2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:サイボウズ株式会社
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松川隆氏:みなさん、こんにちは。ようこそおいでくださいました。数あるセッションの中で、微妙なタイトルのセッションをわざわざ選んでくださり、少し参加しづらかったかもしれないですね(笑)。「アラフィフとか、私は違うんだけど!」という人たちがいるかもしれません(笑)。最後までお付き合いよろしくお願いいたします。
今みなさんが職場環境の中で変化を求められていることが、このスライドのキーワードの中にもいくつかあるのではないかと思います。
ずいぶん前から「働き方改革」と言われていますが、ダイバーシティやインクルージョンがなかなか進まない中で「サイボウズという会社は先進的な取り組みをしているらしいな」と。そんな気付きを得ようと思って、「Cybozu Days」に参加いただいている方も多いのではないかと思います。
サイボウズは創業から24年ぐらいの歴史があるのですが、最初からこうだったわけではないと、たぶん繰り返して言っていると思います(笑)。変化していることを、みなさんにお届けできればいいなと思っております。
私は松川と申します。今でこそ「チームワーク総研」と名乗って、いろいろお話させていただいているのですが、ぜんぜんこんなではなかったんです(笑)。大学を卒業して最初に入ったのは銀行です。いわゆる日本的なレガシー組織に約10年間いました。紆余曲折あり、40歳になる年にサイボウズに入社しました。
以降は、いろいろなできごとを経て自分自身も変化したという経緯をたどっております。私は今49歳です。サイボウズがいわゆるカラフルな感じに見えるとしたら最近で、それまではやや黒みがかった感じで、普通の昭和型の生き方をしていたのではないかと思います(笑)。
今日は、そのあたりもみなさんにお伝えできればいいなと思っております。最後までお付き合いよろしくお願いします。
私はサイボウズに入ったあと、いろいろなことをやりながら変化しているので、さっそくそのあたりをご紹介します。2年間ほど営業部におりまして、そのあと人事部に移っています。
これは今から6~7年前の話です。人事部の新人研修で4~5月に基礎的な研修をして、6月には実際のお客さまに提案して、新人だけで営業から販売までを体験する「実践研修」というものをやっていました。
私はその研修の責任者です。この研修は新人たちだけでやるのではなく、人事や営業、開発の先輩など、いろいろな先輩たちが新人のフォローに入る体制でやっています。
実際に売るわけですが、「ちょっとがんばれば超えられるかも」という受注件数の目標を毎年設定します。そして、ギリギリで超えていって、最後に「よかったね!」と配属していくことを例年やっていたんです。
まさにこの年もあと少しという時に迫っていた、ラスト1週間ぐらいのできごとです。
先輩社員から、こんな声が聞こえてきたんです。「配属がまだなので、お昼休みに自分の気になる部門の先輩とランチをしていろいろな情報を得ている」「勉強会に参加している」「ラウンジにソファーがあるので、靴を脱いで足をバンと出して、パソコンで作業をしている姿が見られる」。
昭和型の人間からすると、「最後は汗と涙を流しながらやってほしい。そういう姿の先にこそ、何か得られるものがあるのではないか」と思ってしまっているわけです。それがないことに対して、どうなんですかと疑問に思う人たちが事務局に言ってきたんです。
僕なんかは「研修ってこともあるし、ガツンと言うか!」と思って、掲示板にドン! と書くわけです。(スライドを)あまり見ないでください(笑)。原文そのままで、本当に恥ずかしいんです。
要約すると「君たち、今は研修中だよ? そういうことをやりたい気持ちはわかるけど、先輩たちも含めて、みんなが夜な夜な君たちのために準備をしているんだ。勉強会はあとからでも参加できるじゃん。今やらなきゃいけないのは一生に一度の新人研修であるこの実践研修。受注件数を達成するために、一生懸命がんばりたまえ!」と、ビシッ! と言ったわけです。
本人は「決まったぜ!」という感じです。これを話すと、けっこう多くの人が「これくらいは言うんじゃないですか」と共感してくれるんです。この会場にもけっこう、うなずいてくれている方がいらっしゃるので安心しますね。
こう書いたら、サイボウズでは研修の先輩社員からこんな声が出たんです。「昼休みに別に何をやったっていいでしょう」「制限するのはおかしくない?」「夜な夜ながんばっているという話が良いことのように書いてあるけど、そういうのは『次からやめようよ』という流れになってほしいです」という声がありました。
これに「いいね」がめっちゃついていくんです。「えー!?」となりました。「いやいや、そんなつもりで書いてないよ。こんな見られ方をするよとを伝えてあげなきゃいけない、と思って書いたんだ」と言うわけですが、掲示板はシーン……とするわけです。
