2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:サイボウズ株式会社
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大谷イビサ氏(以下、大谷):みなさん、こんにちは。私、角川アスキー総合研究所の大谷イビサと申します。ASCIIというWeb媒体で「kintone三昧」というkintoneの情報しか載っていないコーナーを数年担当している記者です。よろしくお願いいたします。
本日は「連携サービスもフル活用。約1,000名でkintoneを導入した現場主導の業務改善」ということで因幡電機産業さんのお二方をお迎えして、kintoneをいかに社内に広げ、連携サービスをいかに使ったかについてお話を聞いていきたいと思います。
私は記者ですので、本日は取材を見ているような感じでお楽しみいただければと思います。よろしくお願いいたします。
まず因幡電機産業さんの会社紹介からお願いします。
田中:当社は因幡電機産業と言いまして、従業員が単体で1,830名ほどおります。事業内容は電設資材の専門商社と、空調配管部材のメーカーです。
大谷:規模としては連結2,000人以上なので、いわゆる大企業、我々がいうところのエンタープライズですね。
大谷:次に自己紹介でお二人の役割をお話しいただこうと思います。まず、田中さんからお願いします。
田中:情報システム部で業務システムやITインフラの企画をしています、田中と申します。営業や現場業務は未経験で、ずっと情報システムを13年間ほどやらせていただいています。よろしくお願いします。
大谷:いわゆる基幹システムやkintoneみたいなシステムを担当されていたのでしょうか?
田中:そうですね。10年ほど基幹システムの保守や運用をして、ここ3〜4年は主に営業が使うようなITを推進する立場でやらせていただいています。
大谷:現場のITを推進する立場の青い人ということですね。よろしくお願いいたします。
田中:そうです、青い人です(笑)。よろしくお願いします。
大谷:それでは井上さん、お願いします。
井上:弊社はカンパニーが4つありまして、私はその1つの電材カンパニーの企画室というところに所属し、主に企画、DX、IT業務を担当しています。IT部門に関しては、田中と違って未経験になります。よろしくお願いいたします。
大谷:井上さんはいわゆる情シスではないけれど、現場でITを導入する立場の人になりますか?
井上:おっしゃるとおりです。現場のIT促進をするイメージです。
大谷:なるほど。情報システム部と現場部門はけっこう仲違いしがちですけど、お二人と最初に打ち合わせをした時に、めっちゃ仲が良くてびっくりしたんですけど。
(田中氏、肩を組もうとする)
井上:ちょっとやめて(笑)。
大谷:(笑)。その仲の良さの理由も含めて、お話を聞きたいと思います。
(スライドに)組織内でのkintoneの利用状況が出ていますが、これについて説明いただけますか。
田中:当社は4つのカンパニーと3つの本部で成り立っていまして、kintoneは各カンパニーや本部に全部入っています。
1,830人の従業員のうち、kintoneの登録ユーザーは今1,001人ですね。井上さんが所属する電材カンパニーは、このとおり全員登録されています。
他のカンパニーのセクションは、少ライセンスでスモールスタートしましたが、電材カンパニーは一気に全社員にライセンスを付与しました。
大谷:本部が3つありますが、これはいわゆる会社の管理機能的な感じでしょうか?
田中:そうですね。
大谷:1,830人中1,001人なので、現状はかなりのユーザーさんがkintoneを日々使ってらっしゃるということですね。
大谷:先ほどお話ししたように、今回のテーマは大きく2つあります。1つは、どうやってkintoneを社内に広げたのか。もう1つは、kintoneには連携サービスがいろいろありますが、それらをどう活用して現場主導で業務改善を行ったのかですね。
まず、因幡電機さんにどういった課題があってkintoneを入れたのかについてお話しいただきます。これは情シス主導でやられたのでしょうか?
田中:そうですね。最初は当社の関連会社がkinntoneを使っていまして。そこでの評判が良かったので「うちでも使えるのではないか」ということで、最初は情報システム部内で導入し、そこから現場部門に展開したかたちです。
大谷:実際使ってみてどうでしたか。
田中:「簡単だな」というのが、最初の感想ですね。
大谷:「これなら使えるぞ」という直感があったと。
田中:そうですね。今までは現場から情報システムに依頼が来て、開発するという流れでしたけど、「これだったら、現場で独自でできるんじゃないか」という感触がありました。
大谷:井上さんも、もともとkintoneを知ってらっしゃった?
