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kintone hive tokyo vol.12 / kintone AWARD 中部地区代表:株式会社アミックスコム 安藤 満秋 氏(全1記事)

2021.01.13

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人はルールを「変えたくないもの」という誤解 負のスパイラルから抜け出す“60点主義のkintone”

提供:サイボウズ株式会社

kintoneの活用アイデアをユーザー同士で共有するライブイベント「kintone hive 2020 」が名古屋・仙台・福岡・大阪・松山・東京の6会場で開催されました。本セッションでは、各会場で地域代表に選出されたファイナリスト6社に、その活用事例を発表いただき、2020年に最も共感を得た活用事例「kintone AWARD グランプリ」を決定します。本記事では、岐阜県でケーブルテレビの回線を提供し、地域インフラ事業を行う株式会社アミックスコムの安藤満秋氏に、どのようにkintoneを使っているのか? そしてkintoneを使うことでチームがどう変わったのか? についてお話いただきました。

田舎のごくありふれたおじさんがkintoneに出会うまで

安藤満秋氏(以下、安藤):みなさん、こんにちは。岐阜県から参りました、安藤と申します。私からは「現場を変えた、たった1つのkintoneルール」というお話をさせていただきたいと思います。みなさんのチームにとって少しでも良い影響をお持ち帰りいただけるよう、今日は一生懸命お話しさせていただきたいと思いますので、どうぞお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

さっそくですが、こちらのスライドをご覧いただけますでしょうか。ここは私のチームが毎日5分程度、ショートミーティングを行っている現場です。kintoneを導入してから私たちのチームは、この場所で業務改善について話し合いをしながら、少しずつ自分たちのお仕事のやり方を変えてくることができました。

でも私たちのチームはkintoneを導入する前は、およそ10年近く、ほとんど業務改善ができていないチームでした。今日はそんな私たちが、現場で一番大切だったルール。自分たちの手でお仕事のやり方を変えていく方法を、みなさんに共有させていただきたいと思いやって参りました。

まずは私と、私のチームのご紹介をさせてください。私は安藤満秋と申します。岐阜県の恵那市という街で、家族と愛犬の「かぶお」と暮らす、田舎のごくありふれたおじさんです。kintoneも完全にユーザーサイドの人間です。情報システムの知識もスキルもまったくないところから使い始めました。

多くの業務が紙で行われ、負のスパイラルに陥っていた現場

所属している会社は、株式会社アミックスコムと申します。2007年、私が暮らす恵那市で営業を開始した社員数18名の小さな会社なんですが、お仕事は恵那市、それから同じ岐阜県の輪之内町、この両エリアでテレビ放送やインターネット回線を一般のご世帯に提供する、街のケーブルテレビのお仕事をさせていただいておりまして。地域のおよそ半数以上のご世帯の放送や通信を毎日お預かりする、地域インフラとしての役割を担っている会社でもあります。

そんな会社で私は3年前から、営業部サポートチームという6名のチームで、リーダーとして働いております。このチームはお客さまから寄せられるあらゆるお問い合わせの一次応対と、いただいたお申し込みについて、受付から請求に至るまで、すべての営業事務の管理をしています。日中の時間のほとんどはお客さま応対で終わっていきます。ですので営業事務は、気づけば10年前からほとんど変わらない、紙によって行われる業務のままでした。

常時100件から200件程度、毎日案件が流れているのですが、紙の業務ですから、その詳細がわかるのは、紙を手元に置いている担当者だけという状況でした。当然、担当者がお休みしたり部署異動があったり、あるいはキャンペーン等でたくさんお申し込みをいただくと、どうしても人のミスが出やすい状況が続いていました。

ミスが出てしまえば当然、チームで再発防止策を考えるのですが、その再発防止策もご覧いただくとおり、紙のチェックリストをどんどん増やして複雑にしていくような対策に終始していました。チームのお仕事は、真剣に取り組めば取り組むほど複雑になり、できる人間が限られ、チェック・手戻り・修正で労働時間も増え、やがてミスが出る。まさに負のスパイラルに陥っていました。

危機的状況を変えたある出会い

3年前、チームリーダーにしていただいた私は、こういった流れを断ち切る役割を任されたと思うんですが、実はこの営業事務の実務経験がまったくありませんでした。ですので紙の業務が滞れば、そこですべてがわからなくなってしまう状況が続いていました。

