2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:京都リサーチパーク株式会社
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大久保敬氏(以下、大久保):その除菌剤の研究から生まれてきた反応が1つあるんですね。これはどうしても化学反応を出さないと説明できないので、化学反応を出すんですけれども。メタン……メタンって習いますね。高校1年生、たぶん2年生でも習うかな。正確にはわかんないですが。聞いたことあると思います。オナラですね。メタンガスが入ってます。
メタンガスと空気からメタノールを作る反応があるんですけど。今日はこれを覚えてもらったらいいのですが、この反応式ですね。これを常温常圧でできるという反応を見つけました。これが二酸化塩素が効くわけなんです。
こうやって書いてしまうと簡単なんですが、メタンガスと空気から常温常圧でメタノールを合成することは、今まで誰もできなかったんですね。研究自体はもう100年くらいみんなトライしてきたんですけど、誰もできなかったんです。それができたのがちょうど2年前。私の研究室でたまたまできたんです。
それは除菌消臭剤の二酸化塩素がたまたま来たからで。偶然私もメタンをやりたいなと思ってたので、やったらできてしまったという。見た時はびっくりしましたけど。
メタン、これは化学ですね。今日は少し化学の勉強をしてください。メタンとはCH4ですね。酸素は1個で水素は4つ。炭素っていうのは手が4つですので、5つにはならないのでこれでいっぱいなんですね。全部水素がくっついてます。
ここに酸素、赤いボールをくっつけようと思いますと、白い水素を引っぺがさないと赤いやつを入れられませんよね。左から右へ物質を変えようと思いますと。
そうすると炭素と水素のくっついているところを切らないと酸素は入れられない。メタノールに変えられないんですよ。これが難しいんですね。5本目の手があれば酸素とこの手を結んでおいて、そのあと変えることもできるんですけど。手が4つしかないのが問題なんです。
これをどうやってやるかですね。メタンガスと酸素って反応をみんな毎日見てると思うんですけど、コンロの上で火がボーボー燃えてますよね。あれは都市ガスを燃やしてますので、プロパンだったりするところもあるんですけど。天然ガスの場合はメタンです。
メタンガスと空気を反応させて二酸化炭素と水と熱が出てきますので、その熱でみなさんお湯を沸かすわけです。全部CO2になってしまいます。メタノールというのはその途中の段階です。さっきプラスチックも途中って言ったんですけど。
メタノール、アルデヒド、ちょっと難しいですけど、ギ酸。これも全部途中なんですね。メタンから作れるはずなんですけど、作ることはできてなくて。物質自体が燃えてしまうんですね。なんでかと言うと、メタンガスとメタノール、どちらが燃えやすいかというと、実はメタノールのほうが燃えやすいんですね。アルコールとか。
メタンをメタノールに変える時に一緒に熱が出てしまいますから、自分が出した熱でメタノールが燃えてしまうので、全部二酸化炭素になってしまうんですね。だから絶対止められず、誰もできなかったんです。
大久保:でもメタンガスと酸素を反応させる時に、みなさん何をするかと言うと、コンロをつけるときに絶対カチって種火つけますわね。種火がなかったら燃えないですからね。別にガスを漏らしてもガス漏れしてるだけで燃えないですよね。空気中に漏れただけでは燃えません。種火があった瞬間にドーンといくんですね。
じゃあ種火が何をしているかと言うと、あれは熱なんですね。火と一緒です。熱で、なにをしてるかというとメタンの炭素の水素の結合をパッと切ってるんです。切れた瞬間に酸素が付くもんですから、燃えるんですね。
問題はそこに熱があることなんです。熱をかけずに炭素を水素をパッと切ることができればどうなるでしょう。というのが最初の問いでした。