「いやいや、松川さんの書き込みではそう読めないですよ。問題ないことをしているのに、それが信頼を下げると言うなんて、そっちのほうがおかしい」と。これにも「いいね」がめっちゃついていくということがありました。
人事の研修責任者ですよ? そのコメントに対して、こんな返事がついていくわけです。僕らは社内で「炎上」という言葉を使うんですが、サイボウズでも1年か2年おきぐらいにちょっと盛り上がっちゃうものを炎上と言うんです。この年は、このあたりがいろいろと波紋を呼んだできごとになっています(笑)。
またある時は、オフィス移転プロジェクトがありました。水道橋のオフィスの人数が多くなってしまって、日本橋のオフィスに引っ越すことになり、私はその移転プロジェクトのリーダーでした。当時のサイボウズはビジネスが上向いていたこともあり、「今までのスペースの2倍以上のオフィスを借りて、新しいオフィスを作ろうぜ」というコンセプトでやっていたんです。
そこで従来型の考え方ではなく、いろいろな働き方ができるオフィスにしようと、物件選定、家具選定、ゾーニングといったさまざまなところをイチから考えることにしました。多くの社員の意見を聞きながら、議論は全部オープンにすると、さまざまな意見が飛び交い、まさにカオス状態になるわけです(笑)。
例えば具体的には、「そもそも家賃の高いオフィスになんで引っ越すんですか? そんなことをするくらいだったら、給料を上げてくださいよ」という意見も来るし、「フリーアドレス? 戻って来ても席がないんですか? 必要とされてないんですか?」という意見も来て、「いや、そんなことは言ってません!」みたいな(笑)。
「ペットを連れてきていいですか?」「タバコも吸いたいです」「シャワー室をお願いします」と、こういう(カオスみたいな)ことになってしまうわけです。
1年後には引っ越さなきゃいけないんですが、まあ大変なプロジェクトでした(笑)。私はこの(スライドの中央のイラストを指して)真ん中にいまして、燃えるのが得意ですから「やってやるぜ!」と思いました(笑)。
それで「みんなね、僕の言うことを聞いて、とりあえずこうしてくださいよ!」と言ったら、もうみんなが燃える燃える(笑)。みんなが「おいおいおい!」と言い始めて、大変なことになっちゃうというプロジェクトをやりました。
それでもみなさんがいろいろな協力をしてくれて、プロジェクトは前に進みながら新しいオフィスができました。確かに、事務局の「とりあえずこうしましょう」というものに従っていたら、いわゆる普通のオフィスができていたんです。今はワチャワチャしていますが、すごくユニークなオフィスができているのは、いろいろな人たちの意見を聞いた結果かなと思います。
このオフィス移転プロジェクトは途中で、今お話ししたように意見の収拾がつかなくなりました。でも、来週にはB工事(テナントの要望によりオーナー側が行う工事)の発注をしなきゃいけないし、オフィス家具も注文しないと移転まで間に合わないという状況がありました。なので、経営会議に進捗報告をしました。
社長の青野(慶久)さんに進捗を報告しつつも「これはさすがにいろいろ大変。みんな言い過ぎだよ」「人事の松川さんの言うとおりに、いったんは従ってやろうよ」と、内心は言ってほしくて報告をしているところもあるんです。
しかし、報告をして青野さんがどう言ったのかというと、「大変ですね。いろいろな人の意見を聞くのがサイボウズ流なので、引き続きがんばってください」と(笑)。「おい! 他人事かよ!」と、びっくりした記憶があります(笑)。
そんなことを経て、オフィス移転自体はうまくいきました。そうこうしている時、飲み会があったんです。若いメンバーと一緒のテーブルになった時に、「松川さん、やっていますね。今年も燃えましたね! 研修もやりましたね! オフィス移転も大変でしたね!」と言われたんです。
「でも俺、なんか燃えちゃってるんだよね。炎上ばかりしちゃって、そんなつもりはないんだけど、どうしてかな?」と言ったら、「『こうしろ』というのがけっこう強めで、みんなで一緒にやっている感じがしないですよね」「楽しくないかも」と言われたんです。めっちゃショックでした(笑)。
「マジか……」という感じのことを爽やかにフィードバックされたのですが、僕の心の中にはけっこう残っていて、なるほどと思いました。こんなことを通して、僕のおじさんとしての学びは「価値観の押しつけ」です。確かに経験値は持っているので、それをしゃべる分にはいいと思うんですが、押しつけてしまうと共感を生まないんです。
「責任者だから」というだけで進行してしまうと、みんなの自主性や楽しさを奪って、自己満足だけが残っていくことってあるんだろうなと思います。
まさにオフィスは、みんなの意見を聞いていたら進化したんです。あんなカオスなオフィスを作れたのは、たぶんみんなの意見を聞いたからだと思うんです。意見を聞かないことは、やっぱり組織の進化に貢献していないのではないかなと思うようになりました。