いよいよ私は、自分が現場の中でチームリーダーとして働くこと自体がつらくて苦しい、と考えるようになっていました。チームも私も先が見えない真っ暗闇。それがkintoneを導入する前の私たちの状況でした。

こんな状況をなんとか変えたい! 抜け出したい! と、もがいていた時。たまたまご縁があって、幸運にもこの方々に出会うことができました。それは、共にサイボウズパートナー企業でいらっしゃいます、コラボフローの松本(洋介)社長、そしてジョイゾーの四宮(琴絵)取締役でした。

お二人は私に「安藤さんのその課題だったら必ずkintoneで解決できるはずだから、ぜひ一緒にやってみない?」と手を差し伸べて下さいました。私はその言葉を信じ、kintoneの採用に踏み切っていったんですが、そこから私たちの景色は一気に変わり始めました。

まず懸案だった営業事務については、最初に四宮さんに対面開発に入っていただき、2つのことを決めました。1つは、紙やExcelでバラバラに管理している処理を、すべてkintoneに集約していくこと。そしてゲストスペースを活用することによって、情報共有の範囲を自社だけでなく、外部の取引先の工事業者とも同時に共有するということでした。

この対面開発で、最初に取り組んだアプリが、お客さまの工事スケジュールを関係者各位で共有する、工事スケジュールの管理アプリでした。このアプリには四宮さんのお勧めもあって、ラジカルブリッジ・斎藤(栄)さんが提供している「カレンダーPlus」というプラグインを導入しました。

数年来の課題が、たった数時間の対面開発で一気に解消されていく。私はこのkintoneの持つ圧倒的なスピード感と柔軟性、なにより楽しさに魅了されました。私はここでkintoneにどんどんのめり込んでいくことになるんですが、もう1つ導入当初に幸運がありました。

kintoneを活用する上で、最も大切だと思うたった1つのルール

それは、サイボウズの松井隆幸さんとの出会いです。彼との出会いによって、私は全国各地のユーザーさんとつながりを作ることができ、自社で起きるさまざまな課題に、さまざまな知見を共有していただきながら、およそ半年後には取引先との業務フローをすべて、kintone上で運用できるまでになっていました。

そしてkintoneに情報が入り始めれば、今度はその情報の精度を確保したいということで、次に地元・名古屋のパートナー企業である、サティライズさんと一緒に、kintoneの営業情報のデータとお客さまの請求データを機械突合して入力のミスが検知できる、データの棚卸アプリというものを一緒に開発しました。

このように、私たちのチームは導入当初、kintoneに存在するサイボウズさん・パートナーさん・ユーザーさんというkintoneのチームワークに支えられながら、楽しんで業務改善を進めることができました。1年が経過したころには、年間の労働時間のおよそ310時間相当の業務改善を、自分たちの手で実行することができました。

ただ、この結果は決して幸運が続いたばかりのものではありません。これからお伝えしたい「現場でkintoneを活用する上で、最も大切だと思うたった1つのルール」を守った結果だと私は思っています。そして、そのたった1つのルールがこちらです。

「kintoneは60点で今すぐ始めましょう」です。これは担当者が自分一人の頭で考え抜いて、90点、100点まで作り込んでからアプリを使うのではなく、現場の作業がおよそ再現できる60点になったら、今すぐ使い始めましょう、という考え方です。この「60点主義のkintone」が、現場主体の業務改善にとって最適だと私が考える理由は、3つあります。

60点の段階でkintoneを使い始めるべき理由

1つ目の理由は、まず現場に導入しやすいことです。kintoneを導入することは、使わされる現場の方にとって、デメリットでしかなかったと私は思います。なぜなら自分たちが一生懸命考えたやり方を急に変えられ、しかも「入力」という手間が増えることが多いからです。でも、だからこそ導入当初は、今までの手順と同じようにkintoneにデータを入れてもらえることを大切にしました。

実際に、最初に取り組んだ工事のスケジュール管理のアプリも、今までの紙のスケジュール帳と同じように、データが入力できるだけの状態で使い始めました。もちろん拡張させるアイデアもいっぱいあったんですが、あえてそれで始めました。そうすることによって、現場には特に大きな混乱もなく使い始めてもらうことができ、最短距離でそのメリットを気づいてもらえました。これが1つ目の理由です。

そして2つ目は、現場で即時に変えていけることです。60点の状態で始めるからこそ、現場の業務に精通しているスタッフからは、すぐにいろんな意見が出始めました。私たちの場合は、冒頭のショートミーティングがその場になりました。

