2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
エンジニア流「リクルート」の使い方(全1記事)
提供:株式会社リクルート
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神里栄氏(以下、神里):それでは次のトークテーマに移っていきたいと思います。「リクルートで次は何をしたいのか」。棚橋さんからお願いできますか?
棚橋耕太郎氏(以下、棚橋):はい。リクルートってかなりおもしろい案件がたくさんあると思っていて、いろいろな案件を繰り返しやっていると、その中で共通の知識だったりが生まれてくる。それを例えばソフトウェアのライブラリとかにして、世の中に出して使ってもらうみたいな。自分としては次にそういった経験をリクルートでやっていきたいなと思っていることです。
例えば2021年ぐらいに量子アニーリングを使うためのソフトをちょっとした便利ソフトみたいな感じに作りました。当時はアニーリングマシンで問題を解こうと思うと、数式を自分で展開して、展開した結果を行列にして渡すことをしないといけなくて。自分で手計算をしないといけなかった。そこを自動化するツールみたいなものを作りました。当時学者の方たちは「そんな手計算、簡単だろう」という感じでやっていたんですけど。
ディープラーニングの微分が面倒くさいのと一緒で、そんなことをいちいちやっていても面倒くさいだろうと思って。ツール化して出したら世界中の人がかなり使ってくれて。非常に有名な研究機関とかでも使ってもらえるようになって、世界に広がっていく実感がすごくありました。
リクルートという日本のいち企業から世界に知られるようなものをどんどん作っていけたらやりがいも感じるし、自分たちのふだんやっている仕事も、より価値を感じるんじゃないかなと思っています。
漆原茂氏(以下、漆原):本当にオープンソースを含めたコミュニティのパワーってすごいなと思っていて。一企業の中で閉じて仕事をしていると、中では評価されるかもしれないけれど、外には出られません。逆にオープンソースみたいなコミュニティに良い感じにアウトプットすると、めちゃくちゃ良いフィードバックがドカッと来るので、一気につながれちゃいますよね。
棚橋:本当にそう感じていますね。たまたまカンファレンスに参加したら参加した知らない人からたくさんメールが来たり、カンファレンス参加中に「一緒にご飯食べないか?」みたいな連絡が来たりとか。
漆原:大人気ですね。
棚橋:外部の人とつながるきっかけにもなるんじゃないかと。でもオープンソースという文化は意外とまだ知られていないというか、取材とかが来た時に「なんで無料で出すんですか?」みたいな質問を真顔で聞かれたので。「商売にしたらいいじゃないですか」って。まぁ、それだけで商売になるようなものでもないと思うし、よりレバレッジを効かせるためにはオープンにしたほうが良いと思ってます。
漆原:いいですね。いつの日か、“棚橋ライブラリ”が世界を席巻する時代が近い。
(一同笑)
神里:量子コンピューターの領域だとあり得ますよね? 「あり得ますよね?」って本人に聞くのもアレですけど、あり得るんじゃないかなと思いました。ちなみにリクルートの中で新しくオープンソースにしていきたいもの、野望みたいなものってあったりするんですか?
棚橋:量子アニーリングとは違うんですが、組み合わせ最適化を簡単にかけるソルバーみたいなものをちょっと前にリリースしました。それをGPUでさらに高速化するみたいなものを考えていて。
漆原:良いですね。
棚橋:それ以外にも(自分は)「何かあったらすぐにライブラリ化したい」という欲望がすごく高くて。ふだんからコーディングをしていると「この部分はDSL(Domain Specific Language)にできそうだ」とか、そういうことをすごく考えたくなるタイプなので、そういった意識でふだんから仕事ができる部分はあると思っていますね。
漆原:良いですね。かっこいいな。
神里:次に、三浦さんはリクルートで何をしたいですか?
