2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:株式会社タイミー
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亀田彗氏(以下、亀田):さっそくスピーカーの紹介をさせていただければと思います。まず小川さんからお願いします。
小川嶺氏(以下、小川):あらためまして、株式会社タイミーの小川と申します。たぶん初めましての方も多いかなと思うんですが。本日は月曜日の夜にもかかわらず、ご参加いただきまして、誠にありがとうございます。
ゆるい会ですので、ぜひお酒でも飲みながら聞いていただけたらなと思っております。今日はぜひタイミーという会社をより深く知っていただけたらうれしいです。よろしくお願いいたします。
亀田:では渡辺さん、どうぞよろしくお願いします。
渡辺雅之氏(以下、渡辺):どうもこんにちは。渡辺雅之と申します。僕は先月、タイミーの社外取締役になりまして。ちょうど今、いろいろと勉強したりメンバーの話を聞いたりしているタイミングなんですけれど。
もともとは、今や球団も持っているメガベンチャーのディー・エヌ・エーの共同創業者でした。12年ぐらいディー・エヌ・エーにいた後、イギリスでQuipperという会社を作り、そこでも10年ぐらいやっていました。Quipperは(創業して)6年目ぐらいにリクルートに売却して、その後4年ぐらいリクルートで働いていました。
すごく脈絡がなくてちょっと恥ずかしいんですけど、今はデジタル×フード×ITみたいなところでカレー屋をやったり、いろいろやっています。よろしくお願いします。
亀田:よろしくお願いします。最後に私、少し会話にも挟まりつつモデレーションをして参ります、タイミーCTOの亀田と申します。2019年ぐらいにプロダクトマネージャーのロールで参画して、去年8月にCTOを拝命し、最近はエンジニアリング組織のところをやっております。こういったメンバーが1時間ぐらい話しますので、ぜひいろいろと聞いていっていただければと思っております。
本日は、インフラに関してお話しさせていただくことになるかなと思います。というのも、弊社は「『働く』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」というミッションを掲げておりまして。本日は、これに沿っていろいろとお話させていただきます。
Peatixにも掲載しているんですが、まず前半は「事業として経済合理性の中で目指す社会インフラを考える」ということで、タイミーの事業やコトについてのお話をさせていただければなと思っております。
後半では、創業者の熱意を伝播させつつ、インフラというスケールの大きなものを作っていくにはどうしたらいいのかについて、21時までディスカッションさせていただければと思います。
また、ぜひアンケートにも答えていただければと思います。「#タイミー働く社会インフラ」というハッシュタグもありますので、もしご感想などあればSNSでつぶやいていただければ私がファボりに行くので、ぜひよろしくお願いします。
まずは前半パートの「事業として経済合理性を保ちながら目指す社会インフラ」から、お話しさせていただければと思うんですが。そもそも「タイミーって何をやってるんだろう」と思われる方もいらっしゃると思いますので、まず簡単に小川から会社の紹介をさせていただければと思います。
小川:「『働く』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」というミッションを掲げてはいるんですけど、初めて聞いた方や「インフラってなんだろう」と思われる方もいらっしゃるんじゃないかなと思いますので、少し噛み砕いてお話しできればと思っております。
「働く」を通じてというのは、タイミーというサービスを通じて人生の可能性を広げるというところ。タイミーは、どちらかと言うと物流倉庫や小売り、飲食などで働けるようなプラットフォームではあるんですけれども。
大人版キッザニアのように、いろんなところで働いて「こんな人がいるんだ」「自分はこんなことに向いてるかもな」という気づきを得てもらった上で、その挑戦を後押ししたいというところで、「人生の可能性を広げる」という表現をしております。
インフラを作るところには、すごく熱い思いを持っています。インフラと語るからには、ナンバー1じゃなくちゃいけないと思っておりますので。ナンバー2はありえないので、しっかりとナンバー1プレイヤーを取ろうと。
