2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
学びの未来は「わくわく」と「共育」にある? NEC未来創造会議とキーパーソン21の実践が示す これからの教育の姿(全1記事)
提供:NEC
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岡本克彦氏(以下、岡本):今日はキーパーソン21の朝山あつこさんと、僕たちNEC未来創造会議のフクちゃん(福田浩一)とクロストークを進めていけたらと思います。まずフクちゃんから、NEC未来創造会議が取り組んでいる教育について紹介してもらってもよいでしょうか。
福田浩一氏(以下、福田):NEC未来創造会議は、2020年から東京女子学園で授業を行っています。授業を通じて自分らしい人生を考える力や、その実現に向けて周囲を巻き込みマネジメントしていく力をつけることを目指しており、僕たちのソリューションや知見を共有して社会の変化を考察する「未来想像」と、一人ひとりがどんな未来を目指したいのか考える「未来創造」という2つのフェーズに分かれています。
昨年は全12回、今年は全6回の授業を実施していて、弊社のNEC Future Creation Hubという施設に来ていただいたり、NEC未来創造会議で有識者の方々が語った未来のイメージをツール化した「HiNT for 2050」というカードを使ったり、さまざまな取り組みを行いました。
僕らは「多世代共育」という言葉を使っているのですが、教師が生徒に教えるのではなく、世代を超えて学び、みんなで未来をつくっていきたいと考えています。NEC未来創造会議では、この先どんな未来が訪れるのか議論しているため、その内容を生徒のみなさんに共有しながら、生徒自身が自分の人生をマネジメントしていける社会をつくっていけたらと思うんです。
朝山あつこ氏(以下、朝山):学校としっかりと連携されているのがすごいですね。授業時間の制限もありますし、学校側が新しい取り組みを嫌がることもあると思うのですが、先生方が積極的にプログラムの設計に入られているのがすごい。
福田:そうですね。東京女子学園は100年以上の歴史をもっているのですが、すごく勢いがあるんです。僕たちの取り組みは指導要領の中の「総合的な探究の時間」に組み込んでいただけたこともあり、先生方の気合を感じます。
岡本:僕もフクちゃんも教員免許をもっているわけではないので、東京女子学園の先生方の生徒への向き合い方から学ばされることも多いですね。僕らは生徒と向き合う授業の時間と同じくらい先生たちと議論を重ねていました。
朝山:素晴らしいですね。そんな先生が増えていくと社会も変わっていく気がします。
岡本:他方で朝山さんは僕たちより遥か前から、ご自身の実践を続けられています。今日は朝山さんから学ばせていただきながら、これからの学びについて話せたらと思っています。朝山さんはNPO法人「キーパーソン21」を立ち上げて、キャリア教育に取り組んでこられました。
朝山:私たちキーパーソン21は、子どもを中心に親や家庭、学校、企業、地域と連携しながら、さまざまな立場の人々がごちゃまぜになって教育に携わる社会をつくりたいと考えています。単に集まるだけではうまくいかないので、すべての人が自分を活かして生き生きと働きながら生きていける社会を目指しているんです。
そんななかで私たちが提唱しているのが「わくわくエンジン」です。これは、人がわくわくして動き出さずにいられなくなる原動力のようなもの。わくわくしてる人って楽しそうにしているし、主体的になるんですよね。でも今の日本ではわくわくする想いをもった主体的な人が育っていない。
データを見ても、日本の子どもはほかの国と比べて自信がないし、自己肯定感も低い。未来に希望をもっていないんです。悲しいですよね。事実、全国の学校の先生方と話していると、みんな同じことをおっしゃっています。「うちの子たちはいい子で勉強もがんばる。でも積極性が足りなくて、やりたいことを見つけられない。生徒の殻を破ってほしいんです」と。
もっとも、単にインターンや職業体験に行かせてもやりたいことなんて見つかりません。大人が子どもにやるべきことを無理やり押し付けるのではなくて、子どもがわくわくして動き出したくなる気持ちを応援してくれるようなコミュニティをつくることが大事なんです。
自分がわくわくすることをベースに社会へ踏み出すことが大事だし、そうすれば自分の生き方を自分で選択できる。結果的に街に活気が生まれ経済も活性化しますし、長期的には社会課題の解決にもつながっていくんじゃないでしょうか。NEC未来創造会議のお二人もわくわくされてそうですよね。
岡本:たしかに今は自分のやりたいことと会社の仕事がうまく混じり合っていて、わくわくしてますね。