三浦泰嗣氏(以下、三浦):そうですね。私が次にもっとやっていきたいなと思っているのは、社内で言語処理を使った案件とか、言語処理を使うためのデータセットやモデルなどが広がっていけばいいなと思っていて。自分たちが作ったBERTを他の案件に展開したり、「自分たちはこんな感じで作ったよ」というものを他のプロジェクトでも使えるように整備していったり。
ひいては旅行領域に限らずHRとか、住まいとか、そういった他の領域にも展開していって簡単にモデルを作れる状態を作っていきたい。「言語処理を使ってこういう機能を作ると、バンバン売上が出るんだ」ということが経営陣にわかってもらえれば、「じゃあ、バンバン言語処理をやるぞ!」という社内のムーブメントになると思うんですよ。
そのためにも、まず私がしっかりと結果を出していきながら社内に波及させていって、他の部署と言語処理の情報を交換しながら、「こういうチューニングをするといいよ」「こういうデータセットうまく使えたよ」みたいに盛んに交流して、そういうモデルやデータをどんどん作って案件に適応していくというのが、当たり前のムーブメントとして社内に定着していったらいいなと思っています。
神里:そういう技術をお金にしていくみたいなところは、世の中的にもまだそんなに解がない領域だと思うので、社内と言いつつ、かなり野心的な価値を言っているな、すごいなと思いながら聞いていました。
三浦:そのプロセスが、大きい会社に広げていくモデルケースとかになると良いですね。
漆原:少なくとも今は言語処理にすごく関心があるんですね。
三浦:そうですね。今はそこに重点を置いていて、そういうモデルを作ったりとか、あとは、分散領域に関心があるんですけど、「BigQueryを使って高速にやるにはどうしたらいいか」とかをふだん考えたりしていて。社内にはSQLを書けるデータサイエンティストはいっぱいいるんですが、「それをPythonまでやろうと思うと面倒くさい」みたいな人がけっこういるんですね。
(それなら)SQLを使って言語処理できるようなサンプルライブラリとかを置いたり、SQLを書くだけで超高速に分散された言語処理ができるようなものを作って社内に配ったりとか。そういう感じで社内にちょっとずつ言語処理を高速にやる文化とかを広げていけたらいいなといつも夢見ながらやっています。
漆原:なるほど。
神里:棚橋さんにも近いなと思って。専門家が見ると「いや、そんなことをやっても別にすごい進化じゃないし」と思っているところをやると、意外とユーザーが増えて活用がどんどん進んでいくみたいな志向性なのかなと思っていて。そこは2人とも共通(の認識)なのかなとすごく思いましたね。
三浦:(そう)思いますね。
棚橋:聞いていてすごくワクワクしていました。ちょっとあとで話を聞きたいです。
(一同笑)
漆原:言語自体はスピーキング含めて、単に入力の文字なだけじゃないですからね。まだまだこれから進化していく分野の1つですから。楽しみですね。
三浦:ありがとうございます。やっていきたいと思います。
神里:ありがとうございます。
神里:次は山本さん、お願いできますか?
山本航平氏(以下、山本):そうですね。使い続けていくところを磨かなきゃいけないという話を三浦さんがしていたと思うんですが、(私も)まったく同じで、「出してゴール」というものはこの世界にはないので、出したあとに適用する範囲を広げていくのもそうだし、より高度なことをやれるようにするというのもそうです。
あとはちょっと質が違うことに応用していくとか、そういったことも含めてプロジェクトとしてはまだまだいろいろなことをやっているので。大変ではあるんですが、がんばっていけたらいいなと思っています。
漆原:まだまだ上を極めたいという感じですね。
山本:そうですね。
漆原:すばらしい。
山本:そういう意味では終わりがない気はしています。
漆原:山本さんのタイプはおもしろくて、「誰かこんな無謀な挑戦をしたいんだけど何とかして」と言うと、「はい」って言って出てくるような人だと思うので。
(一同笑)
自身で「これをやりたい」というよりは、そういうことを言う人を押し上げちゃうようなタイプのスーパーエンジニアだなと思って聞いていましたね。
山本:ありがとうございます。アイデアがすごくたくさんある方はいるし、やりたいことは尽きない感じなので。それをかたちにしていく手伝いができたらなと思っていますね。
神里:そういう意味では、リクルートは良い環境なんですかね?