インフラは、水道などをイメージしていただければわかるんですけれど、蛇口を開いたら必ず水が出る。タイミーを開いたら、いつでもどこでも簡単に働けるようなところを作らなくてはいけない。そういう意味では、全国47都道府県でしっかりとインフラになれるようにがんばっていきたいという思いを込めております。
タイミーが解決しようとしている課題は、釈迦に説法にはなるんですが、少子高齢化・人手不足というくくりかなと思っております。コロナ禍で、メディアがなかなか人手不足と言わなくなってしまいましたけれど、コロナ前までは人手不足だったわけです。
今は一時的にサービス業が雇用していない状況ですが、労働者が増えたわけではないので、コロナが終わった後はまた人手不足になるのは間違いないのかなと思っています。そういう社会課題に対してソリューションを提案しているのが、タイミーという会社です。
小川:タイミーが解決したい課題は、やはり人手不足自体。求人広告を出しても人が集まらないですし、人材派遣会社の利用料も高くなってしまう。働き手としても、明日のお金が欲しいという方もいらっしゃれば、急きょ暇になってしまった方もいらっしゃる。副業解禁の流れも来ているかなと思っています。
タイミーは、この二者をマッチングする、働く時間のシェアリングサービスです。シェアリングエコノミーというサービスの中でも、UberやAirbnbを参考にしています。
今までは、1人あたり1日8時間働いてほしいというのが当たり前の働き方だったんですけれども、そういう人は採れなくなってしまったんですよね。そこで、しっかりと必要な時間だけ働ける人と組み合わせることによって、擬似的な1人を作り出せる。それが、タイミーというサービスのおもしろさかなと思っています。
働きたい人とこの時間だけ働いてほしい事業者という、二者のマッチングプラットフォームがタイミーで、求人サイトでも派遣でもない、まったく新しいビジネスモデルになっています。
コロナの影響をだいぶ受けて、一時期は非常に厳しい状況でもありました。コロナ前は飲食店がメインの導入企業でしたが、今は巣ごもり需要でECの比率も増加しています。物流業界などにポートフォリオをしっかり分けて、1つのチームだった営業部隊をセグメントを分けたカンパニー制にすることで、結果的には1年間で売上を3.6倍に伸ばすことに成功しています。
そうしたこともあって、先週53億円の資金調達を実施させていただいたんですが、本当にここから一気に採用なども含めて加速していくサービスになります。ぜひ今日は、「働く社会インフラ」とはどんなものなのかをイメージしていただくと同時に、タイミーという会社の勢いを感じ、興味を持っていただけたらうれしいなと思っております。簡単ではありますが、以上になります。
亀田:ありがとうございます。どういうサービスかをご理解いただけたかなと思いますので、ここからは「そのインフラってどういうことだろう」というお話をしていきたいと思っております。その中で、渡辺さんもQuipperを起業されるなど、キャリアのお話をしていただければと思います。
Harvard Business Reviewに渡辺さんのいい記事があるので、今チャットにシェアしています。お聴きいただいてるみなさまもぜひ。Quipperを始めることになったきっかけや、Quipperがどういう立ち位置だったかという話もさせていただければと思います。
渡辺:これ、懐かしい記事ですね。そして僕、小川さんのプレゼンを初めて見ました。すごくよかったです。
小川:いえいえ、ありがとうございます。
渡辺:インフラってわりと抽象的な言葉で、定義も人によって違うだろうし、語るのはなかなか難しいところがあるんです。小川さんが言ったとおり、圧倒的に社会を変えるようなもの。それがあるかないかで生活が成り立たないとか、本当に大切に思っている人がたくさんいるのがインフラだと思うんですけれど。
僕は、2010年にQuipperというサービスで創業して、2015年にリクルートグループに入ってからも、2020年まで10年間やっていました。それは教育のデジタル化を推進したいと思って作った会社です。教育のデジタル化は、当然2010年頃からよく言われてたんですけれど、やっぱり一夜にして超巨大サービスは生まれなくて。
とっかかりが難しいんですよね。どういうところから入って、どうやって地理的に拡大していき、最後にまさに生活に必須なインフラになっていくところ。こっからあっちに入って弾き飛ばされ、アメリカやアジアで弾き飛ばされ、最初の一歩をつかむところがすごく難しかったのを覚えています。
