2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:Indeed Japan株式会社
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唐澤俊輔氏:みなさんこんにちは、唐澤と申します。ここからは40分ほどお時間をいただいて、組織文化・組織風土と言われたりしますが、カルチャーというなかなか実態のないものについてお話ししていきます。
カルチャーをどのように構築し、組織の中で重要性を理解させていくのかも含めて、構築の仕方の理論、それから実践も含めてお話しできればと思っております。では、さっそく中身に入っていきます。
昨年、『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』を出させていただきました。ある種の造語として『カルチャーモデル』という言葉を作って、ビジネスモデルの対比として、ビジネスのモデルをしっかりと描くのであれば、カルチャーのモデル、組織のモデルもしっかり描こうという趣旨で出させてもらった本です。
今日は、その本に則りながらご紹介させていただくかたちで、「これからの経営において、なぜそれが重要なのか」ということとセットで、お話ししていきたいと思います。
簡単に自己紹介をさせていただきます。私自身、キャリアとしては日本マクドナルドという会社に2005年に新卒で入社したんですが、マーケティングが長いです。12年くらいマーケティング部門に在籍し、どちらかというと事業部門の責任者などの事業寄りのかたちで、組織を作ってくるということでやったり。
あと、社長室に1年いた時期には組織風土改革。ちょうどV字回復の底のタイミングにいたので、どのように組織風土を転換していくかという経験を、実務の中でやらせていただきました。
そのあと、メルカリというスタートアップで、人事、組織全般の責任者というかたちで、グローバルに通用するようなテックの会社を作っていこうという、また少しカルチャーの違う組織を経験させていただきました。
それから、これもベンチャーでありますが、SHOWROOMでCOOというかたちで、経営全般を見させていただく経験をしました。
今はAlmohaという会社を共同創業して、プロダクトの開発、HRテックといわれる領域の開発、それから組織開発の支援として、コンサルティングなどをさせていただきながら、いろんな企業を見させてもらいました。私自身も勉強中ですという感じなんですが。
今日はカルチャーの話なので、Almohaのミッションだけお持ちしたんですが、「a little more happy」の頭文字です。
ベンチャーで「世界取るぞ」という会社さんもいいんですが、僕たちは「少しでも周りの人や身近な人を幸せにできて、楽しく働ける環境を作っていくことに寄与できたらいいな」という思いで創業しています。大事にしたいことを、そのまま企業名にしている1つの例として、ご認識いただければなと思います。
なので、私自身の経験はけっこう規模も大きい、どちらかというとマニュアルオペレーション型のマクドナルドから、テックで自律的な創発的にイノベーションを起こしていく環境も作ったりと、かなり幅広く経験してきたので、その辺も踏まえて今日はお話しできればなと思います。
大きくは、経営全般から見た時の従業員体験(EX/Employee Experience)がなぜ重要で、それがどのようにカルチャーの重要性につながってくるのか。それから採用につながってくるのかというお話。そこから、カルチャーモデルとは何で、どう作っていくかということをお伝えできればなと思います。
まず前段として、僭越ながら、少し経営のお話をさせていただきたいと思います。「企業はそもそも何のために存在しているのか?」という、ある種究極的な問いがあって、これは経営者であれば、もしくは人事の責任者であっても当然考えていく必要がある問いですよね。
これは正解があるわけではなくて、いろんなお答えがあって、ファイナンスの観点などで考えれば、「株主価値の向上が当然重要だよね」なんて話があるんですが、「経営者がやりたいことをやっていく箱である」という解釈もあれば、「従業員が大事だよね」という方もいらっしゃいます。
さらに、社会に価値を還元していきたい。ビジョンやミッションを達成していく。こういう話がある中で、Going Concernという、企業は継続していくものであるという前提がある。利益があって、再投資しながら成長していくというサイクルは、やはり欠かせないので、利益を生んでいく要素は言うまでもなく外せないなということなんです。
じゃあ、組織はどのように利益を伸ばしていくんだろうということを、分解してこのような感じで整理します。よくあるKPIでマネジメントしていくって、こんな感じですよね。