冒頭にお伝えしたとおり、サイボウズという会社も変化しています。そこで働く僕みたいな人たちが一人ひとり、いろいろなかたちでモノの見方が変わっていると思うんです。変化しているんです。だから今、少し長い時間をかけて、多くの人が「自分の価値観を押しつけないようにしたほうがいいな」と思っていると思うんです。
みなさんはあまり気持ちよく聞けないかもしれませんが、重要なキーワードは「わがまま」です。このキーワードが、サイボウズの変化にすごく関係があったのではないかなと思います。
わがままは「集団生活の中において一番やってはいけないこと」くらいのレベルで、僕らは習いますよね。でも、今日はこのわがままについて、立ち止まって考えてもらいたいなと思っています。
みんながわがままになって、会社にわがままがはびこったらどうなっちゃうんだろう? 統制が取れなくなる。あるいは誰かにしわ寄せがいく。誰かのわがままが誰かのしわ寄せなんだ! と、チームがバラバラになりカオスになってしまう。普通はこんなことを思いますよね。
でも、今日はわがままをポジティブに捉えてみてください。そもそもわがままは、「ああしたい」「こうしたい」という話なので、その人のモチベーションの源泉が詰まっている可能性がありますよね。
この人のわがまま、あの人のわがまま……と、すべてのわがままを叶えれば、全員が幸せになる気がします。それを一つひとつ組織の中で叶えていくと、進化する機会になるのではないかなと思います。しかし、頭ではわかっていても、会社の中でどこまで一人ひとりのわがままを受け入れるべきなのか、この線引きについてもよく話になります。
僕らはわがままを「個人の理想」と言ったりします。やりたいことって、いろいろなかたちがありますよね。例えば働き方だと「8時に出社したい」「10時出勤にしたい」「午前中で帰りたい」「複業したい」。これは全部、個人のわがままですよね。
キャリアだと「営業部に行きたい。そのあとは人事部に行きたい」「30歳を過ぎたらマネージャーになりたい」。全部、自分のなりたいわがままです。
これらは基本的に個人の理想なので、まず他人がとやかく言う話ではないです。だけど、それをどこまで自分たちのチームの中で一緒に叶えてあげられるのかというと、「チームの理想」と接続させるんです。
接続する、のりしろ部分が多ければ多いほど、叶う量は多くなると思いますし、ちょっと離れていたら「ごめん、ちょっとこのチームではできないかも」となるんじゃないかと思います。
僕らサイボウズでいうと「チームワークあふれる社会を創る」のがチームの理想です。下に書いてある4つのカルチャーが大事にしようと言っているものです。
「チームワークあふれる社会を創る」という理想に共感して、やるべきことをやっているかどうか。多様な個性を尊重しているかどうか。公明正大にオープンに、嘘をついていないかどうか。自立して、自分で選択できて議論ができているか。こういったところに沿っているかどうかを考えながら、一つひとつのわがままをどう扱うかを議論してきたと思います。
サイボウズで起きていることで、個人とチームの理想をどう接続したか、というお話をいくつか事例で出します。みなさんも先ほどのスライドのチームの理想と、どんな接続があるのかを考えながら聞いていただきたいと思います。
まず1個目です。ボーナスの決まり方に意見を言う、若手社員のお話です。サイボウズはボーナスの決まり方にルールがあったのですが、これは今から7~8年ぐらい前の話です。酒本くん。当時は入社3年目ですから、25歳ぐらいの若者です。
サイボウズではビジネスモデルが変化してきまして、オンプレの製品からクラウド製品を売るようになりました。この時に、「クラウド製品に注力するんですよね。今までの計算方法だと僕のモチベーションが湧かないので、ボーナスの計算方法を変えてください」と、25歳の若者が言ったんです。
みなさんだったらどう考えますか?(笑)。僕はこれを聞いた時、「経営の考えることって、お前のモチベーションとかそういう単純な話じゃないぞ」と、おじさん的に思うんです(笑)。ですが、サイボウズだとさっきの「チームの理想にどれだけ接続しているのか」という話です。
「クラウド製品を売ろうぜ」というのがチームの理想です。酒本くんはその理想に共感をして、やるべきことをやろうとしている時の意見ですから、「それいいね!」ということになりました。結局は酒本くんの意見が採用され、ボーナスの計算方法はクラウド製品の売上に連動するかたちに変化しました。
(サイボウズには)「質問責任」という言葉があります。酒本くんは公明正大にオープンの場で自分の意見をちゃんと質問したということです。何一つ悪いことがないということです。私は「若いくせに生意気だな」と思ったんですが、言っていたら炎上していたと思うので、本当に言わなくてよかったなと思います(笑)。
結局、従来の計算方法より酒本くんが提案した方法のほうが、結果的にボーナスが増えたんです。僕らは全社一律のボーナスなので、結局は「おお、酒本ありがとう。でかした! よく言った!」という感じになったお話です。
サイボウズ株式会社
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