2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
「ブロックチェーンで私たちの生活はどう変わる?」社員講演①(全1記事)
提供:株式会社デンソー
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岡部達哉氏(以下、岡部):みなさまこんばんは。株式会社デンソーまちづくり企画室情報トレサビ開発課の岡部です。私からは、デンソーのブロックチェーンの取り組みの全体像を説明した後に、担当しますトレーサビリティについて紹介いたします。
それではまずは1つ目ですが、そもそも参加されている大多数の方が「デンソーがなんでブロックチェーンをやっているの?」と疑問にお感じになられているかと思いますので、背景を説明いたします。まず背景を説明する上で、デンソーのビジネス領域について紹介します。
我々はクルマのモジュールなどを作って自動車会社に販売するビジネスをしています。それ以外にも、MaaS、物流、食料品、ロボット領域でもビジネスを手掛けています。多くは物を作ってお客さまに販売するモノビジネスになります。
ただ、現在の世の中の動向やお客さまのニーズを考えますと、売ったあとにいかに楽しいイベントを起こすか、楽しい経験をして頂くかが重要になると思います。そこで、モノ+コトビジネスというかたちに、徐々に変革を図っていきたいと思っています。その過程で一番重要な基盤になるのが、データです。
コトビジネスを行う上ではデータが必要になりますので、それらをいかに安全に確保した上でサービスをしていくか、正しいサービスをするか、を目指してブロックチェーンの研究開発をしています。また併せて、我々はQRコード、物流などの取り組みも行っているので、その視点から新しい車載ビジネスに対して効率的なサービス提供をできればと思い、ブロックチェーンの研究開発を進めています。
まずブロックチェーンについて説明いたします。非常に重要なメッセージとしては、ブロックチェーン=仮想通貨ではないということです。こちらのメッセージを覚えて帰ってもらえれば、私の本日の役割は半分ぐらい終了かなと思っています。
ブロックチェーンは、2008年にSatoshi Nakamotoという方が仮想通貨であるビットコインを支える技術として作られました。もともとは仮想通貨を支える技術ではありますが、現在では、データが改ざんできない技術として仮想通貨以外の分野で使われており、それが今の世の中の動向になります。
もう1つ覚えて帰ってもらえればと思うんですが、ブロックチェーンという技術は、大きく分けて3つの技術からなっています。1つがハッシュチェーン、もう1つが分散台帳、そして最後が合意形成アルゴリズム、マイニングと呼ばれる技術になります。
まずハッシュチェーンについて。みなさまが生活する上で、例えば書類だったりデータを多くお持ちだと思います。それは、ブロックチェーンの世界ではトランザクションと呼ばれています。データがいくつも溜まってくると、おそらくファイルに綴じたりすると思います。それが、ブロックと呼ばれるものになります。
そのファイルを綴じる時に、少しおまじないとして、例えば時間の情報などを足して、ファイルを1冊作ります。では次に何をやるのかというと、このファイルを1冊持って来て、例えば小学校の国語の試験のように「1冊のファイルを読んで64文字にまとめなさい」ということをやります。
その64文字のまとめを、次に新しいファイルが来た時にドンと載せてまた1冊を作ってまとめていく、ということを行うのがハッシュチェーンと呼ばれるものです。
こういうことをやることによって何がいいかというと、例えば1ヶ所でも書類を変えてしまうと、まとめが変わって、そのまとめが後ろに入っているファイルも変わってくるので、1ヶ所を変えると、どんどんドミノ倒し的にデータが崩れていくことでデータを守るという仕組みになります。
先ほど例えとして、国語の試験で64文字にまとめるという話をしましたが、当然それは国語の世界であって技術的には実現ができませんので、我々は暗号学的なまとめと言われるハッシュ値を使ってまとめを行っています。ハッシュ値に関しては、資料にに書いたような特徴があり、①文章からハッシュ値は計算できますが、逆はできない、②同じ入力データに対してまとめ値は誰が作っても同じものになる、③入力データが少し変わってもまとめ値は大きく異なります。
