2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
提供:F5ネットワークスジャパン合同会社
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野崎馨一郎氏(以下、野崎):それではお時間になったので始めたいと思います。みなさん本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございます。
本日は『すべての産業を巻き込むオープンバンキング・API連携の現在』と題しまして、私どもF5ネットワークス主催のウェビナーを1時間お送りいたします。
さっそくですが、本日のスピーカーをご紹介いたします。私は、F5でエバンジェリストを担当しています、野崎と申します。よろしくお願いいたします。そして本日私と一緒にスピーカーを担当するのが、松本央。F5のテクニカルソリューションズアーキテクトです。松本さん、軽く自己紹介をお願いします。
松本央氏(以下、松本):みなさん本日はお時間をいただきありがとうございます。私はNGINXというプロダクトのテクニカルソリューションズアーキテクトを担当しています。松本と申します。
業界問わず幅広くみなさまにNGINXというソフトウェアをご活用いただけるように、設計段階とかご提案を日々対応しています。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
野崎:ありがとうございます。松本さん、今日は弊社のウェビナーとしては試験的・実験的にかなり幅広いお客さまにお声を掛けています。
ご存知ない方にお話ししますと、通常では弊社のソリューション紹介、製品紹介、どうやって設定するか、どうやって導入するかという技術的なウェビナーが弊社では多いんです。
今回は実験的に、製品やソリューションについてはほぼしゃべらないかたちです。弊社では世の中のトレンドを分析した調査報告書というものを実は出していまして、その内容をメインにしたウェビナーになります。
今日は松本さんに来ていただいているんですけれども、製品の紹介というよりはアーキテクチャの話を後半で一緒に担当していただくことになると思います。
野崎:それでは本題に入りたいと思います。最初に紹介したいのが、本日のテーマであるオープンバンキング。これがなぜ起こっているのか。本日こちらのウェビナーに足を運んでいただいた方は、なんらかのかたちでこういったキーワードを聞いている方が多いと思うんですね。
API連携、オープンバンキング、デジタルバンキングなどいろいろありますが、一大潮流になった歴史的な背景というのを簡単にご説明しますと、やはり一朝一夕に起こったことではないというのがわかると思います。
(スライドを示し)ここにいくつか、なんでこういうトレンドが起きているのかというのを象徴するような業界の中でのオピニオンリーダーの方々のコメントを抜粋しました。
一番上は、私が一番好きな言葉で、ビル・ゲイツ氏、言わずと知れたマイクロソフトの創業者が言っている言葉です。これ実は相当前の言葉で、確か2000年代前半だったと思います。
言っていることは何かというと、バンキング、銀行機能ですね。機能は必要だけれども、バンクという組織体は、実は社会にとってそんなに必要ないのではないかという問いかけのようなコメントを、どこかのカンファレンスでされていたと聞いています。
そして2つ目のピユーシュ・グプタ氏。こちらはDBS、Development Bank of Singaporeで、ここ5、6年くらいデジタル化をかなり推進されているCEOです。彼の考え方は銀行機能とはとにかく目に見えない社会の裏方で、黒子のようなかたちで世の中の人の人生や生活を支えるべきものであるという話をされています。
そして最後に紹介するフェリックス・ロハティン氏。この方はもしかしたら日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、けっこう米国では著名な投資銀行家と米国の同僚から聞いています。
こちらで言っているのが、銀行は別にお金を生み出すためのビジネスではなくて、あくまでも個人との関係性を強化する。それを通じてビジネスをやるものであると。お金、お金ってそれがすべてのものじゃないんだよ、というのを、金融業界でもかなり名の知れた方もおっしゃっているということです。
何を言っているかというと、銀行業や金融業そのものは、実はひもといていくと、その本質的な価値は別のところにあるんだなと。その本質的な価値を高めるため、今こういう潮流が起こっているのにはちゃんとした理由があるということなんですね。