山本:かもしれないですね。私は「ゼロイチをしたい」みたいな発想はあまりないんですが、逆に「他の人がやりたいと言っていることを、どうしたらうまくできるかな?」と考える感じだったりするので。
そういう意味では、リクルートにはやりたいことがある人がものすごくいっぱいいて、「やりたいけど手段をどうしようか」みたいな話にやはりよくなるのかなと思います。なので、機会がたくさんあるという意味では良い環境かなと思いますね。
神里:実現したい世界みたいなものが目的として設定された時に、1回(それを完成させて世の中に)出した時はうれしいと思うんですが、そこからやる気を持続させるための山本さんの中でのモチベーションって何なんだろうなと。
確かにリリースしてからのほうが世の中での価値は長いから大事ということは言葉としてはわかるんですが、それだけだとモチベーションが続くのかなという気がしていて。そのあたりはどうですか?
山本:難しいですね。リリースしてから別にずっと同じものを使い続けるわけではないので、シンプルにリリースしたあとはその上でまた新しいことをやっているみたいな話もあったりするので。それは持続というところとは違うかもしれません。維持し続けるところか……。何だろうな。
もともとけっこう荒れているシステムをずっと運用するみたいなことをやっている育ちだったりするので、そういう意味では、やはり使っていくところの中で生まれる細部に神が宿るというか(笑)。本当にやるべきことが実はあったりするケースがあるのかなと思うので、そういう意味で実際に実用に耐えうるかたちで運用され続ける中でこそわかる価値とか、気づける問題みたいなのがあって。それはそれで解いていけばいいんじゃないかなと思っています。
漆原:めちゃくちゃ良いですね。
今回のFORUM(※)も数年拝見していると、もちろんいわゆる「おもしろいイノベーティブなものをリリースしました」というのもすごいなと思うんですが、今まで地味に運用していたところを、がんばってがんばって「さらにここまでやりました!」みたいなものもちゃんと(発表内容として)エントリーして来ていて。
※株式会社リクルートのグループ横断ナレッジ共有イベント
そういうのって、誰も見向きもしなくなっちゃうと、ある意味で魂が抜けちゃうんですよね。そうするとシステムがダメになって、イコールでビジネスがダメになっちゃうんですよ。だけどそこに常に新しい魂を込めることで、実は無限にやることを見つけることができて。さらに上とか、さらに新しくより使いやすくできる。そういうテーマを自身でちゃんと見つけて課題も設定できて、ゴールも設定できる方だなと思いますね。
(山本さんは)すごく強いシステムを作れる方です。魂がこもっているシステムとそうじゃないものって、見てわかるんですよ。使っていても一発でわかるんです。「誰も気にしていないでしょ」みたいなものはもうボロボロだし、なんか単に動いているだけ(になっている)。
売上も上げていて、ビジネスの最先端で(使われていて)、みんなが「かっこいいね」と思ってキラキラしているやつは、いろいろな人の魂が思いっきり詰まっているんですね。やはりそういうところを常にやり続けるところに(山本さんは)モチベーションを持っているのではないかと思いますね。
山本:まさにそんな感じです。
神里:運用に入ってからの(工程の)ほうが、自分なりに目的設定をやっていくような求道者的な人のほうが逆に向いているんだろうなと。一般常識と逆なんだろうなと。僕的には発見だなと思いながら聞いていました。
山本:ありがとうございます。
神里:それでは最後のトークテーマで「私流リクルートをこう使え」というものをみなさんに聞いていこうと思います。まず棚橋さんお願いします。
棚橋:はい。私はエンジニア、技術者なんですが、技術者1人で案件をすべて進めていくというのはほぼ不可能に近いと思っていて。やはりモチベーションとかが途切れちゃったりするので、ビジネスに落とし込みたいと本気で思っている人と出会える必要があるかなと思っています。うまくいったプロジェクトをあとで見返すと、やはりそういう良い人と社内で巡り会えていたなというのがすごくありますね。
リクルートは統合してすごくいろいろな人と出会えるようになったので、自分とすごく相性の良い人と巡り会えるようになると、自分のパフォーマンスをすごく出せるようになるんじゃないかなと思いました。
神里:棚橋さん的には、本気な人とどういうふうに出会うんですか?
