2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
アルムCEOの話(全1記事)
提供:株式会社ディー・エヌ・エー
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坂野哲平氏:メディカル事業本部の坂野です。私たちディー・エヌ・エーが取り組んでいる、医療DXについてご説明いたします。デジタルコンテンツ技術が医療の革新を支えています。デジタル医療は、今非常に医療現場から求められており、さまざまな技術が必要とされています。私たちディー・エヌ・エーが取り組んできた要素技術がどのように使われているのかをご説明させてください。
私たちはグローバルなプラットフォームを構築しています。ですが、実際私たちだけで実現できる話ではありません。さまざまなグローバル企業、医療ベンチャー、行政など、さまざまなパートナーと組みながら、プラットフォームを構築してグローバルに展開をしています。また、これから50年後、どのような未来が待ち受けているのでしょうか? 私たちの技術によって実現できる医療の未来について説明いたします。
スライドの左に映っているのは脳外科医です。手術を勉強したいという場合、今までは手術室の中にみなさんが集まっていました。医療者が1ヶ所に集まれば感染症のリスクもありますし、さまざまな物理的な拘束にも引っかかってしまいます。
例えば「今から緊急手術をします」という場合。今までは飛行機や電車を乗り継いで、勉強をしに行っていました。ですが、病院をネットワーク化すると、(スライドを示して)このように脳外科医の先生が、遠隔にいる執刀医の先生をサポートすることができ、勉強する立場として考えても、リアルタイムにアクセスできます。
例えば執刀をサポートする場合、手術は時間の経過とともにどんどん進んでいきます。状況をリアルタイムに正確に把握するためには、ディレイがない映像配信、圧縮技術など、さまざまな技術が求められます。ストリーム配信技術は私たちが「Pococha」であったり、ストリーミング事業をやってきた中で、このあたりは非常にサポートできています。
(スライドを示して)こちらに映っているのが、血管造影されている映像です。手術が長引いて良いことは何一つありません。リアルタイムに状況を把握できることにより、リアルタイムに指示を出してサポートすることができ、患者さんの予後にプラスに影響するというさまざまなエビデンスが発表されています。
下(の画像)が手術室の前にある前室と言われる部分です。外部から、技師、指導医など、さまざまな人が来てこのようなかたちでサポートしているわけですが、緊急で夜間に手術をする場合でも、このようにインターネットを使って、場合によっては家からサポートできるといったことが新しい技術革新によって実現できています。
例えば、脳卒中、心筋梗塞、大動脈解離、循環器の急性期疾患は1分1秒を争います。1分経過するごとに170万個の脳細胞が死ぬと言われており、脳卒中の予後を良くするためには、いかに専門医が患者さんの状況をリアルタイムに把握できるか、診断から治療までのプロセスをさっさとすっ飛ばしていくことが非常に重要です。
(スライドを示して)これは脳外科医の先生が自宅や医局から、手術現場、ないしは傷病の現場にいる先生方に指示を出しているシーンです。私たちは技術を開発し、このスマートフォンでアクセスできる環境を用意することで、脳卒中の専門医がどこにいても臨床現場をサポートできるようにしています。
また、医療情報は機微な個人情報の塊です。いかに不必要な個人情報をやり取りしなくて済むか。例えば「今から手術する人が田中一郎さんである」とわかる必要はありません。「40代男性で脳梗塞の疑いあり、このような手術が必要です」といった時に、必要な情報をいかに届けるのか。必要な医療情報・個人情報をどのようにセキュアに扱うのかというのが私たちのテーマです。
世界中でさまざまなAIの研究開発がされています。(スライドを示して)こちらはチリのAI開発企業です。発展途上国においてはCTやMRIが日本のようにそこらへんにあるわけではありません。X線が非常に安く撮影できるので、チリの企業が開発したX線からCOVID-19の診断をサポートするAIを、チリ以外の発展途上国に提供するということに私たちは取り組んでいます。
(スライドを示して)こちらはブラジルのAIです。ブラジルのAIは、呼吸器の疾患全般に、さまざまな診断結果を確率論で出しています。(スライドを示して)こちらもX線から全般的にある程度の呼吸器の疾患を診断するサポートのAIです。
(スライドを示して)こちらは脳卒中(を診断する)AIです。脳梗塞や頭蓋内の出血を検知しているわけですが、単純に検知するだけではなく、この脳梗塞によってどれほど壊死が広がるのか。脳細胞がどれほどのダメージを受けるのかという将来予測も含めて出すAIです。
(スライドを示して)こちらは認知症(を診断する)AIです。今、人類は認知症になるか、なる前に亡くなるかという問題に直面しています。高齢化が進むことによって、ますます認知症患者が増えています。ですが、非常に難しい診断領域です。認知症の診断プロセスにおいて、海馬や海馬傍回と言われる脳細胞の萎縮を見るのが非常に重要ですが、脳細胞は非常に満遍なく広がっているため、頭を開いても「この部位が海馬です」と一発で見分ける人はなかなかいません。
