2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
提供:スマートキャンプ株式会社
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前田ヒロ氏(以下、前田):みなさんお集まりいただき、ありがとうございます。バズワードになってるこの「DX」という言葉なんですが。今回、実際に現役経営者の視点から、DXをどう取り入れているか。また国内外の最新動向から、DXで何が変わるか。さらに未来に向かって何が重要なのか、などについて議論していきたいと思います。
今回は、DXと言えばこのお二人という感じで。マネーフォワードの辻社長とラクスルの松本社長に来ていただいております。ではさっそく、松本社長から自己紹介をお願いできればと思います。
松本恭攝氏(以下、松本):よろしくお願いします。ラクスルの代表を務めております。松本です。簡単に自己紹介と会社の紹介をさせていただきます。
私は84年生まれでして、DXというと小学校のときにWindows95が出て、インターネットに初めて出会って。実は小学校くらいのときからずっと、インターネットとともに過ごしてきました。大学生の最後くらいのタイミングでスマートフォンが出てきて、その可能性にすごくワクワクしたという、インターネットが大好きな経営者です。
新卒で経営コンサルティング会社に入ったんですが、その中でいろんな企業のコスト削減をしていく中で、印刷が一番削減率の高い項目でした。というのも、まさにデジタル化が進んでいない、非常に非効率な商取引で業務プロセスを踏んでいたからです。
「この商慣習をインターネットを使って変えることができれば、業界のビジネスモデルも変わるし、印刷会社そのものも変わるんじゃないのか?」と、当時は思って。じゃあそれを自分でやってみよう、ということで起業しました。そこから11年目の今日まで、ラクスルの経営をしています。
松本:ラクスルは昨年、東証一部に上場しました。(スライドを指して)大きくは3つの事業をしており、印刷の「ラクスル」、広告の「ノバセル」、物流の「ハコベル」。
大きなレイヤーで共通するのは「デジタル化が進んでいない伝統的な産業」ということですね。ここにインターネットを持ち込んで、その産業構造を変えていこうとしています。
具体的に言うと、小さな印刷会社・小さな広告代理店・テレビ局・小さな運送会社をつないで、1つの仮想的に大きな印刷会社、広告代理店、もしくは運送会社を作って。そのキャパシティを、直接お客様に届けていく。
今、BtoBのビジネスモデルは基本的には多重下請けのピラミッド構造になっているものを、インターネットを持ち込むことでダイレクトに結び付けていく。デジタルを使って、業界の産業構造をそのものを変えていこうとしています。これを体現するよう、当社では「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げて事業を展開しています。
我々は業界構造、産業の在り方を変えていくというDXを行っています。
これまで印刷にしろ運送にしろ、基本的には設備産業で。銀行からたくさんお金を借りて、より大きな設備を自社で抱えます。そうすると、仕事が勝手に舞い降ってきたと。セールスを置くとたくさん仕事を取ることができるので、キャパシティ以上の仕事が取れて、それを下請けにたくさん投げる。
この多重下請けが大手1、2社を中心にできてきた。これは印刷だけでなく、広告でも物流業界でも同じで、大手の会社は基本的には明治から昭和にスタートして、同じような構造で成り立ってきました。
これを我々は(スライドを指して)右側の製販分離、下請けにいる一番小さな印刷会社、運送会社をネットワークして1つのプラットフォームとして届けていくことによって、取引にかかっていたたくさんの中間マージン、トランザクションのコストをなくしていきます。生産量・品質・決済といった不安があって、なかなか小さな会社と直接取引できないというところを、デジタルプラットフォームがしっかりと保証して。安定した品質で決済もしっかりしているし、たくさん量を買っても明日届くというような仕組みを提供していきます。
こういう小さな会社をエンパワーメントして、大企業に変えていくということをプラットフォームを通じて行っているのが、ラクスルです。
印刷からスタートしたんですが、直近で言うと印刷の売上は全体の6割くらいまで減りました。
広告の売上が約3割、1割が物流の売上ということで、他事業の売上比率が高まってきています。1つの業界からスタートして2つ、3つ、4つ、5つとたくさんの業界で、産業の在り方を変えるDXのチャレンジをしていきたいと思っています。
また今回テーマになっているSaaSなんですが、基本的にはラクスルはマーケットプレイスとかEコマースといった、取引の在り方を変えていくことを主な商売としてビジネスモデルとして展開してきました。