棚橋:誰かに紹介してもらったり、問い合わせしたりもあります。あとで見返すと、紹介がけっこう多かったりします。紹介してもらったり、「このサービスをやっている人はどんな人ですか?」みたいな“よもやま”(※)を入れさせてもらったりみたいな。
※特にアジェンダを設定しない会議
神里:意外とアナログなやり方を推奨するというのがおもしろいなと思いました。
神里:じゃあ次に三浦さんにお願いできますでしょうか。
三浦:はい。リクルートって「やりたい」と思ったことを言う、手を挙げると、それを応援してくれる文化がすごく強いなと思っていたりします。私としてはさらにその先を行くのが良いと思っていて。
これは若干上司に怒られるかもしれませんが、仕事をする上で上司すら使うことがすごく大事だなと思っています。
案件をやっていく中で、やはりどうしてもリクルートは組織が多いので、組織をまたいで仕事をする場合、どうしてもやり取りが難しかったり、コミュニケーションコストが大きすぎて進まないとかがあると思います。
そういった場合には、上司に「こういうことをやりたいから、一緒に他の組織に話すのを手伝ってほしい」ということを依頼して、巻き込んでいく。
そういう感じで、やりたいことに向けて自分の上司すら巻き込んでやっていくような勢いがあると、案件としてうまくいくと思っていて。そういう感じでリクルートを使えると、自分のゴールにより早く辿り着けるんじゃないかと思います。
神里:なるほど。これはけっこうある。僕も新人で入った時に「上司は自分のスポンサーだと思え」と。新人研修の時に「新人は上司の信頼残高を使え」という言葉を聞いて、これは(言っても)ぜんぜん怒られないと思って。上司をそういうふうに思っているのがリクルートっぽいところ。なので、(この考え方はリクルートなら)みなさんけっこう汎用的に使えるんじゃないかなと聞いていて思いました。ありがとうございます。
神里:最後に山本さん、お願いできますでしょうか?
山本:はい。ちょっと考えていなかったんですけど(笑)。
(一同笑)
私が(リクルートまでの過程として)経験してきた会社と比べても、リクルートは非常に合理的というか。ただ、その「合理」がロジックみたいな理詰めですごく冷たい合理というよりは、情理みたいなところを含めた上での合理主義みたいなかたちがすごく強いと感じる会社だなと思っています。
ロジックとか「こういう成果が上がりますよ」とかを説明するのはもちろん大前提なんですが、それだけじゃなくて、先ほどの「勉強会を開いて仲良くなった」という話もあったと思うんですが、情理の部分みたいなところもうまく使いつつやっていくと、物事がうまく回るんじゃないかなと思っています。
神里:というところで、時間も迫ってきたので、ここで座談会を終了しようと思います。それぞれのモチベーションを聞けて、僕的にはすごく気づきがあって楽しい座談会だったなと思っています。漆原さん、本日は本当にありがとうございました。棚橋さん、三浦さん、山本さんもありがとうございました。
一同:ありがとうございました。
神里:いかがでしたか。一緒に働いているエンジニアでも、こういう機会がないとここまで深く話を聞くことってなくて。あらためて、(リクルートには)いろいろなモチベーションの人がいて、それを社内で実現するためにいろいろなやり方があるということを再認識できて。僕もあらためて「すごくリクルートっぽいな」と思いました。
神里:ここからはみなさんの質問に答えていきたいと思います。時間の限り答えていきますが、すべて(には)答えられませんので、あらかじめご了承ください。
それでは視聴者さまからの質問で、(三浦さん、山本さんの)2人に質問ですね。「プライベートの時間でも、自分のスキルを高めるための時間を作っていますか? また、どのようなことを日頃行っているのかを教えてください」とのことです。三浦さんからお願いします。
三浦:はい。私は仕事で使うスキルは日頃からプライベートでの時間も作って、そこで勉強したりはしています。よくやっているのが、仕事場の仲間とチャットツールで技術情報を共有するような場所があって、そこで今は週一で勉強会をして、新しい技術をキャッチアップしているというところは意識的にやっています。
そこではすぐに仕事につながるような本を読むこともあれば、すぐには仕事にはつながらないかもしれないけれど、ちょっと興味があるテーマを扱ってみたりというところで。そういう感じで、仕事で使うところも、仕事に使わないところも広く知っておく。カバーするように勉強しておく感じでキャッチアップをしています。
神里:なるほど。ちなみに僕のグループでも本の輪読とかをよくやっているんですが、どのぐらいの強度で勉強というか、総合学習をしているんですか?
