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Cybozu Days_日清食品(全2記事)

2021.01.27

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なぜ日清食品は“現場が求めるシステム”が作れるのか? 情シスと業務部門の理想の関係

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が開発するツールの活用事例や、チームビルディングのノウハウなどを紹介する総合イベント「Cybozu Days 2020」が、東京、大阪の2都市で開催されました。2020年のテーマは「EGO&PEACE」。我慢しないとチームワークの両立をキーワードに、さまざまな登壇者を交えながら、新しい働き方を模索していきます。 本記事は、11月13日に東京会場で行われた「現場部門をワクワクさせろ! ハングリーにデジタル化を追求する日清食品ホールディングスのIT部門が目指す姿」の模様をお届けします。2記事目では、日清食品独自のkintone活用方法を中心にお話いただきます。

日清食品がスムーズにIT化ができた理由

成田敏博氏(以下、成田):ここからは、「脱VPNの取り組み加速」(注:VPN=バーチャルプライベートネットワークの略)についてお話していきますね。

とはいえ、日清グループではクラウドシステムが多用されていて、VPNを使う機会は多くはなかったのですが、コロナ禍を受けて、Zscaler(ゼットスケーラー)社のPrivate Accessといったソリューションを導入して、VPNから抜け出していくところを進めています。

あとは、社外との文章の電子化や、kintoneによる社内文書以外の請求書や契約書の電子化も進めています。インフォマートさんですとか、DocuSign(ドキュサイン)といったソリューションの導入も併せて進めております。

栗山圭太氏(以下、栗山):非常に興味深かったのが、これらを進めることができたのは、「実はレガシープロジェクトの刷新が終わってたから」だということです。

成田:それは、本当にそうだと思います。

栗山:やっぱり急なジャンプアップは難しいんですよね。やっぱり基礎をしっかり固めることが重要なのかなと思いました。ちなみに、このスライドが、実際に進められたワークフロー部分になりますか?

成田:そうですね。対社内・対社外の電子化を進めている部分になります。社内の決裁書や申請書、監査証跡文書や業務連絡書、支払伝票など、捺印が必要だった書類に対して、kintoneでの電子化を進めています。

栗山:この業務連絡書って紙でやってたんですか? 

成田:はい、紙で行われていました。紙にハンコを押して、それぞれ違う部門に回覧するフローでした。それを今、まさに電子化をしているところです。

成田:社外用の書類上については、請求書や領収書に契約書。あとはFAX受注や出荷案内等については、紙での作業が残っています。この辺りに関しても、社外のステークホルダーの方々にもご協力をいただきながら、徐々に電子化を進めているところになります。

どうすれば大企業は新システムを上手に導入できるのか

栗山:実は今回、一番聞きたかったところはここなんです。4月の導入時に、私もキックオフに参加をさせていただきまして。

案件にはほとんど関わっていなかったんですが、このプロジェクトに関するレポートを読んでいて、この進め方は非常におもしろいんじゃないかということで、キックオフに参加させていただいて。その後もお付き合いをさせてもらっています。

それで、私が何に興味を持ったのかと言うと、「これだけ大きな組織で、たくさんの意見が想定される中でIT部門がどう対応していくか」についてでした。

やはりこれだけ大きな企業が新しいシステムを導入する時って、基本的にはIT部門が担当する場合が多いと思うんです。

そして、各部門から要望がたくさん上がってくるけれど、IT部門だけではすべてに答えることができない。なので、外部の専門家に委託するわけです。このスライドは、矢印の太さが要望の数、相談の数、そして業務部門が実現できる数を示しています。

栗山:どういうことかと言うと、たくさんの要望がIT部門に来るんですが、実際に業務部門に返すことができるのは、ほんの少しだけということです。まさにIT部門自体がボトルネックになってしまっていると。

現場の方々は、それだけたくさんの相談がIT部門に来ていることがわからないので、「あいつらなんもやってくんねー!」とかって言っちゃうわけです。

じゃあどうすればいいのかと言うと、IT部門が現場部門からの相談にすぐに乗ってあげて、実際に現場がシステムを作る。これができれば、現場からたくさん来る要望を、すぐにシステム化できるんじゃないかと思うんです。