それをMRIの画像解析により、海馬が1年前と比べてどれぐらい萎縮しているのかをわかるようにすることで、適切な治療もしくは服薬につなげています。私たちのプラットフォームと、アルゼンチンのAI企業が連携してこれを実現しています。
(スライドを示して)こちらは眼科で撮影したものです。この赤くなっているのが病変部位です。緑内障など、さまざまな目の病気を表しています。ブラジルのベンチャー企業と提携して、撮影機器で撮影すると病変部位と病名を出しています。お薬で治せるものなのか、すぐに処方に入って治療に入れるべきものかが判断できるというのが特徴です。
(スライドを示して)こちらは私たちがオリジナルで開発した認知症(を診断する)AIです。脳機能は、先ほどお話しした海馬や海馬傍回だけではなく、さまざまな脳の部位が人間の認知機能を司っています。さまざまな脳部位との相関を今の認知機能と組み合わせて見ることにより、例えば運転はまだできるのか、日常生活に支障をきたしていないのか、などの認知機能の検査もこのAIでやっています。
(スライドを示して)そしてこれが、現在の手術現場のシーンです。実際に手術を行う時は、この2人だけで行えるわけではありません。さまざまな技師、看護師、他のサポートをするドクターたち、ないしは整形分野だと、医療機器会社、カテーテルだとカテーテルメーカーなどがサポートに入ります。そこをオンライン化することによって、プラスの側面がさまざまあります。
先ほどお話ししたような教育、ないしは手術の状況・場景が確認できることにより、適切な指示が出せる。手術現場で起きていることを他の専門医が見ることによりサポートに入れる。あとは、手術器具メーカーや製薬企業もオンラインで立ち会うことにより、適切な医薬品・医療機器が使われているのかをサポートできます。
こちらの画像では、専門医のドクターが「Google Glass」をかけています。民生品のデバイスを活用して私たちのプラットフォームに載せることにより、より具体的に患者さんの状況や手術の進行状況だったり、今抱えている課題だったりを見える化できます。術者の手元もリアルタイムに把握できるように、さまざまな機器を導入して見える化をしています。
監視カメラも手術室にこうやって付けることにより、実際に正しく手術が行われたのかを確認できます。生体情報モニター、心電図、血圧、脈拍などリアルタイムのデータを遠隔から見ることにより患者さんの今の状況をより正確に把握でき、適切な指示ができます。
このような要素技術を取り出すことにより、私たちは医療現場や臨床ニーズに対応していくということに取り組んでいます。ライブ配信事業から培われたストリーム配信の圧縮・解凍・暗号化・復号化のさまざまな要素技術が臨床現場でも使われています。研究開発しているのは、臨床現場で使えるさまざまなIoT技術、センサー技術、医療機器との連携です。
例えば新しいAIだと、生体情報モニターが危険信号を鳴らしているということをAIが素早く認知することにより、上級なサポートが入るということが期待できます。そのような連携が、AIと医療機器、IoTのセンサー技術を組み合わせることによってできます。生体情報モニターも、さまざまなものが実際に臨床現場で使われています。
患者さんのさまざまな情報を取り、状態を伝えるのが生体情報モニターですが、電子カルテなど、さまざまなデータを連携することによって、より精微な情報が提供できます。
今までの手術立ち合いは(スライドの)左のようなかたちで、ドクターたちが1ヶ所に集まり自分の技術を磨いてきました。DX後はこのとおりです。タブレット1個で自宅からだろうと医局だろうと、におい以外のたいていのものの状況を把握して指示を出すことができるし、学ぶこともできる。それが医療DX後の世界です。
私たちが取り組んできたのは医療AI・デジタル医療だけではありません。医療機器とのコンビネーションの開発もやっています。1つは、血管内治療用の器具、新しいカテーテル「ステント」です。脳動脈瘤ができた時に破裂すると、頭蓋内などの出血により3分の1の人が亡くなり、3分の1の人たちが一生リハビリコースになります。そのようなことが起きないように、この破裂を防ぐ医療機器の開発もやってきました。
そのような医療機器の開発だけではなく、その破裂を予測するAIも開発してきました。
もう1つが「Join」。医療者がリアルタイムに患者さんの状況を把握できることにより、より早期な診断、治療につなげます。そうすることによって、1人でも多くの命を救えるというプラットフォームを提供しています。
私たちは、日本での臨床現場への貢献だけではなく、全人類に対してグローバルな展開を目指しています。現在は、海外11ヶ所に拠点を持ち、スタッフの3分の1が海外に配置されています。
「日本で培った医療技術・デジタル医療を組み合わせて世界の人々に貢献する」それが私たちのミッションです。実際に私たちのプラットフォームがどのように使われているのかを少しご説明したいと思います。
(スライドを示して)こちらがヨーロッパです。急性期医療をターゲットに、1人でも多くの命を救うというミッションで海外に展開してきましたが、実際の臨床現場のニーズはさまざまです。臓器移植、集中医療、小児、産科、もちろん脳卒中や心筋梗塞といった循環器のネットワーク、遠隔診療の体制も提供しています。