売上とコストがあって、売上の中に客数と単価に分けて、客数の中に既存と新規がいてみたいなことをしながら、どこのレバーを上げて、どうやって売上を伸ばして利益出していこうかという議論をしますよね。
よくあるのは、認知が低いことが原因で新規が取れていないなとなると、「広告を強化しよう」と経営陣が議論するんですが、コストが上がるわけです。じゃあ人件費を、採用や育成を抑えて、プランどおりの利益になるようにしよう、といったレバーを舵取りするのが、経営のコックピット機能と言われたりします。
このように人件費って、けっこう「コスト」と捉えられがちで、抑制の対象になって「投資」の対象にならないですよね。ここが人事などに携わっていると、なかなか歯痒いところかなと思います。
さらに言うと、課題があった時に、問題となった「where」で留まっていて、「なぜ起きているか?」という深堀りがされずに、場当たり的に「うーん、じゃあ広告をやろう」みたいなことになりがちですよね。
ここ(人件費と利益)をどのように捉えていくべきかという観点で、これからの経営というお話をさせていただきます。売上や利益、最終的な結果をお客さまに生み出していただけるという、顧客のロイヤルティ。これをプロセスで見ていきます。
顧客のロイヤリティを上げていくのは、顧客の体験(CX/Customer Experience)であって、顧客に対する価値を提供していく。つまり従業員のロイヤルティであったり、従業員の生産性が価値を提供し、その根っこには従業員の体験があるということです。
つまり、EXがスタートとなって、最終的な売上利益につながるという流れで捉えていきたいわけですね。そうすると、利益が生まれるので、その利益をまた従業員に再投資して、よいサイクルを回していける。これはサービスプロフィットチェーンと呼ばれるもので、もともとサービス業で言われていたフレームワークです。
最近はサービスという概念がどんどん広がってきていて、製造業であってもサービスの要素が入ってきたりしていますよね。そういう観点で、どんな会社にもけっこう使える枠組みかなと思うんですが、成功指標が従業員体験になっているということで、事業の成果が出ていない根っこがEXにあるんではないかと思うわけですよね。
それぞれCXのジャーニーとEXのジャーニーがあって、人事は採用から評価、育成、報酬、退社までの流れを管理していくことになるんですが、先ほどの「認知が低いのはなぜだろう?」という話になった時に、「すぐ広告しよう」ではなくて、「なぜか?」ということを掘り下げていくと、従業員サイドに原因があったりするわけですよね。
入社後の育成が不足して、「この部門のここのスピードが落ちたな」ということが見えてきたりするので、これからは「why」に根ざした課題を特定して業績を上げていきたいと。そう考えると、EXを向上させるにはどうしたらいいかということになるんですが、我々人事は、従業員の満足度を上げるためにがんばっているわけですね。
EXを上げていこうということで、例えばサーベイで給与の納得感が低いということが出てくれば、じゃあ報酬を成果型にしていこうとか、もっと実力を見ていこうといったことをするわけなんですが、結局一番昇給したメンバーから辞めていってしまったりとか。
育成が整っていないことが見えてきたので、管理職研修を導入したけれども、研修を受けたはずのマネージャーの部下の満足度が下がって、退職していってしまったりと、なかなか思うようにいかない。EXが改善しないということが起きているわけですよね。
(EXの低下が)なぜ起きているのかを考えていくと、すべては期待値ギャップというところにあるかなと思っています。例えば採用の局面で、人事の担当者が「成果主義でプロフェッショナルな会社ですよ」と説明をして、候補者が「ビシビシ仕事して成長できそうだな」と思った方と、「しっかり育成してプロになれそうだな」と思った方がいたとしましょう。
部門に配属されて、同じ上司から「早く成果出してね」なんて言われた時に、「ガムシャラにやるぜ!」という捉え方もあれば、「あれ? 育成してくれてプロになるんじゃなかったの?」という受け止め方もあると。
そうすると、「なんでまだ成果が出ないんだ」と言われた時に、「なにくそ、やってやるぜ!」となるタイプもいれば、「あれ、教えてくれないのに厳しすぎるな」と思うタイプもいるという違いが生まれるんです。
なので、同じ上司、同じ人事であっても、社員の捉え方が変わってくることで、どの会社にもAさんもBさんもいるんじゃないかなと思います。
ここは受け手側の期待値によって捉え方が変わってくるという話なので、従業員にちゃんと適切な期待値をセットしていくことが重要なわけですね。だからこそ採用の局面での発信であったり、期待値をどう伝えていくかが重要になるわけです。