ただこれは、言うは易し行うは難しの典型だと思います。本日ご来場されているみなさんは、IT部門で働かれている方が多いと思うんですが、IT部門が相談役になって現場部門が実際にそれを作る。これって本当に実現可能なのかってすごく疑問に思われると思います。

私もこれが理想的ではあると思うんですが、大企業でこんなプロジェクトをやってるところがあるのかなと、ずっと探していたんです。そこにちょうど、日清食品さんが現れたんです。

各部署が開発を実施できる環境の秘密

栗山:成田さん、日清食品さんの内製化についての取り組みについて、解説いただいてもよろしいですか? 

成田:はい。我々が考える内製化はこのスライドにあるように、「IT部門だけではなくエンドユーザーである業務部門自らが課題を見つけて、かつそれに対して解決策を自分たちで考えて実際に解決する」ことを目指したいと思っています。

栗山:これ、現場部門からの反応ってどんな感じなんですか? 

成田:最初はあまり想像ができていない感じでした。ただ実際にkintoneを使って、今までの業務改善をやっていくと、自然とこういうような流れになりまして。

栗山:「なんで俺たちがそんなことしないといけないんだ!」みたいな反発とかはなかったんですか? 

成田:反発はなかったですね。強制するのではなく、次第にそうなるように持っていきました。最初から「やってください」みたいなコミュニケーションをしていないので、特に反発はなかったですね。

栗山:スムーズにこのプロジェクトを進めることができたんですね。

成田:そうですね。これを受けて、デジタル化に取り組む文化を醸成していくことこそが、我々の考えている理想の内製化です。この文化こそが非常に重要なんじゃないかと考えていて、CIOの喜多羅とも話をしているところです。

栗山:実際に内製化を進めていく時には、どんなコミュニケーションがあったんですか?

成田:IT部門のメンバーが、業務部門の課題を持っているメンバーと話し合って進めていくかたちでした。

栗山:全社のプロジェクトがそのようになっているんですか? 

成田:全社的に活動はしていますが、各IT担当者と業務部門つながりが、全社的にいろんなところにあるような感じですね。そういった噂を聞きつけて、自分たちも課題があって、相談に乗ってくれないか? みたいに波及していく事案が多いような感じです。

栗山:これはもしかしたら、トップダウンで生産性200パーセントのスローガンが下りてきているから、各部門は何かしないと……みたいな側面もあったんですかね。

成田:そこが響いているのかもしれないですね。やはり、自分たちが今までとは違う働き方をすべきという問題意識があるので、そういった課題がどんどん挙がってくるところはあるかなと思います。

栗山:やっぱり、トップの方針で生産性を200パーセント上げるぞ! と強く思っていることで、すでに組織の中にスローガンが浸透していた。そこまで浸透してると、IT部門は各部門を助けていく流れになりますもんね。

成田:そうですね。協力してくれる雰囲気が醸成されていました。

なぜ日清の現場スタッフはアプリ開発に前向きだったのか

栗山:ここで、今回プロジェクトを進められた体制図(相関図)を用意していただきました。このスライドのご紹介をいただいてもよろしいでしょうか。

成田:まず真ん中に情報システム部門がありまして、その右側の業務部門があります。この2つの部門の関係性が非常に重要です。最初からこういう関係性ではなくて、徐々に図のような関係性に移っていったんですね。

情報システム部門が、プロジェクトの取りまとめやガバナンスをコントロールして、業務部門の課題の洗い出して、kintoneアプリの作成アドバイスをします。

業務部門は、実際にkintoneのアプリを作成し、調整や修正を行っていく。そして、それに対して情報システム部がさらにアドバイスするようなかたちです。

今、こういう関係性になれている業務部門もありますし、まだ今後こういうようなかたちに移っていくところもあるんですけれども。

重要なのは、最初からこのようなかたちを作ろうとしないことです。まず業務部門のほうから「業務を改善したいんだけれども、方法はあるか」という相談が来る。

それが、今まで紙でやっていた業務を変えたいということであれば、「kintoneに置き換えたら、電子化に加えて自動化や電子共有やリマインドが可能になりますよ」と提案する。すると、「じゃあそれをやってみましょうか」という話になっていきます。

