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グループ経営を支えるシェアードサービスの挑戦とデジタルの民主化 西田圭一氏講演(全2記事)

2023.12.25

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組織内に壁を作るのは、リーダーがかぶる「強がりの仮面」 自然と結果がついてくる「関係性の質」を高めることの重要性

提供:株式会社ドリーム・アーツ

「社会の荒波を乗り越える」をテーマに、ビジネスに必要な教養と視点を身につけ、リスキリングの重要性について議論するビジネスカンファレンス「Climbers Reskilling EXPO 2023」。今回は、大企業向けの業務デジタル化クラウド「SmartDB(スマートデービー)」を使って行われた、KDDI株式会社のシェアードサービス導入の様子を紹介します。本セッションでは、コーポレートシェアード本部の西田圭一氏より、大きな壁にぶつかった時の「向き不向きより前向き」という考え方が語られました。

シニア向けスマホ教室で得た「教えてもらう」の気づき

西田圭一氏:みなさん、こんにちは。今日はありがとうございます。このようなリアルコンベンションができるのは本当に久しぶりで、私も緊張しております。今日はよろしくお願いいたします。

ドリーム・アーツさんから紹介いただきました、西田と申します。実は先月、大阪に出張してきました。南のほうの、比較的過疎で苦しんでいるような地域でもあったんですが、そこの公民館に、20人くらいのシニアの方に来ていただきまして、スマートフォン(の使い方)を教えるアシスタントをやってきました。

KDDIでは「業務の1パーセント活動」といって、コーポレート・管理部門であっても、年間で2日ほど、お客さまに接する活動をやっています。私はその活動でスマートフォンの操作説明をしに、おじいちゃん・おばあちゃんのところにお会いしてきました。

(説明会は)3時間ほどやります。おじいちゃん・おばあちゃんはみんな集中していて、スマホに触ったことがなかった方でも、終わった頃にはもう普通に株価を調べたり、驚くことに料理のレシピを音声検索をするようなところまでいきます。本当にすごいと思っています。

私は自信満々で臨んだんですが、上手く教えることができなかったんです。けっこうバタバタしてしまいました。

私の父はもうすぐ90歳になります。私がスマートフォンを買ってあげて、LINEができるようになったんです。父母もそうでしたが、スマホの指のタップがお年寄りにとってはなかなか難しいんです。

そのへんで「なかなか(うまく)いかないな」と思っていたら、教室に来られたおばあちゃんに「あなたのせいじゃないのよ。本当に私の指が乾いているから」と、逆に慰めていただきました。逆に勇気づけられました。

ホームボタンの場所がわからなかったり、スワイプができなかったり、お客さまの身体的な制約があったり、理解に差があったり。私は「教えてあげよう」と思っていたのですが、大事なことに気づきました。

そうではなくて、お客さまから「何がわからないのかを教えていただく」というマインドセット。これをスマホ教室で学んできました。今日のお話にもつながるのでご紹介していきたいと思います。

「向き不向きより前向き」の信念

私の信念になります。

私はKDDIのグループ会社向けに、経理や人事や購買などいろんな業務がありますが、クラウドで統一して、いろんなクラウドを組み合わせることでコーポレート領域のサービスを提供するシェアードサービスの部隊を率いています。

グループ会社と言いましても、KDDIの場合、国内・海外合わせて200社ほどあります。どちらかというとラインやメーカーのような、バリューチェーンの中の子会社も少しありますが、飛び地の会社が多いです。いろんなジャンルの領域の会社があるので、先ほどのおじいちゃん・おばあちゃんの話のように、各社さまざまな制約や成長ステージがあります。

最近できた会社から50年前からある会社まで、さまざまな会社があるんですが、今シェアードのサービスを提供していて、そこが難しさでありおもしろさだと思っています。

ここで私の信念をご紹介させていただきます。

「向き不向きより前向き」。この言葉を、自分自身にも仲間にも伝え続けています。コーポレートシェアード本部は、実は昨年作ったばかりです。子会社型ではなく本体設置型の、新しいタイプのシェアードサービスセンターを作りました。