井上:はい、kintone自体は認識をしていました。入れたいなと思っていたんですけど、他に優先度の高い事案があってそちらの対応をしていたんですね。
大谷:なるほど。
井上:そのタイミングで田中に声をかけてもらった感じです。
大谷:ちなみにお二人の馴れ初めというと変ですが、もともと情シスと現場部門がけっこう連携して仕事をされていたんでしょうか。
井上:馴れ初めをしゃべったら、4時間ぐらい……(笑)。
大谷:40分しかないので、手短に(笑)。
田中:あ、そうですね。井上さんは営業の時からITが好きで、その時から何かしらつながりがありましたね。
大谷:なるほど。
田中:ただ、がっつり一緒に仕事をすることはありませんでした。
井上:そうですね。僕は営業時代にファックスのクラウド化に着手して、その時に田中が声をかけてくれて、仲良くなった感じですね。
大谷:それで、相談できる間柄になったということですね。
大谷:スライドに「社内の各部署に広がった経緯」とありますが、導入前がどうだったかというところからご説明いただけますか。
田中:私は情報システム部ですので、kintoneを使って「一気に全社に入れたい」という気持ちになったんですけど。たぶん、どの企業さんもそうだと思いますが、なかなか一気にドーンは難しい。
そこで、まずは電材カンパニーをモデルケースにして、ここで成功事例を作れば、他のカンパニーも乗ってくるのではないかと考えました。
大谷:電材カンパニーを選んだ理由は、井上さんみたいな人が協力してくれそうだというところですか?
田中:そうですね。井上さんは先ほどのファックスのクラウド化や、いろんなペーパーレスなどに取り組んでいたので、協力してくれそうだなというのはありました。
大谷:今度は現場の井上さんにお聞きしますが、ファックスのクラウド化などのプロジェクトが一段落したタイミングだったと。
井上:おっしゃるとおり、ファックスや納品書のペーパーレスやクラウド化が完了したタイミングです。ただ、他にも業務で使ってる帳票類が30ぐらいあって、次にそれを効率化したいと思っていたところでした。
大谷:それで、一気にkintoneを導入しようという機運が高まったわけですね。
大谷:スライドの「現場のポイント」のところに、「現場のことは現場にしかわからない」「情シス任せにしない、(情シスの)せいにしない」と書いてありますけど。
現場から情シスを見た時、「システムを発注しても時間がかかる」とか、「コストがかかる」「ちょっと頼みにくい」といった抵抗感がある会社がけっこうあると思うんですが、井上さんから情シスはどう見えていたんですか。
井上:おっしゃられたとおりで、やはり何かを頼むと時間がかかるというケースがあって。他のカンパニーでそれを情シスさんのせいにするようなカルチャーがあったんですけど。
僕は「現場でできることは現場でやりたい」という思いがあって、現場のことは現場にしかわからないという気持ちもあったので、極力情シスさんに頼らずに現場で開発を進めたいと思っていました。
大谷:軽く会社のことをディスってます?
田中:(笑)。
大谷:あ、そういうわけじゃないですね(笑)。
井上:ディスってはおりません(笑)。
大谷:田中さんから見ると、どういう関係でしたか。
田中:現場からたくさん依頼をもらうんですけど、なかなか納期(通りの回答)を返すこともできず、3ヶ月先に返したり、結局やらなかったりということもあり、私も情報システムとしていかがなものかと思っていました。
大谷:胸が痛いなと。
田中:ちょっとディスらせていただきますけど、胸が痛くて。
大谷:(笑)。そういった状況にあったと。
大谷:(スライドでは)「導入前」「現場」の次に、「アピール」というフェーズがありますが、井上さん、これははどういった活動ですか?