印刷、広告、物流すべての取引をより効率的にしていこうということに、10年間チャレンジをしてきました。
ただ最近、この取引の効率化だけだと提供価値としては不十分だなと思い始めまして。取引をする手前に買いたい人と売りたい人、この出会いが取引ですけど。この両側に業務、まさに売るものを管理する、買ったものを管理する。そこまでの製造プロセスの管理、在庫の管理。こういった取引の前後の業務の非効率が、あまりにも大きいということがわかってきました。
またここがデジタルで効率よく管理されていないと、取引をデジタル化していくのが非常に難しいなと思い、SaaSとEC、マーケットプレイス、これを別物だと考えるのではなく、同じ1つのお客様のビジネス領域、生産者、パートナーのビジネス領域だと捉えて組み合わせていくビジネスモデルを作っていこうと考えました。
そうすることによって取引の非効率と業務の非効率、この2つを同時に解消していくことにチャレンジしていきます。広告では今、ノバセルアナリティクスという、テレビCMの放映効果を可視化できるSaaSを提供しています。その効果によって、デジタル広告のように効果検証を回すことができ、広告効果の高い最適な発注をかけていくことが実現できる仕組みですね。
物流のハコベルにおいては、取引のビジネスをしていましたが、昨年からは「ハコベルコネクト」という、配車業務をデジタル化し、荷主と運送会社の情報を一元管理することで業務コストを削減できるシステムを提供しています。これが我々の事業としてのSaaSとの取り組みになります。
前田:ありがとうございます。印刷、広告、そして物流って、どれもものすごくでかい市場でDXをやろうとしていて。いろいろチャレンジありそうですね。
松本:チャレンジはたくさんあって、業界が広いのでもう頭がパンパンになってます(笑)。
前田:ぜひあとで、このへんのチャレンジを伺いたいと思います。
前田:じゃあ辻さん、お願いします。
辻庸介氏(以下、辻):ありがとうございます。マネーフォワードの辻でございます。
本日はよろしくお願いします。僕は松本社長とも親しくさせていただいているんですけど。改めてさっきのプレゼンを聞くと、DXというかビジネスモデル自体を変えていくっていうところで、それをすごく巨大な市場でやっていくっていうので、なんか開始10分で、すげぇ勉強になりました。ありがとうございます(笑)。
じゃあ僕の、マネーフォワードのご説明を簡単にさせていただきます。我々は「お金を前へ。人生をもっと前へ。」というミッションを掲げてやっております。
僕は大学卒業後、ソニー、マネックス証券で働いていました。ネット証券にいたときに、お金の課題ってすごく大きいのに、なかなかテクノロジーがうまく使えていなかったり、ユーザーフォーカスなプロダクトが少ないんじゃないかなと。お金の課題を解決すれば世の中の役に立つんじゃないかなということで、2012年に会社を設立したというところでございます。
我々はミッション、ビジョン、バリュー、カルチャーをすごく大事にしている会社でして。とにかく我々のサービスを通して、社会課題を解決していきたいと思っています。
今、世の中の社会課題というのは常に変化しているので、どんどん出てきているんですけれども。我々が直近で解決したい課題というのは、例えば企業ですと低い労働生産性の問題であるとか、成長資金が回ってきてないとか、低い起業率とか。こういった問題を解決していきたいと。リモートワークのところもそうですね。
個人に関しては、お金についての勉強をする機会がなかなか日本では少ないので。金融リテラシーの不足をサービスで、なんとかテクノロジーで解決したいと。少しでも不安が減り、個人・法人がともにいきいき生きていけるような社会に貢献していきたいなということで、サービスを作っているところです。
辻:我々、やりたいことが多くてですね。4つの事業ドメインで、30種類以上のサービスを提供させていただいています。
法人向けは中小企業向けで、クラウド会計からはじまり、請求書、給与、経費など、主にバックオフィスに関する課題を解決しています。
まさに本日BOXIL EXPOでやっているように、BOXILというSaaSのマーケティングプラットフォームも提供しています。HOMEドメインでは、個人向けのマネーフォワード MEのサービスをメインでやっています。
ちょっとおもしろいのが、マネーフォワード Xというところで、これは実は金融機関さん向けのプロダクトを作っています。戦略からデザイン、そしてプロダクト作りまでやらせていただいていまして。今は30行以上の、静岡銀行様であるとか北洋銀行様であるとか福岡銀行様であるとか、そういったすばらしい地域金融機関様向けに、プロダクトを提供させていただいています。
最後に、やはりお金の流れを変えたいと思っています。お金をいい方向へ動かしたいんです。中小企業でなかなかお金が回っていないところでも、与信がより簡単にできる仕組みを作ったり。あとスタートアップにお金がしっかり集まるように、そしてそのグロースをお金だけじゃなくていろんな面から支援しよう、と。この前、松本社長にも入っていただいて、HIRAC FUND(ヒラクファンド)というファンドも作ったりしました。
