2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:KDDIアジャイル開発センター株式会社
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——IPA(独立行政法人情報処理推進機構)から、2023年2月に『DX白書2023』が発行されました。なかなかポジティブに捉えられないところもたくさん書かれていましたが、今回のDX白書で特に示唆が深かったり、興味深かったところはありましたか?
岡澤克暢氏(以下、岡澤):日本は外部環境の変化への対応が遅いと書いてあって、そこはすごく興味を引きましたね。これは以前から話されていることで、もしかしたら「変化に気づかない」とか「変化したくない」とかもっと根本的なものがあるのかなと。
木暮圭一氏(以下、木暮):DX人材が足りないという記述について、アメリカは減っているのに日本は増えているというところは、やっぱりそういう(DXに本腰を入れる)時代が来たのかなと、逆にポジティブに感じましたけどね。
立場によるのかもしれませんけど、やはりDXをやらなきゃいけないと感じられている企業が増えているのかなと。
平鍋健児氏(以下、平鍋):むしろアメリカは、まだ飽和してはいないけど、そこ(徐々に人材の需要が満たされて飽和していく傾向)が強く出ていますよね。日本は明らかに人材が足りないと思うので。
木暮:アメリカは人材が足りている、余っているというところがあったのでけっこうびっくりしたくらいですね。
平鍋:あと僕が気になったのはこれですね。DXの進み具合は、日本の300人以下の企業規模だとすごく低いんだなと思って。大企業になるほど上がっているけど、これは絶対経営の指針が出ているからそう言っているだけで(笑)。
僕はちょっと、日本の中小が大企業に依存しているというか、変わろうとしていないように見たけどね。これもなんか言ってもあまりポジティブにならないから(笑)。
木暮:もしかすると、中小企業はそれをDXとは思っていないのかもしれませんね。新しい企業が出てきているので、すでに取り組んでいるんだけれども、当たり前と思っているのか。そこらへんをちょっと読み解きたいですね。
平鍋:わかる、わかる。星野リゾートなんて、「DX部門はあるんですか?」「いや、全員がDXやっているので部門なんてないです」というふうに、すごくまっとうにやっているなと思います。そういうやり方のところもあるんでしょうね。
岡島幸男氏(以下、岡島):私が気になったのはちょっとマニアックなんですけど、成果評価の傾向を日米で比較している図表1の17。日本は成果評価もすごく内向きなんだという結果が出ています。
アメリカなどでは外に向けてバリューを出したか、儲かったかというのを、定期的にちゃんと評価するんだけど。日本はそういうものはあまり評価しないし、どちらかと言うと時間が短縮できたといったことは見るけど、ほかはぜんぜん……。
平鍋:価値創出の方向じゃないと。
岡島:そうです。つまり「DXをやりました!」という時に、いわゆるPoC疲れ・PoC倒れみたいなものがこういうかたちで出てくるのが、すごく如実に出ているなと思いましたね。ちょっとやり始めても、この程度で終わっているところが多いので、実態としては、データよりも本当の意味でのDXは進んでいないんだろうなと思います。
平鍋:図表1の12で明らかなんだけど、日本と米国の比較でほとんど変わらないのが物理データのデジタル化の話とか。効率化による生産性の向上は、日本とアメリカであんまり変わっていないんですよ。だけど、本丸のはずのサービス創出になると明らかに変わっていて。僕もここ(価値創出)をもっとやりたいよねとすごく思うんですよ。
岡島:そもそも冒頭で、デジタルトランスフォーメーションを本来のデジタルトランスフォーメーションとデジタルオプティマイゼーションに分けている時点で、日本の弱気さ……つまり、そう言わないとDXの中に含められないなという白書側の本音も見えているというか(笑)。
本当の意味合いのDXは、日本ではほぼできていない、やばい。じゃあデジタルオプティマイゼーションというカテゴリーにいろいろ押し込んで……と邪推しちゃったり。結局、そのままいくと、ちょっとコスト削減してみたというふうになるんだろうなというのが見えてしまいましたね。
木暮:我々はそれをコーポレートDXとビジネスDXという言葉に置き換えて言っていますが、それもわかりやすくしているだけなので。
平鍋:図表1の17は、僕もこれは評価になっとらんやろと思って(笑)。
岡島:そうそうそう!(笑)。
平鍋:内部効率の話ばかりして、顧客視点評価がほぼないんですよ。
岡島:そうなんです。ぜんぜん評価になってないんです。これは確かにすごく大きな課題だと思いますね。
木暮:評価のところでは、DXとOKRはすごく親和性があると思っています。日本の場合、MBOしか根付かないのもそういうところなのかなと。決めたことをかっちりやる風潮があるのでDXが進まないんじゃないかと思っていて。
OKRは、我々もいろいろ試行錯誤しながらやっているところがあるんですけど、もしかしたら「OKRが根付く会社はDXが進む」と言えると、1個切り口が広がるんじゃないかなと思います。
——なるほど。深掘りできそうなところがたくさん出てきたので、次に進んでいこうと思います。永和さんとKAGさんは、それぞれのメインとなる拠点が東京や福井にある中で、(地域的な違いもあるかもしれないのですが)DXの現状についてはどうでしょうか?
