2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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提供:LINE株式会社
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池邉智洋氏(以下、池邉):みなさんこんにちは。LINEのCTOの池邉です。
小久保雅彦氏(以下、小久保):みなさんこんにちは。Yahoo! JAPANのCTOの小久保です。
池邉:本日のイベント「Tech-Verse」は、LINEとヤフーが共同開催する初の技術カンファレンスです。
2021年まではそれぞれ技術カンファレンスを開催していましたが、よりオープンでより成長できる場を提供したいと考え、共同で開催することとなりました。さらにグループ各社にも声をかけ、参加いただくみなさまにとって興味深い、技術的におもしろい内容を厳選しました。
私たちが培ってきた技術的知見をオープンにして共有することで、みなさまと一緒に成長したいと考えています。この2日間がみなさまにとってより良い機会となれば幸いです。
さて、まず私たちについてお話しします。Yahoo! JAPANは1996年にサービス開始で27年、LINEアプリが2011年にサービス開始で12年の歴史があります。
サービス開始からこれまでの間に、社会におけるインターネットの重要性は日に日に大きくなってきています。特に、ここ10年ほどで大きな変化がありました。
スマートフォンの普及による情報化社会の高度化、また、それに伴うトラフィックや蓄積されるデータの増加。ディープラーニングを始めとするAI技術の向上、扱われるデータが機微化することに伴うセキュリティやプライバシー意識の増大、公開される情報に求められる信頼性。
このような社会の変化に伴って、我々事業者に求められる責任も大きくなってきました。LINEもヤフーも、大規模なサービスを安定的に提供するための技術の向上、AIを始めとする大容量なデータの効果的な利活用。ブロックチェーンを始めとした先進的な技術投資。また、近年では特にセキュリティやプライバシーに関連した技術投資を行ってきました。
池邉:ここからは、そういった技術投資の取り組みをいくつか紹介します。まずはLINEの話です。特に大規模なデータの利活用についてと、ブロックチェーンに関する取り組みについてお話しします。
冒頭で紹介したように、LINEは2011年にサービスを開始しました。そして現在は、グローバルで月間約2億人のユーザーのみなさまに使っていただいています。
当然ながら、そこには大量のユーザーデータや行動データが蓄積されています。これらの行動データを大量に、効率良く、そしてガバナンスの効いた状態で管理・利用するために、1つの大きなデータプラットフォームを構築することにも取り組んできました。
2021年までのLINE DEVELOPER DAYにおいても何度か紹介しましたが、このデータプラットフォームをInformation Universe、略してIUと呼んでいます。IUの上には蓄積されたデータを機械学習で利用するためのプラットフォームのMLU(Machine Learning Universe)があり、その上にサービス横断の巨大なモデル群が作られ、さまざまなサービスに提供されています。
IUには現時点で、約400ペタバイトのデータが蓄積されています。巨大なデータだからこそ、それらを蓄積・利用する上で直面する課題は、みなさまも経験されたことがあるかもしれません。我々もそれらの課題を解決するにあたり、自動化を中心とした機能追加や、IU Webと言われるユーザーインターフェイスの強化を進めてきました。
IU Web上では、自動的なメタデータ収集とデータプロファイリングに基づいて、さまざまな情報を確認しながらクエリを実行できるインターフェイスを提供し始めました。また、データに関する各種規制への対応、そしてデータの更新周期をさらに短縮するためにApache Icebergテーブル形式をサポートするためのSpark 3へのアップデートなど、IU内部の見えないところでも改善が進んでいます。
他にもさまざまなアップデートがありますが、その中でもData Lineage機能の実装について詳しく紹介したいと思います。
池邉:IUのデータパイプラインが複雑になるにつれて、問題が発生した際のデータの関係性の把握が難しくなります。その課題を解決するために、ある対象のデータが生成されてから現在に至るまでの経路上で行われた変更を追跡可能としたのが、Data Lineage機能です。
このData Lineageは、Web上でグラフとして見ることができます。このようにわかりやすくデータの関係性を把握できるようにすることで、巨大なデータを効率的に利用するだけではなく、セキュリティやガバナンスの面においても安全に使うことができます。
機械学習のためのプラットフォームのMLUにおいても、モデルをどのデータで学習して、その結果がどの学習で使われるかといったLineageを残せるようにしています。
さらに認証の強化や、大規模な特徴量をリアルタイムで処理する基盤の構築などのアップデートを進めています。そして、モデルを作る際にユーザーのプライバシーを保護しつつ利便性を向上させるため、Federated Learning、Differential Privacyと呼ばれる技術についても投資を続けて、2022年の秋にこれらの技術を応用して、スタンプサジェスト機能をアップデートしました。