それでやってみるんですね。実は別に種火の代わりになるような反応って、けっこう酵素ではやってるんですね。微生物の中にメタン酸化酵素というものがあります。これはメタンを餌にしている微生物で、メタンガスと酸素と酸、電子に対してエネルギーを与えるとメタノールを作っているような菌があるんです。人間が100年できなかったことをいとも簡単にやってるんですね。
その中で、実際メタンを変えるところには鉄分が関与してまして。そのせいでうまくいくことがわかりました。なので鉄を使えばうまくいくんじゃないかというアプローチで。日本もけっこうここに投資してですね。50億くらい投資して「やれー!」と言って10年くらい前にやったんですけど、誰1人成功しなかった。
実際メタノールというのはアルコールランプの中にも入れますし、工業的にも使われます。どうやって作るかと言いますと、水蒸気改質という方法で作ります。1日あたり600トン作るようなプラントがあるんですけど。
難しいことは言いませんが、この資料の右側ですね。750度の熱が必要です。あと23気圧。すごく圧力が要ります。ニッケルという貴重な貴金属の触媒を使います。ですのでけっこうエネルギーを使うんですね。SDGsの目標を達成する上でこんなことやってたらけしからんということで。
これをなんとか熱も圧力も貴重な金属も使わずにできれば、世の中が変わるだろうということで。この方法もけっこうCO2を排出していて、メタンガスは炭素1個なんですけど、その4分の1は二酸化炭素として実はどんどん捨てているんですね。
だからメタノールを作れば作るほど炭酸ガスを出しますので、今後どんどん需要が増したらえらいことになるわけなんですよ。これを使わないという方法もあるんですけど、そうもいかないので。作り方を変えるしかないんですね。
大久保:これを日本で作ろうと思いますと、やはり炭酸ガスが出ますので。日本はこれを減らすために何をするかというと、日本にあったプラントを全部海外に移したんですね。SDGsとかパリ協定に参加していない国に工場を持って。
でもそれ、地球全体で考えるとまったく意味不明なんですね。だからこれはもう変えないとあかんのです。それが今の現状です。
それで、この二酸化塩素というのが使えるんですけれども。種火の代わりに何を使うかと言うと光を使うんです。光もそんな特殊な光じゃなくて、蛍光灯の光でもいいし、太陽光でもいいですし。やっぱり強い光がほしいのでLEDの光とかを使うんですけど、それで反応が起こるんですね。
光を当てると何ができるかというと活性酸素ですね。活性酸素という言葉は聞いたことあると思うんですけど、老化の原因とかがんの原因になるとか言われているものです。それができるわけなんです。それが種火の代わりになるわけなんです。
そうすると何が起こるかというと、メタンガスがメタノールとギ酸っていう化合物に変わります。メタノールが14パーセント、ギ酸が85パーセントができます。
メタンは全部メタノールとギ酸に変わるんですね。メタノールの用途は化学の溶剤に使ったりとか、プラスチックの材料になったりする。ギ酸もまたのちほど説明しますけど、いろいろな化学用途があるわけなんです。
これを2018年の論文で発表したのが一番最初なんです。これをみんなに知ってもらわないといけないわけですね。できたらどうするかと言うと、みんなに知ってもらわないと意味がないわけです。どうやって知らせるかと言うと、絶対論文を書かないといけないんですね。
私は化学がずっと大好きで化学ばっかり勉強してたんですけども、英語は苦手なほうですわ。国語なんてもっと苦手なんですけれど。好きな科目は化学だとしても、化学だけ勉強してたら成果を世の中に示すための英語力がまったくなくなってしまう。
例えば成果を日本人に知らせようと思ったら国語力も絶対にいるんですね。ですのでオールマイティに自分をスキルアップさせるというのは1つ重要かなと思います。
大学入ったら好きな授業ばっかり取れますので、化学、化学、化学って1日中化学の勉強もできるわけなんですね。でもそれだけじゃなくて英語の授業も嫌いやけども取らなあかんと。絶対そういうのは重要になりますので、ちょっとそれは今日はメッセージとして言うときます。