そこからは、要件定義を繰り返していく流れになっていきます。進める上で気をつけているのは、「できるだけ最初に全容を見せてあげること」です。

最初の相談はメールなりチャットで来ますので、最初の打ち合わせの場面で、もう動くシステムを見せてしまう。最初からkintoneでアプリを作って「こんな感じだったらどうですか」みたいなものをまず見せてしまうんです。

それをやると、業務部門の方はものすごく驚かれます。「これから相談しようと思ったのに、もう動くのができてるじゃん!」みたいな状態になるので、実際に画面を見ながら「ああでもない」「こうでもない」と意見を聞いていると、要件を調整したいと話が進んでいくんですね。

「ここってこうなりませんか」みたいなものを、「あ、できますよ」とその場で変えてしまう。そうするとさらに驚かれますね。「なんだ、このシステムは!」みたいな反応になって。

もちろんその場でできないこともあるので、「要件はわかりました。対応して明日ご連絡しますね」と連絡して、翌日メールなりチャットで送ってあげる。

そこからはもう彼ら自身に触ってもらって、修正や調整をしてもらいます。そんなプロセスを数回繰り返していくと、現場でもkintoneが一定使えるようになっていきます。

彼らとしても、今まで紙でやっていたことが、1~2週間でデジタル化にできると想像していないので、すごく喜んでいただける側面がありますね。

こういうことをやっていくと、次第に業務部門側の反応が変わってくるんです。彼らのほうから「実は他にも課題があって、なんとかならないか?」という提案が増えていくんですね。

そうしたら軌道に乗ったようなもので。そこで、「これはこうできますよ。ここをこうしたらどうですか」みたいな相談をして、その場で変えてしまうことで、だんだん現場の彼らが触りたくなっていくんです。

「自分たちでもできますか?」「自分たちでもやらせてもらえませんか?」というところまでいけば、情シス部門でサポートをして、業務を現場に任せることができる。そして業務部門の中に、システム開発ができるメンバーが少しずつ増えていくんです。

栗山:いや〜……これが理想的だと思うんです。このようなかたちで情報システム部がサポートしてあげて、現場部門が自分たちで作りたくなる仕掛けにしてしまうことが、本当に素晴らしいアイディアだなと思いました。

まったく新しい外部開発会社との携わり方

栗山:今回、SIer(注:システムインテグレーターの略)との関係もおもしろいと思っています。ここのについてもご解説いただけますか?

成田:もちろんです。先ほど申し上げたような情報システム部門と業務部門の関係性を構築できるのであれば、すごく使い勝手がいい武器が必要だと思うんです。それがあれば、業務部門に開発を任せていけると思うんです。

その武器が、kintoneであり、プラグインで入れさせていただいているgusuku Customine(注:プログラミングスキル要らず、ユーザーインターフェースをkintoneでカスタマイズができるアールスリーインスティテュート社のサービス)です。実際使ってみると本当にいろんなことが実現でき、kintoneの可能性を大きく広げることができています。

私を含めて情報システム部門のコーディングができない人間でもノーコードでやれますし、業務部門の人間でも、ある程度触れるような仕様になっていて。

先ほど申し上げたように、私たちはkintoneを導入してまだ半年の会社なので、kintoneを何年も使っている会社さんにはあまり有益な情報をお伝えすることができないんですが、もしCustomineを触ったことがない方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度触ってみていただきたいです。

そしてSIerに関しては、弊社はアールスリーインスティテュートさんに半年間サポートをいただいています。ただSIerと言っても、システム開発は一切していただいていません。弊社の環境にアカウントも持っていただいていません。