従業員の不満を1個1個潰していっても、なかなか根本的には改善・解決しないので、「期待値を揃えていきましょう」と考えると、カルチャーをしっかりと言語化して可視化しながら、それを(社内に)浸透させて発信していくことが、非常に重要になっていく。
日々の一人ひとりの行動がカルチャーを作っていくので、この行動が確実に実行されていないと絵に描いた餅になるので、採用ミスという観点からもカルチャーが重要ということは、今までの流れから改めてご認識いただけるかなと思います。
ここからは少しカルチャーに絞ってお話ししていきたいと思います。そもそも、カルチャーがそれ(利益の創出)を解決するのかと考えた時の重要性について、いわゆるGAFAと呼ばれる会社はこのミッションだったり、バリューや働き方を組織の中心に据えて、それ自体を競争力にしていると言えるかなと思います。
実際にAppleを見ても、スティーブ・ジョブズが退任されたのは2011年なんですが、カリスマがいなくなって「そのあと大丈夫か」とさんざん言われた中で、何のことはなく業績を伸ばし続けているわけですね。これはもうAppleにカルチャーが浸透して、ジョブズの退任後も強みとして生き続けたということになるわけです。
また、Netflixという会社も、今すごく伸びています。彼らが「カルチャーデッキ」という125枚くらいのスライドを出したことがあるんですが、FacebookのCOOのシェリル・サンドバーグは、「これはシリコンバレーから生まれた最高のドキュメントだ」と言ったんですね。
ここから、カルチャーというのは公開しながら発信していくという流れが生まれました。「Freedom&Responsibility(自由と責任)」という、どんどん自由を与えると同時に責任も伴うということを明言して、非常に話題になった事例ですが、彼らもこうやって強い組織力にしている。
一方で、いいカルチャーであれば、当然そのままにしておけばいいですが、「カルチャーって意図的に作るんですか?」という話もあります。また、「結果としてなんとなくできあがってきた、歴史的に積み上がったものがカルチャーじゃないか」という話もあって、それも事実なんですが。
やはり結果的にできたカルチャーだけに頼っていると、気づけば意図しないマイナスのカルチャーが生まれてしまうこともあります。この事例は(最終的には)東芝さんの不正会計というかたちで、現場が数字を改ざんして上にあげてしまったということがあったんですよね。
たぶん、経営陣は「数字を変えろ」という指示はしていないはず。第三者委員会からも、そういう指示があったということよりも、「上にものを言いにくい組織文化があった」「達成できない数字を挙げにくい雰囲気があった」という報告が上がっています。
意図せずこういうことが起こるのは、組織にとって非常にリスクになってくるので、やはりカルチャーは意図を持って作っていくことも重要だと言えるわけですね。
そんな中で、『カルチャーモデル』を整理していく中では、目に見えない空気のような存在と言われるカルチャーを意図的に設計して言語化する。そして、浸透させていくことで、ギャップをなくして組織の競争力にしていきたい。
そして、カルチャーフィットの高い人材が集まって、採用ミス、離職も抑えながら、よりパフォーマンスする人材を集めていく。こういうつながりを作っていくために、ビジネスモデルとセットでカルチャーモデルを作っていこうと提唱しています。
ここからはカルチャーモデルの理論と、実践としていくつか具体例も踏まえて、ご紹介していきたいと思います。
そもそもカルチャーはどのように生み出されるのか、何者なのかということなんですが、アウトプットとしては「そこにある空気のようなもの」なので、実はなかなかこうと言い切れないもので、日々の言動や行動の積み重ねなんです。
「うちの社員って、なんとなく元気だよね」「なんか朝いつも挨拶するよね」というのも全部カルチャーですよね。インプットとしては、大きなゴールであるミッションやビジョンであったり、日々の行動指針やバリューなどがベースにあります。
構造的にはこのように捉えています。よく「事業と組織は両輪である」と言われると思いますが、その両輪がまさにビジネスとカルチャーのモデルという計画を描くわけですよね。
その上には、大きく目指したいゴールとしてのミッションやビジョンがあって、それらを計画に落としたあと、現場のオペレーションで回していく。組織という観点では人材のマネジメントを通して、現場のマネージャーが中心となり、人事がサポートして実行していくと。
その結果として、従業員の満足度や体験価値が上がっていく。それがカスタマーのエクスペリエンスにもつながっていくということで、どちらかというと先行指標が組織側で、結果として事業が伸びていくという構造で全体を捉えています。
ビジネスモデルはいろんなところで語られているので、ここではそちらに譲りたいと思いますが、カルチャーモデルの円というのは「7S」というものを持ってきています。