2つ目は分散台帳です。こちらは非常に簡単です。新聞をイメージしていただければと思います。例えばお金のやり取りをすると、すぐにその情報が新聞として全世界に発行されます。そして、もし私がお金を送るのを不正にやめてしまった場合、新聞にはその情報が記載されていることから、みなさまから「岡部、お金を払えよ」と言われる、そういったイメージです。このように、みなさまと情報を共有するのが分散台帳になります。
3つ目は合意形成アルゴリズム、マイニングと呼ばれるものです。これによってブロックチェーンが非常にわかりにくくなっているんですが、新しいデータを追加していく時に、誰がその正しさを保証するのかが問題になります。それらに関しては、あるゲームに勝った人にブロックを追加してもらうように設定したものが、合意形成アルゴリズムと呼ばれるものです。
上記を行う際には非常に多くの計算を要するため、大きなコンピュータリソースが必要だということが、過去ニュースにもなっていました。
このようなブロックチェーンの技術を使って、今の世の中がどうなっているのかを示したのが以下のスライドです。自動車会社さま各社で使い方がいろいろ違いますが、ブロックチェーンを使って新しいサービスをやろうと取り組んでいます。
また、エストニアではブロックチェーン技術で公文書を管理しています。そのように見ていくと、ブロックチェーンは非常に幅広い領域で、文書またはデータを管理することにも使われつつあり、これが今のブロックチェーンの現状になります。
続きまして、我々の取り組みについて説明いたします。まず我々が解決したい社会課題をいくつか書きました。大きく分けますと、トレサビ、あとはデータ活用になります。
トレサビに関しては、例えば製品を購入する際に、過去にどういう原材料を使ったのか、どういう加工がされたのか、賞味期限はどうだったのか。また、カーボンリリース量、エネルギーがどれくらい使われたのかを開示する技術です。こちらは、あとで説明したいと思います。
またスライド右側のピンク色はデータ活用になります。例えば最近ですと、シェアリングエコノミーやシェアカーがどんどん出てきていますが、それらを課金する、または保険を計算する上で、重要となるデータをいかに守るかということで、ブロックチェーンを使ったりしています。
また、環境に優しいクルマとしてEVが出てきていますが、そうしますとガソリンが使われなくなって、道路保全ができなくなるということで、例えば高速道路や国道を通る時にわずかな額ですが、支払ってもらおうということで、ブロックチェーンを活用することを考えています。
こちらが、我々の取り組みの全体像です。我々はブロックチェーンを使ってプラットフォームを提供することを目指しており、車載領域およびトレーサビリティ、またそれによるMaaS、企業間の連携のサービスの実現を目指していきたいと思っています。それぞれの発表者はスライド中に記載したとおりです。
また我々は他社と比べてですが、車載ビジネスをいままでしてきましたので、それらをブロックチェーンに載せることによって車載ハードウェアが実現できます。また、QRコードを作った会社ですので、QRコードとブロックチェーンを連携することによって他社にないブロックチェーン技術を作ろうと日々がんばっています。
それでは私の担当のトレーサビリティについて紹介いたします。
例えばお店に行ってハンバーガーを買った時に、食べる前にこのハンバーグのお肉はどうだったのか。例えばバンズはどうやって作られたのか? と疑問に思うことがありますが、QRコードとお客さまのスマホを使って、トレサビの情報をご自身で見てもらうことを我々は目指しています。
ここで我々としては、エンドユーザーにはトレサビの情報を見てもらうことによって、安心・安全に食料品を購入してもらったり、消費してもらったり、製品を使ってもらったりということを目指しています。また実際に導入される企業にとっては、それによって商品の価値向上に図ってほしいと考えています。
それではトレサビ技術を作る上での課題を少し考えてみたいと思います。大きく分けてトレサビを作る上で、3つの課題があります。まず1つ目はトレサビの情報をいかに関係者の改ざんから守るか、また外からの改ざんから守るかで、こちらは我々がブロックチェーンを使ってデータを守ることをやっています。