三浦:主に技術情報を共有するようなチャンネルと輪読会をやるチャンネルがあるのと、あとは競プロが好きなチームがそれをやるようなチャンネルがあって、それぞれトピックごとに集まって週1とか2とかでやるような感じでやっています。
神里:ありがとうございます。それを言ったらKaggleとかもありますもんね。
三浦:そうですね。
神里:わかりました。次に山本さんお願いできますでしょうか?
山本:はい。「みんなでやっています」という話のあとに「ボッチでやっています」という話はしたくないなと思っているんですけど。
(一同笑)
山本:私もプライベートでもちろん時間を取っていて。ただ最近手を動かす時間が減ってしまっている気は正直します。代わりに見聞を広げるというか、知らないことをちゃんと知っていくことは続けています。
リクルートのサービスも日進月歩で進化していくクラウドの技術とかの上で成り立っていたりするので、そういうところの新しいリリースとか機能とかはやはりちゃんとキャッチアップしていますね。そんな感じです。
神里:なるほど。ありがとうございます。「ボッチでやっている」と言いつつ、(山本さんのSlackの)Timesをたまに見るんですが「あー、こういうことを家で手を動かしているんだな」と。なんとなく横で見ていて伝わっているところはあったりするので、実は発信もしているんじゃないかなと思いながら聞いていました。
神里:僕のほうから質問をしようと思います。三浦さんが言語処理にコミットするきっかけは何だったのかを教えてください。
三浦:そうですね。もともと私が言語処理を始めたのが2015年、2016年ぐらいの時だったんですね。その時はディープラーニングという技術が特に流行り始めていて、画像領域での活用とか応用が非常に進んでいる状態でした。言語処理の領域でももちろんディープラーニングが始まってはいたんですが、まだまだ社会応用とかが進みきっていないようなところがありました。
そんな中で自分が極めていく中で、まだまだ開拓されていない領域、ディープラーニングとしての自然言語処理に興味を持って、自分で舵を取る。手を動かしてみたり、自分でモデルを作ってみたり。そういうことを始めていって、次第にそれをもう仕事に応用してみたり、それを使ったプロダクトを作ってみたりとか。そういったところが、自分が言語処理を始めたきっかけだったのかなと思います。
神里:なるほど。ありがとうございます。どのあたりで「実際にプロダクトに使えそうだ」みたいな感覚が芽生え始めたんですか?
三浦:最初におもしろいなと思ったのは、2012年頃に出たWord2vecという技術と、あとはその1年後、2年後ぐらいに出たSeq2seqというモデルです。それがわりと言語処理の応用でも使えそうな精度になってきていたので、まずはそれから始めてみた。
さらにもう1個の大きいターニングポイントとしては、そのあと出てきたBERTという言語処理のモデル。あれが実サービスへの応用という観点では良いターニングポイントだったなと思っていて。何度か大きい転換点を経て、どんどん言語処理の社会実装が増えていっているのかなと思います。
神里:なるほど。ありがとうございます。僕も確か学生の頃にWord2vecが出て「何だこれ?」と(なりました)。
三浦:そうですよね。
神里:「単語の引き算ができる」と。
三浦:すごくおもしろかったですよね。
神里:あのぐらいから意味的なものが込められているんだなとわかってきて、僕も「おもしろいな」と思った記憶があります。
神里:また僕から質問をさせてほしくて。次は山本さんに質問します。多くのエンジニアが関わるプロジェクトで、山本さんがコミュニケーションについて気をつけているポイントみたいなところがあれば教えてください。
山本:そうですね。背景とか目的みたいなところを、全部ちゃんとなるべく言葉で尽くして伝えるところは1つありますね。それこそ私なんかよりぜんぜん優秀な方がやっている以上、Howの部分はたぶん「お任せします」というのが一番良くて。ただ、目的とか背景みたいなところは、やはりビジネスとかそれ以外のシステム的な制約とかの側面があったりします。
なので、そういうところの解像度をちゃんと上げられるだけの情報をなるべくインプットするというところが、円滑に物事を回していくという上で1つ大事かなと思っていますね。
神里:もう1つ。エンジニアがそういったことを伝える上で、たぶん引き出していかないといけないみたいな(ことがあると思います)。プロダクトのオーナーみたいな方が、その引き出してくる時のポイントってあったりします?
