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2030年 会社はどうなる? 昭和おじさんがサイボウズで学んだこれからの組織とIT(全2記事)

2022.02.03

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「エラい人だから意見が通る理不尽」がなくなる、革命的な試み サイボウズの「助言収集アプリ」に押し寄せる、社員からの声

提供:サイボウズ株式会社

毎年恒例、サイボウズ株式会社主催の総合イベント「Cybozu Days」が2021年も開催されました。今回のテーマは「LOVE YOUR CHAOS」。クラウドサービスの活用事例から中年の生き方まで、幅広い“カオス”なセッションを行いました。本記事では「2030年 会社はどうなる? 昭和おじさんがサイボウズで学んだこれからの組織とIT」の模様を公開。本記事ではサイボウズ コーポレートブランディング部長の大槻幸夫氏が「組織に存在する、タテ・ヨコ2つのコミュニケーション経路」「サイボウズの組織変革の歴史」などについて語りました。

サイボウズ大槻氏が語る「2030年 会社はどうなる?」

大槻幸夫氏:みなさん、こんにちは。サイボウズの大槻です。今日は40分お時間をいただきまして、「2030年 会社はどうなる?」というテーマでお話させていただければと思います。

まずは私の自己紹介です。サイボウズを知っていただくための、コーポレートブランディング部という企業広報のマネージャーをしております、大槻と申します。2000年に大学を卒業してベンチャーを立ち上げ、2005年にサイボウズに転職してまいりました。17年目ですかね。だいぶ古株になってきた感じがあります。

次に直近10年間で私がやってきたことですが、『サイボウズ式』というオウンドメディアを立ち上げ、これをいろいろなかたちで表現したり、社長の本をプロデュースしたり。昨年は「がんばるな、ニッポン」というテレビCMをやらせていただいて、サイボウズのメッセージをお届けしました。

こんなかたちでサイボウズの働き方改革を10年間お伝えしてきたので、この経験に基づいて今日はお話できればと思っております。

今日のテーマは「2030年 会社はどうなる?」。予想できるの? という話もありますが、あくまでも予想というよりは、サイボウズの現状をお伝えすることが、もしかしたら10年後のヒントになるかもしれないと思って、お話させていただければと思います。

組織に存在する、タテ・ヨコ2つのコミュニケーション経路

今日お伝えしたい視点は、2つございます。1つは「タテとヨコ」という観点です。組織というのは分業ですよね。いろんな人が集まって働いていますが、分業によって、さらに分かれた人たちが一緒に協調しながら働いていく。この視点が1つ。さらに「個人」という視点ですね。この中の構成員一人ひとりがどうなるのかというところをお話していければなと思っています。

まず「タテとヨコ」ですね。組織にはタテとヨコのコミュニケーション経路があって、(タテには)経営陣が決めたことが社内に伝わっていく部分と、逆に下から上に上がっていく部分、2つあるかなと思っています。

上から伝わってくるのはビジョンや戦略、いろんな計画だったり、さまざまな意思決定ですよね。これが流れてくる。一方で下から流れてくるのは、市場の状況やお客様の声だったり、現場の考え、経営陣が決めたことに対するレスポンスなんかも入ってきますよね。こういったものがタテのコミュニケーションなのかなと思うんです。

さらにヨコ。これも大事です。いろいろな事業部、チームに分かれて働いていますから、この間もうまくつないでいかなきゃいけないし、何かをやろうと思ったら、みんなで合意を形成することになってくるわけです。

輝きを失う日本企業と「重い組織」

このタテとヨコが、組織変革においてはすごく大事になってくるんですが、経営学者である一橋大学の沼上(幹)先生がおっしゃるには「なぜ昔、日本企業が強かったのか? それはヨコ(のおかげ)ですよ」ということなんですね。

企業内に発達した横のネットワークを基盤とした、ミドル・マネジメント。マネージャーたちが自由闊達に議論を戦わせ、緊密なコミュニケーションをとりながら戦略を考えて、この実行にコミットしていく。

昔の日本企業のイメージで言うと、ソニーとかホンダとかありますよね。ソニーも創業者の井深(大)さんが、自由闊達な理想構造で会社を立ち上げようと。現場でエンジニアがみんな議論を戦わせて、理想の製品を作って出していった。そんなイメージが湧いてきます。

ただ、日本企業がここ数十年でこの輝きを失っていると。この1つの視点として、今日は沼上先生の『組織の<重さ>』という本を持ってきました。ここには何が書かれているかというと「ミドル・マネジメントの人たちが、いろいろなかたちで苦労するのが『重い組織』」だよということなんです。なんかイメージできますよね。

