2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
kintone AWARD 2022②株式会社ISID-AO 根崎由以子氏(全1記事)
提供:サイボウズ株式会社
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根崎由以子氏(以下、根崎):みなさま、こんにちは。根崎由以子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私は現在、株式会社ISID-AOという会社で働いています。弊社は電通並びにISID(電通国際情報サービス)グループ内外で、ご覧のようなIT関連サービスを専門とする会社です。
私の趣味は北アルプスの麓の白馬村というところで暮らす「王子」です。お孫さんとおっしゃる方もいらっしゃいますが、王子は王子です(笑)。この8月には「姫」も誕生して、趣味も生きがいも2倍になりました。
私は4年前、なんのビジョンも覚悟もないまま定年を迎えてしまいました。再雇用で出向先から帰還したものの、差し当たってこれといった仕事はなく、定時出社・定時退社の週4勤務、お給料もモチベーションも急降下。
「いよいよ潮時かな……」と思い始めた頃、あるチームで試験的に使っていたkintoneを引き継ぐことになりました。
「きんとーんって何? いやいや、おばちゃんもう新しいものなんてムリムリ」。王子との穏やかな老後を考え始めていたおばちゃんは、内心憂鬱でした。ところが前任者くんから聞くkintoneの話に、おばちゃん久々に心が躍りました。
と申しますのも、私が所属するBPO(Business Process Outsourcing)推進部の仕事は、お客さまに業務をただアウトソーシングしていただくだけではなく、業務プロセス全体を承る仕事です。その現場に丸腰で出向く人海戦術のような従来のスタイルに、ずっともやもやを感じておりました。
kintoneがBPOの現場で使えたら、おばちゃんも何か後方支援ができるかもしれない。妄想がワクワク膨らんだ、kintoneおばちゃん誕生の時でした。
根崎:kintoneのことが知りたくて、イベントや無料セミナーに出かけて行き、年金が入ればお目当ての有償セミナーにも申し込みました。そのくせハンズオンについていけず、いつもあちこちでご迷惑をおかけしていました。
私は右の耳が不自由で、ユーザー会や懇親会が苦手でした。ところがある日、サイボウズのキンスキ松井さんをお見かけして、思い切って自分から話しかけたところ、その優しい神対応に感激いたしました。
それ以来「日本橋や幕張まで出かけていって、タダで帰るのはもったいない」と貪欲になり、スタッフの方やご一緒したユーザーさんたちとも少しずつ会話をして、情報交換もできるようになりました。
そのお一人がRosso Academyの飯塚洋平さんです。「つなぎ人」の洋平さんはおばちゃんを、kintone界隈から遠く海外まで、たくさんのすてきな仲間とつないでくださいました。そのお一人が、プロジェクト・アスノートの松田正太郎さんです。
kintoneエバンジェリストの松田さんのYouTube、日曜夜10時『今夜もkintone』は、ずっと週末のルーティーンで、kintoneぼっちおばちゃんの心の支えでもあります(笑)。ぜひおすすめです。
kintoneおばちゃんの独学の始まりは、ワクワクの始まりでした。
根崎:まずは社内の業務改善の小ネタを拾い集めて、せっせとアプリを作ってアピールして回りました。使ってもらえないアプリもあれば、見てさえもらえなかったアプリもありました。手痛いしくじりもちょいちょいやらかしました。
本日はそんなおばちゃんの痛いしくじりと、作った本人もびっくりのサプライズなアプリの、両方をご紹介したいと思います。
いつもぐしゃぐしゃの部署の本棚をなんとかしたくて、kintoneとスマホとバーコードスキャナーによる「オフィス文庫無人貸出システム」を作ってみました。会心の作でしたが、ある日ちょっとした事件が発生し、おばちゃんはkintoneのアクセス権のチェックをいったん外しました。
当時kintoneのことを知らない人たちが「アプリが消えた」とちょっとした騒ぎになりまして、おばちゃんは上から呼び出しをくらい、このシステムはそのままお蔵入りとなってしまいました。今でもとっても後悔しています。
おばちゃんはたった1人でカスタマイズにも挑戦しました。ですが素人のおばちゃんにはまさかのトラブル対応がうまくできず、ユーザーさんにご迷惑をおかけしました。
それ以来、まずはkintoneの標準機能にこだわって、とことん検証するスタンスに変えました。kintoneを体系的に学び直そうと、老眼鏡とテキストをいつもバッグに入れて、電車の中でひたすら勉強しました。
一発合格をいただいたアソシエイト資格でしたが、おばちゃんの年齢になると「一夜漬けで覚えたことは一夜で忘れる」という現実も学びました。その後、2回不合格で1年以上かかった、アプリデザインスペシャリストの長かった受験勉強で、ようやくkintoneが身についてきた気がします。「試験は受けてなんぼ、落ちてなんぼよ」と、おばちゃんは周りにいつも言い張ってます。
根崎:ある日、社内の人材調達チームから、契約しているパートナー会社さんの情報管理についての相談がきました。そこで作ったのがこの仕組みです。人材調達チームから登録フォームのURLをパートナー会社さんにお送りして、会社情報を登録いただきます。
