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kintone AWARD 2022⑥會澤高圧コンクリート株式会社 畑野奈美氏(全1記事)

2023.02.02

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ワンオペ脱却のカギは「“すき間時間”わたしに下さい大作戦」 残業80時間→ほぼゼロの、業務を自然にシェアする仕組み

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2022」。その中で行われた、「kintone hive 2022」は、日々の業務でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、業務改善プロジェクトの成功の秘訣を共有するライブイベントです。本記事では、みんながやりたい仕事や得意な仕事に取り組める、ユニークな仕組みについて、北海道の老舗総合コンクリートメーカー・會澤高圧コンクリート株式会社の畑野奈美氏が紹介しました。

北海道の老舗総合コンクリートメーカー

畑野奈美氏(以下、畑野):みなさま、こんにちは。本日最後になりました。ちょっと疲れてきた頃かなと思うんですけれども、最後までどうぞよろしくお願いいたします。

それでは、さっそく自己紹介をさせていただきます。私、畑野奈美と申します。出身地は北海道の帯広市です。2歳になったばかりの娘がおりまして、昨年(2021年)9月に育休を経て復帰いたしました。今日はその家族も会場に応援に来てくれているので、母ちゃん、がんばりたいと思います(笑)。

弊社、會澤高圧コンクリートは今年で創業88年目を迎え、北海道の苫小牧市に本社を置く総合コンクリートメーカーです。近年では既存のコンクリート事業のほかにも、バクテリアの力を使ってコンクリートに入ったひび割れを埋める技術や、エンジンドローン、またコンクリートの3Dプリンターの開発など、その研究・開発分野は多岐にわたっております。

こちらはプロジェクトの担当者からもらってきた、イチオシの写真になるんですけれども(笑)。興味を持っていただけましたら、弊社のホームページやSNSをチェックしていただけますと、とってもうれしいです。

管理システムも人手もないまま、プロジェクトがスタート

畑野:本日お話しさせていただきますのは、そんなチャレンジいっぱいの弊社の中でも、大手ハウスメーカーさま用のプレキャスト住宅基礎の製造・販売をするチームについて。(立ち上げは)今からもう8年前になりますが、そこから今に至るまでのお話です。

みなさまは「プレキャスト住宅基礎」と言っても、あまりピンとこないかもしれません。住宅の基礎になる、家の下の部分を支えているコンクリートの部分は、一般的には木枠を組んで、柔らかいコンクリートを流し込んで固めて作るものなんですけれども。

このプレキャスト住宅基礎は、コンクリートの壁の立ち上がり部分を工場で作って、現場に運んで組み立てて作る基礎になります。

それでは改めまして、「1人から最強チームができるまで―kintoneと共に歩んだ8年間―」のお話を、4話仕立てでお送りさせていただきます。

第1話は「kintoneとの出会い」です。3年間の開発期間を終え、2012年にスタートしたプレキャスト住宅基礎プロジェクト。運用はスタートしたんですが、管理するシステムもなければ人もいない。当時は一連の業務を私1人でギリギリ、毎日残業しながらこなす日々が続いていました。

そんな時に、当時技術開発をしていた上司が私にこう言ったんです。「kintoneっていうおもしろそうなものがあるよ」と。そう言われた私は……システムをやったことのない方がkintoneに関わることは、けっこうあるあるだと思うんですけれども。「システム無理」と拒否反応でした。

もともとExcelも得意ではなく、「システム=高い」というイメージがあったので、失敗したらどうしよう。でも、運用が始まっているし、どうにかこの状況を変えなければという一心で「とりあえずやってみよう」と、2014年7月に30日間の無料お試しを申し込みました。

業務をどんどんExcelからkintoneアプリへと移行

畑野:それで、当時使っていたExcelをさっそく読み込んでみたら、なんとびっくり、一瞬でアプリができてしまった。歓喜、感動したのを覚えています。これに味をしめて、当時持っていた業務をどんどんkintoneに上げていったんです。当時作ったアプリの中から、今も現役で稼働中のものをいくつかご紹介したいと思います。

まず1つ目、業務の中心になる物件の管理アプリなんですが、kintone導入以前はこのようなExcelでした。色気もへったくれもありません。必要な情報をこのようなシンプルなExcelに入れて、担当者レベルで共有していたんですけれども、こんなシンプルなExcelなのになぜか壊れていく。

「どういうふうにソートかけたら、こんなにぐちゃぐちゃになるんだ」ということが多々あったんですけれども、kintoneにアプリを作って運用を開始してからはそのようなこともなくなり、みんなが安心して使える業務の中心アプリに成長しました。