もうちょっと具体的に背景をひもといていくと、私どもの調査の中で大きく2つの市場要因があります。1つ目が歴史的に、新興国以外でも実は先進国でも十分あるケースですが、特に新興国では従来型の金融サービスを享受できていない層の人口がかなりあるというポイントなんですね。
(スライドを示し)私どもの調査は2020年の前半に最初の調査を始めまして、その時はアジア地域に限定したかたちで始めたのでここでは東南アジアと書いています。
人口の73パーセントの方々が従来型の金融サービスを受ける前提条件とか社会的な保証がなくて、なんらかの理由でできていない状況があります。つまりこれは非常にもったいないマーケットということでもあるんですね。
そして北米でも格差社会が日本よりも大きいと言われているのもありますが、そういった層の人口がけっこういます。
さらに言いますと、今のはどちらかと言うと消費者向けの話ですが、対企業向けで言いますと、いわゆるSMB、中小企業向けのサービスも十分ではないところがあったというのが調査によってわかっています。
そういった従来型のサービスの特徴に対して、市場そのものの変化というところで見ていきます。これはある程度ピンときている方もいるかもしれませんが、一言で言うと、テクノロジーが進んだことによっていろいろな可能性が広がったということなんですね。
例えば、金融サービスを、より個人化・パーソナル化することによってパーソナライズの情報やレコメンデーションをくれるようになっているとか。そもそも従来の市場環境に比べてスマホで金融サービスを享受できる基盤が整いはじめたというところもありますし。
なによりもやはり巨大なIT企業、これ英語ではテックジャイアントという表現をしているんですけれども、そういった企業やフィンテックと呼ばれる新しいプレイヤーがまったく今までとは違うかたちでの金融サービスをどんどん模索して入れてきています。
このような要因がいろいろ重なることによって新しい金融サービスを模索する、その中の動きで台風の目にあるのがオープンバンキングということになります。
そしてオープンバンキングというものは、釈迦に説法かもしれないのですが、一言で言いますと閉じたかたちで自社ですべてやる金融サービスではなくて、オープンなかたちのエコシステム、いわゆる生態系ですね。
いろいろなパートナーシップとか協力会社さんと組んで複数の企業のシナジーを駆使して金融サービスを提供する。そういうのをオープンに模索するという定義の中で、私どもはこのレポートの中でいろいろと調査をしました。
そして本日のメインコンテンツの1つになりますが、このオープンバンキングの市場の成熟度を測って、それを数値化、図表化したのがこの次のページにあります。
お見せする前に2つだけ見方を説明いたします。一言で言うと、縦軸と横軸に分かれて4つの象限に国や地域単位の市場をそれぞれ配置したチャートになっています。
1つ目の基準は、横軸はいわゆるレギュラトリー、規制の強さ、規制がどれだけ成熟してきちんとガイドラインが策定されているか。それが成熟していない、成熟しているというのが横軸になっています。
そして縦軸は実際の市場の中でのプレイヤー、金融サービス業、銀行、フィンテック、そういったプレイヤーがどれくらい実際のサービスの開発とかローンチや取り組みを進めているか。より進んでいたら上のほうにいくという2つの軸によってこのチャートが表されています。
そしてその4つの象限をそれぞれ両方とも高いレベルのものをChampionsというカテゴリー、両方ともいっていないのがCrawlersですね。Intermediariesが左上、Enthusiastsは右下。Enthusiastsというのは、要するに取り組みは進んでいるんだけれども規制がそんなに進んでいないですとか。そういったかたちで4つに分かれています。
(スライドを示し)というかたちでお見せする資料がこちらです。パッと見ると煩雑に見えて恐縮ですけれども。先ほどご説明したとおり真ん中を境に横軸、縦軸で4つの象限に分かれています。
パッと見てわかると思いますが、右上のChampions、要は法制度も規制の整備も進んでいて、かつ、取り組みも進んでいる市場というものがよりオープンバンキングが進んでいる。成熟している市場、地域、国であるという図になっています。
本日のウェビナーの中ですべて紹介するわけにはいかないのですが、実はこのレポート自体は英語版ながらすでにダウンロード可能です。20ページ後半くらいのけっこう分量のあるものなので、その中から抜粋していくつかキーポイントを説明したいと思います。