BtoBのSaaSプロダクトは、財務・経理から経営管理、人事・労務まで、ひと通りのプロダクトを提供しております。
最近は中堅企業や上場企業にも使っていただけるようなプロダクトがどんどん出てきていますので、かなり幅広い企業さんに使っていただいてます。
今日、聞いていただいている方でご利用いただいている方もいらっしゃるかもしれないですけれども。(スライドを指して)こちらの自動家計簿、資産管理のマネーフォワード MEとは、1,000万人以上のユーザーさんにご利用いただいています。
SaaSの会社なのでかなりストックビジネスになってまして、解約率が少ない状態ですと右肩上がりに売上が積みあがっていきます。直近の決算では、売上の伸びが前年同期比70パーセントということで、非常に力強く伸びているのかなと思っています。
現状の見える化から課題発見ができるところまで、今できてきているんですけど、今後は改善に向けたアクションまで提案していきたいです。その結果、ユーザーさんが少しでもポジティブな気持ちで人生を生きていけるようにお手伝いしたいなぁ、と思っています。
簡単ですけど、以上でございます。
前田:ありがとうございます。お金の流れを変えていきたいというビジョンは本当にすばらしいなと思い、金融業界全体をDX化するってものすごいチャレンジだなと思いました。
辻:そうですね(笑)。ありがとうございます。
前田:さっそくなんですけど、最近「DX、DX」って、あちこちでよく聞く言葉だと思うんですけど。お二人の中でDXの定義とかってあったりしますか? 松本さんとか。
松本:DXの定義……ちなみにDXで言うと、2007年くらいにあるコンサルティング会社のカンファレンスに呼ばれて。「日本を代表するDXの会社、ラクスルさんです」って紹介を受けたんですね。そのときに私、DXっていう言葉を聞いたことがなくて。「DXって何だろう?」って思いながら(笑)。
辻:やばい(笑)。
松本:90分くらいのカンファレンスでDXがテーマだったんですけど、DXって何かわからずに、なんとなく文章を私の中で想像しながら周りに合わせると。
たぶんDXって、我々みたいなスタートアップのように、デジタルをベースにしている会社はトランスフォーメーションの必要なんてないので、あんまり感じることのないことなんだけれども。
そうじゃない時代。Beforeインターネットに業務プロセスができあがっていて、AWSが存在しない、クラウドがなかった時代の会社の方々からすると「新しいデジタルの時代にフィットしたかたちに会社の形態を変えていく」というのが、おそらくDXと言われるところなんだろうなと思って。
DXは自分の中でなんですけど、4種類、4つのレイヤーのDXがあって。どのDXを手掛けるかというのを、しっかりと考える必要があるのかなと思っています。1つはインフラのレイヤー。サーバーであったりシステムを、データベースをAWSに載せましょうとか、VPNを全部オンラインで、オンプレではなくてクラウド上に載せましょうというような。インフラのレイヤーのDXと。
2つ目は業務。これはかなり幅広いと思うんですけど。会計システムをMoney Forwardに載せていこうであったりとか、Salesforceを使って営業を管理しようだとか。これまで人力でやっていて非常に効率が悪かったところを、効率化していくというレイヤー。
3つ目はビジネスモデル。マネーフォワードさんもそうですし、ラクスルもそうですし。ビジネス、金融の在り方、印刷の在り方、物流の在り方を、FAXをベースにやりとりをするとか営業をベースにやりとりをするというところから、窓口ではなくてオンラインでやっていくという、ビジネスモデルのDXというレイヤー。
最後は研究開発、R&DのDXですね。なにか新しいものを作るときに実験を繰り返すのではなくて、DNA解析をして新しい薬を作っていくとか。
インフラなのか、業務なのか、ビジネスモデルそのものなのか、それとも研究開発そのものなのか。どこにDXを適応していくのか、というのを考えていく必要があるなとは思うんですけど。こういうDXの捉え方をしています。
前田:4つのレイヤーで分けているのは、初めて聞きましたね。めちゃくちゃわかりやすい。確かにそうですよね。松本さんみたいに、Windows95と一緒に育っているデジタルネイティブだとあんまり意識しないというか、すべてがデフォルトデジタルで考えているので、あんまり意識しないことが多いですよね。スタートアップの業界とか。
松本:そうですよね。むしろデジタルを使わないと何を使えばいいのか。そんなに選択肢がないという(笑)。
前田:確かに。辻さんはどうですか? 付け加えたい部分だったりとか、いや、僕の定義は違いますよみたいなのは、あったりします?