登録が完了するとマイページのURLがメールで自動送信されますので、会社情報に変更が生じた場合は都度このマイページより、パートナー会社さんご自身で情報を更新していただけます。ちなみにパートナー各社へのkintoneアカウントの配布はございませんでした。
「たったこれだけ?」と思われた方もいらっしゃると思いますが、このチームのお姉さんに近況を聞いたところ、パートナー会社さんの会社情報の更新作業は、以前はExcelで150社ぶんの「調査票」を作ってメールでやりとりするという大変な作業だったそうです。
それがkintone導入後は年に一度、「会社情報を更新してください」というメールを1通送るだけで済むようになって、「これまでの9割以上の工数が削減できたんです!」と、おばちゃんもびっくりのうれしい回答が返ってきました。
この仕組みを応用して勢いで作ったのが「ときめきの人材マッチングアプリ」です。人手不足の現場担当者が登録した募集案件情報を、お仲人役の人材調達チームがパートナー各社に公開いたします。
一覧の中からマッチングしそうな案件を見つけたパートナーさんが応募フォームから登録すると、該当の現場担当者に直接メールが届き、ざっくりですがここで1回目のマッチングが完了するという仕組みです。
こちらについてもお姉さんに聞いてみました。そうしますと、ご覧のように導入前に比べて1案件あたりの手数が7割以上も削減され、「残った作業もkintoneを共有することで、チーム全員で分業が可能になったんです!」と、これまたうれしい回答でした。
根崎:そして今年の春先、思いもかけなかったお話が社外から続々と舞い込んでまいりました。まず、親会社からこの人材マッチングアプリを「うちでも使ってみたい」という連絡が入りました。
さらに、社外で経費清算業務を行っているBPOチーム向けに作ったシステムについては、お客さまの情シス部門から「自社の別の事業にも使わせてほしい」というオファーをいただいたんです。
おばちゃんがこだわっていた、「kintoneとBPOのパッケージ販売の可能性」が見えてきたのかもしれません。
とはいえ、おばちゃんの再雇用期間は残すところあと少しなんです。ですが、おばちゃんの周りのアソシエイト資格者が、なんとこの2年で10人にも増えていました。この人たちにタスキをつなぐことができたら、kintoneおばちゃん冥利につきます。
今回、私は自分の会社員人生最後の年に何かをお伝えしたくて、ここに立たせていただきました。
ご自分が定年を迎える日がくるなんて想像もできないあなたへ。やがて定年を迎え、再雇用で切ない思いを抱えるかもしれないあなたへ。年齢だけで人を値踏みする、やたらとフィルターをかけたがる社会へ。人材不足を嘆きながら、目の前にいるシニア人材を活かしきれない企業へ。大変僭越ながら、このメッセージを送らせていただきます。
「If you don’t like something, change it. If you can’t change it, change yourself.」……どうしても我慢ができなければ、文句を言う前にあなたが行動を起こして変えてみなさい。どうしても変えられなかった時は、自分を変えてみなさい。これはアメリカの詩人、マヤ・アンジェロウという黒人女性のメッセージです。
会社という居場所を離れるにあたって、4年前は正直不安で、再雇用という道に乗っかりました。今では「居場所の1つや2つなくなっても私は私。わりと捨てたもんじゃないかも」と思えるようになったのも、kintoneのおかげです。
根崎:kintoneおばちゃん劇場第2幕の予告です。
働きながら大変だった3人の子育ての経験や、悔いが残った義父母の介護の経験を活かして、今がんばっていらっしゃる現役世代の後方支援が何かできないかしら。またコロナですっかり寂しくなった白馬村の、村おこしのお手伝いなどもできないかしら……なんて、kintoneで変えられるかもしれない未来を、おばちゃんはまた絶賛妄想中です。
突然ですが、みなさんご自身の年齢に13を足して、13年後のご自分をちょっと想像してみてください。どんな自分だったらすてきだなって思いますか? kintoneおばちゃんの13年後の目標は、77歳・喜寿でこのkintone hiveに再エントリーして、17歳になった王子とW登壇を果たすことです。
それでは13年後の2035年秋、みなさまきっと元気で、ワクワクして、この場所でお会いしましょう。ご清聴ありがとうございました、kintoneおばちゃんでした。
(会場拍手)
平川紗夢氏(以下、平川):心温まる事例発表ありがとうございます。それでは、根崎さまのZoom応援団のみなさまをお呼びしましょう。お孫さんもいらっしゃいますかね、ありがとうございます。
私から1つだけ、根崎さまにご質問をさせていただきます。本当に感動するストーリーだったんですが、ここまで根崎さまががんばれた原動力は何だったのでしょうか。
根崎:原動力ですか……あんまりがんばったという気はないんですけど、やはり家族ですかね。王子とか(笑)。負けたくないっていう。
平川:kintone hiveで「家族」というワードが出てくるとは思わなかったんですが、非常に心温まる、感動する活用事例でした。根崎さま、ありがとうございました。
根崎:ありがとうございました。
(会場拍手)
サイボウズ株式会社
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