2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
kintone hive tokyo vol.12/ kintone AWARD 北海道・東北地区代表:信幸プロテック株式会社 村松直子 氏(全1記事)
提供:サイボウズ株式会社
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相馬理人氏(以下、相馬):それでは、続いての事例発表に参りましょう。信幸プロテックの村松さんです。村松さん、お願いいたします。
村松直子氏(以下、村松):みなさん初めまして。それでは発表を始めさせていただきます。当社は岩手県の県庁所在地、盛岡市の南側にある矢巾町という人口2万人の町の外れにあります。このような田園風景の真ん中にある、小さな会社です。
会社の紹介をさせていただきます。私の所属している信幸プロテックは、創業46年で社員数は39名、平均年齢は36歳の比較的若い会社です。
事業はエアコンの取り付け工事、メンテナンス・修理を主に行っています。メンテナンスで育ってきた会社ですが、今は取り付け工事が半分ほどの売上比率になっています。
従業員のうちわけは、現場でのメンテナンスを行うサービスマンや技術スタッフが8割を占めています。近年では女性スタッフを中心に、水性塗料の販売やワークショップも手がけています。
少し遅くなりましたが、ここで私の自己紹介をさせていただきます。村松直子と申します。双子姉妹の姉に生まれて、小さい頃から父が創業した作業場の周りで育ちました。25年前、上京する際に「旦那さんを連れて戻る」と宣言しまして、宣言どおり旦那さんをゲットして戻りました。千葉県の人口を1人減らしましたが、それが現在の社長であり、主人です。
主人は、4年前から専務取締役を務めておりまして、土日は息子の野球応援に明け暮れる毎日を過ごしています。先ほどの言葉の通り、すべてはこの作業場から始まりました。父が仕事をする傍らで私たちは遊び、現在の社屋が建った後も、会社の脇で遊び、時に地元の方の集会場に使っていただきながら、父は休みなく働き、会社を拡大して今に至ります。
そして現在は、社員数も増えて年代もさまざまにはなりましたが、相変わらず田舎の真ん中におります。夏と冬には、会長が豚1頭分のお肉を買ってくれて、みんなで分け合います。お中元やお歳暮も、たくさんいただくようになりましたが、それもみんなで分け合って、1年を通して近所の農家さんがよく野菜を持ってきてくれるような会社です。
一方で先代の頃から「経営指針勉強会」と称して、経営課題を共有し、全社員が人生計画や10年ビジョン、自己啓発計画を発表する場がありまして。資格取得に力を入れるなど、成長するための環境やお互いに関心を持ちあう社風があります。
2017年には働き方改革にも取り組んでおり、ルールや時短ありきではなく、スタッフが主体的に取り組む試みが今も続いております。
さて今回のテーマですが、「スタッフの要望を聞いて細やかにシステムを作りこんだら会社がどんどん変わった」という話ではありません。今日の話を大まかにお伝えすると、いつもの毎日から働き方改革に取り組み、kintoneと出会ったことで最高益を達成しました。しかし、良いことばかりではなくて、へこむことも多く起こる中で、ようやく会社にマッチするkintoneの活用法に気づいた。そんなお話です。
まず、kintoneとの出会いは、既存のシステムや自社サーバーが限界を迎えていた頃に、外出先のサービスマンともスムーズに情報をやり取りしたいニーズが出てきまして、他のシステムを考えたんですが、先行していた業者さんからkintoneを教えていただいて、2018年9月から本格的に稼働させていました。
2017年からは働き方改革に着手し、スキルマップの作成、手順書の作成、現場動向など、数々の取り組みを行いました。スキルマップの制作と手順書の作成という項目の中で、1週間の自分の仕事の棚卸しや、時間測定に時間をかけられる機会が生まれました。そして、その中で減らしたいと思いながら、時間をかけすぎている業務がいくつかあることに気が付きました。
このオレンジの部分をIT化すると大きな効果が得られるのではないか。そう思ってkintoneを導入しました。
作成したシステムを紹介します。特に目新しいことはありませんが、お客さまの情報を蓄積する物件情報になります。いただいた依頼を素早く記録する受付登録アプリ。そして今までの進捗や履歴を蓄積していく進捗履歴アプリ。そして、設備や機器に特化した設備機器アプリ。赤青黄色緑の4つのアプリ。ぱっと見てもわかりやすく作ることで、その4つを連携させることにしました。