辻:松本さんが完全なフレームワークを提供してくれたので、それに完全に乗っかかるかたちのほうがいいかなと思ったんですけど。金融機関さんと一緒にDXを議論していく中で、ビジネスモデルの部分が一番大事だなと思ってまして。
インフラと業務はある程度いいサービスもあるし、オペレーションもあるし、導入サポートもあるので。そこは、そういう会社さんと一緒にやればできると思うんですけど。ビジネスモデルを変えるっていうところは、ある意味、まず経営者とか経営陣の考え方を変えないといけないし。そこに紐付いている組織とか人とか、抜擢する人とかそういうものも変えないといけないので。
今までのやり方で正しかったけど、ここからはちょっとそのやり方とか、その人とか、その組織とか、経営の考え方とか、KPIの置き方とか。違うかたちにしないと間に合いませんよね? みたいなことが腹落ちしている経営者の方は、ほとんどいないような気がしてまして。
それこそインフラを変えたらいいんじゃない? とか、業務を変えたらいいんじゃない? みたいになってるのが現状多いので。ビジネスモデルをガラッと変えるとコスト構造も変わるので、じゃあ今までいた人は新しいビジネス構造に変えるときにどうするんですか? とか、痛みを伴う場合もけっこうあると思うので。そこはかなり、経営の意志が働くんじゃないかなという話と。
もう1個は、金融機関さんとご一緒させてもらっていてすごくおもしろいのが、DXのおかげで(これまでは)ユーザーさんとつながってなかった会社さんが、直接つながるんですよね。
ユーザー接点がすごく増えるので。僕らのマネーフォワード Xのチームって、金融機関さんのプロダクトの企画の方々と一緒にものづくりをやるんです。デザインチームが入り、ユーザーヒアリングとかをやって課題を聞いて。
そうすると、今まで企画の方々ってそんなにユーザーさんと接してなかったんですけど、接し出すとみなさんすごく楽しんでくださって。「ユーザーさんってこんな課題があるんだ」とか「こういうものの作り方をすれば、けっこう使ってもらえるサービスができるんだね」みたいな感じで。みなさん一体となって、いいプロダクトを作ろうみたいに盛り上がるんですよね。
それは、ユーザーさんの顔が見えるからだと思ってまして。そういう意味では、DXというのはユーザーさんとつながるすごく大きなチャンスというか。チェンジだなっていうのは、見てて思います。
前田:確かにそうですよね。デジタル化することによって、今まで中抜きじゃないですけど、間にいたプレイヤーが直接お客さんとつながれるような構造を作れたりするので。そういった、直接ユーザーと接点を持ったりとか、もっと距離感を短くするメリットはありますよね。まさにラクスルとかも、そういう世界観を今描いてますよね。
松本:そうですね。例えば印刷でも物流でもそうなんですけど、印刷会社さんって営業を持ってるから近所のそこそこのサイズのお客さんとしか会うことができなかったんです。例えば、1回の仕事で20万円くらい発注してくれる人としか会うことがなかったんですけど。
ラクスルの場合、実は顧客単価は今1万円強くらいですが、個人の方から、従業員数が数名の中小企業〜大企業まで、たくさんのお客様にご利用いただいていて。
印刷会社さんの仕事の質がガラッと変わって、これまでは「大きな仕事を長い時間かけて印刷して、1人のためにがんばる」だったところが、数千人、数万人のために小さな仕事を大量にして、そこでお客さんの顔が印刷物を通じて見えるようになってくる、というような変化があったり。
運送で言うと、下請けをやってると基本的にお客さんの顔って見えないし、直接話ができなかったところから。フィードバックの機能を通じて直接お客さんからの感謝が届いたり、お客さんからのレスポンス……まさに辻さんがおっしゃっていたような、直接見えるようになることによって、会社の雰囲気がガラッと変わっていく。これは印刷でも物流でも発生してます。
前田:なるほどですね。辻さんもそういった業界の変化みたいな、会社の雰囲気だったりとかユーザーの反応だったりとかって、この動きによって感じたりとかはします?