その前に日本の場所だけ一応確認しておきますと、ちょっと目を凝らしていただくとわかるかもしれません。Crawlers、取り組みも規制の法整備の度合いも進んでいないという中では、限りなく中庸に近いところに日本は位置付けています。
法整備は進んでいる、取り組みも進んでいるChampionsにカテゴライズされた地域や国はどういうものなのか。そこから学べるものはあるのか、というところに話は移ります。
ご覧いただいてわかるとおりたくさん国はあるんですね。じゃあこれをどう見ようかとちょっと整理して、Championsの主要国をこちらに持って来てみました。
さっきの図を見てわかるとおり、今回の調査結果でぶっちぎりで特に進んでいるとわかったのはイギリスとシンガポールの2ヶ国になっています。どちらも共通しているのはフィンテックやプレイヤーがかなりいろいろなサービスをすでに進めている。ネオバンクとかも台頭していたり、従来型の銀行もいろいろ取り組みを始めています。プラス、法整備も進んでいる。
ただ一方で非常におもしろいのが、どちらもかなり進んでいると言っていながら、実はけっこう対照的な側面があるんですね。それは何かと言うと、イギリスはより規制がかなり厳格に明確に強制力をもって設定されている特徴があります。
反対にシンガポールは、それなりに定義はされているんですけれども、実は当局の方針はそんなにガチガチに厳格にはせず、ある程度市場の自由を尊重する考え方でやっています。
ただですね、今回の調査は弊社F5とシンガポールに本社を置くTwimbitという新興系の調査会社さんと共同で調査を行なっているのですが、そのTwimbit社の調査チームいわく、シンガポールも正直なところイギリスの規制の方針やトレンドはかなり気にしているというのも聞いています。
シンガポールとイギリスって歴史的にもいろいろ関係性があるので、まったく無視しているわけではないし、別にケンカしているわけでもないと。ちょっと方針が違うけれども、お互い様子を見て注視しながら一緒に進めている側面があるということになっています。
そして続くかたちでEU諸国が連なっているので、そこのあたりをまとめてみました。左から順にドイツ、フランス、スウェーデン、デンマーク……フィンランドですね。すみません(笑)。失礼しました。北欧3国プラスなんですけど。
このあたりの共通ポイントはやはりEU共通の規制とか、PSD2などのいろいろな基準がありますので、そのあたりに則しているということで共通点が非常に多い各国なんですね。あとは、EU共通の規制に対してさらに国ごとに多少のルールが策定している可能性があるのと、プラス、実際に国ごとのフィンテックの数とか、銀行の取り組みには多少の違いがあるという程度です。
けっこう進み度合い、左下から斜め上に進む度合いだけで言うとそんなにこの5ヶ国の違いはないながらも、多少の特色はそれぞれの国の間に出ているようです。
そして最後に、意外なことに今回の調査では、厳密に言うとChampionsに含まれないという結果になりましたが、やはり世界の経済大国として第1位、第2位であるアメリカと中国を無視するわけにはいかないということで最後に持って来ています。
こちらですけれども、アメリカと中国の共通点は巨大なIT企業がいる。アメリカだとGAFA、プラスMicrosoft、中国だとみなさんお馴染みのBATですね、Baidu、Alibaba、Tencentのような会社がいます。
このようなプレイヤーが市場を実際にはドライブするような動きをしていて、そこにある程度任せているという共通点があると。これまた非常におもしろいポイントなのかなと思っています。
(スライドを示し)そういったものを前提に整理していって、このレポートの最終的なまとめになります。大きく分けると8つの提言をTwimbit社は最終的に結論として出しています。それは何かと言うと、大きく分けると8つもあるの? っていう話なんですけど(笑)。
そのうちの4つがいわゆるビジネス系、経営戦略的な面の4点。ここに書いてある赤文字のところになります。残りの黒字のところが、どちらかと言えば技術面でどういうことをやっていくべきかという提言になっています。
このあとの松本さんのほうで黒字に関わるところのプレゼンに入らせていただきますので、私のほうは先に赤文字のところをまとめます。
一言で言うと、銀行法とか金融の規制でできないこと、できることって日本でもあるよねっていう話は絶対出てきます。ここにスクリーンショットがありますが、規制緩和も今年に入ってもどんどん進んできているところもあります。
これからこういうところをどんどん模索していく参考情報をいくつか、レポートの外の情報ということになるんですけれども、共有いたします。