実際のプロジェクトの肌感としても、DX白書に書いてあることと一緒なのか、もう少し違いがあったりするのかとか。
平鍋:ポジティブな話をしたいなぁ(笑)。例えば銀行という業界は、これまではミスをしないことが最も重要で、非常に大規模なシステムをかっちり作るというイメージがありました。
うちもそういう仕事もたくさんやってきたつもりなんだけど、今はインターネットバンキングやスマホの利用が増えたり、使う人の年代が下がっているんですね。そうなった時に、従来のやり方では価値が作れない。銀行(の中の方々)はすごく頭がいいから、実はみんな気づいていて。
今までの基幹系の部隊とは別に、価値創出ができるインターネットバンキング部隊やスマホ部隊を作ったり。例えば、自分が持っている人脈や教育というお金以外のものを資産として定義して、そこに対してサービス(を提供)しようというコンセプトでチームを作っていたりします。
北國銀行さんも、北陸地方が今後コミュニティを作っていく時に、何かインフラがほしいだろうと。そのインフラは、今は絶対インターネットのはずで、それを誰が作るのかというと銀行だろうと。つまり、地域が発展するためのインフラを作るのが銀行の仕事であって、それがDXだと定義しているんですよ。めっちゃかっこよくないですか!
岡澤:かっこいいですね。
平鍋:そのために新しくデジタルバリューという会社を作って、そこで人材を育成している。ただ、今までのように、銀行はミスしちゃいけなくて、大規模な開発をウォーターフォールプロセスでかっちりレビューをしてというのも残っているんですよ。
だけど、そこからバリューを作り出す側にも、うまく新しいリソースとやり方やアイデア、新しいパートナーシップを作り出そうとしているのが見えて。それは僕の肌感としては、DXのすごくいいかたちだと思います。
岡島:本来のDXですよね。
岡澤:ビジョンを作って、どこに行くのかというところと、自分のビジネス領域じゃないところも見据えて進んでいっている感じですよね。
平鍋:そうなんですよ。そこで自分たちの価値の新しい再定義をしているんですよね。(従来の銀行業務と)陸続きで再定義をしているところが地に足がついたDXの形かなと思っているんですけど。
岡澤:よく「飛び地に行くんじゃなくて、自社のDNAから派生していくところに行くよ」と言いますけど、まさにそんな感じがしますよね。
木暮:私がお客さまと話す機会では、やっぱり「どこからやっていいかわからないんだけれどもDXしなきゃ」というケースが多いんです。でも、まず経営からそういうふうに下りてくること自体、1つDXが進み始めたのかなとすごくうれしく思っています。
ただ担当は、どこをやっていいかわからなくてけっこう困っているのが正直なところなので、トップ層でDXの大きな道筋を作ったほうがいいケースがあるんじゃないかなと思い始めていますね。
平鍋:「DXやって!」じゃなくて。
木暮:あとはDXをやるんだけれども、失敗を許容すること。「失敗できないDX」を押し付けられると、萎縮しちゃうと感じますね。
岡島:「社運がかかったDXだぞ!」とか言われるとつらいですよね。
木暮:そうそう。(岡澤さんも)お客さまとけっこう会話するけど、どうですか?