渡辺:ただ結果的に教育サービスなので、実際に政府に対してどういう距離感を(取るか)……。公教育は誰もが使っているもので、各国にある塾などとはぜんぜん違うロジックなんです。税金を使うのか、いわゆる富裕層を狙うのかでもぜんぜん違うし。教育って、インフラ1つ取っても本当にとらえどころがないんですよね。
僕たちも何年にもわたって試行錯誤し、結果的には公教育でクラスの中で使うツールとして、最初のうちは無料で、各国に合わせたコンテンツを準備してむりくり押し込んでいくと。でも、1回使い始めると便利でやめられないような存在になれました。本当にあれよあれよという間にすごく巨大なサービスになって、そこからマネタイズにちょっと苦労するんですけど。
だから、インフラになる場合に最初に思うことは、巨大でみんなに使ってもらうものだからこそ、やっぱり入り方がすごく難しい。そして、今はないものを経営リソースがないベンチャーという中で、上手に入りどころを探して広げていくという。
ちょっとした小粋なサービスだったら、いきなり口コミでばーっと広がることもあるかもしれませんけど、やっぱり社会インフラはそういうものじゃないと思っています。
本当にどっしりと入らなきゃいけないけれども、やっぱり最初はリソースがない、お金も集まらないのがすごく難しいところかな。小川さんのさっきのスライドを見ると、雇用なんていう法規制もガチガチにあって、強い競合もいっぱいいる中で、よくまあ3年でぐーっと入って……。
もちろん試行錯誤はされたんでしょうけど、(よくここまで)広げてきたなと、感動を覚えながらさっきのプレゼンを見ました。
小川:ありがとうございます。本当におっしゃるとおりで、基本的には社会インフラと口にするベンチャーも少ないと思うんですよね。社会インフラになれる会社さんも少ないですし、目指すことも相当難しいとわかっているので、言葉に出す責任があると思っています。
自分は絶対にできると思って、言葉に出してるんですけど。それを創業から言葉に出しましたかと言ったら、亀田も創業からいますけど、(タイミーの事業を)社会インフラと言い出したのは最近なんじゃないかなと思っていて。
渡辺:後付け(笑)。
小川:そういう意味でも、最近行けるなと思ってきたんですね。53億円という巨額の資金調達をして、組織を大きくして一気に進もうとしているので。「この会社、社会インフラの実現可能性が高まってるな」というところを、ぜひ今日この時間に感じていただけたらうれしいなと思っています。
亀田:ありがとうございます。ちなみに入りどころが難しいって、まさにそうだなと思っています。あと、僕もやっぱり創業から、入り方の泥臭さみたいなところも見ているので。セブンのATMに1人で2時間並んで、ずっと振り込み作業をしている人を見たりしているので、すごく思うところがあるんですけど。
どうですか、嶺さん。入りどころとして、この辺りでインフラになってきそうだなとか、ターニングポイントだったのかなというのは何かあるんですか? ぜひそのお話を聞きたいなと思って。
小川:いくつかあるんですけど、1つは経営者としての視座かなと思っています。やっぱりタイミーって、スポットバイトとして売ってきたんですよね。本当にスキマ時間だけ、必要な時にタイミーを使うという売り方で、今まで伸びてきているんですけれども。
それに満足しなくなってきたんですよね。「スポットだけで俺はいいのか」と思うようになってきて。もっと深い本当になくてはならない存在になるには、スポットじゃなくて定常にならなくちゃいけないと。
要するに、学生が初めてアルバイトをしようと思った時に、求人媒体やタウンワーク、Indeedなどのいろんな媒体を見るのと同じように、その選択肢にタイミーが入らなくちゃいけないんですよね。それが本当に社会インフラを目指すというか、経営者としてやっていきたい夢の1つだと思っています。
ただのスポットと言うよりも、しっかりと長期のアルバイトをタイミー経由でやっていく。いろんなところで働いて、世界を作っていかないと、自分のやりたいことが成し遂げられないなと思ってからは、やっぱり社会インフラを強く意識し始めたかなと思います。
小川:たぶんナベさんも、最初からインフラとは考えていなくて。どんどん世界に展開していって、貧困国の教育などをいろいろ見られて、「自分がやらなくちゃ」「やりたい」という気持ちが勝ってきたのかなと思うんですけど。そこはどういう変化でした?