今までのシェアードサービスは、紙やハンコといった部分や人の目検のところ、手作業のところを労働集約型で、シェアードに集めて効率化するという流れがありました。

KDDIのシェアードサービスセンターでは、フルクラウドでデジタルプレイスをベースとして、コーポレートスタッフの新しい働き方と働きがいを作ることを目指しています。それに共鳴する仲間にジョインしていただくかたちでスタートしています。

壁に立ち向かう「勇気」が必要な時に使う言葉

業務プロセスはけっこう岩盤で、なかなか変えるのは難しい。これを変えていきたい、やりたいという気持ちがないといけません。その気持ちがないと、変革プロセスは続かない。

それから、何かを変えようとすると抵抗勢力が必ず出てきます。抵抗勢力が悪いかというとそうではなくて、特にオペレーション業務はミスが許されない、正確でなければならない(ので)、しっかりとカチッと(ルールやプロセスが)固まっているわけです。

そうなると、なかなか変える勇気が出てこない。なので、その(しっかりとカチッとの)部分をしっかり対話をして変えていく。これは本当に難しいところです。マインドセットが何よりも大事です。基本的には「向き不向きより前向き」のスタンスで臨んでいるところです。

実際に業務改革をする時に、目の前に壁が立ちはだかったとします。いろんな壁がありますよね。真正面から壁に向かう勇気が必要な時。それから自分やメンバーに勇気を出してほしいと鼓舞する時。その時に、この「向き不向きより前向き」という言葉を使わせてもらっています。

CFOとしての自信を喪失した、大きな壁にぶつかる経験

ここで、私個人の「大きな壁にぶつかった話」を紹介させていただきます。今から12年前の話になります。12年前というと、クラウドという言葉が日本でも出てきた頃ぐらいの話だと思うのですが、私はKDDIで連結決算の責任者をしておりました。

辞令を受けて、新しく参画したケーブルテレビのグループ会社に出向を命じられました。12年前です。CFO取締役として、すごくわくわくして張り切って行ったんですが、大きくつまずくこととなります。

まず私の気持ちとしては、「やってやるぞ」という気持ち。それから、いつの間にか上から目線になっているんです。M&Aというかたちで、私は取締役CFOとして長くあるケーブルテレビ会社に、ある意味落下傘のように降りてきたわけです。

そういう自分をしっかりと理解しないまま、私は私なりのタスクやKPI、売上や利益、設備投資にキャップをはめたり、もっともっとデジタル化を進めようと、結果をとにかくKPI化したり、どんどん「やろう、やろう、やろう」ってやってしまったんです。

一定層には響いたんですが、どうもうまくいかない。そんな中で取締役CFOとして自信を喪失して、なかなか眠れない日が続いたのを思い出します。どうしていいのかわからなくて、もがいた日々でした。

基本に立ち返り、「関係性の質」を高める

出向して1年が経ち、そこであらためて基本に立ち返ろうと思いました。それで気づいたんですが、結果がほしいんだったら、それを求めるのではなく、まず周りにいる人たちに目を向けよう。株主もいれば、同じように出向で来ている人、プロパーの方もいれば営業の方もいれば、運用保守の方もいるという、それを忘れていたんです。

仲間との「関係性の質を高める」ことにまず集中しようと、シンプルに思いました。そして背負っていたKDDIという看板を下ろして、ケーブルテレビ会社のCFOとして、従業員のために何ができるかという視点で、すべての仕事をやり直していったんです。

各局を回って、現場の意見を聞いたり勉強させていただくことを続けていき、「強がりの仮面」を外す。どうしても「CFO」という仮面をかぶってしまうんですが、それをいかに外せるか。

会場にお集まりのみなさんも、おそらく各組織で重責を担える方々だと思いますが、我々が想像している以上に、周りの人は強がっている人に対してものすごく壁を作ってしまいます。だから、自分自身に戻る。本来の西田圭一を出していく。これをとにかく1年間やったんです。

それは自分にとって、自分が何者かを見直すいい機会になりました。結果、そうこうするうちにだんだん「関係性の質」が高まって、なんでも言い合える仲になりました。メンバーに指示をしなくても、どんどん自律自走が始まってくるんです。