いろいろと時間がかかるとか、調整が大変。新しい計画を立てて行動しようとすると、多大な労力がかかったり、結局、何も変わらなかったりするような組織の状況。これを「重い組織」と(沼上先生は)呼んでいます。

どうやって調べたか? というと、さまざまな調査ですね。タスクの日数。どれくらいかかっているかとか、コミュニケーションの階層がどれくらいあるんだとか。主力サービスがモデルチェンジした時にどれくらい時間がかかっているかとか、既存事業の整理撤退の意思決定をするのにどれくらい時間がかかったか。こういったところから調査をして研究されたと。

いま求められるのは「ヨコの力」じゃなくて「タテの力」

その結論だけ今日は先取りします。興味のある方はぜひ本を読んでいただければと思うんですが、「重い組織」の特徴とは何か。(1つ目は)「過剰な『和』の志向」ですよね。1人でもゴネると大変。激しい議論するのは子どもだと思われる。対立回避するヤツが出世する。なかなか長く働いていると、ちょっと笑顔が引きつってしまうというか(笑)。いろいろ思い出されるところもあるんじゃないかなと思うんです。

そして(2つ目が)「内向きの合意形成」。機能別の利害に固執。「営業が」とか「開発が」とかですね。メンツを重視しているだけとか。重そうですね。(3つ目が)「フリーライダー」。タダ乗りですね。口は出すが責任は取らない。自分の痛みと感じない人が多い。決断が不足していると。ありそうですね。

最後は「経営リテラシー不足」。経営陣がしかるべき意思決定をなかなかできない。こういう問題もあって。これって要は「ヨコが劣化」しているという話なのかなと思うんですね。先ほどの「ヨコのコミュニケーション」がうまくいっていない。だから、どんどんヨコのスキルが悪いほう悪いほうに行っちゃっている。

なぜこうなっちゃったか? というと、高度経済成長期は簡単だったんです。「複雑性が低い」。テレビを作れば売れた。車を作れば売れた。どんどん人口が増えていますから市場が拡大して、どこかが成功していることを(マネして同じように)やればよかった。なので、大事なのは「現場の力」だったんですね。現場がみんないい製品を作っていれば、なんとなくうまくいっていた。日本企業はヨコが得意だからうまくいった。

でも時代が変わってしまった。今は人口も伸びないですよね。そして多様性。いろんな個性で好みも多様化しています。何をすればいいか、あるいは何をやめたらいいか? をきちんと判断していかないとうまくいかない。これはヨコの力じゃなくてタテの力なんですよね。戦略を考えて実行するスキルが、すごく大事になってきている。

ただ「このタテが弱くなっちゃっている」こと。それは例えば、大雑把過ぎる戦略。中期経営計画なんて「役に立たないぞ」という声があったり、立案の経緯や思いなど「何でこれやるの?」というWhyが伝わらない。

逆に現場の声が上に伝わらないとか。意思決定、判断もモヤモヤする。つまり「誰が決めているんだろう」とか「決めてくれない」とか。これがタテの力の弱さだと沼上先生は言っています。

ヒエラルキーは大事だけど「単なる上下関係」になっていないか?

そして「ヨコが劣化していると、タテも弱い」そうです。ではどうしたらいいか? 沼上先生は「(日本は)ヨコはもともと得意なんだから、タテをしっかりしなさい」と。「タテをしっかりすることで、ヨコにモヤモヤが生まれずに『これをすればいいんだ』と決まっていれば、みんなでうまく話し合いながら進められるよ」と言っているわけなんです。タテが大事だと。

タテと聞くと、昭和のおじさん的には、私も「今年(※イベント開催時の2021年)46歳でいよいよアラフィフ」という感じになってきましたが「ヒエラルキーは大事だぞ」と言われて育ってきた。その感覚が蘇ってくるわけですが、もちろん、そうではないわけです。「重い組織」を解消するためには、ヒエラルキーは大事なんだけれども「単なる上下関係になっていませんか?」と。

「上が言ったからやる。やんなきゃいけないんだ」みたいな、そういう支配の関係になっちゃっていると、これダメだよね。あるいは、上から下から情報の流通が滞っているようなタテって良くないよね。というように、悪いヒエラルキーがある。

ただ、ヒエラルキーってもともとはいいものじゃないですか。たくさんの人がいたら、効率的に仕事をするためには現場があって。現場で処理できない例外的なものが上司に上がって、それを上司が判断して、という効率的な組織形態。

では「良いヒエラルキーって何ですか?」ということですね。それは「一人ひとりがリーダーシップを持って意思決定すること」「『誰が何を決めるか?』という意思決定をしっかり決めておくこと」と、タテの情報をしっかり流していきましょう、と。これが良いヒエラルキーになってきますということなんです。ここまでがタテとヨコの組織の話。日本企業はここが今、ダメになっちゃっているよという話でした。