渡辺:そうですね。思い返せば、僕も最初からあまり壮大なことは考えていなかったですね。小川さんの話を今聞きながら、最近の後付けなのかと思いつつ、思い返せば自分もそうだったみたいな(笑)。
(一同笑)
確かに、そんなものなんじゃないかという気もしますよね。逆にゼロイチで、絶対に社会インフラになるという大きな旗を振ってる人って、イーロン・マスクぐらいじゃないですかね。
みんながちょっとしたアイデアとか、これをこうしたいという小さな物語から入っていく。そのうち、その領域にある、リクルートの用語でいう「負」。満たされない思いや不幸な状況が目に入ってくると、より具体的につらさなどがわかってきて。
それを見た時に「なんとかしなきゃいけない」「もっとこういうことができるんじゃないか」という、事業家としての欲が拡大していく。それで結果として、これはもう社会インフラを提供するしかないとなるのかもしれないですよね。自分もそうだった気がします。
小川:めちゃくちゃわかりますね。今、「負と欲」ということが出ましたけれども。負について言うと、タイミーは自分の原体験から始まってるんです。シフトを出しても削られたり、稼ぎたいお金があってもすぐお金が振り込まれないような負が、今までの長期アルバイトの中でけっこうありました。
かつ店長側もアルバイトのシフト管理がすごく大変だし、せっかく研修したのに半年でアルバイトの半分以上が辞めてしまったり。そういう負がある中で、本当にもっとシームレスになるべきだなと思いました。
働き手としては、タイミーの中でしっかりとがんばって働いていれば、どんどん評価も上がっていくし、就活も有利になったり。1つのサービスでスコアが溜まって、シフトを出すよりも働きたいものを選べば必ず働けるほうが、至って合理的だなと思います。
クライアント側・店長側もシフト管理をするんじゃなくて、この時間に人が欲しいということを出しておけば、人が来てくれるという。研修も必要なく、ある程度フォーマット化されて、eラーニングなどで学んできてくれるような世界を作れたら、店長も助かると思いますし、もっとコアな業務に集中できる。本当にこれがあるべき姿だなと思いました。
あと、欲については、今までの人材業界は40年間プレイヤーが変わってきてないようなところだと思っています。そこに切り込めるんだったら、めちゃくちゃ楽しいし。経営者の生きがいとしては、やっぱり人材系のサービスには、多くの人を幸せにする可能性があります。
しっかりとビジョンを掲げれば、本当に日本を良くできるサービスなんじゃないかなと思っています。今そこに非常に欲を感じているかなと、ナベさんの(負と欲の)フレームワークの話で感じました。
渡辺:それをフレームワークと呼ぶかどうかはちょっとわからない(笑)。
(一同笑)
あえて言うとキーワードですよね?
小川:キーワードですか。
渡辺:そうですね。
亀田:ありがとうございます。ちなみに、40年くらい変わってない領域に切り込んでいきたいというのはすごいアントレプレナーシップだなぁと。タイミーは、最初の頃はまだサービススキームの整備が追いついてなくて……。最近追いついてきたことで、かなり強い競合がいるフェーズに入ってきたなぁと思いながら。
それこそQuipperも、eラーニングだったらものすごく競合が多い領域だったと思うんですよね。この経済合理性という観点からちゃんと戦っていくところで、やっぱり競合としのぎを削るようなことがすごく大事になってくるかなと思っています。どちらからでもいいんですけど、お二人はどう捉えられていますか?