大久保:あとは、新しい発見をした後は、すぐに新聞記者が取材に来まして、翌日の朝にNHKのニュースで報道されたりです。新聞も「常温でメタノールを合成できました」と報道してくれて。なのでその時は1日中電話が鳴ったりとか、そんなこともありました。
あとは世界的にも『Science』という論文を聞いたことあると思うんですけど。『Nature』と『Science』って2つトップの論文ですね。その『Science』のほうでもすぐに紹介されまして。日本の研究者がメタンからメタノールを常温常圧でやりやがったみたいな感じで紹介されたりですね。
すぐ中国語にも勝手に翻訳されて、何書いてるかわからないんですけれども。たぶんそれらしいことが書いてあるような感じですね。
(動画再生)
今まで話してきたのは、メタノールができるという話ですが、じゃあメタノールはどんな用途かなというのを調べていくと、今は天然ガスからメタノールが作られています。そこからお酢にしたり、ホルマリンやポリアセタールってプラスチックにしたり。あとは接着剤にしたりですね。こういう用途はたくさんあるわけです。
これは未来的な話ですが、メタノールカーですね。燃料電池EV車ができればメタノールもどんどん必要になるかなと思うんですけど。メタノールは今は若干高いので、なかなか普及しないんですけど。これで国産メタノールがどんどんできるようなことがあればですね。こういう車もできるのかなと。
でも、日本はメタノールの製造工場を海外に移してしまったので自給率ゼロなんですね。全部輸入してるんですけれど。輸入は天然ガスが採れる国から輸入してきますので、イランやクウェートから輸入してくるんですね。
これは2年前のニュースなんですけど、ホルムズ海峡っていうペルシャ湾の先っちょのところでメタノールタンカーが攻撃を受けたりとかですね。そんな出来事があると一気に値段が跳ね上がったりするんですね。やっぱり政情が不安定ですので、こういうところから輸入するんじゃなくて、やっぱり日本で安定的に作るべきだと思っています。
メタンガスからメタノールを作るために、メタンはどこにあるのかを調べていくと、メタンハイドレートという言葉を聞いたことがあると思うんですけど。氷のメタンですね。これが日本の近海にたくさん埋まっていると言われています。
日本としても2013年に、海洋基本計画を立てまして。メタンハイドレートをちゃんと取れるようにして日本のエネルギーとして使えるようになったら、もう日本は大金持ちです。サウジアラビアとかの国々はすごく大金持ちですよね。そういった大金持ちの国になるためにがんばろうと、日本は1兆円投入してなんとかこれを掘り出そうとしています。
大久保:ですが、あれから7年経ちましたけど、まだぜんぜん採れてない。一応三河湾の沖で採掘の試しも行われているんですけど、ほんの少しですね。泥が少しで、そこにメタンガスがいるかな? くらい。まだそんなレベルです。
私も「メタンハイドレートはもっと取れてるんじゃないですか?」と政府の衆議院会館まで行って聞いてきたんですね。そしたらメタンハイドレートを掘る管轄はエネルギー庁なんです。埋まっているところの海底で大陸棚にありますので、管轄は水産庁になるんです。そこで日本の政治の縦割り社会の非常に悪いところなんですけれども、他の省庁同士は仲が悪いんですね。
水産庁に言わせるとメタンハイドレート掘ったら、海底が荒れますよね。いろいろ掘り返すわけですから。「それで魚がとれへんようになったらどないすんねん。昆布がとれへんやろ」とかね。そのオイルやメタンや油をそこらへんに撒き散らしたらどないなんねん。環境的に大丈夫なのかという話で。すごく仲が悪いんですね。絶対にこれは採掘されることはないなと思って、ここはちょっと諦めたんです(笑)。
それで仕方ないから海外を見るわけですね。日本は今メタンガスをどうやって輸入しているのかを調べると、天然ガスタンカーで運んでるんですよ。天然ガスタンカーが何をしているかというと、液化してますので、液体にするためにマイナス163度に冷やす。するとメタンガスは液化します。沸点がそこですので。