これまでのスタンプサジェスト機能においては、一律で人気なスタンプをサジェストするケースもあり、十分ではありませんでした。ユーザーの好みを理解する上では、スタンプの購入履歴だけではなくて、トークルームなどでのスタンプ閲覧、送信履歴のデータからも学習する必要がありますが、これらのデータはプライバシーの観点で、非常に慎重に取り扱わないといけません。
したがって、今回アップデートしたスタンプサジェスト機能では、LINEアプリ内でのみスタンプ閲覧、送信履歴のデータを用いて学習をして、そのモデルをサーバーに送り更新、再度アプリに配信することでモデルの更新をしています。更新されたモデルをDifferential Privacyの仕組みを使ってノイズを加えた上で、サーバーへと戻します。このようにして、ユーザーのプライバシー保護とデータを活用した利便性向上の両立を目指しています。
池邉:次に、ブロックチェーン技術について話したいと思います。LINEは2018年からブロックチェーンを研究・開発してきました。独自のメインプラットフォームを開発、ホワイトペーパーを発行して、独自暗号資産の「LINK」と暗号資産取引サービスの「LINE BITMAX」を運営してきました。2022年4月にはNFT総合マーケットプレイスである「LINE NFT」も開始しました。
さらに、今までやってきた日本での取り組み・ノウハウをグローバルへと展開して、グローバルNFTプラットフォームの「DOSI」として、ウォレットやストアなどのβ版を開始しました。さらにこのNFTプラットフォームの上で、UGC(User Generated Contents)、ゲーム、アバターなどのサービスを提供するための準備をしています。
次に、私たちが提供するLINEブロックチェーンプラットフォームの全体図を紹介します。(スライドを示して)一番下のレイヤーには、「LINE Blockchain」と呼ばれるメインネットがあります。2022年の年末には、第3世代のメインネットのローンチも予定しています。その上のレイヤーに私たちが開発者のみなさまに提供する「LINE Blockchain」の各機能があり、アプリケーションの開発をしてもらうことができます。
このプラットフォームについても、第3世代のメインネットのローンチに合わせて機能を追加するので、後ほど紹介します。一番上のアプリケーションレイヤーには、私たちが提供する「LINE NFT」や「DOSI」の他に、外部の開発者のみなさまのDApps(Decentralized Applications)が提供されています。
次はウォレットゲートウェイについてです。先ほどの図のようにレイヤーを分けることで、グローバルでのサービス展開が可能になりました。LINEのブロックチェーンプラットフォームでは、ユーザーがアクセスする地域でのポリシーに基づいて、適切なプラットフォームが選択される仕組みになっており、日本であれば「LINE BITMAX Wallet」、その他の地域であれば「DOSI Wallet」と、適切なウォレットが選択されます。
そこには認証・決済・ストアが結びついています。このようにすることで、アプリケーションレイヤーでは地域ごとの規制対応やポリシーへの準拠への意識をすることなく、サービスを提供できます。
池邉:最後に、第3世代のメインネットについて紹介します。まずコンセンサスアルゴリズムとしては、TendermintをベースにLINEが独自に開発したOstraconを採用しています。こちらはオープンソースとして公開・開発しています。そして、以前から準備していた、WebAssemblyを利用したスマートコントラクトの機能を提供する予定です。
さて、ここまではLINEの技術投資についてお話ししました。ここからはヤフーの技術投資についてお話したいと思います。それでは小久保さん、よろしくお願いします。
小久保:ここからはヤフーについてお話しします。ヤフーはテクノロジーをフル活用して、多くのみなさんにより快適で便利に、安全にサービスを利用してもらえるように挑戦を続けています。最初に、サービスを提供する上で欠かせない、データAI領域での取り組みについて紹介します。
各サービスから集まる膨大なデータを利活用して、より良いユーザー体験を提供できるようにデータを集約して整理するためのプラットフォーム、サービスにAI技術を適用するためのAIプラットフォームを作り、多くのモデルを生成してさまざまなサービスに導入することで、より良いサービス作りにつなげています。
小久保:データを活用したわかりやすい事例として、レコメンデーションがあります。これは古くから提供されている技術です。ヤフーが提供する電子書籍のサービスではよりわかりやすく、探したいものを見つけられるように、カテゴリのレコメンデーションを自動生成して、関連するコンテンツのグルーピングも自動化できるようにしました。
マシンラーニングのフレームワークにユーザーに必要なカテゴリを推定するための、3つのAIアルゴリズムを組み込みました。これらの特徴は、従来人間がやっていたコンテンツ制作をAIが自動で行っていることです。ヤフーのマシンラーニングフレームワークにこれらの拡張を加え、ユーザーが興味・関心のあるコンテンツをわかりやすいかたちで提供できるようにしました。