まず、お客さまからご依頼があった際に、お客さまの基本情報を確認し、必要に応じて履歴の一覧、設備機器の一覧を確認します。グループごとに閉じられているのは、スマートフォンから見た時にサービスマンができる限りアクセスしやすくするためです。
そして受付登録のアプリアクションを押すことで受付登録のアプリに遷移し、依頼内容を書き込み登録すると、サービスマンのスマートフォンに通知が飛びます。ここまで約30秒です。
依頼を受けたサービスマンは、「何日の何時に行けます」と返答していきます。改善前は顧客ソフトと地図、Googleマップ、それとメールと電話などを行き来していたため、処理時間がざっと5分の1程度になりました。従来が2分30秒だったのに対し、kintoneを導入することで30秒になりまして、年間受付件数5,325件で検索すると年間で177時間、80パーセントにあたる削減効果になりました。
もう一つのテーマだった見積もり請求書登録は、ドラッグするだけの設計にしまして93パーセントの削減となりました。受付から入金までの作業時間で見ると、一連の顧客関連業務で年間で27日の削減効果を出すことができました。
しかし、ここで第2のボトルネックが発生します。依頼から訪問までがスムーズになり、訪問件数が増えたところ、サービスマンのスキルレベルによっては見積もり作成に時間がかかってしまい、お客さまをお待たせしてしまうケースが見られるようになりました。
これは、サービスマン各自のノウハウが共有されていないこと、FAXなどで問い合わせを流し、現場から戻ってきてから確認して見積もりを作るといった流れに問題がありました。
そこで、先ほど作成したシステムの仕入・外注バージョンの流れも作成しました。サービスマンは、仕入先・外注先の詳細情報を確認し、他のサービスマンの問い合わせ履歴を確認したうえで、自分の問い合わせをアプリで作成し送信します。
戻ってきたFAXも通知アプリの中で、外出先から確認することができます。こういった取り組みの中で、kintoneが浸透していきました。働き方改革に取り組む前と、kintone浸透後の数値比較をしてみたところ、時間外労働は22パーセント削減された上に、売上は1.4倍に。そして利益はなんと8倍になりました。
利益が目に見えて増えたのは、今までよりも効率よく稼ぐ仕組みができたからだと考えます。ちなみに、時間外労働時間や売上・損益もkintoneで集計することができています。そして昨年は、創業以来の最高益を達成できました。
ここで少し話が変わるのですが、今から3年前、脳腫瘍で10年勤務のベテランサービスマンが長期入院する出来事がありました。現社長からの絶大な信頼があり、後輩にも慕われていた彼の戦線離脱は大変なショックでした。体調が戻った彼は、すぐさま仕事復帰を希望しましたが、私たちにはそれに応える手段も環境もありませんでした。
ただ、そこでもkintoneが私たちを助けてくれました。リモート環境を構築し、彼に機器登録を入力する作業をお願いすることができたのです。サービスの現場に長年いた彼ですが、1日6時間の入力作業をこなしてくれました。残念なことに昨年秋に病気が再発し、パソコン入力がままならなくなってからも、彼は歩くことができなくなるまで勤務し続けてくれました。
正直、私はこのことがあるまで、従業員の働きたいという気持ちがこんなに強いものだと知りませんでした。そして、働きたいという気持ちに応えることができたのは、紛れもなくkintoneがあったからでした。そういった環境もkintoneがあるからこそ、整えることができたのです。
そんなこともあり、ようやく会社にkintoneが定着したと思った時に、当社のエースでベテランのサービスマンから、こんなことを言われました。
「前のシステムの方が全然良い。どうしたら良いのかわからないけど、使いにくいことだけはわかる」と。
私は「こんなに成果が出ているし、結果に結びついているのに否定されるのか」と、正直すごく落ち込みました。
当時のことを振り返ってみると、私はこう思っていました。「私は誰よりも会社を知っていて、会社が大好き。そして、そんな私が得意を生かせるkintoneに会って、改善をしている。そんな自分が一番の仕組みを作れるはずだ」と。
しかし、今までの経験から、「みんな最初は拒否する。もし導入してもすぐには理解してくれない。」ということで、対話を避けていたんです。
ところが実情を聞いてみると見えてくるものがありました。私が「見るだけでしょ」と思っていた履歴や設備のアプリに、情報を入力し活用しようとしてくれていたのです。ところが見るだけだと考えていた私のアプリには、効率的に入力する導線がない。調べようにもマニュアルやヘルプもない。そんな日々のイライラから出た言葉だったんです。
