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kintone AWARD④愛媛バス株式会社(全1記事)

2021.12.27

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6冊の手書きノートで、22台のバスを1年管理…… 愛媛のバス会社の「アナログ管理からの脱却」が起こした奇跡

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2021」。その中で行われた、「kintone hive 2021」は、日々の業務でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、業務改善プロジェクトの成功の秘訣を共有するライブイベントです。本記事では、愛媛バス株式会社・森川由貴氏によるプレゼンテーションの模様をお届けします。アナログ管理のバス会社が、kintoneのライトコースで業務改善を達成させたストーリーとは。

「アナログ管理からの脱却」を目指した、愛媛のバス会社の奇跡

森川由貴氏(以下、森川):愛媛からやってまいりました、愛媛バスです。アナログ集団の愛媛バスが、今ここに立てていることに心より感謝いたします。それでは、進化するkintoneが起こした奇跡を、心を込めてお伝えできたらと思います。どうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

森川:さあ、まず奇跡の1つめ。今期は500万円の経費削減が叶いました。コロナ禍の2年、悲惨な旅行業界にいる愛媛バスにとって、本当にありがたい数字でした。

では、以前の会社を知るために、私が入社した8年前に遡ってみましょう。2013年の愛媛バスの事務所へレッツゴー!

うわー、すごい(クレームの)嵐です! 大量の紙の資料の中から、必要な書類を探している人がいます。電話は保留のままです。結局資料は見つからず、電話は折り返すことに。担当者がいないと何もわからないのに、(担当者は)電話に出もしません。どこにいるのかもわからない。電話は次々に鳴っています。協力体制はなく、大変そうです。

先ほどの電話は折り返すことになってますので、担当者の机の上にメモを置いて、いったん終了です。不安です。こんな見事なアナログ管理の会社でした。

こんなアナログ管理を一部、ご紹介いたしましょう。これ、何の写真かわかりますか? ノートです。このノート6冊を使って、1年間バス22台の(ツアーの)受注管理をしていました。ちなみに営業事務、それから乗務員の約30名が日々このノートを見ます。

ちょっと抜粋してみましょう。

読めます? 真ん中の「公休」という字は読めます。右上の青字、正解は「発表会」「忘年会」です。あとはちょっと読みにくいので(わかりません)。こんな状態なので、「アナログからの脱却」を図りました。

kintone導入に立ちはだかった「壁」

森川:2018年、いろんなご縁のもと、営業と事務にkintone導入を決定いたしました。いざ導入です。すると、バンッ! と私の目の前に「壁」が大きく立ちはだかりました。社員からのすごい抵抗です。「今でも多いのにまだ仕事を増やすの?」「売上にならないことやらせるの?」と。それもそのはずです。やみくもに今ある業務をアプリにしようとしたんです。

そこで「業務改善だ」ということで、私と社長は汚い字でたくさんたくさん、今の業務を洗い出していきました。アナログなんですけれども、これで今の業務を俯瞰して見られるようになりました。

そして、新業務体制をkintoneも入れたかたちで図式化しました。アプリの構成もOK。さあ次こそ導入です。

しかし、またもや「壁」です。この時、社員は抵抗こそないものの、「まあ、言われたらやります」という、やらされ感いっぱいの状態でした。これでは人は変わらないんです。変わらない会社に、発展はないんです。

そこで、みんなを巻き込んで、社員主体で進めていくことにいたしました。kintone導入は白紙に戻しました。kintone導入の最初の目的はペーパーレス化とクレームをなくすための情報共有の2点だったので、kintoneにこだわるのはもうやめました。

目標は「相手を想う情報共有」

森川:そこで始まったのが問題解決会議です。まだみんなの顔は硬いです。ここで愛媛バスが未来にどうなっていきたいのか、みんなでしっかり話し合いをしました。そして、自分以外の人がどんな仕事をしているのかをしっかり理解し合い、情報共有をしました。

議論が白熱してきました。そして、良いことも悪いこともぜんぶ見える化していきました。問題を分類し、まとめ、目標も作りました。目標は「相手を想う情報共有」。これをすれば、きっとクレームはなくなるし、みんなが笑顔になれるはず。

さあ、さらに問題解決へ向けて、若手メンバーでのプロジェクト化をしていきました。彼らがたくさん話し合ってくれて行き着いた答えは、「愛媛バスには組織風土とルールとツールがないために今の問題が起こっている」ということでした。彼らは、ツールはもちろんkintoneを選んでくれました。

嵐の事務所から6年。長かったです。でも、変わらない会社や人の場合は、導入前にきちんと向き合うことが大切です。

私はITがぜんぜんダメでした。(でも)kintoneは使い始めると、こんな私が設計できるほどとても簡単でしたし、サポート体制もバッチリでした。なので「なぜkintoneを入れるのか」をしっかり情報共有しておくことが、とても大切になってきます。

「自由すぎる文化」の壁を乗り越えた、メモ用アプリと2つのルール

森川:愛媛バスのkintone導入はやっと完了です! 次のステージは、どうなっていくのでしょうか?