じゃあ何をしているのかと言うと、相談に乗っていただいているんですね。「kintoneでこういうことをやりたいんだけれども具体的にどうしたらいいのか」とか、「Customineでこういうことをやりたいんだけど具体的にどうしたらいいのか」という相談を、定期的にWeb会議をして、画面共有をしながらアドバイスをいただいています。

ですので、実際に手を動かしていただいているのではなく、日清食品グループが手を動かす上での知見を提供していただいているわけですね。これによって生産性が非常に上がりました。ただ、SIerと情報システム部門の関係性において、こういった関係性は今まであまりなかったのかなという気はするんですけれども。

栗山:なかったですね、そんな関係は。

成田:生産性の側面から見ると、非常にいい関係性なんじゃないかなと思っています。

栗山:やっぱりシステムの内製化については、現場部門の小さなアプリ制作のところが重要になると思うんですが、そうなるとSIerとの付き合い方も変わりますよね。

ちなみに、今回ここで言えなくていいんですが、予算ってだいぶ安く済みましたよね? 

成田:そうなんです。非常にリーズナブルにやっていただいて。最初に私がkintoneを入れてた時に実際の訪問やドキュメントによる説明とかはいらないと思っていました。

なので、アールスリーさんとはWeb会議でしかお会いしたことがなかったんです。先ほど、初めて実際にお会いしたんですが、他にもWeb会議でしかサポートをしてもらっていないので、包括的なドキュメントなどの成果物は一切作っていただいていないです。

やっていただいているのは、Web会議を通じて、我々が手組みをするところに関してのアドバイスのみを手取り足取り教えていただくかたちで。それによって、情報システム部門がノウハウを得て、生産性を上げるところでしかサポートしていただいていないんです。

落とし穴を回避しながら導入を進めるために

栗山:これすごく新しい進め方だなと思います。加えて、kintoneを導入された経験のある、システム部門の方に副業で来ていただいたこともあったんですよね。

成田:そうですね。kintoneは非常に使い勝手がよく、情報システム部門でなくても触れるツールである反面、活用されている会社さんからは、使いやすいが故の苦労があると聞いていて。

我々がこれからkintoneを活用していく上で、できるだけ落とし穴にはまらないように、うまいことやっていきたいなと思いまして。kintoneを活用されている企業さんが、実際にどうやってうまくいったり、失敗しちゃった理由みたいなところを理解したくてこの取り組みを実施しました。

私自身は、日本で一番kintoneを活用している企業の1つが星野リゾートさんだと思っているんです。そこで実際に、星野リゾートさんがkintone導入を行った際に、主力として推し進めていらした前田文子さんという方にお願いをして、副業で入っていただきました。

前田さんが初めてkintoneを触った時はどんな状況だったのか。そこからkintoneをどう活用して、どうやってスキルを上げていったのか。そして、星野リゾートさんがkintoneを活用する過程で経験した出来事をたくさん教えていただきました。それを活かしながら、我々のガバナンスルールの組み立てに役立てました。

栗山:あぁ、すごい。SIerさんとの付き合い方も新しければ、経験のある副業の方に来ていただくフローも新しいですね。

ちなみに、何をしたかという中身自体は企業ごとに違うと思うんですが、プロジェクトの進め方自体は、別の企業でもできそうな気がしますか?

成田:武器さえあればできると思いますね。kintoneとCustomineがあれば。

これらがあれば、情報システム部門がサポートしつつ、業務部門がどんどん手を動かして進められると思うので。再現性のある進め方なのかなと思いますね。

栗山:まだまだお話をたくさん聞きたいところなんですが、あっという間に終了時刻になってしまいましたので、こちらで終了したいと思います。

この後、「サイボウズ営業本部チャンネル」にて、お話の続きを聞きたいと思います。もう少しお話を聞きたい方は、そちらのYouTubeのチャンネルにアクセスをいただければと思います。では、成田さんありがとうございました。みなさま、改めて大きな拍手をお送りください。

成田:ありがとうございます。

(会場拍手)

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