渡辺:そうですね。じゃあちょっと僕から。
亀田:ありがとうございます。
渡辺:実は社会インフラを作る上での悩みのポイントは、経済合理性だと思っています。教育などが典型的なんですけれども、社会的意義が強ければ強いほど、これで金を取っていいのか、もしくはこれはNPOでできるんじゃないかとか。
あるいは、例えばチームを集める時に、いわゆるベンチャーとしてのスキームを使うのか。つまり上場や売却をゴールにして、ストックオプションを割り振るようなアプローチが正しいのか。社会インフラを目指すことは、すごく大きなミッションや正しいことを掲げるわけだから、アプローチとしてはどちらもあり得るんですよね。
そんな中で、特に教育はやりたい人もたくさんいるし、みんなが問題意識を持っているし、なんだったら手弁当で働きますよという方も、実際にたくさんいらっしゃる領域です。僕はそこはすごく悩みましたね。
教育サービスをやる時にどういうチームにするのか、ベンチャー企業なのか、ビークル(組織体)を設定してやるのかですごく迷ったんですけど、結果的にはバリバリのベンチャー企業として、資本主義を掲げつつ進めました。実はここはけっこう重要なポイントだと思っています。
渡辺:教育も、おそらく人材のマッチングとかもそうで、すごくいいことだし、みんながやりたいことだけやってると気持ちよくなっちゃうんですよね。規模などの議論がなくなったり、いい人材を引きつけられなくなる。
もちろん善意の塊みたいな方はいらっしゃるし、そういう方はすごくパワーにはなるんだけれども。本当にインフラになろうと思った時のスピード感や規模感、あるいは必要なお金をなかなか達成できずに、ちょっと言葉は悪いですけども、サークル活動みたいになってしまって、何も変わらないことが起こりそうな世界かなと思います。
Quipperの時は、あえて逆側にというか、経済合理性をすごく重視していました。ある国で始めたテストサービスで、実際はそこで勉強している生徒がもう何百人もいるとわかっていても、絶対に儲からないから打ち切るとか。サービス担当者もすごく怒ったり泣いたりするし、僕ももちろん心は痛むんですけれども。
そういうところで、しっかりと大きなものを強いチームでスピード感を持って進めようと思うと、やっぱり経済合理性を1つのものさしにしないとならない。気持ちよくなっちゃったり、補助金にすごく依存するようなかたちになってしまったり。
いいことをやるからこそ、ちゃんと経済的に独立してきちんと動いていく。そういうことが、逆にすごく重要なんじゃないかなと思いながら、僕はやっていました。
小川:ありがとうございます。そうですね、これは本当に難しい。前提として、今回のパネルディスカッションはめちゃくちゃ難しい議題だなと思ってはいるんですけれども。
渡辺:テーマがでかいよね。
小川:タイミーは、飲食店さまや物流企業さまから日当金額の30パーセントの利用料をいただく、BtoCのビジネスモデルです。例えばメルカリさんは、手数料が10パーセントというところで、「30パーセントも手数料を取るんですか?」「プラットフォームとしてめちゃくちゃ高いですね」と、業界の人によく言われたりするんですよね。
自分が起業しようと思ったきっかけは、「あったらいいな」じゃなくて「なくてはならないサービス」をいかに作れるかがすごく大事だと気づいたことです。自分は2社目なんですけど、1社目の時は、本当に「あったらいいな」というサービスを作っていてうまくいかなくて。
2社目で、絶対になくちゃいけないもの、これがなかったら死んじゃうという人を作れるようなサービスがすごく大事だと思いました。その時に、「高くてもいいから使いたい」「それは高くないよ」と言ってもらえるようなサービスを作ることを大事にしています。
今は30パーセントの手数料をいただいているんですけど、「いやいや30パーセントなんて、ぜんぜんもう安いし」と言っていただけるようなクライアント企業さまがどんどん増えてきています。
タイミーで一番人数が多い部署がカスタマーサクセスなんですけど、各社さんにしっかりと1人つけているカスタマーサクセスが、いかに価値を発揮できるかが、30パーセントの手数料を安いと言ってもらえるかというところでもありますし。
もう1個はプロダクト力。このプロダクトだったら早くマッチングするとか、いい人が来ると。「そういうところだったら、30パーセントでも安いよ」と言ってもらえる。より投資をすることで、その2つを作れるんですよね。
やっぱりお金があると、そこ(価値を生む領域)に投資できる。これはすごく好循環だなと思っています。しっかりと経済合理性を保つことは、社会インフラを良くしたり、強くするものだと思っているので。経済合理性を保つのは、非常に重要なことかなと思っています。