……はい、またもや「壁」です(笑)。本当に壁ばっかりで申し訳ないんですけど、この3つめの壁は手強かった。営業マンがすごく自由に育ちすぎていたんです。「自由すぎる文化」がもう大きな壁になりました。

kintone入力も自由。悪気はないんです。今まで1人で仕事をしていた感覚だったので、今さら何を情報共有していいのかわからない状態だったんです。この状態には、さすがにkintoneプロジェクトメンバーも悩みました。どう乗り越えていったのでしょうか?

まず、汚い字で書かれて、どんどん机の上に無造作に置かれていく紙の伝言メモ。この禁止令を発動いたしました。目に見えてわかる行動を禁止し、「すべてkintoneから」とお願いします。とてもわかりやすいルールです。

そして、物は試しで作った初アプリは、なぐり書きメモをイメージして作った、好きなように何でも書ける問い合わせアプリです。ダラダラ書く人もいるので、件名だけはつけてもらいます。これは自分用のメモにも使えます。

人に伝言メモとして出す時には、担当者をつけて、「要処理」にチェックをつけて、その人にコメント付きで送ります。紙ではなく画面上にバンッとくると、なかなか無視できません。

ここでのルールは2つ。当たり前なんですが、要処理チェックのついた自分のレコードは、必ず処理をすること。そして、処理が終わったら要処理チェックを外す。この2つだけなんです。このアプリを開くと、自分の要処理一覧がつらーっと出るように設計しています。なので、「このつらーっという一覧を0にして帰りましょう」と言いました。

「良い文化」構築のための、教育とPDCAサイクル

森川:そうすると、変化が出てきました。まず、放ったらかしメモがなくなった。次に、自分以外のメモも見る。すると人の仕事が見えてきた。「ありがとう」が増えてきた。このようにして、1人でやっていた仕事の状態から、少しずつ協力して何かをやる状態に変わっていきました。

でも、この3つめの壁はすごく手強かったので、なかなか大きく改善しませんでした。なのでここで、「教育」を入れることにしました。ここでいう教育は、「あれしてください」「こういうことです」というレクチャーではありません。最初に決めた目標に立ち返り、「相手を想う情報共有をするためにはどうしたらいいですか?」と問い続けることでした。

これを続けて、さらにPDCAサイクルを回すことによって、この壁を乗り越えていきました。まず、使いたくなる道具を作り、わかりやすいルールで運用をします。そして、教育を交えて8割以上の人にルールが定着できたら、「良い文化」構築の完了ということで、次のアプリを連動させていきます。そうすることでkintoneは進化し、会社は発展。人はどんどん成長していきました。

ライトコースを続けたことで、業務改善が実現

森川:うちは(kintoneのプランの)ライトコースなんですが、ライトコースで続けたこともよかったのではないかなと思っています。まず私がITが苦手だから。そしてコロナでの費用削減のためにライトコースを使い倒してます。

でもライトコースはすごいんです。基本機能でいろんなことができちゃいます。ただ、やはり技術的に行き着く「壁」もありました。「スタンダードコースだったらできるのに」と最初は思ったんです。でもその時に、私ももう腹をくくって「ライトコースでやります」とプロジェクトメンバーに言い続けました。

そうすると、プロジェクトメンバーから「kintoneにできないんだったら、私たちが変わります」「仕事のやり方を変えます」「順番を入れ替えます」と、本当の業務改善が起こり始めました。みるみるうちにkintoneが使いやすい道具へ変わっていきました。

そして、一生懸命やっているkintoneプロジェクトの姿を見て、なんと営業と事務がチームで仕事をするようになりました。新しい文化が愛媛バスに生まれ始めました。そうすると、なんと仕事の全体がこのライトコースに乗せられるようになってきたんです。

500万円の費用削減を成功させた「案件管理アプリ」

森川:できあがりました「案件管理アプリ」のご紹介です。入力項目が400程度あります。ご覧ください。スクロールに10秒はかかります。でも、仕事の入り口から出口まで本当にしっかり乗せられたので、既存システムと利用目的が重複してしまいました。そこで既存システムが解約できて、冒頭に述べた500万円が浮いたというわけです。