関係性の質を高めれば、自然と結果がついてくる

そうなってくるとしめたもので、その時に結果がだんだんついていくようになりました。

当時の環境として、ケーブルテレビは各家庭に普及し、革新的なスマホ=iPhoneが登場したころです。みなさん覚えていらっしゃいますよね。

当時光ケーブルがようやく家庭にも引かれた頃で、このインターネットとスマホとケーブルテレビをセットにした「スマートバリュー」という割引サービスが追い風になって、業績が良くなりました。結果的にステークホルダーや従業員の方から信頼を勝ち得たかたちになります。

「向き不向きより前向き」というところで、壁が出てきた時に、自分の周りの人たちとの「関係性の質」を高めていく。本当にシンプルなようで、ここに立ち返れるかどうかがすごく大事だと思います。

どうしてもリーダーはKPIや目標、目的に向かって「いくぞ」となってしまうのですが、その前に関係性の質を高めれば、自然と結果がついてくる。それを学んだ2年間でした。

事業が外に飛び出していく「サテライトグロース戦略」

これから挑戦していくことの話です。KDDIは「KDDI VISION 2030」を掲げております。「つなぐ力を進化させて、誰もが思いを実現できる社会をつくる」。これがKDDIグループの2030年の大きな目指す方向性です。その中心が「サテライトグロース戦略」です。

こちらはどういうものかと申しますと、5Gの通信の技術を真ん中に置いて、これを「太陽」とみなします。その周りを衛星が回っているとイメージしてみてください。

5Gの技術はあらゆる領域に溶け込んでいます。太陽である5Gの周りにDX、LX(ライフトランスフォーメーションの略)の領域のもの、金融。それからエネルギー、地域共創、さらにその外には宇宙であったり、教育のビジネス、エンタメのビジネス、モビリティ、ドローン、健康、ヘルスケア(などがあります)。

スマートドローンという、ドローンの社会実装をやっている会社がグループの中にありまして、これを我々でフルサポートしています。こういった領域を5Gが照らしていく、要は技術で支えていく、人で支えていくというかたちになります。

このサテライトグロース戦略の特徴は、ビジネス、事業が外に出ていくことです。KDDI本体の中にいるのではなく、飛び出していく。そうすると「遠心力」が働きますよね。これは成長には欠かせないものだと思います。親から離れて自立していく、攻めのモデルです。

一方でビジネスはリスクを伴いますから、そのリスクから守ってあげないといけない。ですから「求心力」、束ねてあげる力。共有、シェアリングする力。そしてよろこんでいただくことを原動力にする「利他の心」をベースとしたコーポレートシェアードの必要性が出てくるわけです。

コーポレート業務をフルクラウドでつなげてデザインする

私たちは現在、KDDI本体と、グループ会社に経理、購買、人事などのコーポレートサービスを提供しております。人事は給与のサービス、勤怠管理のサービス、それから採用の支援もやっています。国内グループは現在約100社あるんですが、サービスを提供しているのはまだ33社で、これからどんどん広げていきたい(と考えています)。

さらに、先ほどのサテライトグロースで、これからもたくさんのグループ会社ができてきています。そこに行く人たちはもちろん経営経験のない出向者もいれば、新しくキャリア採用で入ってきた仲間もいる。そういった方々に対しては、生まれた段階の赤ちゃんだと思って、「かかりつけ医」としてゼロからサポートをさせていただいています。

規程類の整備、業務プロセスのデザイン、そしてゼロトラストのパソコンにMicrosoftをのせて配布してあげる。さらにはプラスチックカードになりますが、社員証を作ってあげる。こういったところまで、ハンズオンでお手伝いをしているところです。

私たちは、サテライトグロース戦略を下支えするプラットフォームになることを目指しています。事業が成長し拡大をすると、業務やプロセスもさまざまなものがどんどん増加し続けますね。

コーポレート業務は、小さい会社にも必要です。ただそこにいる総務担当は1人で、経理も人事も購買も、ことによっては企画もやっている。そういう状態の会社が実はグループ会社にはたくさんあり、日本のスモールビジネスもおそらく同じような状況があると思うんです。

そういう意味では、コーポレート業務をクラウドでつなげてデザインをして助けてあげる。このビジネスモデルはKDDIグループだけにとどまらないのではないかなと、最近思っているところです。

なによりもビジネスでがんばっている人がビジネスに集中するために、「それ以外はコーポレートです、お任せください」という関係性にできれば、すごくうれしいなと思っています。

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