続きまして、工程管理についてです。私たちにとって、カレンダー機能はとっても重要です。以前は標準機能のカレンダー表示を使わせていただいたんですけれども、下手したらカレンダーだけを見て業務をしているメンバーもいると。

ですので、やっぱり誰が見ても見やすい・使いやすいものはないだろうかということで、kintone導入後のかなり早いうちから、ラジカルブリッジさんの「カレンダーPlus」を導入させていただきました。

今ご覧いただいているのは納期のカレンダーですが、パッと見で「この日は空いてる」ですとか、地域で色分けしているんですが、「この地域の物件が混んでいる」ということが、誰が見ても一目でわかります。このカレンダーに毎日助けられています。

誰でも・いつでも欲しい帳票が出せるように

畑野:続きまして、帳票作成ですね。弊社も例外ではなく、たくさんの帳票があります。帳票を出すためだけのExcelも山ほどあったんですけれども。

今は、私たちがCADで書いた図面からできる限りの情報を引き出し、ソウルウェアさんのご協力を得まして、kintoneに吸い上げるデータベースを作り、そこからトヨクモさんの「プリントクリエイター」を使って帳票を出す。

以前は、限られたメンバーしか帳票を出せなかったんですが、これにより一番最初に見ていただいた業務の中心アプリから、誰でも・いつでも欲しい帳票を出せるようになりました。

このように持っていた業務をどんどんkintoneに上げて、今はスッキリ。だいたい30個ぐらいのアプリに集約することに成功しました。業務も集約され、残業時間も減り、大成功したかのように思ったんですけれども……ありがたいことに物件数は年々増え、やはり1人では厳しい状況になってくるのです。

仲間を求めて「“すき間時間”わたしに下さい大作戦」

畑野:第2話「仲間を求めて」。この多くの拠点の中に、どうにか仲間になってくれる人はいないだろうか。社内でリクルーティング活動を開始したんですが、だいたい返ってくる言葉はこのようなものでした。「『私、時間あります!』なんて自分から言う人いないよ」「もちろん、こっちの仕事も手伝ってくれるんだよね?」……ですよねぇ~(笑)。

そうなんです、もうわかっていたんです。みなさん自分の業務を持っているのに、まったくわからないほかの部署の仕事を「はい、私やります」と言うことは、できるはずもないのです。

ですが、どうにか少しでもいいから業務を手伝ってもらうことはできないだろうか。その方法はないだろうかと考えた結果、「少しでも……『少しでも』?」と思いついたのがこちらの作戦になります。

「“すき間時間”わたしに下さい大作戦」です。リクルーティング活動をする中で、いろんな部署の人たちと話すうちに、業務量の波があるということがわかったのです。

例えば営業事務の方だと、営業さんが出かける前・戻ってきたあとはすごく忙しいけれども、出かけている間の日中の時間はわりと落ち着いているようですとか。経理の方だと、月末・月初はとっても忙しいけど、月中はわりと落ち着いてるよと。その落ち着いた時間にどうにか、できるぶんだけでもいいから業務をお願いすることはできないかという呼びかけに変えたところ、救世主が現れるのです。

大好きな顧問のお二人なんですけれども、左側が当時私の札幌の上司だった本橋(俊充)顧問です。右側は、本州の方はあまりイメージがないかもしれないんですけれども、(札幌から)遠く離れた北見市にいらっしゃる、石澤(良一)顧問ですね。

このお二人が掛け合ってくれて、今まで会ったことも話したこともなかった北見支店の女性の協力を得られるようになりました。

当時、まだ社内ではあまり普及していなかったテレビ会議やkintoneを駆使しながら、その方と業務を進めているうちに、徐々にすき間時間を提供してくれるメンバーが増えていき、「“すき間時間”わたしに下さい大作戦」は、成功を収めたかのように思ったのです。しかし、また問題が発生します。

部署内の仕事は全部共有し、やりたい仕事や得意な仕事をしてもらう

畑野:第3話「見えない壁、その先に……」。すみません、言葉のまんまなんですけれども(笑)。(距離的に)離れているがゆえに、やはり協力してくれる方たちの状況が見えない。せっかくもらったすき間時間を、活かし切ることができなくなってしまったのです。

どうにかもらったすき間時間を、最大限活かせる方法はないだろうかと考えて、「そうだ、自由に取っていってもらえばいいんだ」というのが、こちらの“お仕事ビュッフェ”です。

“お仕事ビュッフェ”とは、とにかく部署・チームにあるお仕事を全部kintoneの中に入れてしまって、各自がその時にできる仕事、得意な仕事を自由に持っていってもらう方法に変えたのです。

これによって、メンバーからは「朝はこれだけあった仕事が、夕方にはきれいになくなっているのがとっても気持ちいい」「自分がこれだけがんばったということが目に見えるので、達成感もある」という感想をいただいています。