岡澤:(自分で)「DXをやりたい」と思ってグイグイ引っ張っていく人が1人いると、やっぱり思いも伝わるし、社内をなんとかしようという思いがあるとすごく感じています。
そうじゃない人と話す時って、「そもそもどこに(向かって)行っているんだっけ?」という話をこちら側がヒアリングしていくことが多いですね。
木暮:CDOとは言わないけど、部長クラスにDXへの思いや理解があると進むよね。
岡島:おっしゃるとおりキーマンの方に出会えるかどうかで、その後のDXがガラッと変わるというか。
社長から言われたDXをこなしているだけの人だと、そのあとの商談もまったく進まないし、もし仕事になっても頓挫することは本当によくある感じがします。
私はマーケティングもしてるんですけど、いかにそういう人と出会えるかにすごく心を砕いています。イベントを企画するのも、キーマンに会いたい、どういう流れなら会えるかなと考えていて。当たり前ですけど、ここ数年で、思いを持った人がいないとぜんぜん進まないと実感しましたね。
木暮:思いを持っている方と権限を持っている方が一致しない場合の比率はどうですか?
岡島:部長さんで思いを持っている人にはあんまり会ったことがないかな。1個下の課長や係長クラスの人が多くて……いわゆるリーダークラスの方でしょうか。
リーダークラスの方が熱いので、どうしてもその方と協力して上を口説くのを支援するかたちになります。その人と「一緒にがんばりましょう!」と話をして進めていく。トップレベルから「やるぞ、オー!」というのもなくはないですけど、経験上はあまりないかもしれないです。
平鍋:トップが思いを持っていて、それが形となった経営計画の中にアジャイルやDXについての文言があると、熱を持った人が動きやすいんですよね。
岡島:大義名分が立ちますね。
木暮:やっぱり、トップが「DXをやれ」と言った時にそれを翻訳したり、ベースを作るような地ならしをしないといけないので。トップダウンとボトムアップの両方がうまくはまらないと、実はDXはうまくいかなかったりするんですよね。
岡澤:僕も7月から外に出てお客さまと話したり、いろんなイベントに登壇するようになって、DXに対して何かやろうという声は、本当に多い気がします。ただそれが本当のDXなのかと言うと、すごく難しいところではあるんですけど。
木暮:そういう時は、DXをその状況に合わせて定義して導いてあげれば、進められる人もいるので。我々にとってはビジネスチャンスと捉えたほうがいいんですよね。早く現場に合うものにできる方法があるといいですよね。
——続いてのご質問です。DX白書には、都心部のほうがDXが進んでいて、地方はなかなか進んでいないと書いてあったと思います。今のみなさんのお話を聞いていると、実は都心か地方かはそんなに関係ないのかなとも感じたんですけれども。DXは都心からしか進んでいかないのでしょうか?