やっぱり液化するのにすごくエネルギーを使うんですね。冷やしますから。マイナス163度で液化するんですけど、それをマイナス200度にしたらもう少しきちっと液化してると思うんですけども。
やっぱりエネルギーがもったいないですからギリギリのところで。マイナス163度が沸騰するかどうかギリギリのところで持ってくるわけなんです。船の上でもけっこう沸騰しながら持ってくるわけですね。沸騰してしまったメタンガスをどうしてるかというと全部捨ててるんですね。
メタンガスは、CO2換算で地球温暖化係数が20倍なんですね。だからメタンガスを大気に放出するというのは、とんでもないことなんですけれども、船の上なのでどうしようもないんですね。
油田とかでもけっこうメタンガスが出てくるんですが、例えばこういう油田で火が燃えているような絵を見たことがあると思うんですけれど。これって油田から出てくるメタンガスを燃やしてCO2にしたら1倍になりますから、それで今捨ててるんです。船で燃やすわけにいかないので、仕方ないからもう漏らすしかないですね。
そうやってメタンガスは日本に来ます。貯蔵タンクが海沿いにあるんですけど、そこでもやっぱりずっと冷やし続けるわけにいかないので、ちょっとずつ漏らしながらやっているんです。そうすると日本が輸入している天然ガスのトータル10パーセントが蒸発で大気にどんどん漏れている状態なんですね。これはえらいことで「これを減らせ!」ってプロジェクトが実は今、政府主導で進んでいるところなんですけれども。
こんなことせずに現地でメタノールに変えたら、そのままタンクに入れて運んでこれるので、輸送のコストも下がります。メタンガスを大気に排出することなく、日本はエネルギーを得られるんじゃないかと。これもちょっと考えているだけでまだぜんぜん進んでないんですけど。こういうことに使えたらいいなと思っています。
大久保:ここまで海外の海とかも見てきたんですけど、陸は見てなかったなということで。実は陸にもけっこうメタンガスがあるんですね。そして日本の中で陸にメタンがあると教えてくれた町があるんです。北海道興部町。これでおこっぺと読むんです。
興部町という町は人口3,800人で牛が1万1,000頭暮らしている、人より牛のほうが多い町です。酪農が盛んで、特に牛乳を絞ってますので、雪印の工場があるんですね。そこで雇用も生まれていて、酪農中心の町です。オホーツク海側の末端のほうにあるんですけれども。
牛が山ほどいますので牛舎で飼われているんですが、牛は常に糞や尿をしますので、彼らもその処理に困っているわけですね。昔は牛の糞尿はタンクに貯めておいて、発酵させて堆肥にして畑に撒いているんですけれども。やっぱり匂いがすごいんですね。春先に撒くんですけれども、町中が全部糞の匂いで充満するわけです。
それをちゃんと下水処理、糞尿処理すればいいんですけれども、コストがすごく高いのでどうしているかというと。糞をずっと発酵させておくとメタンガスがどんどん出るんですね。こういうバイオガスプラントは北海道に何ヶ所もあるんですけど、このメタンガスを使えないかと思っています。
今このメタンガスをどう使っているかというと、燃やして発電機で電気に変えているんです。でも北海道の北のほうですので、いくら電気に変えても人口3,800人分しかいりませんから余ってくるわけなんですね。
「糞尿由来の電気で電気代ゼロにして、どんどん電気作れますよ」と言っても、電気はトラックで運べなくて送電線で運ぶんですね。送電線で運ぶには送電線を作らないといけないので、そうするとコスト的に割に合わない。
彼らも困っていて、じゃあエネルギーに変えれたらいいんじゃないかと。今北海道では牛中心の循環型酪農というのが盛んに行われていて、牛は餌を食べますね。そこから牛乳を出すんですけれども、同時に糞も出します。
糞をバイオガスのプラントで処理して、それをもう1回草地に撒いて、またそれを食べると。こういう循環型なんですね。バイオガスプラントで電気に変えるわけなんですけど、それをどんどん広げたいんですけど、やはり送電線の問題がある。