福田:僕もそうです。知的好奇心が強いので、教育の現場でこれまで知らなかったことに触れられることが楽しいんですよね。
朝山:わくわくエンジンと仕事がつながってますね。でも、わくわくできていない子が多いのも事実です。たとえば受験一つとっても、勉強する理由がわからない子や、学びたいことはあるけど経済力や学力の点から諦めてしまう子は少なくありません。
そんな子の多くが大人に相談しても問題を解決できず、「先生がそう言うから」「その方が将来安泰だから」「楽そうだから」という理由で進学先を決めてしまう。「ちゃんとしなさい」「あなたのため」「できるわけない」と子どもを枠にはめるような言葉を大人が投げかけていると、子どもは他人の言ったとおりにしか生きられないし、失敗したら他人のせいにするようになってしまいます。
でも、自分で決めたことならたとえ苦しくても自分でがんばれるはず。だから本当は全部、子どもの中に答えがあるんですよね。既存の枠に子どもを入れ込むのではなく、枠を超えて伸びやかに未来をつくる人を育てること。枠を超えたわくわくを生むこと。
そのために、私たちは子どもたちが自分のわくわくエンジンを見つけ出せるプログラムを開発してきました。わくわくにも「名詞的」「形容詞的」「動詞的」とさまざまな種類があって、なかでも私たちは動詞的なものが大事だと考えています。
たとえば野球にわくわくするといっても、戦略を立てることが好きな子もいれば、チームに貢献することが好きな子もいるし、練習の積み重ねで成長を感じることが好きな子もいる。どんな行動=動詞にわくわくできるかわかると、職業に囚われず生きていけるし可能性も広がるはずです。
単に好きなもの=名詞にとどまるのではなくて、わくわくする動詞を発見してエンジンを動かすことで子どもも一歩踏み出し、経験を積んで育っていくはず。そのために私たちはグループ形式のワークショップを通じて、大人も子どもも混ざりながらわくわくエンジンを引き出すような活動を続けてきています。
岡本:朝山さんの活動は、僕たちNEC未来創造会議の活動とも共鳴する部分がたくさんあると思うんです。お二人が自身のわくわくエンジンを動かそうと思ったきっかけについて伺えたらと思います。
朝山:もともと私は専業主婦だったのですが、長男の中学校で学校崩壊が起きて、教育について考えるようになりました。なぜこんなことが起きるのか考えているうちに、暴れる子どもも無気力な子どももエネルギーの行き先を求めているんだと気づいたんです。学校でも塾でも大人が枠の中に子どもをはめ込んでいるけれど、子どもたちがわくわくできるエネルギーの源を探さなければいけない、と。
福田:私は高校生のころ「ネッシー」やおばけに興味があるような子どもだったのですが、いい大学・いい会社に入らなければいけないという考えに縛られて理系の大学に入りSEになりました。改めてやりたいことを見つけたいという気持ちから去年文系の大学院に入り、教育への関心を強めるなかで、NEC未来創造会議でも東京女子学園さんとの取り組みを進めることになり、教育に携わるチャンスをいただきました。
岡本:フクちゃんから見てNECらしいポイントはどこにありますか?
福田:「HiNT for 2050」というカードで、ありうるかもしれない未来像を見せることで、生徒自身が「こういう可能性もあるかも」と主体的に考えてくれるようになる。生徒に教えるのではなく、生徒に考えさせるんです。朝山さんが「わくわくエンジン」というコンセプトから取り組まれていることにも通じる部分がある気がします。
朝山:そうですね。職業体験一つとっても、ただ参加するだけだと表面しか見てもらえません。わくわくエンジンをもって自分が何にわくわくするのかわかっていれば、収入や知名度ではなく自分がわくわくできるかどうかで企業を見られるようになりますよね。まずは自分を理解してから社会に出るほうが幸せになれると思います。
福田:僕たちの場合はグループをつくって「HiNT for 2050」を見ながら生徒同士で話してもらいます。自分がいいと思う未来像に対して嫌だという人がいると、価値観が交差して他者との違いに気づく。僕たちの活動も朝山さんの活動も自分にしかないものを探す点は共通していますね。
朝山:自分のわくわくエンジンを認めてもらえると自信がつくし、そうすると他人のことを認めてあげられるようになりますよね。「HiNT for 2050」を使うと、いろいろな考え方を受け止める力がつくのがいいですね。
岡本:キーパーソン21の活動は現在全国に広がっていますが、活動を始めた当時は学校教育ってもっと一方通行的なものだったように思います。取り組みを広げていくなかで苦労した点も多かったんじゃないでしょうか。