渡辺:ちなみに僕さっき、ちょっと格好いいこと言いましたけど。Quipperはフリーミアム、さっき言ったように無料でばらまいて、すごくヒットした後、自分で有料化できなくて(笑)。リクルートグループに入って、そのノウハウでお金を取ったという、悲しい最後だったんですけど。
だから僕がタイミーに入った時に、今小川さんから聞いたようなことを聞いて、「ちょっと待て」と。一番最初に会った時ですね。「本当か?」という、すごく……疑問じゃないですけど、本当にそう(有料化できている状態)なのかというのはすごくキーなんだと思っていました。
実際に僕もワーカーとしてマクドナルドの出前をしてみたり、クライアントのインターフェース……いいクライアントさんだけじゃなくて、入ったばかりで辞めそうな方や、いろんな業界のものに今、1日1つか2つ同席させていただいてるんですよね。
実際に30パーセントをどう見るかということはあるんですけど、重要なのは時給の30パーセント。さっき小川さんが言ったように、人を雇ってシフトを組んで、教育して働いてもらうのは、時給だけの話ではなくて。
例えば、店長さんのような正社員の方が何度も面接をしなきゃいけなかったり、バイト募集の広告費を払わなきゃいけなかったり、「どうしても埋まらないけど、ここに誰かきてくれなきゃ困る」とか。
実際のコストは、単に裸の人件費で比較されるわけではなくて、目に見えないコスト・目に見えるコストがすごくたくさん乗っている。いろんな話を聞いていても、1人の人に働いていただく時に、実際には2倍〜3倍ぐらいのコスト感があるのが実際なんですね。
そういった意味で言うと、時給に30パーセントの手数料を乗せるよと言った時に、単純に「高いな」とおっしゃる方はむしろ少なくて。ちゃんとその部分のニーズや痛みが解消されるなら、ぜんぜんジャスティファイ(正当化)できるようなところだと思いますし。
例えば、それで店長さんや拠点の長、もしくは会社がかけていた時間を前向きなことに使える。あるいは本来やるべきだったことに使えるのは、すごくポジティブな効果が生まれるものです。
基本的に面接は1人採用するために、それこそ人気のあるところだったら5人、10人と会うわけです。その時間は、採用しなかった時は本当に丸々無駄になるので、前向きな活動ではなくて。だからそこは本当に、提供している価値をどう感じ取っていただけるかと、実際に料金ぶんの価値を出しているのかがポイントです。
渡辺:僕は最近はもう、いろいろ同席したり働いてみた結果、非常にポジティブです(笑)。大丈夫なんじゃないかと思いつつ、まぁ怖いのは競合ですよね。やっぱり値段をガーンと下げて同じモデルで入ってくるのが、競合のアタッカーの常道です。実際に価値があるかどうかではなくて、比較の中で高い・安いで議論されてしまうとちょっと怖いから。
逆に言うと、競合が入ってこられないような、より付加価値が高いサービス。今1位であることを元にしたネットワーク的な、(ユーザーが)たくさんいることが差別化になったり。あるいは先行していることで、差別化の評価になったり。対競合をすごく見据えてやらないと、ちょっと怖い気がします。僕、しゃべりすぎですかね?
小川:いやいや、めちゃくちゃいい話です。ありがとうございます。
渡辺さんにタイミーの社外取締役をやっていただいてるんですけど、社外取締役って、基本的には取締役会しか出ないですからね。こんなふうに営業トークをしたり、マクドナルドで働いたりはしてくれないんですけど(笑)。
渡辺さんは、本当にすごくいろいろやってくださっていて。もし良ければ、渡辺さんがなぜタイミーの社外取締役になってくれたかというストーリーも、せっかくなので軽くお話しいただけたら。
渡辺:(イベントに出たり、マクドナルドのデリバリーをしたのは)社外取という責任からやっているというより、単に好奇心でいろいろ見せてもらっているだけなんですけど(笑)。タイミーに参加させていただいた理由は、大きく2つあります。
1つはやっぱりもういい歳になってきたし、今カレー屋さんでもがんばっているんですけど。それ以外にも海外で事業を展開したり、海外投資家から資金を調達したり。あるいはエグジットしたり、逆側の立場で会社を買ったり。1個1個はそんなに深くないけれども、ベンチャー企業の経営といった時に、経験の幅はすごく広く持っていると思っています。
それを上手に社会にフィードバックするにはどうしたらいいかと考えた時に、あと何年現役かわからないですけど、自分のノウハウがダイレクトに活きて、本当に社会を変えられるようなすごく価値があるサービスだったらぜひ参加したい、と常々思っていて。