ただし、長い、使いにくい。ライトコースはタブ管理ができない。そこでグループ機能を使うことによって、(スクロール時間を)3秒にしました。ご覧ください。

さらに社員の行動を分析して、行動ベースで時系列に並び替えて、理解しやすく、そして入力必須項目を上に持ってくることによって、入力しやすくしました。並びを変えるだけで手間やミスを減らせます。そしてカレンダー表示にすることによって、検索の問題を解決しました。

でもこのアプリは、こんなにすぐにはできませんでした。最初は未完成のアプリです。コメントを使って足りない部分に補足をして、大きく運用をいたしました。

使いながらの大幅変更、設計変更は問題ありません。なぜかというと、1日500件以上の通知とコメントが届くのですが、それをしっかり読んで分析をしていたからなんです。分析をすることによって、次にどんなフィールドを置いたらいいのか正しく選択できます。さらには、アプリ間の連携や、紐づけるアプリのマスタの設計まで、しっかり見えてくるようになりました。

kintoneが作った新しい文化と新しい未来

森川:このように一生懸命kintoneと向き合っている最中、コロナが起きました。でもこの時には、会社も社員も、新しい文化へシフトしていました。kintoneを使う部署、使わない部署、すべての社員から、なんと30以上もの新しい企画が生まれました。

なんとkintoneを使っていない職人気質の乗務員さんからも、情報共有が生まれました。その方法は紙ベースです。でも、kintoneを使ってる事務所サイドでは、これをkintoneで画像で取り込み、ダウンロードなしで見られるようにいたしました。必要な情報はマスタへ登録するなどして、どんどん活用していきました。

さらに、「おめでとう」の嵐がコメントで送られました。仕事の獲得をよろこび合っているコメントです。部署関係なく、リアルなコミュニケーションがどんどん起こり始めました。そして最近できた、乗務員さんがデザインした(お揃いの)ベストです。この一体感が、すごくうれしかったです。

さあ、8年間を一気にしゃべったので、まとめをしたいと思います。アナログな会社でもkintoneは使えます。大丈夫です。ライトコースで業務改善までできちゃいます。ぜひ使ってみてください。うちでは経費削減が叶いました。そしてkintoneの進化とともに、チーム力はアップし、会社は発展いたします。kintoneが良い未来を引き寄せちゃうんです。

この夏は交通安全教室を成功させ、SDGsへの取り組みができる会社になりました。コロナで売上がないのは仕方ない? そんなことを言っていたら、新しい未来は作れません。旅行気分を味わえるセレクト販売を始めました。このように自社の企業価値を見出し、1つずつ前に進んで来られたのは、kintoneと本気で向き合った経験があったからなんです。

kintone効果は無限大です。みなさまの会社にもすばらしい未来がもっと訪れますことを、心からお祈りしております。愛媛のおいしいもののセレクト販売を始めます。ぜひ、円滑なコミュニケーションのお供にいかがでしょうか。

本日は本当にありがとうございました。

(会場拍手)

業務改善を達成させた「発想の転換」

相馬理人氏(以下、相馬):森川さん、ありがとうございました。それではお話を聞く前に、Zoom応援団の方をお呼びしたいと思います。Zoom応援団のみなさーん! 

みんなバスを持ってくださっていますね。ありがとうございます。「ファイト、がんばって」という文字も見えていますね。ありがとうございます。

それでは森川さんにお話をおうかがいしたいと思うんですけれども。正直(最初の)ノートの左下は読めませんでした(笑)。あれからすごく変化されたなと感じたんですが、特に印象的だったのが、ライトコースを本当によく使い込んでいらっしゃるなと感じました。

ライトコースでも業務改善をする、うまく使いこなすコツがあれば教えていただきたいんですが、よろしいですか?

森川:発想の転換です。「この機能はこれにしか使えない」ではなくて、「もしやりたいことを叶えるんだったら、どの機能とどの機能を組み合わせたら使えるんだろう」とか。「kintoneじゃできない」と結論づけたら、「私たちがどう変われば、kintoneに乗せていけるだろう」といろんな角度から考え続けて、kintoneを設計しました。

相馬:kintoneはパーツの組み合わせなので、一つひとつではなく「これとこれを組み合わせれば」とか、「ここは作業を変えれば」とか、そんなかたちでいろいろ考えて試行錯誤して、業務改善を達成されたんですね。ありがとうございます。

みなさま、今一度大きな拍手をお願いいたします。ありがとうございました。

(会場拍手)

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