木暮:企業規模うんぬんはありますけど、DXにはITが必要なので、DXを推進するITパートナーがいるかどうかは1つ大きいのかなと思います。(そういう意味で)都心部のほうが経験が蓄積されているところはあるかもしれませんし。リモートなどでもそこの差は出ちゃうのかなと思います。
岡島:私は副業でCDO補佐官として自治体のDX支援をしているのですが、地方は人口が少ないので、ITがわかる人も少ないと実感してるんですね。(人口に対しての)確率の問題だとは思うんですけど。
今人口1万人程度の町の人たちとDXをやっていて、スキルはそれほど高くはないのですが、気持ちはちゃんとあるんです。ただ、然るべきサポートはたぶん足りていなくて、「どうしていいかわからない」という声は聞きます。
そういうところを支援するのが、私の仕事の1つではあって、もうちょっと支えてあげれば、規模や地域に関わらず前進できるはずだと思っています。
あとおもしろいのが、(私が)自治体の支援をしているある町では、うまくやっているなと思うのは、わりと中心メンバーが元民間の方なんですね。
平鍋:あ~わかる、わかる。
岡島:元民間の人が入っていて引っ張っているんです。いわゆるセンター・オブ・エクセレンス(CoE)で選ばれた人の中に、最近まで民間で働いていた人が何人かいます。
民間活用と言ったら変ですが、別に自治体の人がダメというわけではなくて、民間で培ったなんらかの要素はきっとあるんだろうなと。我々が支援するだけではなくて、なんらかのファクターがないと中からも動かないのかなというのはすごく感じますね。
平鍋:たぶん外部から来た人や異文化を取り入れないと、中から変わるのはすごく難しくて。人間関係も固着しちゃってるし(笑)。あいつはあんなやつだってだいたいわかっている中で、事を荒立ててやっていくのは難しいから。
パートナーなのか採用なのか、あるいはCDOなのかわからないけど、違う文化を入れて、内部調整がうまい中の人と組んでツートップでやっていくのがいい型じゃないかなと思いますね。社内から手を挙げた人やビジネスの強みを持っている人に加えて、外部のエンジニア、デザイナー、アジャイルコーチを入れてチームを作る。異文化を含むチームと社内をうまく接続する形態です。
岡澤:地域の話になってくると、さっきの人口比率のところに戻りますが、もしかしたらダイバージェンスの起こる確率が低いかもという。
岡島:ああ、それはあるかもしれませんね。どうしても小さい企業や田舎の企業のほうが、年齢や性別が固まっている気はしますし。都会だと多様性は高そうですよね。
平鍋:人材の流動性の高さもあるんじゃないですかね。やっぱり都会のほうが、人材市場としては動いていますもんね。
岡澤:そこはリモートワークなどで解決できるものなんですかね?
岡島:今だとあり得ると思います。今はリモートを前提にして、やっと流動性が高められるシチュエーションになってきたような気はします。
コロナのせいで移動がしづらかった時代背景もある中で、リモートならば手伝おうかとか、リモートだから遠くの会社のDX支援を受けてみようというのがやりやすいというのは、確かに出ていると思いますね。
岡澤:岡島さんはCDO補佐官もオンラインでやっているんですか?
岡島:基本的にはリモートですね。でも私は現場に行きたかったから、2ヶ月に1回くらいは行って、残りの半分はリモートでみたいなかたちです。それぞれの良さはあると思うし、移動できる距離なので。すごく遠かったらそうもいかないと思いますけど。
私はよく遺伝子と言うんですけど、結局、意識しているのは種を植え付けてくることです。ずっと支援はできないので、そこに行って誰かに残していく。
木暮:自立させるしかない。
岡島:それしかなくて。私のような副業じゃなく、メインでDX支援をしている場合も一緒だと思うんです。結局フルコミットでずっと一緒にはできないこともあります。
たぶんコーチでもそうですよね。私たちの会社も、コーチは月に何回かしか会えないとなると、レバレッジを高めるために1回に対してのレバレッジを高めて、いい意味でその人をどれだけ“洗脳するか”を意識しないとならない。
仲間をつくったり、さらにその人が仲間をつくる支援をするような、ネットワークづくりをすごく意識しています。やっぱりそうしないと広まっていかないので。そのために、リモートというのは本当に便利な仕組みだと思いますね。
木暮:本当はそこに移住なども絡めるのがいいんですけどね。そこらへんはふるさと納税も活用した地方自治体の戦略があるといいですけどね。
岡島:ああ、そうですね。
平鍋:岡島さんがやっているように、外部からの支援というか、知恵や行動力。外からだと雰囲気を読まずに言えたりするので、やっぱりそういうものが必要だと思います。
岡島:いい意味で空気を読まないのも必要ですよね。
平鍋:そうそう。僕は、DXを始めるにあたってどういうチームを組むかがすごく本質的な気がします。経営からのコミット感がちゃんとあって、その中に1人、「俺の仕事だ」と思ってやっている圧倒的な当事者が必ずいて欲しいんです。