じゃあこれをエネルギーに変えたら、バイオガスプラントをどんどん建てられますねと。建てられない今は全体の糞の5パーセントしか処理できてないんです。95パーセントは今も堆肥にして撒いてるんですね。それを0パーセントにしたいんです。エネルギーに変えてメタノールに変えたらみんな使えて持ち運びも楽でしょと。
大久保:それでちょうど去年、大阪大学と興部町でバイオガスからメタノールに変えましょうと約束をして、協定を結んだところなんです。協定を結ぶだけでもけっこう北海道では注目されまして、NHKでもまた放映されました。
朝日新聞にも全国紙で出たんですけれども。右上の北海民友新聞っていうのは北海道の地元誌なんですけれども、1面トップで大阪大学とこんなんやりますよって。北海道ではけっこう大々的に取り扱っていただきました。
北海道では今それをバイオガス、糞尿から出てくるガスをエネルギーに変えようということを目指して、オホーツク農業科学研究センターという農業試験場で、牛の乳の成分や病気の解析をしているところなんです。今、ここに化学の実験設備を無理やり導入させてもらって実験しています。私も月に1回はここに行って実験しているような状況です。
実際にバイオガスを使ってやるとメタンができるんですね。こうやって公開実験といって、消防署が本当に安全か安全じゃないかというのを見るために来てチェックしてるんですけど。こういうかたちで化学の実験をしています。実際私のラボでもこんなかたちで実験しています。
こうやって活動していくだけでも、北海道と大阪でバイオガスを使って何か取り組みしているなっていう情報が徐々に漏れてくるんですね。うちらはできるだけ秘密にして、うまくいったときにバッと言いたいんですけれども。まだうまくいってない途中の段階で、いきなり北海道知事が実験を見に来たいとかですね。誰が漏らしてるねんっていうね。
このスライドの一番右側に太った方がいるんですけど、これが町長で。ここがどうも口が軽いっぽくてですね(笑)。町長に口はチャックしといてくださいと伝えているんですけど、やっぱり政治家なんでね。ポロポロ言ってくるんですよ。
あと、左側の新聞。これ新聞記事になったんですけど、「バイオガスの新たな活用で新施設を計画」とかいってね。まだ北海道からバイオガスの化学反応のプラントを作るための資金を申請しただけで、計画中とか書かれていてね。申請自体がこうやって漏れるとたいがい通らなくなるんですね。邪魔が入るんです。これも通らなかったんですけど。
こうやって漏れていくので、早く公表しないといけないということで、研究を急いで。さっきの計画は今年の1月の練習の時に初めてうまくいったんです。2月には記者会見しようということで準備してたんですけど、そこでコロナがやってきて出張禁止になったんですね。
ずーっと待って、待って、待ってで。その間、大阪大学でも連続で反応させる装置を作ったりとか、いろいろ準備して待ってたんですけど。やっと今年の7月15日に発表できました。
大久保:今スライドにフラスコが映っていますね。これくらいのスケールで化学反応をやって、ここに糞尿由来のバイオガスを入れて。この黄色い色は二酸化塩素の色です。横にLEDのライトがあるんですけれども、これでバッと光を当てると……。
【動画再生】
今はこの量産化を目指しているところです。今のフラスコスケールから何トンという規模感で作らないといけませんので。今そこを企業と共同して、実際にどれくらいできるかを予測するわけです。
これは皮算用ですけど、560頭分の牛から出てくるバイオガスで換算した場合、54万立米のバイオガスが出てくるんですね。メタンガスがその中に60パーセント含まれていますので、33万立米が使えるわけなんです。
そこからやりますと、年間82トンのメタノールが出てくるわけなんですね。これは560頭分です。日本の乳牛は135万頭います。そうすると、それを使うだけで日本の輸入量の2割を賄うことができるんです。牛の糞を全部集められたらの仮定ですけど、2割を賄うことができる。
それ以外に豚や肉牛や人もいますから。それを集めたらたぶん全部できるんじゃないか。もう日本は輸入しなくても大丈夫じゃないかと。
もし世界の牛の糞を集められたら、世界が使う年間使用量の10倍を賄うことができる。皮算用ですけど、なんでもどこまでできるのかなと試算するのは重要ですので。