また「kintone hive sapporo」のあとに、このお仕事ビュッフェでも残ってしまう業務について質問がありました。どうしているかというと、もともとすき間時間に差し込んでもらうために業務は細分化していたんですけれども、今はさらに細かく細かく分けてハードルを下げて、ちょっとずつ持っていってもらえるようにしています。

お仕事ビュッフェの良いところです。最初に問題になっていた指示時間はまったくゼロ。また、持っていっていただけるメンバーにとっても、自分がやる時間と仕事内容を合わせることができる。また、業務を細分化しているのでブラックボックスになりにくい。

あと、やりたい仕事というのは得意な仕事だけではありません。今まで「やってみたいけど、ほかの部署の仕事だから」と手を出すことができなかったものについても、チャレンジできるようになったのです。

8年間離職率ゼロ・育休後の復帰率は100パーセント

畑野:これらの取り組みを続けて、8年間で離職率はゼロです。おかげさまで、メンバーは増える一方。また、育休後の復帰率は100パーセントです。私も昨年の9月に育休から復帰したんですが、休みに入る時もほかのメンバーが私の仕事をできるので、引き継ぎはほとんどなし。

また戻ってきた時も、お仕事ビュッフェのところにいけばいつでも仕事があるので、何をやればいいのかわからないという不安もありません。みんなにとって、お休みしやすい体制を作れたのかなと思っております。

また、8年間のうちで物件数は10倍に増えました。10人いるメンバーは全員兼務なんですけれども、私が繁忙期にだいたい月80時間ぐらい残業していたものは、今はエラーがない限りは、ほぼ0時間をキープしております。ということで8年間を経て、兼務ながらも力強く事業を支えるチームに成長しました。

業務を自然にシェアできる、楽しい仕組みを作っていく

畑野:第4話「未来へ」。今後の取り組みについてですが、海外のチーム、社外の取引先も含めて、エンドユーザーさまに確かな製品を届けるチームを作っていきたいと思います。「いきなり海外チームの話が出てきた」と思われた方、いらっしゃると思うんですけれども。

実は弊社、ミャンマーのヤンゴンに設計チームがあります。住宅基礎のプロジェクトとはまったく別の案件になるんですけれども、一緒にお仕事できる時間をいただけたので、お仕事ビュッフェで仕事をシェアできる仕組みを、絶賛作っている途中です。

そして、私たちは今まで助けていただくばかりだったんですけれども。これからは、誰かが助けを求めたい時に、私みたいに(手伝ってくれる)人を探していかなくても、みんなで会社全体で業務を自然にシェアできる仕組みを作っていきたいと思います。

ゆくゆくは、やりたいことベースで社外の方にも参画していただけるような、楽しい仕組みを作れたらいいなと思っております。

最後に、kintoneに出会えて、私は拠点や部署の壁を越えてたくさんの仲間に出会えました。みんなの「得意」や「好き」「やってみたい」を、ほんの少しずつでも集めることができれば、会社を支える大きな力になると思います。

今1人でがんばっている方、またこれからチームを作りたいと思っている方、働き方を変えたいと思っている方にとって、一歩を踏み出すヒントになれればとてもうれしいです。以上です、ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

誰もやりたがらない、不人気タスクを残さないための工夫

平川紗夢氏(以下、平川):畑野さま、ありがとうございました。それではまず、畑野さまのZoom応援団のみなさまをお呼びいたしましょう。おっ、うちわを持って見てくださっております。

それでは、畑野さまにも少しご質問させてください。「お仕事ビュッフェ」というとてもキャッチーで、すてきな取り組みをご紹介いただきました。このお仕事ビュッフェは、どんな思いで構築されたものなんでしょうか。

畑野:ビュッフェをやった時に、やはり私が大好きなkintone関係のタスクが残されていってしまうという、とても悲しいことが起きたんですけれども……(笑)。それも今では、どうしてもみんなに持っていってもらいたい、kintoneの楽しさを知ってもらいたいということで。

さきほど「業務をさらに細かくみじん切りします」とお伝えしましたが、例えばkintone関係なら、フィールドコードを変えるとか、初期値を変える。またはレイアウトを変えるというところは徐々に触っていってもらって、スキルアップをしながら(慣れていただく)。

最近は、本業務にkintoneを持って帰ってもらえるところまでいけるようになってきました(笑)。

平川:いろんな工夫が詰まった、お仕事ビュッフェのアプリということですね。今後もkintoneをご活用いただいて、より大きな事業に発展させていただけたらと思います。それでは畑野さま、ありがとうございました。

畑野:どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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