それで、いくつかの会社を手伝ったり、実際に「フード×IT」ということで自分たちで起業したりしてたんですけど。そこでタイミーがビンゴだったんですよね。やっぱり「働き方を変える」というのは、単に小川さんの妄想だけではなくて、社会全体が変わってきているし、変わらなきゃいけない。
そして、もっと人は自由になるべきだという、僕がQuipperをやっていた時の信念にすごくマッチする。かつ、そこに自分が参加することで、邪魔にならない範囲でいろんなノウハウやアドバイス、経験を活かせるんじゃないかというところです。
やりたいことと、自分が提供できるものがあるところが1つ。それが大きな理由なんですけど、さらに大きな理由を言うとですね……(笑)。
小川:「さらに」って言わないでくださいよ(笑)。
(一同笑)
渡辺:それよりも小さな小さな、プラスアルファのおまけみたいな要素で言うと(笑)、ディー・エヌ・エーの南場(智子)さんですね。僕は南場さんとディー・エヌ・エーを共同創業して、20年経っても未だにずっと仲良くさせていただいていて、友だちというか親子というか、姉妹や兄弟のような関係なんですけど。
僕は、基本的に自分で決めたことしかやらないし、イヤなことは絶対やらないという価値観を持ってるんですけど、南場さんに関しては「言われたことはやる」と決めてるんですね(笑)。なので、南場さんから「タイミーという会社があって、小川さんとすごく仲良くしていて、それでどうしても手伝いたい」と言われて。
(南場氏自身が)手伝いたいんだけど、本当に現役バリバリのディー・エヌ・エーの経営者だし、それ以外の活動もいろいろされてる中で、やっぱりどうしても直接手伝うわけにはいかないから「ナベが行け」と(笑)。お前が行け、という話になって「わかりました」と行きました。
それで小川さんに会いに行った結果、いろいろ話を聞いて「これだ」と。さすが南場さん、いいボールを放ってくるわ、という感じで参加を決めさせていただきました(笑)。
小川:いや本当にもう、南場さんに「社外取締役をお願いします」と言いに行ったら、「私、今度経団連の副会長になっちゃったから、難しいんだよね」と言われて。「じゃあ、一番信頼してる人を紹介してください」と言って、ナベさんを紹介してもらったのがつながりでした。なので、本当に感謝しかないなと思っています。
せっかくなので、みなさんからご質問をいただければ、最後にQ&Aで拾いますのでぜひ。
亀田:前半パートで、だいぶ時間がいい感じになってきました。まさに先ほど渡辺さんにおっしゃっていただいたように、競合との戦いがけっこうシビアになってくるよねというところで。
せっかくなのでこのパートの締めは、調達した53億円の使い道や未来をどのように描いているかを、小川さんにぜひ話していただきたいなと思っています。
小川:53億円というお金をどう使っていくのかは、もちろんここからもさらに考えていくところではあるんですけど。やはり1つは、渡辺さんにおっしゃっていただいたとおり、競合に負けないプロダクトと組織を作らなくてはいけないところです。
そういう意味で言うと、よりプロダクトに厚みを持たせる。要するに、タイミーがUberやAirbnbに並ぶようにですね。たぶんロゴは同じように並んでもおかしくないかなと思ってるんですけど、本当にそういうシェアリングプラットフォームを作っていかなくてはいけないので。需給のバランスをしっかり調整したり、それに伴うダイナミックプライシングだったり。
あとは本当に、好きな案件にすぐ出会えるような検索エンジンや、推薦アルゴリズム。そういった、よりテクノロジーを活かしたプロダクトにしていかなくちゃいけないことが1つ。
もう1つは、やはりうちはB2Cなので、しっかりと地場に根付きながら一気に営業していかなくちゃいけないというところ。営業する中で、現場での気づきをしっかりプロダクトに反映していくという連携がめちゃくちゃ大事だと思っています。
競合がボーンとお金を出してきた時に、プロダクトの模倣はできるんですけど、オペレーションエクスペリエンスというか、物事が気持ちよく流れていくには、やっぱりチューニングがすごく必要だと思っています。
そこをしっかりと作っていけるかが、今後の勝負になってくるんじゃないかなと思います。今年次で300パーセント成長していますけど、それではぜんぜん満足していないので、より一層スピード感と成長率を高めていきたいなと思ってますね。
亀田:ありがとうございます。では前半パートは、この辺りで終わらせていただきます。
株式会社タイミー
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