
2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
提供:oVice株式会社
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――まず、ジョンさんの経歴について簡単に教えて下さい。
ジョン・セーヒョン氏(以下、ジョン):はい。僕は韓国生まれでして、学生時代はオーストラリアに留学していたんです。高校卒業後は韓国に戻って18歳で初めて起業をしました。最初の起業では貿易関連の仕事をしていましたが、事業を畳んで日本に留学しに来ました。
そして、日本の大学に留学したんですが、実際に学校に行ってみたら期待していたものと違っていて。それからは起業していくつも会社を作って、潰して、作って、売却して……。今に至る感じです。
――ありがとうございます。すごく多様な経歴ですよね。学生時代にオーストラリアへの留学を選ばれていますが、どんな背景があったんですか?
ジョン:そうですね。中学生の時だったんですが、親にオーストラリアに飛ばされたんです(笑)。
――飛ばされた?
ジョン:中学生の僕は韓国でゲーム廃人になっていまして(笑)。ゲームばっかりしていたから、ゲームができないようにネット回線が遅いオーストラリアに送られたんです(笑)。
――自分で選んだのではなくて、強制的な留学だったんですね。
ジョン:一応私は同意はしたんですが、いつも「アメリカに留学するか?」と言われていて、私は嫌だって言っていたんです。ある時たまたま、親が「オーストラリアはどう?」と言ってきて、「あ、オーストラリアはなんか響きがいいね」と思って。「行きます」と言ったら、翌月には本当に留学が始まってしまったんです(笑)。
――学生時代からすごい経験をされているんですね。そして、18歳には起業されるわけですよね。そこにはどんなきっかけがあったんですか?
ジョン:もともと起業するつもりはなくて。日本の大学に行こうと受験をがんばっていたんです。自信はあったんですけど、受験に落ちたんですよ。その衝撃で「じゃあ起業してやる!」って奮起したのがきっかけですね。
――将来起業しようと思っていたわけではなかったんですね。
ジョン:将来起業したいとは考えていなかったですね。ただ10年近く「ロボットを作りたい」と思っていて。小学生の頃からドラえもんを作りたくて、ロボット工学者になろうとしていたんですよ。
ドラえもんの発祥は日本なので、日本の大学受験をしたわけなんです。ただ思い描いたとおりにはならなかったんですね。
――それで日本で起業をされたんですね。お話を伺っていて、多様なバックグラウンドがあると感じましたが、なにかこだわりはあるのでしょうか?
ジョン:特にないですね。ただ与えられた環境でやっているだけかもしれません。例えば、受験に失敗して起業する時に、「じゃあ何する?」と考えた時に、自分は言語ができるよねと。当時は、日本語、韓国語、英語ができたので。
その言語を活かすには何があるんだろう? と思った時に貿易だったんです。貿易は言語によって情報格差があるので、儲かりそうだなと思って起業したわけです。振り返ってみると、自分の原体験に基づくものが多いですね。原体験と自分の環境に応じてやっているという。
――多様な国で育ちながら10代で起業されている。それはすごいことですよね。
――では、ここからはoViceについてお伺いさせてください。
実際にバーチャルオフィスを作ろうと決心した時は、アフリカにいらっしゃったとお伺いしていました。これにはどういった背景があったのでしょうか?
ジョン:そうですね。まさに仕事でアフリカに出張していた時にバーチャルオフィスを作り始めました。当時は、コロナが中国限定で流行っていた時でした。ただその時は、10年に1回くらいインフルエンザが流行るくらいだと考えていたんです。
冗談っぽく「帰ってこれないかもしれないよ」ってみんなに言っていたんですけど。本当に帰って来れなくなりました。ヨーロッパを中心に流行りだしてロックダウンになってしまって、「マジか……」と思いました。
――アフリカから帰国ができなくなり呆然とされている中で、どうしてバーチャルオフィスを作ろうという発想に至ったのでしょうか?
ジョン:まず、ロックダウンになったので、急にテレワークをしなければならなくなりました。日本の場合は、準備期間があってテレワークに移行していったと思うんですが、私の場合は、急に「明日からロックダウンです」と。
その時にZOOMやSlackやDiscordなど、いろいろ使ってみたんですが、どれもしっくりこなかったんです。オフィスの中で声が聞こえてきたり、誰かを感じるような環境の中でコミュニケーションする。そういう体験ができなかったので、「じゃあ作ろう!」というのがきっかけです。
――当時は、アフリカと日本で離れ離れに仕事をされる中で、雑談であったり、リアルで働いている雰囲気が感じられなかったわけですね。
ジョン:そうですね。やはりフラストレーションは溜まりましたね。チュニジアに立派なオフィスを設けていたんですが、それも使えない。街もシャットダウンしていたので、一歩も出られませんでしたから。
――その当時、コミュニケーションに関することで印象に残っていることはありましたか?