井上:いろんな業務フローをkintoneで実行して、「これは他のカンパニーに展開できる」と思ったので、企画室という横串の部署で共有したり、役員会でもアプリの紹介をしていきました。
大谷:実際にkintoneを導入するとなると、なかなか上司や経営層の理解を得るのが大変という声をよく聞きますが、そのあたりはどう乗り越えられたのでしょうか。
井上:まず、30ぐらい帳票類を集めて、上長にいかに帳票が無駄なオペレーションを生んでいるかを説得しました。
大谷:なるほど。田中さんはいかがでしたか。
田中:情報システムでも、kintoneを理解していない人がけっこう多くて。現場の人から挙がった「kintoneは使えるもんだよ」「使いたい」という声を聞いてもらうといったことぐらいしかしていないですね。
大谷:「現場が欲しがっているんだから、応えてあげようよ」というかたちになったということですね。
後ほど画面も見ながら具体例をご説明しますが、結果として、他のカンパニーからも「kintoneを使いたい」といういいリアクションが戻ってきた。
田中:そうですね。先ほど井上さんが言ったように、役員会などのお偉い方がいるところでアピールしてくれたおかげで、他のカンパニーの企画室もやりやすくなって、提案していく流れが起きたのかなと思いますね。
大谷:電材カンパニーは、アプリの開発などは情シスではなく現場でやっているんですか。
井上:ほぼ、現場でやっています。
田中:そうですね。
大谷:具体例を見たほうが早いと思いますので、スライドの「なぜ電材カンパニーで一気に広がったのか」というところですね。
たぶんみなさんが一番興味あるところかなと思います。鬼の怖いアイコンなどがありますけど、ちょっとご説明いただけますか。
井上:先ほどもお話ししましたが、電材カンパニーには長年使われた帳票が30ぐらいあって、その帳票が非効率な業務オペレーションにつながっているという課題がありました。
この帳票によっていかに時間がかかり、コストがかかっているのかを一覧にして、上司であるカンパニー長に説明しました。
下に鬼の絵がありますが、うちの上司はもっと怖いんですけれども。
大谷:相当怖いですね(笑)。
井上:嘘です。本当は優しい方なんですが。
大谷:本当は優しいんですね。
井上:はい。スライドの上の修理票は自分が入社した時からずっと同じものを使っています。こういった帳票をkintoneを使って効率化しましょうと提案しました。業務をまるごとkintone化するために、「全員分のライセンスが必要です」と提案して、「すぐに入れろ」ということで導入となりました。
大谷:上司はこの伝票がどれぐらい前から使われていて、ある意味でどれぐらい非効率かをわかっている人だったということですかね。
井上:そうです。わかってる方だったので、話がつながりやすかった。
大谷:ちなみに、なんで(修理票の横に)「針金」と書いてあるんですか。
井上:これは手書きの修理票で、おそらく業者さんが1枚1枚手作業で、商品に針金でこう巻くんですね。
大谷:あぁ、なるほど。逆に言うと、入社した時点から使われてきた帳票だと、現場の人はそれに慣れているわけじゃないですか。
井上:はい。
大谷:そういった点で、上司の人はデジタル化に不安を感じなかったんですかね。
井上:うちの上司の場合は、不安より希望のほうが多かった気がします。
大谷:田中さんはどうですか。
田中:情報システムは、こんな針金や帳票があるのを知らないので(笑)。
大谷:知らないですよね。
井上:現場にしかわからないっていう。
大谷:じゃあ「こんな伝票があるんだ」みたいな世界なわけですね。
田中:そうですね。
大谷:もう1つ聞きたいのが、普通は「『全員分ライセンスが必要です』といきなり言われても……」みたいな反応があったりするんですけど、コスト的なことに関して、上司はすぐに納得してくれたんですか?
井上:この非効率な業務オペレーションの説明をする時、当然コストの話にもなりました。ただ、当カンパニーの場合、この帳票類に年間約500万円ぐらいコストがかかっていたんですね。
なので、全員分のライセンスを入れても、半分ぐらいはペイできるぞと。かつ、目に見えないコストや時間を換算するとすごい投資対効果だということで導入につながりました。
大谷:なるほど。聞いていると、上司への説明ロジックみたいなのがありますね。
「具体的にこんなにかかっていますよ」と500万円という数字を出したり、針金で縫いつけるという手間を挙げたり。数字や実態を説得材料として持ち出して、上司に「こうですよね」と説明する。
井上:そうですね。説明をする際は、必ず大枠のコストと目に見えないコストを人件費に換算したりして、納得性がある説明をするように心がけています。
大谷:なるほどね。それがもしかしたら上司を落とす1つのきっかけになるかもしれないですね。
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