朝山:たくさんあります(笑)。人は基本的に変わりたくない生き物ですから、これまでと異なるやり方へのアレルギーを感じることは多かったですね。私たちは単発の出前授業はやらないと言っているのですが、昔は持続的な取り組みの重要性もなかなか理解されませんでした。今は私たちの活動を理解してくださる学校や先生も増えたので楽になりました。
岡本:そういう意識や文化を朝山さんたちがつくってきたわけですよね。僕らの目指す意志共鳴型社会では小さな挑戦を連動させて大きな未来創造につなげていきたいと思っているのですが、わくわくエンジンもエンジンだからこそ、搭載する対象を変えることでいろいろな方向へ広がるのだなと感じます。
福田:僕らの授業でも、いろいろな変化が生まれました。同じ環境のなかで過ごしている同級生と考えていることがぜんぜん違うことに気づくとか、授業を通じて両親との会話が増えたとか。
同時に、僕たちにも学びがあります。NECとしてICTを使った自動化や安全・安心の提供について紹介すると、「食事を自動化すると“おふくろの味”を忘れる」や「学校をオンライン化すると友達ができない」と生徒から指摘されて、ICTによって子どもたちが不便になる可能性に気づかされたんです。
岡本:今はスマホがあるのでいつでも連絡をとれるけど、昔は待ち合わせの時間と場所を決めることが重要だったと話したら、生徒から「私たちは時間を大切にしなくなった生き物になってしまったんですね」と言われて考えさせられてしまいましたね。
岡本:新しい学びを実践していくことは苦労を伴うと思うのですが、これからはどんな仕組みや仕掛けが必要になるでしょうか。
朝山:現在は各地域で実装を進めていますが、共感してくださる方々と連携して全国をつないでいきたいと思っています。地域を超えてみんなで一緒に考えながら実践を進めるにあたって、プラットフォームとなるような基盤をつくりたいんです。
NECさんが目指している意志共鳴型社会ともパッチワークのようにつながりながら、お互いを尊重して助け合えるネットワークをつくっていきたいですね。
福田:教育だけではなく、受け止める社会側が変わらなければいけません。僕たちの授業も学校と連携しながら、経団連から政府へのEdTech提言にわれわれの事例を入れたり、子どもたちの意見を取り込みながら社会へのアプローチを進めています。
僕たちも仲間を募ってコミュニティを広げていきたいです。今も北海道や名古屋の学校をICTでつないでプロジェクトベースドラーニングに取り組もうとしているのですが、コミュニティが広がっていくことで多面的なアプローチがとれるように思います。
朝山:社会へのインパクトを生み出していきたいですよね。ぜひ一緒に仲間を集めていきたいです。
岡本:いろいろな地域をつなげるといっても、すべてを混ぜて一つのものになってしまうと画一化してしまいますよね。朝山さんが仰った「パッチワーク」のように、地域ごとの独自性を残したままつなげてネットワーク化していくことが重要そうです。
朝山:地域によって状況は大きく異なっていますからね。私たちも今、各地域の知見を抽出して、いい部分を活かしながら共有化できたらと思っています。お二人と話しているとわくわくしてきました。私のわくわくエンジンは「みんなの力をつなぎあわせて新しい何かを生み出すこと」なのですが、まさに今の話はそのエンジンを動かすことでもあるなと。
岡本:これからもわくわくし続けるためにはどうすればいいんでしょうか。
福田:われわれの授業ではデータをとっていて、こういう行動をとっている子の自己肯定感が上がるなど相関を調べているのですが、目的と手法をうまく掛け合わせていくことで新たなわくわくが生まれそうです。同時に共感できる先生を増やしながらコンソーシアムを広げて大きなムーブメントをつくっていけるといいですね。
朝山:常に自分の気持ちに素直になることが大事です。あの人がああ言ってるからとかこっちの方が得だからとか、「やるべき」や「やらねば」みたいな考え方では楽しくないので、自分の本心に向き合うことでわくわくしつづけられて自分の心に忠実になれたらなと。
子どもだけでなく、先生も親も変わっていけますからね。自分のわくわくエンジンを見つけられたら、自身が今取り組んでいる仕事の中にもわくわくできるポイントがあったことに気づけるんです。
岡本:今日のテーマは新しい学びでしたが、必ずしも学ぶ主体は子どもだけではないということですよね。僕ら自身も変わるし、会社の中でわくわくできることを発見したり、応援する仲間を見つけたり、新しい未来をつくっていくチャンスはいくらでもある。わくわくを自分たちのモラルのようなものに留めるのではなく、これからも活動を広げながら社会とつなげて制度へと発展させていくことが重要になるのかもしれません。
NEC
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