2つ目は、情報が正しくても、目の前にある商品が本当にその情報と完全に結びついているのかという問題です。情報と物の一致、すなわち情物一致問題といわれるものです。例えばスーパーに行くとよく「〇〇さんが作った野菜」があると思うんですが、その情報が正しくても、目の前にある野菜が本当にそうなのかという疑問を持たれるケースがあると思います。それに対して、QRコードを使って情報と物を一致させる技術を我々は作っています。
3つ目は、例えばブロックチェーン、QRコードでデータを守っても、実際にそのシステムを導入しようとすると大きな問題が生じることです。これは、一般的には既存の流通システムがすでに存在するので、我々のシステムを入れるために、改めて投資をするのかという問題です。
上記に対しては、たぶん「やらない」というのが答えだと思いますので、我々は技術的に特殊なQRコードを作ることによって、既存システムはそのまま、また我々のトレーサビリティについてもそっと挟み込むことができる特殊なQRコードを作っています。こちらは、後で紹介します。
続きまして、実際に作っているシステムの概要をご紹介します。会社A、会社B、会社Cを例に挙げていますが、会社A、Bが材料を作る会社、Cが加工する会社とします。まず会社Aが持つ企業の情報または製造の情報などをブロックチェーンに入れて、データとして改ざんできないかたちで守ります。
こちらを事前に準備しておいて、例えば材料メーカーはその情報と製造履歴をブロックチェーンに送ります。ブロックチェーンでは改ざんできないかたちで保存された後にそのまとめ値、ハッシュ値というのが返ってきますので、会社AはそれをQRコードに印刷して製品を出荷していただくということになります。またBの会社も同じです。
では加工メーカーのCはどうしますかというと、買って来た原材料に貼られているQRコードを読み込んで、さらに自社の情報を入れます。それらをブロックチェーンに送ると、改ざんができなくなってデータが守られた上で、ハッシュ値というまとめ値が返ってきますので、それらをQRコードに印刷して出荷するかたちになります。これらを繰り返すことによって、すべてのトレーサビリティを追いかけるのが、我々が作っている仕組みになります。
例えばですが、スライド左下のQRコードを読みますと赤文字で書かれた呪文のようなものが出てきます。それらを読み解きますと、5月1日に会社A、5月2日に会社Bで作った原材料を使って5月3日に会社Cで作った製品ということが読み解けます。また、右にあるようなスマホのアプリを使いながら、例えば主婦やお子様も簡単にトレーサビリティが見れる仕組みを作っているのが我々の仕事になります。
少し、我々が作っている特殊なQRコードを紹介します。既存のシステムに改めて新たな大きな投資をすることなく、QRコードをはめていくというかたちで、我々は特殊なQRコードを作っています。こちらは既存システムはそのまま、そして我々のシステムに必要な情報を裏に挟み込むことで、QRコードを2つの領域に分けて、表の部分には既存のシステム、裏の部分に我々のシステムを入れることをやっています。
これによって、例えば既存のスマホやスキャナで読み込みますと表の部分だけが見えるので影響はありません。また我々が提供する予定のアプリを使うと裏の部分も見えるので、既存システムに影響なしに我々のトレサビシステムを差し込むことができます。
こちらはご紹介してきましたトレサビ技術を使ってやっていることですが、コールドチェーンと呼ばれる、例えば食料品の温度管理や新型コロナワクチンの温度管理にも適用可能です。例えば温度センサー、GPSセンサーを使い、商品輸送中のそれらの情報をブロックチェーンに格納することによって、先ほどのトレサビに合わせて温度情報、または配送のルートを出すことができます。
また、最近ではカーボンフットプリント。製造に伴うCO2排出量を見ることもできます。これは製造履歴にそれぞれカーボン履歴を入れることによって、またトレースする過程の情報を取ることによって、このようにスマホのアプリから、CO2の排出量はどれだけだったかを見えるようになります。
我々はトレサビの仕組みを使って、お客さまに情報が見えて、安心して製品を買ってもらったり消費してもらう仕組みを早急に実現したいということで、日々がんばっています。
どうもありがとうございました。
株式会社デンソー
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