それで発酵の過程でギ酸という物質ができるんですけど。ギ酸は何に使うかというと、牛ってけっこう酸っぱいものが好きで。人間も酢の物を食べますよね。牛もかなり酸っぱいものが好きなんですね。ギ酸っていうのは酸っぱいんですね。それを入れとくと牛がすごく餌を食べるようになるので、餌の添加剤に使っているんですけれども。それも同時にできてしまうと。
だから町の中では牛がいて、牛が糞をして、糞から燃料を捻出して。それが牛の暖房になるかもしれないし、餌にもできると。自分の糞から作られた餌を彼らは食べる。だから牛には内緒なんですけれども。糞からできるものを混ぜているんですよってね。さらに牛乳をたくさん出せるようになると。そういう好循環が生まれるんじゃないかと考えています。
糞以外にも、例えば大阪にあべのハルカスという60階建てのビルがあるんですけれど。ここはけっこう進んでいてですね。レストランがたくさん入ってるんですね。レストランのゴミ捨て場にシュレッダーが置いてあって、例えば野菜の残りとか食べ残しとか、野菜の皮をシュレッダーで粉々にして、地下5階までパーンと落とすんですよ。
地下5階にはメタン発酵機があって、そこで電気に変えて上の建物の照明に使ったり、暖房に使ったりしてるんですね。こういうシステムはけっこうあるんですよ。これはここの中で全部終わるので別にメタノールに変える必要はないんですけど。
メタンガスはけっこういろんな見えないところで使われていて。北海道はメタンガスを捨てないといけないので、そういうところはどんどんメタノールに変えていければいいなと思っているんです。
大久保:メタンガスができるとプラスチックの材料をうまく酸化できる。メタンをメタノールを変えるように、プラスチックをうまくアルコールに変えることもできるわけです。ポリプロピレンという材料があって、いろいろな用途でみんなに使われているんですけど。この機能をもっと高めるという研究も2、3ヶ月でできてしまうんですね。
ポリプロピレンというのは、こういう化学構造をしていて……化学構造を出すとみんな引くんですけど。メタンとほとんど一緒ですね。炭素がたくさん並んでいるところにメチル、メチル言うたらあかんな。炭素があって水素があるようなものがあるんです。これに酸素を入れる時にも、やはり炭素と水素の結合を切って、そこに酸素を入れないといけない。一緒なんですね。
これをやると何ができるかというと、プラスチックは水と馴染みが悪くて弾いてしまうんですね。このスライドはフィルムを横から見てるんですが、プラスチックのフィルムに上から水滴をポタンと落として横から写真を撮っている絵なんです。
左が普通のプラスチック、右がこの2、3ヶ月で処理したあとなんですけど。ベターって水滴がくっついてますね。すごく濡れやすいプラスチックができるんですね。普通はなかなかできないんですけど。
そうするとプラスチックに水性インクで色を付けることができるんですね。普通は水性インクだと弾いちゃうんですけど、この処理をすると完全に塗ることができるんですね。
今日ペットボトル持ってる人いますよね? ペットボトルには印刷できないので、みんなフィルムが付いてますよね。じゃあもしこの技術が完成したら、このフィルムはいらなくなるんですね。
一応日本の法律上、製品番号をペットボトルに付ける必要があるので、無理やり印刷している部分があるんですけど。今は少しだけ印刷してあるんですね。この部分だけプラスチックをデコボコにして、そこに無理やりインクをねじ込んでいるんですね。そんな処理をしなければいけないんですね。
大久保:みなさん飲んだあとにどうするかというと、ペットボトル回収ボックスに入れますよね。そのペットボトルって、実はリサイクルできないんですよ。リサイクルボックスと書いてあるのにリサイクルできない。
なんでできないかというと、みんなこのまま捨てますよね。このフィルムは剥がさないですよね。フィルムの材料とペットボトルの材料は違うので、一緒に溶かすと混ざり物になります。すると、もう1回ペットボトルは作れないんですよ。これをきれいに剥がして、蓋も取って、この白いところ……これは取れないですが。ここも材料違うので、そこまでやらないとリサイクルできないんですよ。