山本:難しいですね(笑)。「何をしたいのかな?」とか、アウトカムとして何を要望しているかみたいなところになるべく着目して聞いています。あとはどこを妥協できると思っているかもわりと大事で。やはり開発プロジェクトって、無限に納期と工数とお金があって、何でもできるわけじゃない。
なので、その中でどこが落とせなくて、逆にどこが妥協してもいいかみたいなところが分かれていたりするので、そこはなるべく聞くし、自分でも「ここは切れますよね?」とか「こういうかたちでいいんじゃないですか?」という提案をしたりするという感じですかね。
神里:なるほど。アウトカムと、譲れるところと譲れないところをちゃんと言語化していくみたいなことをきちんとやっていくというのが重要であるという感じかなと。
山本:そうですね。
神里:ありがとうございます。
神里:今度は2人に聞いてみたいんですが、転職される際に、リクルートを選んだポイントは何だったのかを教えてください。じゃあ先に三浦さんからお願いします。
三浦:はい。私が転職をしてきたのが2019年になるんですが、その時のきっかけになったのは、リクルートが持っているデータ基盤の大きさと営業の強さですね。そういうところが1個の大きなポイントになったのかなと思います。
前職ではSIerにいて、そこでデータの受託分析とかをしていました。データの受託分析をやっていこうと思うと、お客さんからデータをもらって分析をして、それの結果を納品するというプロセスになります。
(そうなると)3ヶ月のプロジェクトの期間でデータをもらうのが最後の1ヶ月みたいなこともあって、短納期でデータの分析をしないといけないという歯がゆさだったり、あとはもらったデータが不完全で分析しきれなかったという話もあったりしました。
リクルートの良いところとしては、自分たちの持っている多くのサービスのデータをしっかり社内で扱えるようなところにしっかりと溜めておいて、かつそれらを効率良く分析できるように我々の分析を支援してくれる社内システムがしっかりと整備されているところが1個の魅力としてあるのかなと思っていて。それらを使うことによって、転職をしてきてもすぐに自分たちの持っているデータを分析できるし、それを高速に行うための社内のシステムもある。
あとは組織の仕組みがあるので、すぐにデータサイエンティストとかデータエンジニアの方々がバリューを発揮できる環境にある。こういうところを事前に聞いて、「あ、ここで働いてみたいな」と思ってリクルートに転職してきたといった背景があります。
神里:ありがとうございます。入社後のギャップみたいなところ。実際にデータを使えるというところはギャップがなかったというところだと思いますが、ギャップみたいなものってありました?
三浦:そうですね。当時はやはりそういうところを触りたいと思って入ってきて、そのギャップは起きていませんでした。近年はLLMとかが増えていく中で、やはり社内でそういうものも作っていきたいという動きがあっても、コストとかの関係性でできないところもあったので。そういうところは今後も我々が「もっとやらせてくれ!」としっかりとアピールをして実現していくところなのかなと思います。
神里:なるほど。ありがとうございます。次に山本さんお願いできますか?
山本:そうですね。もう4年ぐらい前なので当時の気持ちはちょっと覚えていないんですけど(笑)。たぶんミーハーな理由もあって。当時見ていた勉強会とかカンファレンス的なところで、リクルート社員の方がデータ基盤みたいなところについて発表しているところとかを見て、すごく良く整備されていて、体系立てた理論があるんだなということや、環境がすごく良いんだなみたいなことを感じて、それで入ったところはありますかね。
神里:ありがとうございます。それでは、本セッションは以上にしたいと思います。本日はありがとうございました。
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