(スライドを示し)先ほどのコラボレーションやデータ・ドリブンで特に参考になる会社さんが、先ほどもちらっと申し上げたDBSという、東南アジア最強の銀行というあだ名を持つDevelopment Bank of Singaporeですね。この会社の話です。
実はこの会社は、Twimbit社の地元ということもあって2020年からの調査の中でもいろいろ注視していたのですが、みなさまも記憶に新しい日本が緊急事態宣言に入った2020年の4月7日、あのほぼ同時期にシンガポールでもいわゆるロックダウンに入ったという経緯がありました。
その時にかなりスピード早く、飲食店向けにUberEatsのようなオンラインの配達サービスを簡単に構築できるものを、DBSというシンガポールのトップの銀行が自分から国内のスタートアップ2社と組んで新しいサービスを作りますと。
確か3月の後半くらいに発表して、ロックダウンになる前の3月中にサービスが提供可能になりました。シンガポールに行ったことがある方はご存知かと思いますが、小さいカフェテリアやフードコートがたくさんあるんですよね。
そういう小規模な飲食店の方でも簡単にUberEatsのようなものが作れるようになる。それでロックダウンの間は凌ぎましょうという、そういう取り組みを発表していました。結果、アメリカのBest Bankというランキングの中で、2020年はワールドワイドで一番のBest Bankに表彰されたという経緯があります。
これはまさに銀行なのにスタートアップと組むというオープンさと、スピードを重視してロックダウンに間に合わせるところで選定されたのが大きいポイントになっています。非常におもしろい事例かなと思っています。
DBSってすごい銀行なんですねっていう話なんですけれども、そんなに安泰じゃない側面があるっていうのも同時にわかっています。これはさっきのレポートとかWebサイトとはまた違うソースになりますが、私自身がアジアも日本も担当している立場もあって、コロナ前は非常に頻繁にシンガポールに出張に行っていました。
その出張の中には、ありがたいことに現地のいわゆるミートアップ、開発者、デベロッパーの方向けの会議に参加するケースもあったんですね。そういったところに、ものによってはさっきのDBSの開発者の方、開発部門の方がひょっこり現れたりすることもあってですね。
そこでいろいろな情報を聞いていたんですけれども、聞いたことをそのまま話すわけにはいかないのでどうしようかなぁと思っていたところ、なんとYouTubeにほぼ同じような情報があがっていました。
本日ここで話しているのはそのYouTubeからの抜粋になりますので、公開情報としてみなさまに共有したいと思います。気になる方はこちらのリンク、のちほど資料からたぶんリンクでいけると思うので見てみてください。
このDBSの方が30分くらい話しています。一言で言うと、みなさんDBSっていろいろなAPIを出していて、APIのポータルサイトがあって、開発者のプラットフォームを作っていて先進的に見えるけれど、裏では僕たち手作業でいろいろなことをやっているからちょっと忙しくなったら返事が遅れるんだよ。ごめんねっていうところから始まっています。
先進的な取り組みをやっていても、やっぱり自動化できていなかったり裏方の手作業でやっている部分が非常に大きいという予想外の情報が出てきておもしろい。
そんな中で、DBSさんは確かAPIを200以上出しているんですけれども、外部の開発者の方とか協力会社の方からどのAPIをどういう時に使えばいいのかわからないとクレームを受けていて、ごめんねっていう話をしています。
何がおもしろいかと言いますと、スクリーンショットの右側で200以上のAPIを出しているDBSの方が言っているのが、ちなみにこのあとAPIあたりいくらまでだったらお金出してくれる? って(笑)。APIをマネタイズする価格感を200以上のAPIを出した段階で少しずつ模索しはじめているところが、このYouTubeの中で実際に見られるんですね。
まずは開発して、まずは作って、まずは提供を開始して。それからどういうふうにビジネスに持っていくかは順次模索しつつ、オープンに開発者会議でいろいろな情報を吸い上げるのをリアルで見られるという意味で非常におもしろい情報です。
(スライドを見ながら)そして今回のレポートを皮切りに、弊社F5ではいろいろなマーケティング活動、金融業界にまつわるいろいろな活動を2020年からやっています。その一環で、こちらは香港のFintech Newsだったかな。すみません。意外に画像が潰れていて私も見えなくて恐縮なんですけれども(笑)。