だから今、回収ボックスに入れていますけど、あれは実は工場で切り刻んで細かくしたら燃料になるんですね。他にも、生ゴミを燃やす時にはゴミ処理場で燃やすんですが、生ゴミってすごく水分が多いのでなかなか燃えないんですね。
だからこの刻んだやつを一緒に入れるとよく燃えるので、そこで使われているだけなんですよ。非常にもったいない。ずっと僕はリサイクルされてると思っていたら、まったくされてない。できないんですね。
じゃあラベルがなくなって印刷だけになったなら。インクの量は全体量に対してちょっとですので、絶対にリサイクルできるはずなんですよ。例えば水のボトル。これはけっこうフィルムの量を減らしていますけど、欧米などに行くと、特にヨーロッパではフィルムはやめてます。
水はまだ水だってわかるんです。「水が入ってるな」って。でも、コカ・コーラはあの赤いラベルがないと、ちょっと飲む気がしないですね。ただの黒いボトルがポンと置いてあったら飲む気しないですよね。商品イメージ的にどうしても付けている。お~いお茶もこのラベルが付いていないと、みんなお~いお茶ってわからないですよね。
水は水ですからね。今ヨーロッパでは、蓋のところに少し工夫をして商品がわかるようにして売るように変わってきています。それに対して日本はまだまだで。「富士のおいしい水」とか言って富士山のマークをつけないと消費者はわかってくれないからそうするわけなんです。
もしこの技術ができるようになると……。この写真は去年の5月なんですが、取り組みが新聞に載ったりですね。
大久保:あとは接着ができるようになったりするんですね。プラスチックと金属とはなかなか接着できなくて、普通は接着剤を使いますよね。でも、この処理をすると熱をアイロンくらいパッと当てるだけで、金属とプラスチックがビタッとくっつくようになるんです。
これもプラスチックをリサイクルしないといけないんですけれども、一般的に、接着剤を塗って、金属と接着剤をバッと外すと、間に絶対に接着剤が残ってしまって、そこを削らないといけないんです。でもこれだったら接着剤を使ってないので、もう1回熱をかければパラっと取れる。要するに、リサイクルできるような材料になるわけです。
あとはプラスチックの上に金属のメッキができるようになったりですね。普通はなかなかメッキできないんですけど、この技術を使うときれいに金属にできて鏡のようにしたりとかね。そのようなこともできるようになるわけです。
お伝えしたいことはだいたいこれで終わりなんですけど。あと、この左側の絵はストローなんですが、ストローの内側だけを水に濡れやすくすると、青い水が下にあって、スッと刺すと毛細管現象でズーッと青い水が上っていったりですね。水と親和性が上がるとこうやって上がっていったりするんです。
このスライドは大阪大学のイチョウのマークなんですけど、こういうかたちに光を当てて、そこだけインクと馴染みをよくすると、こういう印刷ができたりですね。こういうことに使われようとしているわけです。
最後に、大阪大学の広報誌で最近紹介されたんですが、「10年後に実現しうる技術の種を見つける」のが私のミッションです。なぜ10年後かというと、20年経ったら、もう大学の教員は辞めておじいちゃんになっているので、それまでにはなんとか見つけたいと思っています。それが私の今のミッションです。
ほかの人と異なる視野を持って、100年後にみなさんが高校で見るような教科書に自分の化学反応が載っていたら、それほどうれしいことはないなと思って、研究を進めているところです。
最後は謝辞なんですけれども。今は私が部門長でそれ以外にメンバーや研究員がいるんですね。准教授の淺原先生と研究員数名です。今このメンバーで研究をしながら、研究室の高額な家賃を納めるべく、いろんなところからお金をかき集めて研究を進めているところです。今日はご清聴ありがとうございました。
(会場拍手)
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