にアピールしたり、上司からもフォローしたり、レポートなどでも見ていくことができるようになっています。
今、弊社でもフィードバックを送り合う文化をどんどん高めようという取り組みをしています。そういうことも、人事のシステムを起動しなくても、Teamsのアプリの中でやり取りができるようにしています。
こういうTeamsアプリのシナリオは、これからどんどん増えていくかたちになっていますので、従業員のみなさまはHRTechをより身近に、簡単に使っていただけるようになってきます。
ここでは現場の視点ということで、AIを活用した従業員の理解から、一人ひとりにパーソナライズされた成長機会の提案、そして社員同士のコラボレーションとTeams連携による人事の効率化をご覧いただきました。
最後に、人事部門の視点についてご紹介したいと思います。従来の人事業務の効率化はもちろんのこと、先ほど紹介した従業員の自律的な成長をきちんとサポートできているか、また、従業員が入退社までの不満を感じている、もしくは満足度が高い点はどういうところなのかをしっかりと見極められるようになっています。
こちらは先ほどご覧いただいた、「AIが社員に成長機会を提案する」というものです。そもそも社内にどれだけの成長機会があるのかは気になる点かなというところです。
ここでは先ほど従業員のみなさまに提案していた成長機会が、ダッシュボードで把握できるようになっています。例えば、社内プロジェクトが今何件あるのか、何人の従業員が参加しているのかがわかります。また、申し込みができる社内公募が世界中で何件走っているのか、どんな方が申し込んでいるのか、チャレンジしているのかがわかります。
それから、集合研修やeラーニング、プログラムが何本走っているのか、どれだけ受けられるようになっているのか。メンタリングプログラムが何本あって、各部署から何名がメンターとして手を挙げてくれているのか。右下の女性のメンターで、手を挙げている方が少ないのが見えていますので、このあたりは課題かなということが、パッとわかるようになっています。
積極的に成長しようとしてくれている従業員が見えてくれば、参加率が高い従業員はエンゲージメントが高い方だとも言えるので、表彰したり抜擢したりして、いろいろなところで活躍していただくことが考えられます。
それから従業員のスキルの推移です。これと合わせて確認して、「今、社内でこのスキルは伸び悩んでいるな」ということが見えてくれば、そのスキルに対して、社内プロジェクトや研修コンテンツ、先ほどの成長機会の拡充をどんどんサポートしていくことができます。
こうしていろいろな施策を実施した結果、社員のみなさまの満足度はいかがなものなのかを最後に見ていきたいと思います。
従業員のみなさまが、採用から入社、そして退社するまでの歩みを表したものが、従業員ライフサイクルです。従業員が1,000人いれば、1,000通りのライフサイクルがあります。
従来は男性が中心で、新卒で入社し定年退職するという同質性が高いものだったので、なんとなく「こういうことを考えるんだろうな」という想像がついたのですが、今後は女性や外国人、中途採用の方も増えて、1,000通りのライフサイクルが(あるというくらい)、ものすごく多様になってきます。
従来は課題や改善点がなんとなくわかっていたものが、多様性が増すごとに予想が難しくなって、実際に声を聞いて、いろいろと改善活動をしていきたいということが求められてくるということです。
例えば採用時点では、面接に来てくれた候補者の方が魅力的な会社だと思ってくれたのか、それとも思ってくれていなかったのか、もしくは不満が多かったのかというサーベイを(行い)、自動的に面接に来てくれた方に(ついてのデータを)取得できます。
また、内定に進んだタイミングでは、オファーの内容やプロセスがわかりやすいものだったか、入社に進んだ社員・従業員のみなさまは入社前と比較していい印象だったのか、がっかりしてしまったところがあるのか。こういったことがサーベイで取れたり。
研修を受ければ受講後にサーベイが来て、わかりやすかったか、改善点はあるか、研修のコースや長さは適切だったか。さらに入社6ヶ月後には、立ち上がりのところでのオンボーディングの中でのサポートで、一番効果があった、良かったものは何だったのか、逆に悪かったものは何だったのか。
それから評価です。年度末評価や期末評価のタイミングで、評価が公平だったと感じたか、もしくは評価に対してこうしてほしいという意見はあるかという点です。
異動した後には、周囲に簡単に溶け込めたか、周囲との協力はすぐにできたかという質問とか、昇進した場合には、上司のサポートがあったか、部下との関係構築は順調だったか。最後、退社となった際には、退社の理由で大きいものは何だったのかと。こういった人事イベントで、さまざまなサーベイが自動的に届くようになります。
年に1回の調査だと忘れてしまっているものも、イベントごとにサーベイが届きますので、その時に感じたフレッシュな意見を聞くことができるようになっています。そして、サーベイで収集したデータを分析するのにも時間がかかりますので、自動的に分析されるようになっています。
社員の声を拾って改善するというのは、人事部門がマニュアルでやると、リソースの理由からもけっこう難しいのですが、こういうテクノロジーを活用することで、すべてを自動化していけるようになっています。
該当社員を自動で抽出し、サーベイを依頼し、サーベイ結果を自動で解析します。そして、その結果を即座に各部門に展開して、改善活動を進めていただけます。こうした部門を巻き込んだ改善活動によって、多様な従業員のエンゲージメントを向上させていくことにつながっています。
人事の視点では、社員の成長をサポートする成長機会のダッシュボードや、従業員ライフサイクルの計測と改善の自動化という点をご紹介しました。
今日は経営の視点、現場の視点、そして人事の視点から将来を見据えた企業価値向上につながるテクノロジー活用についてご紹介いたしました。
HRTech導入の目的を、タレントマネージメントシステムの導入や社員の見える化に留めるのではなく、企業価値向上という目標を設定すると、今後の取り組みや投資の方向性がより明確になってくるかもしれないなと思っています。
今日はご清聴いただき、ありがとうございました。ここでご紹介した内容が、今後のみなさまの検討に、参考になる部分があればと思っています。
もし興味があるというお客さまがいらっしゃいましたら、ぜひ弊社までお声がけいただければと思います。あらためまして、本日はありがとうございました。
SAPジャパン株式会社
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