香港のフィンテックのオンラインのメディアがあるんですね。そこにスポンサードというかたちで、2020年、1回枠をいただきました。YouTube Liveというかたちで、下から2番目のモデレーターと弊社のSEマネージャーと。
あとOliver Wymanという香港の投資会社、そういう会社さんと、CCBAという銀行の方と、あとDBS Hong Kongの方ですね。その方々とでラウンドテーブルディスカッションをしました。
その時に非常におもしろいコメントを、このDBSのBritさんという方が言っていたのを紹介したいと思います。マッチポンプみたいで非常に恐縮ですが、このBritさんにそういう情報を言わせたのは、実はここに書いてあるとおり私自身でして(笑)。私自身が視聴者として質問を投げて、それに答えてもらっているというところです。
DBSさんっていろいろな取り組みをすでにやっているので、こういう質問をすごく聞きたいと前から思っていたんですね。その質問は何かと言うと、オープンバンキングの取り組みをする時に社内で抵抗勢力ってありますか? と。
もしあったとしたら、そこの抵抗勢力が、例えば「そんな開発して、そんなにいっぱいエンジニアを投入して、どれだけ儲かるの?」みたいに言われたらどうしますか? そういう時のベストプラクティスはありますか? って私はここで聞いているんですね。
それに対してBritさんは非常におもしろい回答をしていまして。それはどこの銀行でも起こるし、DBSの社内でもものすごく戦ったと。本当に振り返るだけでもつらいくらいの勢いの話をされていまして。
さらにそこでおっしゃっていたのが、なのでやはり全員が抵抗勢力じゃないなんてことはあり得ない。いろいろな意見があるし、当然ながらビジネスなんだからそこからどうやって結果に持っていくかというのが大事だと。我々が思うに、それをやろうとしたら一つひとつPoC、いわゆる概念検証ですね。
それをやって、小さいながらも結果を出して数字やデータでアウトプットを見せて、それで説き伏せていくしかないのというのが、我々が考えていることだとおっしゃっていたんですね。これは非常におもしろいポイントなのかなと思っています。
そんなDBSすごいねの話から、ちょっと次の話に移ります。一方、やはり東南アジア、DBSを脅かすくらいのいろいろな会社があるらしいんです。
その最たるものの1つが、このSea Limited。2020年だけで6倍の株価に達したというような……すみません、記事の時系列から見ますと厳密には2019年ですね。
とにかく、2017年か18年くらいにニューヨーク証券取引所に上場して、コロナの中で一気に伸びた会社の1つらしいんですね。シンガポールベースのスタートアップなのですが、もともとゲームプラットフォームの会社らしいです。いわゆるモバイルゲームの会社で、出資の株主の中にTencentがいるらしいんですけれども。このSea Limitedという会社が伸びました。
伸びた結果、今年の2021年1月13日の記事に彼らがインドネシアのデジタルバンクを買収したと出ていて、びっくりしました。これ、たぶん日本人の感覚に例えて言うと、韓国のNAVERとかカカオみたいな会社が、日本のデジタルバンクで言うと、みんなの銀行なのか、ソニー銀行なのかわからないですけど、そういうところを買収したみたいな話になるわけです。けっこうすごいですよね。
国内に閉じて例えるなら、わかんないですけど、DeNAとかグリーがオンラインバンキング、いわゆるデジタル専業銀行を買収するような動きがすでに起こっていると。
ものすごく資金が潤沢で、ゲーミングカンパニーとして出てきたんだけれども、結局ゲームでも課金があるので、課金のところを皮切りに独自の決済プラットフォームでデジタルバンキングに進出しました。DBSもうかうかしていられないと明らかに警戒しています。
ただ、いわゆるフィンテックやデジタルバンクみんながわっしょいわっしょいと楽しく順調に伸びているかというと、そんなことないんですよね。それを象徴する、明暗を分けるという意味で、まず暗い部分の話からいきますとですね。
オーストラリアのXINJAというネオバンク、オーストラリアではかなり有名です。私もコロナ前はオーストラリア出張が多く、オーストラリアに行って金融、フィンテックの話をすると必ずXINJAという名前が出てきていました。それくらいメジャーと言いますか、ポピュラーな名前だったんです。
コロナで資金繰りがうまくいかなくなったということで、2020年の年末に残念ながらネオバンク事業から撤退というニュースになりました。あれだけ有名で順調そうに見えるネオバンクの事業でも、そんなに一筋縄ではいかないんだなという非常に興味深いニュースでした。