従来のカテゴリ表示に比べて多くの方に利用してもらっており、拡張の効果が表れています。確かな手応えがあったので、より多くのサービスに展開して、データを活用した機能を便利に使ってもらえるようにします。
小久保:多くのみなさんにより便利なサービスを届ける一方で、安心・安全に利用してもらうことも最重要と捉えていて、ヤフーではセキュリティ・プライバシー保護の観点でも技術投資を続けてきました。
セキュリティ領域は幅広い取り組みが必要ですが、重要な取り組みの1つとして認証があります。ヤフーでは、セキュリティの堅牢性を高めつつ、使いやすい認証になるように力を入れてきました。最近、わかりやすいUXで提供している認証技術としてパスワードレス、FIDO(Fast Identity Online)導入の事例を紹介します。
さまざまなデバイス、ブラウザで認証を行いますが、パスワード認証はフィッシングによるパスワードの詐取のリスクがあります。ブラウザでのSMS認証では、リアルタイムでログイン情報を奪われる事例が出ており、より不正アクセスが高度化しています。その中で、先ほど話した攻撃などに耐性のある強固な認証として、FIDO認証があります。
ユーザーにとって簡単・わかりやすく・強固な認証なので、ヤフーは世界的な標準化団体であるFIDO Allianceに早くから加入して、仕様策定に関わってきました。世界に先駆けてプロトタイプ開発から商用実装することで、セキュアな認証技術仕様の普及に貢献してきました。2014年FIDO Allianceに加入、2018年FIDO2導入、以降はさまざまなアプリ、ブラウザ向けに導入しました。
主要なOSのアプリ、ブラウザにおいてFIDO2対応が完了しています。また、FIDOの新しい動きとして注目されているPasskeysについて、Appleによる導入が2022年6月に発表されましたが、ヤフーのサービスではすでに対応が完了しています。初回設定後は同じAppleアカウントでiCloudにつながっているデバイスであれば、設定不要でFIDO認証が使えるようになりました。
FIDOはSMSと比較しても、認証成功率・認証速度ともに優れているという結果が出ています。特に認証速度は2倍以上と大きな効果を上げています。
さまざまなデバイスに対応したからこそ、広くみなさんに使ってほしいと言える状態になりました。多くの人にその便利さを知ってもらい、FIDOに切り替えていってもらいたいと考えています。
今後はGoogle、マイクロソフトなどが提供するOSへのPasskeys導入にいち早く対応して、FIDOの体験向上に力を入れていきます。今後も認証だけでなく、安心・安全に使ってもらえるように、さまざまなセキュリティ強化を図っていきます。ここまでヤフーの技術投資について紹介しました。
池邉:ここまでで、LINEとヤフーのそれぞれが注力していることについて話してきました。
小久保:両社の抱えるユーザー数、データ資産はますます巨大になっています。そして、今後も加速度的に大きくなり続けるでしょう。成長を続けていくために、さまざまな技術課題を解決していく必要があります。
増大するトラフィックやデータに柔軟に対応できるプラットフォームを構築すること、ますます高度化するAI技術の活用領域を広げて実装を加速すること、高まるセキュリティやプライバシー意識に応える信頼性を築くこと。
これらの取り組みを進めるために技術面での両社連携を強化することで、進化を加速させて、さらに便利にLINEやヤフーのサービスを使ってもらえるようにしていきます。
今後もLINE、ヤフーを始め、グループ各社の取り組み、技術的な挑戦に注目してください。
最後に、Tech-Verseについて少し紹介します。このあとTech-VerseではLINE、ヤフーだけでなくグループ企業の6社が加わり、最新の技術的な取り組みについて、計8社から9つの領域で合計80以上のセッションが行われます。
Day1はデータ・AI、インフラなどの4つの領域のセッションです。この直後に始まるデータ・AI領域はもっとも多く、約20ものセッションが行われます。とても広い領域ですが、深い技術の話をお伝えします。LINE、ヤフーを始め、各社がこの領域に力を入れているということをより具体的に感じてもらえるとと思います。
明日のDay2は、サーバーサイドやモバイルアプリなどの5つの領域のセッションです。プロダクト開発の各領域やその過程の効率化、自動化などのみなさんの興味に応える具体的な事例や知見が詰まっています。ぜひ1つでも多くのセッションや登壇するエンジニアたち自身に興味を持って参加してもらえるとうれしいです。
今回のTech-Verseでは、各社それぞれの取り組みを紹介するセッションが多いですが、次回はグループで連携した事例をもっとお伝えできるはずです。サービスの連携、データの連携、開発ツールや環境の連携など、たくさんの育ちつつあるシナジーがあります。
次回のTech-Verseではそれらの工夫や苦労、そして成果をみなさんに共有する機会にしたいと思っています。これで私たちのセッションは以上です。
池邉:Tech-Verseで私たちの技術、その知見や挑戦を楽しんでください。ありがとうございました。
LINE株式会社
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