もともとマッキンゼーさんが提唱されていた、7つのSの頭文字を取ったフレームワークを持ってきています。真ん中に「Shared Value」という行動指針があって、その行動指針を言語化し、それを軸に組織構造を決めていったり、人事制度を設計したり、採用、スキルセットを整理していくというフレームワークです。
通常は一番上に「Strategy」があって、「組織は戦略に従う」と言われたりするので、一般的には事業戦略に基づいて制度を設計したり、組織が構築されているんですが、ここでは「両輪である」と言っていて、しかも「組織が先行指標である」と言っているので、実は組織に戦略が従う側面もあるんですね。
そう考えると、むしろ(一番上を)StrategyからStanceに置き換えて、戦略に従うのではなくて、選択的に「経営としてこういう組織にしたい」というスタンスをしっかり取ろうというところから、Stanceを一番上に持ってきているという構造です。
「経営スタンスの4象限」と書かせていただいていますが、一番上にある重要になる方向性を決める上では、じゃあどうしたらいいの? ということがけっこう難しいわけです。
カルチャーには正解・不正解はないと思っています。「Netflixのあのカルチャーいいよね」とか「Googleすごいよね」と言われたりもしますが、それが正解ではなくて、事業のモデルや今いる社員のタイプにもよるので、自分たちの組織における勝ち筋をしっかり定めることが大事です。
ある種、カルチャーは好き嫌いでいいかなと思っています。個人にもパーソナリティや性格というものがありますが、こういうものはどっちでもいいですよね。例えば外交的な人・内向的な人といった時に、外向が正しくて内向が悪いとか、その逆というようなことはまったくなくて、それぞれの特性だよねと認識をされていると思います。
それと同じで、組織も顔色があってそれぞれ違っていいと。らしい組織を一貫して作ることが大事だと捉えています。その観点で見ると、縦軸に中央集権から下に分散型のいわゆるトップダウンの組織なのか、現場に任せていくのか。
そして横軸には、成長のさせ方。変化を起こしながら成長していくタイプと、安定的に毎年2パーセント成長といったかたちで、改善を積み上げていくタイプと2方向あると捉えています。
これを4象限にして左上からご紹介すると、トップダウン中央集権型での変化を指向するタイプを、「カリスマリーダー経営」と名付けています。創業者系の会社に多いんですが、いわゆるカリスマ経営者がどんどん変化を起こしながら「朝令暮改だ」なんて言って、どんどん変化してトップダウンで強い意思決定をしていく。変化しながら伸ばしていったり、非連続な成長を求めるのが「カリスマリーダー経営」。
ここからスタートするケースが多いんですが、右上は「チームリーダー経営」で、同じように中央集権型で決めていくんですけれども、もうちょっと安定的に積み上げていくような成長のさせ方ですね。
日本の大企業に多く、経営陣として確実にチームで擦り合わせながら意思決定をしていくということで、リスクを抑えながらやっていくということなので、「擦り合わせ型の組織」と言われたりしますね。
最近、メンバーシップ型とジョブ型とか言いますが、メンバーシップ型がまさにこういう組織で、新卒を採用して育成しながら、その組織のプロフェッショナルを育てていく。そういうものが「チームリーダー経営」ということになります。
それから右下の「複数リーダー経営」。これは安定を思考しながら分散していくことになるので、同じように安定的な成長はするんですが、一定の権限移譲をしていきます。グローバルの外資系企業に多いんですけれども、地域別や事業部別に権限移譲して、リーダーがPLの責任を持つ。
責任を持ったかたちでリーダーに任せて、毎年何パーセント成長といったミッションを渡し、彼らが確実に達成することで伸びていく。複数のリーダーが会社を引っ張っていくモデルです。
最後が「全員リーダー経営」ということで、社員一人ひとりにだいぶ権限移譲しながら、自律分散型で任せていく、大胆に任せるという組織の作り方です。ITのスタートアップはこのかたちを取りながら、非連続な成長をしていく。社員同士の化学反応を活かしながら、よく言われる多様性が活きるのは特にこういう組織ですよね。
本人に任せながら、それぞれの違いなどを活かして、異質なものを集めながら化学反応を起こすことが強みなので、よりダイバーシティが活きるのはこういう組織なんですが、こういうかたちの全員のリーダーで経営していくと。
この4つのタイプがあるので、みなさんも「うちはこれが近いかな」「でも、次はこっちに移行したいところだな」と思われるかなと思うので、その辺をもう一度整理していくことが、1つ大事かなと思います。
Indeed Japan株式会社
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