一方の明るい話題もほぼ同時にありまして。同じくオーストラリアのデジタルバンクで、英語だと86400(Eighty Six Four Hundred)って言うんですけど、たぶん日本語だと86400(ハチロクヨンマルマル)としか言いようがない社名ですけれども(笑)。
この会社は、どうやったかと言うとNABですね、National Australia Bank。要はオーストラリアで一番のメガバンクのNational Australia Bankに買収されるというかたちで無事イグジットできました。
NABからしたらミレニアル世代やZ世代、若者世代で口座を持っている人が非常に多いこういう銀行を買収して一気に一番弱かった若者層を取るという意味合いと、86400さんからすると非常に潤沢な資金のバックを得られたという。非常に美しい買収になったというところなんですけれども。
そういうかたちでイグジットを迎えるという会社もあると。そんな明暗を分けるというのがオーストラリアの中でも起こっていたりするわけなんですね。
いろいろな話がありますが、総合しますとやはり金融業、銀行業とはいえ、もうテックカンパニーのような様相を呈したかたちで事業内容を考え、サービスの内容やそれにまつわるデジタル基盤を作っていかなければいけない世界になってきていると思っています。
1つは非常に動きが早いですよね。さっきのいくつかの記事を見ても、今年だけでもいっぱいいろいろなことが起きています。そういう中で非常に大事になってくるのが、これはIT業界でもそうですけれども、物語で共感を呼んでブランドを確立するというのが本当に大事な時代になってきています。
機能的にここが優位とか、こんなことができるから競合他社と比べてうちはこんなにいいんだ、ではなくてこういうことをやりたい。こういうビジョンがあるからどうですかというのが、やはり大事なのかなと思わせる例を最後にご紹介したいと思います。
Varoというアメリカのデジタルバンク、ネオバンクなのですが、2020年初めてアメリカでネオバンクとしての銀行免許をいただいた会社が増資したというニュースです。その増資にまつわるポイントが非常におもしろい。
この会社のビジョンが、今まで銀行口座を持てなかった、いわゆる格差社会の下の層の方々向けにデジタルバンクのサービスを作ったというビジョンを明確に掲げている会社らしいんですね。それに共感したNBAの選手のラッセル・ウェストブルック氏が個人として出資をしてアドバイザーとしても就任したというニュースです。
これは非常にわかりやすくて、我々アメリカの世界をそんなに知らない人間でも素敵な話だなと思えるような確固たるビジョン、明確な考え方がありました。しかもNBAのスター選手がそれに共感するというニュース性も手伝って、一発でこの会社って素敵だなと思わせるニュースでした。
日本でまったく同じことがどこまでできるか、いろいろなケースがあるとは思うのですが。こういった物語で訴求していくのは非常に大事なのかなと思って、最後に紹介しました。
それによってゴール定義、例えば来年いくら売り上げればそれを正解、ゴールとしてやるのか。例えば新しいデジタルオープンバンキングの活動とか、それとは違ったビジョンをどこまで浸透させるとか、本当にゴールの設定がいろいろなものが考えられる。テックの世界に近い考え方です。
という前提で考えていくといろいろな考え方、いろいろな議論をして、こういった取り組みをやっていくのが重要な世界なのかなと思ったところで、この資料および情報共有を締めたいと思います。
そしてこのあとになりますが、最初の今回のウェビナーのご紹介でもお話したとおり共同でレポートの調査をしたTwimbit社、新興の調査会社なんですけれども、そこの創業者兼CEOのManoj氏の日本市場についての見解をビデオで共有したいと思います。
今日は松本さんに一緒にお話していただいているんですけれども、けっこう楽しみにされていたんですよね。
松本:そうですね。いろいろなテクノロジーというのはアメリカとか海外から起こっていく部分があるので、日本はそれを地固めにして大きなビジネスにしていくポテンシャルが大変大きいと思うんですね。
ですので、世界全体を見ながらどういう視点があって、そしてこれから我々は日本でどういうふうに取り組んでいけばいいのかを今回このビデオから勉強してほしいなと思っています。
野崎:ありがとうございます。実はインタビューの編集を私がやったのですが、けっこうトラブりまして。期待に添えるかわからないですが、ちょっと見てみましょう。
松本:楽しみにしています。
(次回へつづく)
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