サイボウズの組織変革の歴史

じゃあ「サイボウズはどんな取り組みをしているんですか?」という話をしていきます。サイボウズは10年前から、組織変革の歴史を作り上げてきました。今日は働き方改革のセッションではないし、すでにご存じの方も増えてきていますので、だいぶ駆け足でいきます。

(サイボウズでは)そもそも情報がグループウェアでオープンにされています。kintoneなりGaroon、メールワイズ、Officeを使えば、いろんな情報が見えるんですね。100人100通りの働き方で、いろんな働き方があります。ここに挙げているだけでも、例えば「水曜日は子どもがいるから時短ですぐ帰ります」とか「副業しているので週4で働きます」とか、いろいろありますよね。本当に働き方が選べる状態になっている。

複業も全社でオープンにシェアするようになっていて、kintoneにある「複業アプリ」というもので共有されます。なんならスケジュールも共有されますね。

サイボウズもいよいよおじさんが生まれてきました。まだ平均年齢30代前半〜中盤くらいかもしれないですけれども、おじさんたちが生まれてきて、複業にどんどんチャレンジしていったり。若手も複業をどんどんしている。

新卒1年目から複業していたりして、おじさんとしては「3年くらいはサイボウズでがんばったら?」と思うんですけれども、1年目からやっている(人もいる)。すごいなと思います。

そして出戻りもOKです。1回会社を辞めて、ボツワナに青年海外協力隊に行くような人も出てくる。こういったサイボウズの取り組みを聞いていると「自由な働き方、オープンな情報共有が伝わってくるけれども、なんかヨコの話に聞こえますよね」という話なんですよね。

取締役会も経営会議もオープンに

さっきは「これからの日本企業で大事なのは、タテですよ」というお話をしました。じゃあサイボウズは、タテでは何しているの? というと、タテの強化も行っています。経営会議、これがタテの“震源地”ですよね。会社が何をするかを話し合って決める経営会議。毎週木曜日の朝10時からやっていますけれども、これもオープンにしちゃっているんです。

kintoneに報告アプリがあって、取締役会もそうですし、経営会議もそうです。事前に各部署担当者が「今日はこんなお話を議題を持ってきました」ということを、事前に登録しておくんですね。それがオープンになっていますから、誰でも見えるようになっている。

今はZoomで開催しています、誰でも参加できる状態になっているし、終わったあとの議事録、これもkintoneアプリですぐに共有される。Zoomも録画されていて、議事録とZoomに英訳が付いて、USの社員も見れるようになっています。

さらには「経営計画を考えていくプロセスすら公開しちゃおう」ということで、社長の青野(慶久)さんは最近、自分で経営の企画を考えるパワポを作る様子をZoomでつないで「みんな見て。こんな感じで考えていくよ」と言って、みんながいろんな意見を言いながら、考えていく様子を作る。

あるいは、最近は社内版Twitterみたいな感じで、日報ではなく「分報」として、その都度その都度つぶやくみたいなスタイルが、サイボウズのkintoneの中で起こってきているんですが、いよいよ青野さんはその分報を始めまして。

いろんなことをつぶやいていますが「経営とは」とか「新事業とはどういうことだ」という、その考え方・思いもつぶやいていく。それによって「青野さんってこういうふうに考えているんだ」というのが、社員でもわかるようになってくる。

「助言収集アプリ」に押し寄せる、社員からの助言

さらに今日一番お伝えしたかったのが、この「助言収集アプリ」というのがサイボウズに誕生しまして、革命的だなと個人的には思っているんですが。これは何かというと、例えば「経営会議を公開しました。Zoomで誰でも参加できます」と言っても、なかなか社員が意見を言うことって難しいじゃないですか。役員もたくさんいる中で、新人だったらなおさら難しい。

でもやっぱり思うところはあって、それを言いたい。この気持ちを救わない限り、タテが強化されたとは言えないんじゃないかなと思うんです。なので、この「助言収集アプリ」というのができたんですが、これは何かというと「今日はこんな議題を話します」とkintoneの報告アプリに登録されましたよね。そうすると、こちらの助言収集アプリにもそれが登録されるんです。

例えば(スライドを指して)これは、来年(2022年)、東証さんが一部、二部というのをやめて、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場と分かれますと。「『サイボウズさんはどこにするんですか? 決めてください』という連絡があって、それでどれにするか決めたいです」という経営支援本部からの議題なんですね。

経営支援本部としては、こうしたいというのを考えて意見を挙げるわけですけれども、そこにみんなが助言を登録できるわけです。するとどうなるか? 押し寄せる社員からの助言。みんなが書くわけです。すごい数が来まして、50か60ぐらい来たんですかね。