私は一番会社を知っていると思いながら、使う人の思いに気付き、答えることができていなかったのです。
さらに周りを見渡すと見えてくることがありました。「パソコン初心者です」と言って入社したSさんは、自分で使うアプリを使いやすく改良し、プロセス管理まで活用してくれていました。
私の右腕のMさんは、スペース活用や会社のレク企画募集など、一段違った使い方までしてくれていました。そして住宅設備部のY君は、在庫管理のアプリをMさんに依頼していました。私の知らないうちに、どんどんkintoneの活用が進んでいたのです。
私はこう思っていました。「kintoneそのものやプラグインの知識がないと作成できない」。私がみんなの意見を聞いて柔軟に作ってあげるべきと思っていましたが、いつの間にか、「こうすればいいんだ」とみんなが動き出し、「これもやってみたい」と思い始めていた。私より現場と目的に合うアプリが作られ出していたのです。
これが私が作った主要のアプリです。そして彼ら彼女らが作ってくれたアプリが、この周りのピンクの部分です。現場を知り、改善したいと思っていた彼ら彼女らのアプリは、現場に浸透し、まさに小さな花が咲くように多く存在していました。
先ほどお伝えしたように、私はこう思っていたんです。「私は会社が大好き。kintoneが大好き。そんな自分が一番の仕組みを作れるはずだ」と。
しかし、実際はそれぞれが関心を寄せ合って改善や成長をしていくという、自社らしい風土が働き方改革に取り組む中で、自社の良さとkintoneの良さが出会い、自分たちで改善しようと変化していたのです。
つまり、自社にとってのkintoneの良さは、それぞれで改善を続けられること。自分の手で働き方を変えられる実感があること。ノウハウをみんなで共有できること。いろんな視点の改善があること。まさに、働き方改革で得た学びそのものだったのです。
kintoneやその他のサービスによって、やりたいことはある程度やれるようになりました。自分たちの手で仕事を変えられる実感もある。kintone周りで出会う人やサービスも、みんな優しい。そんな安心感に支えられています。
今後は、もう一つの課題であった会計システムと、kintoneの連動やARスマートグラスを用いた、現場のベテラン社員の業務を撮りためるなどの、withコロナ時代の新しい働き方にも対応していければと考えています。
そして何より、日々の業務にフィットするものは、それぞれで作成していくことが、私たちらしいと考えています。設備を通して、私たち信幸プロテックと今後どこかでお会いすることもあるかもしれません。ご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
相馬:村松さん、ありがとうございました。お疲れさまでした。
村松:ありがとうございました。
相馬:それでは村松さんのZoom応援団もお呼びしたいと思います。
(Zoom応援団が映る)
みんなすごい手を振ってくださっていますね。ありがとうございます。それでは、お話をお伺いしようと思います。お話を聞いていて、種を蒔いていたものが、いつの間にか育って、一面お花畑になったような素敵な事例だなと思って聞かせていただきました。
村松:ありがとうございます。
相馬:お話の途中に、「使いづらい」とおっしゃってた方がいらっしゃったじゃないですか。でも、成果はすでに出ているわけですよね。少し言い方が悪いかもしれませんが、そういう意見を無視しようとか、放置しようと、楽な方に流れてしまう人も多いと思います。でも、そこに切り込まれた根本には、どんな思いがあったのでしょうか?
村松:そうですね。さっきお伝えした通り、サービスマンさんが真剣に仕事に取り組んでくれていることはわかっていたし、こちらとしても成果が出ているということは、結局どこかに行き違いがあるはずだということを感じていて。そこはぜひ解消したいなと思ったんです。でも、私が意見を聞き出したというよりは、勇気を持って私に言ってくれたことが大きいですね。
相馬:村松さんが一生懸命kintoneを通して、社内の問題点を解決されているのを見て、向こうの方も「お話ししてもいいんじゃないかな」と思ったんじゃないかと感じました。
村松:だとうれしいですね。
相馬:会社の中にチームワークがあると、新しくシステム化された時も、そこでチームワークができるという素敵な事例だったとお見受けしました。それではみなさん、村松さんにもう一度大きな拍手をお願いいたします。
村松:ありがとうございます。
相馬:ありがとうございました。
(会場拍手)
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