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株式会社CYBO(全1記事)

2021.08.27

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がんの早期発見はなぜ難しいのか? がん検診の“弱点”を補う、AI×細胞ビッグデータの可能性

提供:京都リサーチパーク株式会社

日本のハードウェア・スタートアップのグローバル展開への登竜門である、ピッチコンテスト「Monozukuri Hardware Cup 2021」(主催:モノづくり起業推進協議会)。米国ペンシルベニア州・ピッツバーグ市で開催される「Hardware Cup 2021 Finals」の日本予選として、日本中からイノベーティブなスタートアップ8社が集い、トップイノベーターと日米の投資家・起業家ら審査員の前で熱いピッチを行いました。本パートでは、株式会社CYBOの新田尚氏が、AIを活用した「がんの早期発見」についてピッチを行いました。

AIによる細胞解析で、がんを早期発見

新田尚氏(以下、新田):さっそくですが、今日は「がんの早期発見」という問題を、AIと細胞で解決するというお話をさせていただきます。株式会社CYBOの社長、新田尚です。

多くの人は、早期がん診断後の再治療が良いと考えていますが、感度と特異度のトレードオフの問題があります。つまり、がんを早期に発見しようとすると、感度の差を大きくして、小さながんを早期に発見しようとします。しかし、多くの場合、特異性が犠牲になり、偽陽性(注:実際は陰性であるにも関わらず陽性結果となること)が増加し、オーバースクリーニングの問題が発生します。

では、オーバースクリーニングの問題とは何でしょうか。がんなどの病気の検診は、何百万人という多くの人々に適用されることになります。このような場合、少量の偽陽性が多くの問題を引き起こすことになります。

例えば、医師にとっては説明コストの増加、患者にとっては陽性と判定されたことによる不安感の増加、さらには不必要な検査や治療の増加による医療費の増加につながり、最終的には医療全体の質の低下を招きます。

このような理由から、高感度だが特異性の低い検査法を社会に広く導入することは難しいと考えています。そこで私たちは、AIによる細胞解析の技術を用いて、この感度と特異性のトレードオフを解消しようとしています。つまり、一つひとつの細胞を正確に調べることで、感度と特異性の両方を達成しようとしているのです。

これが私たちのソリューションのイメージです。まず、私たちはSHIGIと呼ばれる独自の全自動顕微鏡システムを持っており、大量の試料を撮像してがん細胞の画像データを生成します。

そして、がんを発見するためのAIソリューションとして、医師向けにAIによる解析補助のツールを開発しています。また、このAIはセルソーター(注:特定の細胞を分取する実験装置)ENMAでも実行可能で、これにより識別したがん細胞を分離して、さらに分析することができます。

この手法によって、単一細胞ベースで詳細な解析を行うことにより高い特異性を得ることができ、また大量の細胞を高速解析することで高い感度が得られます。

細胞解析のプラットフォーマーを目指す

新田:これは私たちのバリューチェーンですが、私たちはサービスの提供から利用までを行うための一連の技術を持っています。特許取得済みの高速イメージング技術に加えて、データ管理システムや各クラウド、ビッグデータやAIなどの技術を集積しており、さらにはAIによる分類結果の表示方法やセルソーターについての特許も持っています。

私たちの成長ストーリーは、イルミナ(注:次世代遺伝子配列解析で、世界最大シェアの米国企業)の遺伝子解析プラットフォーム戦略を意識しています。細胞解析のプラットフォーマーとなり、成長を目指します。遺伝子解析と同様に細胞解析の市場はこれから急速に広がると考えており、この市場拡大によって会社の事業も成長する形を目指します。

そして、これが私たちのチームです。ビジネスとハードウェア・ソフトウェアのエンジニア、そして若い人たちの良い組み合わせで、これが私たちのものづくりです。

司会:ありがとうございました、時間切れです、ここで(切らせていただきます)。すみません。それでは、審査員のみなさま、ご質問をお願いします。

ハードウェアを提供し、ソフトウェアでマネタイズする戦略

ポール 与那嶺氏(以下、ポール):まず、私から。基本的には細胞サンプルと細胞診データベースとの照合にAIを使用することになると思いますが、2,000件のデータベースで十分でしょうか。AIを使ってがんの診断をするには、もっと強固なデータベースが必要だと思われますが、もう少しコメントをいただけますか。

新田:1つのサンプルには数百万個の細胞が含まれています。つまり、2,000人の患者がいるということで、実際に陽性の患者もいれば、健康なドナーもいて、それぞれのサンプルには数百万個の細胞が含まれています。患者さんから採取したサンプルには、それぞれ10~20個以上のがん細胞と正常な細胞が含まれています。そこで、適切なサンプルサイズを得るために、統計の専門家に相談しました。すると、2,000個のサンプルがあれば十分だという答えが返ってきました。

実際、2,000個のサンプルは、日本の大規模ながん研究会有明病院との共同研究で得られたものです。彼らは過去10年間で膨大な量のサンプルを蓄積してきました。ですから、この2,000個のサンプルは、過去10年間に蓄積されたサンプルの中から、さまざまなケースをうまく組み合わせたものなのです。

ポール:ありがとうございました。

村上憲郎氏(以下、村上):この大会はモノづくりのハード面での大会ですよね(笑)。なので、ビッグデータやディープラーニング、人工知能の診断といったソフトウェアの話は省略します。まずハードウェアですが、高速画像処理がこれにあたりますよね。そして2つ目は何でしょう。すみません、うまく伝わりませんでした。

新田:私たちはハードウェアを提供する会社ですが、合わせてソフトウェアによるサービス事業にも参入していきます。簡単に説明します。私たちは高速イメージングの特許を取得しており、AIの判断に基づいて細胞を分離するハードウェアである、セルソーターの特許も取得しています。

AIががん細胞を見つけ、このハードウェアががん細胞を分離することで、がん細胞の詳細な解析をすることができるのです。 日本には素晴らしいハードウェア企業がありますが、ここ10年、20年はさまざまなビジネス分野でその技術を活用することができませんでした。

そこで私たちは、iPhoneやKindleのようなビジネスを展開したいと考えています。つまり、ハードウェアを提供して、ソフトウェアでお金を得る。つまり、私たちはハードウェア指向の技術でありながら、ソフトウェアでお金を稼ごうとしているのです。以上、質問の答えになっていれば幸いです。

世界最速の共焦点顕微鏡の特許を取得

村上:今おっしゃった「高速」というのは、現在市販されている画像処理装置と比較して、どのくらい「高い」のでしょうか(笑)。

新田:この特許は、実は東京での長年の研究成果に基づいて発案されたもので、2年前に論文として発表され、世界最速の共焦点顕微鏡となりました。

村上:ありがとうございます。

九頭龍雄一郎氏(以下、九頭龍):コメントしてもいいですか。村上さんが混乱しているのは、本当によくわかります。プレゼンの中で、ハードウェアのスタイルやハードウェア側に強みを持っているので(もっと)ハードウェアの強さを押し出すべきだと思います。

みなさんAIを使っているわけですが、私もあなたの強みはハード面であって、AIやビッグデータではないと想像しているのですが、(今の感じだと)物足りない気がします。

ただ、自動のセルソーターは素晴らしいものだと思います。というのもソニーにいらしたあなたがいるからです。ソニーのセルソーターはよいですからね。(質問というより)ただのコメントでした。

新田:はい、ありがとうございます。

司会:新田さん、審査員のみなさん、どうもありがとうございました。

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