その人の周りに、専門的な知識を持った人、調整ができる人、社内政治がうまい人を含めてチームを作ることが僕は本当に肝だと思っています。
岡島:外から入って率直にフィードバックして、お客さまや自分の関わるチームを良くしていくという意味では、エンジニア問わず、アジャイルの経験がある人はすごく有効だなと思います。
DX白書にもけっこうアジャイルのことが入っていて、アジャイルがほぼDXの前提になっているところはすごく実感しています。アジャイルをやっているとDXができるような単純なものではないんですけど、逆にアジャイルをやらなくてもDXがうまくいくかと言われると、あんまりピンとこない。
木暮:イメージが湧かないですね。それはわかります。
平鍋:アジャイルをやっていると、「まずこんな絵を描いてみようか」とか、みんなで話す場づくりをするじゃないですか。だけど、やったことがない人だと、きっちりした企画書を持ってきてみんなでレビューして、課題点を指摘するようなことをやり始めてしまう(笑)。
岡島:ですよね。
岡澤:なるほど。
木暮:ふわっとしたものを受け入れることから、DXは始まるのかもしれませんね。
岡島:そう思います。
平鍋:その時には、やっぱりファシリテーションができる人が必要なんですよ。
岡澤:まずはモヤモヤを見える化していくところからやっていく。さっき、アメリカは海外の特定技術を有する企業とたくさん取り組みをしているけど、日本企業はそういうことをしないという話がありましたよね。平鍋さんがおっしゃったように、そもそもチームの組み方が違うんじゃないかなという。
岡島:ありますね。日本はあんまり専門家をばしっと雇うことをしなくて、社内の人を育ててなんとかするというのがありましたね。
岡澤:そうそうそう!
岡島:それも大切なことだとは思いますけど。
木暮:今のジョブ型人事制度は、日本にはなかなか馴染まないところはあるかもしれませんね。
岡島:日本は既存人材の活用は育成が比較的多い。我々にとってはある意味、リスキリングはビジネスチャンスではあるんですけど(笑)。
もう1つ、私が気になったところで言うと、図表1の24の育成方法のところです。アメリカはOJTを通じて育成するけど、日本は支援なしが大半で、はっきり言って何もしないという(笑)。OJTすら「がんばれよ、お前ら勝手に育て」で、ひどいなって。DXだって「よろしく頼むな」みたいな感じなのかなと思うと、なかなか厳しい。
逆に日本の文化がそうだとして、明日からそれが切り替わるものじゃないとすると、私たちがすべきことは、育てるというところの支援は必要だし、求められるはずだとは思います。ポジティブに言えば伸びしろがあると思いましたね(笑)。
——今、岡島さんから「ポジティブに言えば伸びしろがある」という言葉がありましたけど。今後日本でDXを推進していくとしたら、どんなことが必要なのか、どんなことをしたらいいのか。
もしくは、永和さんとKAGさんでどんなことをしていきたいと思っていらっしゃるかを聞いていってもよろしいでしょうか? おそらく4人それぞれでロールが違うと思いますので、それぞれの視点からお話を聞ければなと思います。
平鍋:僕は今もずっと思っているけど、日本は企業のルールや文化という枠が強いんですけど、今はけっこう会社の枠を超えたコミュニケーションが起こっている。
例えばScrum Gatheringや、Agile Japanのように、同じ悩みを持つ人たちが、企業を超えて集まって話をする場がある。もしかすると企業の強い実線の枠よりも、コミュニティという点線の枠のほうが、パッション的には強かったりもして。
企業にはちゃんと給料をもらっていて、僕はそこにプロフェッショナルとして所属している立場ではいるけれども。実は世の中にはいろんなアイデアがたくさんあって、同じ悩みを持った人もいる。そういうことを語れたり、シェアできる場づくりが必要だし、やるべきことなんだろうなと、ずっと思っていますね。
木暮:我々も同じで、コミュニティというフレーズで呼んでいますけれども。DX白書の「支援がない」というところは、如何ともしがたい事実だという中で、自己啓発も含めてどれだけ外に目を向けるかだと思うんですね。
DX白書にもありますが、日本は外からの意見に影響されやすい傾向があります。成功事例や最新の情報を挙げていけば、会社はいつか危機感に駆られて変わっていくんじゃないかなと思うので。外の意見を知ることがすごく必要かなと思います。
平鍋:補足すると、経営者の方には、ぜひ社員に「外のコミュニティにどんどん出て行って、知見を発表したりいろんな人と話してこい」と言ってほしいと思っています。
木暮:特に、海外のカンファレンスは(現地で参加するには)お金も時間もかかるし、それこそ何時間後かには最新情報がわかってしまう。それでも行くべきなのは、やっぱり現地に行くことによって、自分の立ち位置が「遅れているんだ」とか、肌で感じるものもあると思うので。
「コスパがいいか・悪いか」という話じゃなくて、まず行きたいと思い始めるようになると、少し変わってくるかもしれないですね。海外カンファレンスの話についてはどうですか?