(スライドを示して)そしてアフリカ。今までは感染症がメインのテーマでしたが、糖尿病、認知症、その他癌など、先進国が今直面している課題にアフリカ諸国も直面しています。
同じく中央アジア・東南アジア、そのさまざまな国の臨床現場で私たちの技術が使われています。
同じく中南米。日本とほぼ同時に展開を始めた中南米は、このように大陸全土に渡って私たちの技術が使われています。
臨床ニーズは循環器だけではなくて、やはりヨーロッパと同じように糖尿病や高血圧といった成人病にも広がっています。アメリカでは、東海岸を中心に事業展開をしていますが、脳卒中のネットワークに関しては現地行政とも組んで広範囲の臨床サポートをしています。
そもそも医療DXとは何か。デジタル化は医療の現場にもどんどん入ってきています。ですが、医療そのものは社会保障そのものです。受益者は国民であるべきだ。その大前提がある中で、DXによっていかに良質な医療やケアを受けられる環境がもたらされるか、その1点に尽きます。
では、50年前にそもそもどのような技術が医療現場にもたらされたのか。半世紀前ですね。1970年代の初頭に出てきた技術が3つあります。CT装置、内視鏡、透析の機械。ここで1つ気づくことがあります。臨床現場にいるとお気づきの方も多いと思いますが、見た目はほぼ今と一緒です。その「あまり技術革新がない」というのが医療現場の実情だと思います。
かたやパソコン、スマートフォンなど、私たちは今当たり前のように情報技術に触れていますが、50年前はようやくAppleが家庭用パソコンを出した時期です。ビルゲイツがまだ会社すら作っていない時代ですね。この時代に日本で大阪万博があって、「50年後の未来はどうなっているか」、「人類はどのような生活をしているのか」といった予測をしていました。
「洗濯機が自動で全部洗濯をしてくれる」、今となれば当たり前です。「人間ごと洗濯してくれる」、介護用浴用装置などには当たり前のようにそのような機能が付いていますが、もしかしたら50年後はこういうことになっているかもしれないと予測された1分野です。「世界中のテレビやニュースが見られるようになる」、インターネットも今は当たり前ですが、これも夢の技術として考えられていました。
「家で音響や空調が当たり前のように使える」、これも今となれば当たり前ですが、人間の生活様式には技術革新が起きました。かたや、この当時に予測されていながらほとんど実現できていないことがあります。1つは病気。外科手術は自動化されているだろう、完璧な薬が出ているだろうと予測されていましたが、まだ人類の死亡原因1位は病気です。
一方で、みなさんもお持ちだと思いますが、スマートフォン。当たり前のように使っているクラウド、AI。そしてロボット技術、カプセル内視鏡、さまざまなマイクロチップが私たちの社会の中に当たり前のようにどんどん入ってきています。人類は情報産業において、その当時予測していた革新をはるかに超えて、技術革新を起こしました。
その意味では、情報化・国際化自体は予想以上に進んだと考えられます。ロボット・AIの活用はまだまだこれからかなといったところで、医療・健康はほとんど変わっていないというのが実情です。
現在の人類の状況ですが、人口増について危ぶまれていたことはもう過去のことです。2080年には104億人をピークにして、人口が減っていきます。人口が減ることにより、日本社会がいかに社会インフラを維持していくのかといったところが、日々取り沙汰されていることはみなさんのご認識のとおりです。
今地球にいる女性の3分の2の出生率がすでに2.1を切ると言われています。寿命が延びればその分人口は伸びますが、出生率2.1を切っている状態であれば必然的に人口はいつかのタイミングで下がっていく。それが2080年です。
そうすると、当然のように近未来に起きることが予測されています。1つは私たちが当たり前のように受けている医療、ヘルスケア、介護。そのようなサービスの崩壊です。今の制度のままでは、確実に維持ができません。そして、私たちが生きていく上でのコストの大半が、食べ物や住居ではなく、医療・ヘルスケアになります。
技術革新がこれからも起きることにより、さまざまな医療機器・医薬品が手に入るようになりますが、コモディティ化されてくる医療機器・医薬品、高度化していくものの、両極端の状況が起きます。医療機器・医薬品の開発は、グローバル化することにより加速することも予測されていますが、それが全人類の手に届くとは限りません。
AI・情報技術が入ることにより、今までお医者さんにしかできなかったことが、AIにも当たり前のようにできる。埋め込み型のセンサーやウェアラブルの技術によって人類の状況がリアルタイムに把握され、リスクもモニタリングされる時代が来るでしょう。その人の経済状況、健康状況、社会状況により、その人が受けられる最適なサービスが提供される時代が逆に来るでしょう。
良いことと悪いこと、さまざまなことが同時に技術と社会的な環境変化によってもたらされます。私たちディー・エヌ・エーは、医療の格差・ミスマッチの解消、グローバルに医療現場が抱える課題に対して技術と情熱を持ってチャレンジしていきます。みなさまとご一緒できることを期待しています。ありがとうございました。
株式会社ディー・エヌ・エー
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