辻:カルチャーが変わってくると思うんですよね。ピラミッドでユーザーと接してなかったら、大きな企業ほどどうしても上長の判断で動いたりすると思うんですけど。ユーザーと近くなると「あれ、上長と言ってることちょっと違うな」とか「でもユーザーさんはこう言ってます」みたいな話になるので。よりオープンでユーザーに近いかたちになるなっていうのが1点と。
もう1点、松本さんがおっしゃったところでそうだなぁと思ったのが、デジタル空間だと距離とか関係なくなるので、例えば今まで1,000万円売り上げるのに「200万円を5社」みたいなところから「50万円を20社」みたいなことも可能になる。
コスト構造さえきっちり作れば可能になるのが、これからの大きなチャンスだと思ってまして。そこをうまく捉える会社が伸びるんじゃないかなと思っています。
当社のやっているマネーフォワード KESSAIっていうサービスは、ファクタリングと請求代行をやってるんですけど。たとえば、今、取引先5社とそれぞれ200万円の取引をやっている会社は、5社だけ与信して請求書送って、入金確認すればいいじゃないですか。
それが20社とか50社になった瞬間に、今までのやり方だともう無理じゃないですか。そこをまるっと代わりに引き受けますよ、というようなサービスで、すごくニーズがあって。
DXが進んでお客様側の売上の中身が変わるから、その中身が変わったときにどういうビジネスチャンスがあるんでしたっけ? みたいな考え方は、これからますます広がるし。チャンスがあるんだろうなっていうのは、今、松本さんの話を聞いていて思いました。
前田:確かにだいぶ導入のハードルというか、デジタルにすることによってお客様へのリーチもだいぶしやすくなるので。なので新しい発見とか新しい機会とかが、どんどん生まれそうですよね。
辻:あとは経営陣の判断ですよね。例えば、ハコベルを入れたいっていう運送会社さんの場合。これからITを導入する業界って、ITに詳しい人たちが経営陣にいない場合がありますよね。
そこをどうやって理解していただいて、導入を進めて結果まで持っていくかはハードルになると思います。僕たちの場合は、会計業界への導入が肝なんですが、例えば1社にIT担当の人がいる大きな会計事務所さんって、そんなに多くないんですよ。そういう意味では、そこはけっこう難しいというか、苦労してますね。
松本:インターネットって基本的には個をエンパワーメントする、個人をエンパワーメントして、それこそIBMのメインフレームの時代からパーソナルコンピュータになって、個人でも力を持つことができる。
SaaSってBtoBが多いと思うんですけど。BtoBでも、大企業のためのものから、中小企業をエンパワーメントする、中小企業でも大企業と同じ力が持てるようになるっていうのが、SaaSの……僕のあってほしいインターネットの世界で。僕が作りたいなと思っている、ビジネスの姿でもあるんですけど。
これまでそうやってサービスそのものを提供している会社からすると、多くのBtoBは「大手と取引したい」「大きなお客さんを獲得したい」だったところから「小さなお客さんが満足してくれるサービスを作っていく」という方向に、どんどん寄っていくんじゃないかなと。
例えば我々でも、大手の印刷会社さんとほとんど競合しないんですね。お互い、競合だってまったく思ってないんですよ。それはなぜかと言うと、大手の印刷会社さんって1件の仕事が何百万円、何千万円なんですね。こういう仕事ってみんな欲しいからすごい価格競争になるし、手厚いセールスが必要になって。実はあんまりSaaSと、インターネットと相性がよくないんじゃないかなと思って。
我々が得意なのはもっともっとちっちゃい、1件500円の名刺をたくさん刷るっていうのが、実は利益率が一番高いんですよね。そのように、これまで人がやってると絶対に収益がでなかったところを、デジタルを使うことによって収益が出る仕組みを作って。小さな仕事をたくさん作る。
これまで小さいから相手にされなかったところに、小さな仕事でも受けてくれるっていう会社が出てくると、一気にビジネスが広がっていく。DXしたときの「大きい仕事がいい仕事だ」っていうところから「小さい仕事がいい仕事だ」っていうここのチェンジは、けっこう多くの会社で起きるんじゃないかなと思いました。
前田:なるほどですね。そこでけっこう、マインドシフトが必要になってくるという感じですよね。
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