私はこの場で出てくるスタッフの意見を、可能な限りその場で反映させ、翌日のミーティングで検証するという、小さな小さなPDCAをkintone上でたくさん回しました。こうすることによって、当初、「担当者が勝手に始めたkintone」は、やがて「チームで一緒に作っているkintone」に意識を変えていくことができました。チームが本当に欲しいと思っている70点・80点を一緒に作っていける。これがkintoneを60点で始める、2つ目の理由です。

60点でのスタートがもたらす3つ目の効果

そして最後の3つ目は、現場が動き出すということです。「kintoneは60点で始めていいんだ。チームで話し合いながら70点、80点を探していける」と理解した一部のスタッフは、いよいよ自分の手を動かして業務改善を始めてくれました。

これは私どもの会社で「顧客管理アプリ」と呼んでいるもので、あらゆるお客さまの履歴が参照でき、そして帳票や工事発注がワンクリックで出力できる、最もアクセスの多い大切なアプリです。

このアプリは、私のチームに所属する一人の女性スタッフが作ってくれました。もちろん彼女は日常業務で毎日忙しい中で、少しずつ隙間時間を見つけては、このアプリを約5ヶ月かけてたった一人で作り上げてくれました。

このように「60点で始めるkintone」は、現場が最短距離でメリットに気づけて、かたちを変えながら、やがて自走して業務改善をしていってくれる。だからみなさんにお勧めしたい、というのが今日のお話です。なにより私自身が、このkintone業務改善を通じて、ようやくチームに自分の居場所を見つけることができました。だからこそ私はこういった場所で、みなさんに共有させていただきたいと思いました。

チームメンバーは、従来のルールを変えたくないとは思っていなかった

最後になりますが、私がこの業務改善を通じて一番気づきが得られたことをみなさんに共有させてください。それは「人は変えたくないんじゃなくて、変えられたくないんだな」という気づきです。

我々のスタッフもそうでした。決して今のルールを絶対変えたくないと思っているわけではありませんでした。自分たちが理解できて、納得できるやり方でお仕事を変えていけるのであれば、どんどん変えていきたい。本当はそんなことを考えていたんです。kintoneはそのことを私に気づかせてくれました。

もしみなさんが、もっともっとチームを巻き込んで、一致団結して、楽しんで業務改善を進めたい。そんなことをお考えでしたら、私からは「60点で始めるkintone」をお勧めさせていただきたいと思います。私からの発表は以上です。ご清聴ありがとうございました。

相馬理人氏(以下、相馬):安藤さん、ありがとうございました。見事トップバッターを務めていただきました。

安藤:ありがとうございました。

相馬:ここでみなさんにお知らせなんですが、安藤さんを直接応援したいと思ってらっしゃるたくさんの方々にZoomでお繋ぎさせていただいております。Zoom応援団のみなさーん!

(映像つながる)

安藤:ありがとうございます!がんばりました!(笑)。

相馬:さぁそれでは、安藤さんにお話をお伺いしたいと思います。エコシステムを使う上で、最初すごくつらかった時期もあったと思うんです。ただ、そこを乗り越えられて、効果を出せた事例だと思ったんですが、「60点でいい」と最初に思うことは、すごい難しいのではないかと感じました。どうしても100点が欲しくならないかなと思ったのですが、そこはいかがでしたか?

安藤:実はこの話の途中で出てきたサイボウズの松井さんをはじめ、コミュニティの方のいろんな事例をなぞっていった時に、そういう節をすごく強く感じたんです。もともとそういった知識も知見もなかったので、まずはやってみようと思ったのが実際のところです。

相馬:ありがとうございます。柔軟ですごいですね。僕だったら絶対100点のものが欲しくなっちゃいそうです(笑)。

安藤:普通はそう考えてしまいそうですけどね(笑)。

相馬:「60点」でうまく定着していくと現場が自走するようになると。

安藤:そうですね。最初は「なんか安藤やり始めたからやるか」という感じだったと思うんです。でも実際にやってみると、できることがいろいろあると使いながら気付いてもらえたことが、本当に良かったと思います。

相馬:ありがとうございます。kintoneの良いところを本当にたくさん使っていただいた良い事例だと思います。みなさま、安藤さんにもう一度大きな拍手をお願いいたします。

(会場拍手)

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