2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
電動化のコア製品・インバーター開発について(全1記事)
提供:株式会社デンソー
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橋本昇氏:私は、橋本昇と申します。2010年にデンソーに入社しました。入社以降インバーターの量産開発に従事していました。インバーターの制御ではソフトウェアの開発を行っていました。2017年からは、インバーターのハード開発に従事しています。
入社以来ずっとインバーター開発に従事しているので、本日は少しでもデンソーのインバーターや開発者の取り組みについて知っていただければと思います。
初めに、インバーターとはなにかを説明します。ハイブリッドカーや電気自動車には、このスライドに示されている3つが必ず搭載されています。1つ目が電気を蓄えるバッテリー、2つ目が真ん中にあるインバーター、そして3つ目がクルマのタイヤを回すためのモーターです。
このモーターは、交流で使われることが多いので、バッテリーからの直流電流を交流に変換する必要があります。そこで必要となってくるのが、インバーターです。
このインバーターがどのように直流から交流に変換するかというと、インバーターの中にはパワーモジュールという構成部品があります。この中に半導体のスイッチング素子を有しており、スイッチング素子のON/OFFを切り替えることで電流の向きを変えて、交流を生成しています。インバーターは電動車にとって不可欠な存在となっています。
次に、世界に広がるデンソーのインバーターということで、デンソーのインバーターの歴史について紹介します。デンソーは1997年からインバーターの量産を開始しており、2020年の段階で年間120万台の生産を誇っています。
トヨタ自動車を始め、日産自動車や、商用の分野だと日野自動車、海外のメーカーだとフォード、中国の第一汽車といった世界中の幅広いカーメーカーに私たちのインバーターを使っていただいています。世界シェアに関しては、2018年では32パーセント、世界シェア一位です。世界中の電動車に搭載されています。
次に、インバーターを取り巻く環境について説明します。先ほど工藤(工藤弘康氏)からの説明でもあったように、今世界中でカーボンニュートラルと言われており、各国各地域でCO2排出量の規制が強化されています。そんな中、各カーメーカーでもCO2の抑制目標を掲げ、CO2削減の取り組みを行っています。
このような背景もあり、世界の市場では右の図のように徐々に電動車が増えていく傾向があります。こちらに2020年、2025年、2030年におけるエンジン車と電動車の内訳を示していますが、今後、世界中で電動車が増加する傾向となっています。
ではそんな中、どのようなインバーターを作ったらいいのか? について説明します。特にバッテリーEV、電気自動車の観点で説明します。バッテリーEVの特徴は、クルマの全エネルギーを電池から供給することですが、課題となるのは航続距離です。
電池が充電された状態から空っぽになるまでが走れる距離になります。つまり電池が空っぽになったら、充電ステーションに行って充電する必要があります。急速充電設備を使ったとしても充電をするのに30分程度かかってしまうので、ガソリン車に慣れているユーザーが、ストレスに感じてしまうことも多いのではないかと考えています。そのため、少しでも電池を減らさないようにすることがEVの商品性につながると考えています。
次に、バッテリーEVの損失の内訳を見ていきたいと思います。ここで言う損失とは、クルマを動かしたりカーエアコンを動かしたりするのに使われない、無駄な電力のことです。
クルマ全体の損失のうち、無視できないレベルの損失をインバーターが生み出しているので、インバーターとしても低損失に取り組む必要があります。
次に、動力という観点で説明します。例えばハイブリッドカーだと、主な動力源はエンジンで、モーターがそれをアシストしています。一方、バッテリーEVの場合、すべての動力をモーターが生み出します。
タイヤを回転させようとする力のことをトルクと言いますが、このトルクはモーターの中に搭載される磁石の力が大きいほど大きくなります。また、流す電流が大きいほど、そのトルクは大きくなります。なので、バッテリーEVでクルマを動かすためには、大きな電流が必要です。電動車には、損失が少なく、大電流が通電できるインバーターが必要になります。
まず、損失の少ないインバーターを作るために、最も重要な部品であるパワーモジュールについて説明します。
パワーモジュールは、インバーターの損失のうち約90パーセントを占める部品のため、パワーモジュールで発生する損失の低減が、最も重要な課題になります。デンソーのパワーモジュールは、その形から「パワーカード」と呼ばれています。本日は、この名前だけでも覚えてもらえたらうれしいです。
他のインバーターメーカーはどうかというと、世の中に汎用的に出回っているパワーモジュールを購入して、自分たちのインバーターに組み込んで使っているところが多いと思います。一方、デンソーはパワーモジュールを他社から購入するのではなく、自社で素子レベルから開発・生産に取り組んでいます。
最近は、ミライズテクノロジーズという開発会社をトヨタ自動車と共同出資で設立したり、トヨタ自動車から譲り受けた広瀬工場で半導体部品を生産していたりなど、従来にも増してパワーモジュールの開発から生産まで、力を入れて取り組んでいます。
このデンソーのパワーモジュールを少しアピールしたいのですが、今世界で普及し始めている、SiC(シリコンカーバイト)という半導体があります。従来のシリコン、Siのものと比べて、大幅な損失低減が期待できるため、EVでは多く採用され始めています。私たちもSiCを使うことで、EVの損失を従来の7パーセントも減らすことが可能となり、大きな損失低減につながると考えています。
次に、大電流対応を実現するデンソーの技術について説明します。大電流を流すための課題ですが、パワーモジュールに流れる電流が大きくなればなるほど、パワーモジュールの損失が増加します。その損失によって、パワーモジュールが発熱して壊れてしまうというリスクがあります。
そういった課題に対して、デンソーは独自の冷却技術を使っています。先ほど説明したカード型のパワーモジュールであるパワーカードを冷却水が流れる冷却器の間に差し込み、冷却器に密着させることで、パワーカードの両面から放熱させる仕組みを採っています。デンソーの冷却技術は、他社の冷却と比べて約1.5倍の冷却能力を持っています。
次に、その他の独自技術について説明したいと思います。(スライドを示して)真ん中にデンソーの内製ECU(Electronic Control Unit)というものがありますが、このECUの中にパワー素子をスイッチングさせるために必要な回路部品、ドライブICというものがあります。
これはパワー素子の性能を引き出したり、異常があった時にパワー素子を保護したりする重要な役割を担っています。デンソーは、このドライブICを自社開発しており、パワー素子とセットで性能を最大限に引き出せるような開発を行っています。
またその上に、デンソー内製のモーター制御として、インバーターやモーターをクルマの状態に合わせて最適に動作させる制御技術の開発も行っています。
スライドではデンソーのブランドスローガン、「Crafting the Core」を紹介していますが、私たちのインバーター開発は、まさにこれに当てはまると考えています。デンソーでは、重要となる要素・技術を内製化して他社にはないインバーターを作り続けています。
最後になりますが、インバーター開発に必要な技術をまとめます。今日私が説明した内容は、インバーターの中に取り込まれている技術のほんの一部ですが、それでも多くの技術が散りばめられていると感じていただけたのではないかと思っています。インバーターは到底1人では作れるものではなく、さまざまな技術分野の専門家が総智・総力でコア技術を開発して作り上げるものだと思ってます。
デンソーにしか作れないインバーターで世界ナンバーワンであり続けたいと思っています。
株式会社デンソー
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