ジョン:まず、電話するほどでもないが、チャットでメッセージを送るには難しい場合の対応ですね。ミーティングを設定するにも、そこまででもないし……というケースが非常に多くありました。私の仕事のスタイルは、思いつきでやることが多くて。なので、テレワークではコミュニケーションがうまくいかないという状況でした。
――そういった背景があって、バーチャルオフィスを作り始めたんですね。
ジョン:そうですね。ただ、oViceというサービスを作ったのは、決してサービス化しようと思っていたわけではなくて、あくまでプロトタイプとして作ったんです。自社というか、主に私が使うためですね。
――そうだったんですね。
ジョン:実際に3月くらいにプロトタイプができあがって、社内で使い始めたんです。そうすると、これまで抱えていたコミュニケーションの課題が解決していって。メンバーからも「いいね!」と言われていたので、サービス化しようと決めました。
――プロトタイプからサービスを磨き上げる上で、苦労があったのではないでしょうか?
ジョン:サービスを作ることには慣れているので、そこまで問題はありませんでした。ただ、サービスリリースのタイミングに関しては、非常に悩むことがありました。
その当時は、テレワークが定着し始めているものの、世間的にすぐに終わると思っていた時期でした。「コロナは流行っているけど冬になるとなくなるだろう」と。
なので、バーチャルオフィス自体が必要なくなるのではないか? という意見が多かったんです。そこに対する迷走はありました。
――バーチャルオフィスの位置づけをどうすべきか……ということですよね。
ジョン:さまざまな機能を付けるにしても、リソースは限られているので。ただ、いろいろ考えている中で、下半期もテレワークが推進される空気感に変化していきまして。そこからオフィスとしての利用の需要が上がっていき、ようやく方向性が決まったという感じがしますね。
――刻々と変わる状況に応じて、スピーディーに意思決定を変えていきながら見出した姿なんですね。
ジョン:そうですね。そして下半期に入ると、レガシーな会社がoViceを導入するケースが多くなっていきました。大手企業ということもあって、出社率を減らさなければならないという課題を持っていて。
それによって、コミュニケーションの不足が浮き彫りになったことで、昨年の8月はoViceへの問い合わせが増えました。さらに普及が進むにつれて、学校や中堅企業を含め、一気に問い合わせが増え出しました。
やはり、テレワークが長期化することが見えてきた段階から、さまざまなコミュニティーから問い合わせが来る状況になっていきました。
――そういった流れがあったわけですね。当時は、どのような機能に対してこだわりを持って開発されていたのでしょうか?
ジョン:oViceの根幹にあるのは、アイコンの距離に応じて音量が変化していくとか、自分のアバターを動かせるとか、距離の近い人同士でさまざまなインタラクションができる。そういった「リアルなコミュニケーション経験に似せる」ことです。そしてこれは、今後も変わらないところだと思います。
――リアルなコミュニケーション経験に似せるために、どのような試行錯誤があったのでしょうか?
ジョン:音声が聞こえる範囲のチューニングは非常に難しかったですね。例えば、声の届く範囲をアバターを中心に円を描くカタチにするのか。前に広く聞こえるようにするのか。
そもそも円状だと、リアルのような方向感がないよね、とかですね。なので、音声の向きという概念を入れたりしました。やはりそこがサービスの根幹でもあったので、よりリアルなコミュニケーションを感じていただくために、こだわった機能だと思います。
――では今後のバーチャルオフィスのビジョンについてお伺いさせてください。
ジョン:やはりポストコロナになってくると、テレワークが定着しなかった企業は恐らく本社に(出社する以前の働き方に)戻されると思っています。ただ、テレワークには良い部分があるので、テレワークを混ぜて働くことは重要だと思っています。
しかし、オフラインの人とオンラインの人が共存して働くような場合は、コミュニケーション格差が発生してくると思っています。オフラインの人は、わざわざツールを立ち上げてしゃべらないはずですから。そうすると、オフラインの人が情報をたくさん持つことになると思っています。
――なるほど。オンラインとオフラインの人が共存すると、情報に格差が生まれるんですね。
ジョン:もしそうなると、さまざまな弊害が発生すると思っています。じゃあどうすればこの問題を解決できるか。そう考えると、例えばオフライン側にデバイスを置きますと。このデバイスを軸にオンラインとリンクさせて情報を共有できるようにする、とかですね。
そういったシームレスなコミュニケーションができれば、オフラインとオンラインが共存する場合でも、コミュニケーション格差はなくなると思っていて。その技術開発を今やっているところですね。
――oViceとしては、オフラインとオンラインの情報格差が生まれないように、進化を続けるというビジョンがあるんですね。
ジョン:そうですね。もう少し直近のことで言えば、oViceの拡張性を広げるためにAPIをいっぱい作っているんです。oVice上で追加機能をくっつけたりですね。
例えばoViceで会議をしていれば、サードパーティのプラグインで議事録が残るとかですね。他にも、決済ツールとつなげれば物販もスムーズに行えるようになるわけですね。
――そういった拡張性を持ったプラットフォームを目指していくということですね。
ジョン:ポストコロナ時代の働き方が、よりシームレスになるように、コミュニケーションのサポートを続けていきたいと思っています。
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