経営支援本部って現場ではないですから、やっぱり気付けないことも多いわけです。でも、ここに営業の若手が「お客さんから見たらこう見えるかも」とか、マーケの社員が「メディアから見たらこう見えるかも」と。こんな意見をどんどん登録していく。

すると解像度が上がっていくんですよ。「なるほど、なるほど」って。青野さんも気付いていないところもあったりする。なのでこういうものを見ながら、フラットに意見を聞いて判断をしていく。こういう、すごく解像度の高い公明正大な意思決定ができる体制に、今、サイボウズがなろうとしている。

これってすごくおもしろいですよね。フラットになる。普通に会議室で話していたら「声が大きい役員とか社長が言っているから」とか。そういうことで雰囲気で決まりがちなんですが、ネットにはそういうものありませんから、全部フラット。これによって公明正大な正しい意思決定ができると。

これ、登録画面も工夫してあって。先ほどの「重い組織」の中に出てきた「フリーライダー」や「評論家」。こういったものは困るわけですよね。なので最初に聞いてるんです。「この話題に関して主体的に関わりたいですか?」「主体的に参加したい?」「お任せ?」と聞いていますね。

「お任せ」の人もいるわけですよ。でも「お任せ」なんだけど意見を言ってみたい人もいるし、主体的に関わりたい人もいる。ここが区別できれば、経営支援本部としても「誰と話せばいいか?」がわかりやすいですよね。こういうことが起きている。

最近では『サイボウズ式』で青野さんも語っていました。「権限と責任の分散をしていきたいんだ」と。「社長が持っていた権限を本部長にもどんどん渡すようにしている。全メンバーからアドバイスを貰えるようにしているよ」と。それってまさに、ティール組織のアドバイスプロセスですね。

そうなんです。意思決定は分散していきたい。でもその判断が正しいかどうかわからない。任されたほうも不安ですよね。なので、こうやって助言をもらうということがすごく大事なんだな、と。これからの組織にとって、こういう仕組みが大事なんだということを、今、やりながら気づいているところです。

結局、どうなったか。「スタンダードでいいんじゃないか」とか、いろんな議論があったんですけれども、いろんな社員の助言をもとにプライム市場に決定して、先々月発表させていただきました。

情報はオープンにしたほうが、成果につながる

では「なぜオープンにするんですか?」というと「情報をオープンにしたほうが、一人ひとりの納得度が上がって成果につながるからですよ」と(青野氏は)言うんですね。意思決定には品質があると。「A:経営陣だけで決めたこと」と「B:オープンな場所で社員も巻き込んで決めたこと」。どっちがうまく行きそうですかね? どう考えてもBな気がしますよね。

この議事録をオープンにする理由ですが、いろんなところからツッコミが入るんだそうですね。なので意思決定の精度も上がる。一番困るのは、実行フェーズになったところでいろんなおかしなことが起きちゃうと、手戻りが発生して大変ですよね。実行フェーズでゴタゴタしない。先にいろんな人から意見をもらうから、すごくいいですよということなんです。

さらには「嘘、忖度、対立、無関心を防ぐため」ですと。これはタテのコミュニケーションの下から上の強化っぽいですよね。こういうことが情報として流れないといけない。先ほどお話したような、社員の「こう思います」という意見が経営に届かないと、例えば日産さんとかかんぽ生命みたいな問題が起きちゃうのかなと。こういうことを防ぎたいわけです。なので、タテの情報ラインを流れるようにするというのは、すごく大事だなと思うわけです。

実際、サイボウズでは2年前に「サイボウズLive」というサービスを終了するという決定をしたんですが、その時も議事録で登録されて、一般社員が「伝え方はまだまだ議論できるんじゃないですか?」みたいなコメントを付けたりということが起きているわけです。

このタテのところで関連すると、評価みたいなものも同じかなと思うんですね。昔のサイボウズの評価制度。階層の定義があって上司が決めて「あなたは今年は『S』です」「Aです」とか決めて、一方的に告げられて終わりだったんですね。これ、やめましょうと。

今はどうなっているか? kintoneで「条件コミュニケーションアプリ」というのがあって。(給与の)金額もそうですし、働き方も含めて「こういう働き方、給与が欲しいです」というのを、社員が登録して上司と話し合う。話し合うのがすごく大事だな、というふうに生まれ変わりました。

こうやって進めていく。やはり経営陣って、ふだんからなかなか社員と顔を合わせることもないので、分報で「私ってこんな人間ですよ」ということを、パーソナリティも知ってもらう。これもすごく大事かなと思うんですよね。分報でつぶやき始めるということが起きてきました。

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