岡澤:記事で見るよりも、現地に行って触れたり、人と話すことのほうがぜんぜん(情報量が)多いですよね。もしかしたら、さっきのダイバージェンスかもしれないし、国内で感じられない雰囲気がある。今後どういう方向に行くかとか、どういうパッションがある人とつながれるかといったことは、すごくモチベーションにもなるし。
さっきの平鍋さんの話じゃないですけど、企業を超えた横のつながりがグローバルでできていると、もっとすごいですよね。
岡島:DXやアジャイルの文脈だと、ある意味、企業間は競い合っていますが、コミュニティや横のつながりはそうじゃなくて、自分の所属を超えて学び合い、教え合う空気が良さだし。
それは……DXコミュニティって言うのかわからないですけど(笑)。アジャイルコミュニティだと、すごく自然にそういうかたちになっているのがすごいなと思います。自分は「(企業)秘密でしゃべれません」ということもぜんぜんなくて、どんどん事例を話したり、思いを出している人もたくさんいて。
会社として「行ってこいよ!」という後押しがあるから、みんな言えるのか。20年前は「俺は黙ってでも行くぜ!」みたいな反発心のある人が多かったと思うんですけど。
今はたぶんそうでもなくて、会社の後押しを受けて、のびのびしている人が増えているという、ポジティブな感覚があります。それは大切だし、今後も続けていきたいところではありますよね。
岡澤:「コミュニティへの参加が少ない」「技術的に動いてない」という話が出てくると、永和さんも僕らもスクラムやアジャイルをずっとやってきて、だんだん当たり前になってきているマインドが、こういう場だとできていないのはちょっと悔しい感じが(笑)。
平鍋:(DX白書に)そんなこと書いてあった?
岡澤:いや、僕としてはもどかしい感じがすごくあるなと思っていて。実はDX人材が、アジャイル人材に近い表現になってきている気もちょっとしています。
岡島:まぁそうかもしれませんね。
岡澤:もしかして、アジャイルチームよりもDX人材チームというふうにしたら、伝わりやすいのかなと思ってたりしましたね。
——アジャイルはもはや開発だけではないということですよね。
岡澤:そうですね。そういえばアジャイルの普及に関して、前回まではマーケティングなどが入っていませんでしたが、今回から開発だけじゃなくて組織の運営などにもエリアが広まってきているのは、すごくポジティブだなと思います。
木暮:総務や人事と書いてありますよね。
岡島:確かに、マインドセットの重要性を理解されているお客さまは増えているなと思います。(私がお会いする偉い方でも)ソフトウェア開発手法としてのアジャイルだけじゃなくて、マインドセットとして大切なんだよとおっしゃる方は増えているなと。
いかにそれをうまくやるかなのかなとは思います。今からいよいよ本丸を攻めるというか、「マインドセットを変えられたら苦労せん」という領域なんでしょうね。
岡澤:これからの御社の役割は、「マインドセットが変わったあとのやり方は、我々がフォローしていきますよ」ということかもしれないですね。
岡島:そうですね。ビジネスでどう貢献するかというと、私たちはマインドセットを変えるところを支援してはいますけど、当然ながら代わってあげることはできないので。そこは永遠のテーマになりそうですよね。
平鍋:マインドセットを外部から教える努力をしても、やっぱりその人自身がハンドルを握っているから、何かショックを感じてもらうとかしかなくて。やっぱり、外部で「こんな人がいるんだ!」という感覚に襲われたり、「うちの会社とぜんぜん違う!」という感じるような出会いだったり、場に出ていくことなんじゃないかなと思うけどな。
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