2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:Indeed Japan 株式会社
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枌谷力氏:では私のセッション、始めさせていただきます。よろしくお願いします。
このイベントのテーマは、オウンドメディアリクルーティングです。オウンドメディアリクルーティングというのは、自分たちが所有、あるいは情報発信をコントロールできる「いわゆるオウンドメディア」を活用して採用活動をしましょう、という考え方です。
このオウンドメディアというのは、いわゆるブログ型のコンテンツという意味の狭義のオウンドメディアではなく、自社サイトやSNSの公式アカウント、あるいは広報誌などを含む、本来の意味のオウンドメディアですね。
この私のセッションでは、オウンドメディアの中でも特に採用サイトについてお話ししていきます。自社のノウハウと、ウェブ制作会社としてお客様の採用サイトをお手伝いした経験から得たノウハウを、皆さんにお伝えできればと思っています。
ではさっそく始めていきます。
メインテーマは「間違った採用サイト」ですが、それがどういうものかと言うと、例えば(スライドを指して)ここにあげているようなものですね。
「×」は考えとして間違ってると思った方がいいことです。下2つの「△」は間違いとは言えないが、一概にそうとは言えない、ということです。
パッと見せられたら「まぁそういうものか」とみなさんも思うかもしれませんが「なぜこれがダメなのか」ということを、みなさん説明できますか?
今日の50分のセッションでは「これがなぜ×で、なぜ△か」という理由を、みなさんがちゃんと言えるようになる、ということをゴールにしています。
なので今、ぜんぜん答えられなくても大丈夫です。50分後には「これはこういう理由で×だ」ということを理解できるし、人にも話せるようになるとはずです。そういう観点で聞いていっていただければと思います。
全体の流れは(スライドを指して)こんな感じですが、
まず簡単に自己紹介をさせていただきます。
それから次のパートでは「求職者の行動と心理」についてお話しします。ここでは事前に「採用サイト検定」というテストを作っています。みなさんが、求職者と採用サイトにどれくらい精通しているかが簡単にチェックできるものです。みなさんにお答えいただき、その解説をしていきます。
次のパートでは、求職者に関する前提に基づいて、では採用サイトをどう作ればいいかという、考え方のお話。最後のパートでは、その考え方をもとに、具体的にこう作ればいいというお話をしようと思います。
今、私が経営しているのは、株式会社ベイジというウェブ制作会社です。私自身の肩書きは経営者なんですが、そんなに大きな会社ではないこともあり、経営に特化せずに、プレイングマネージャー的に動いています。
なので、クライアントワークとして企画書を作ったり、マーケティング戦略や採用戦略のプランニングをしたりも、自分でやっています。あと、私自身の基本職種はデザイナーなので、自社向けのデザインは自分でやることもあります。
略歴としては、株式会社NTTデータに新卒で入り、それからウェブ制作会社を2社経験しました。その後フリーランスとして独立し、2010年に今の会社を立ち上げました。
今回は採用がテーマなので、求職者としてと、人事担当としてのキャリアもご紹介しておきましょう。
まず求職者としてですが、1995年に就活をしています。当時は就職氷河期で、1度目の就活はうまく行かず、わざと大学の単位を落として就職浪人をし、2度目の就活でNTTデータに入りました。
そのNTTデータも4年で辞め、2001年に最初の転職をしています。それから2003年に2度目の転職をしました。2007年は独立なので転職活動はしてないのですが、会社は3回辞めています。
求職者としては、特に最初の就活の影響もあるんですが、企業のメッセージを真に受けない傾向が私自身にあって(笑)。
だからこそ自社で情報発信をするときも「求職者ってそんなに素直に読まないぞ」という前提で、メッセージを作っていたりしますね。私自身が新卒の学生や中途の求職者だった時に感じたことが、うちの会社の採用戦略、というか主にコンテンツやコピーの作り方などに、影響を与えていると思っています。
同じページの下段の表は、経営者として、人を増やしていった実績です。これは累計で、2018人に13人採用したわけじゃなくて、2018年の時点で計13名の社員になっているということです。急拡大はしてなくて、10年かけてやっと、20人超えるぐらいの人数になりました。
そしてこれは「こういうイベントに出ていますよ~」という私の自慢話ですね(笑)。
世の中にウェブ制作会社はたくさんありますが、うちは「BtoBに強い」というのを一貫して出していますね。これはBtoB企業の顧客獲得目的のウェブサイトの実績が多いということなんですが、BtoB企業の採用サイトも比較的多くやっています。
BtoB企業のサイトを手がけたことがあるウェブ制作会社はたくさんありますが、BtoBに強いとはっきり明言しているウェブ制作会社はかなり少ないんじゃないかな、と思っています。
そして我々はウェブ制作会社なので、基本的にはディレクターも含めた上で、クリエイターしか在籍していません。マーケティング担当とか営業担当はいないですし、人事担当もいないです。みんな、ディレクター、デザイナー、エンジニアという専門職能を持ったうえで、採用活動をやっています。なので必然的に、我々の取り組みというのは(スライドを指して)、この左側のインバウンド型を求めています。
インバウンドマーケティングといったり、インバウンドリクルーティングといったりするんですが、要は我々は座って仕事をしているだけで、マーケティングであれば問い合わせが来たり、リクルーティングであればエントリーが来たり、という状態を理想の姿として活動しています。
一方で右側にあるアウトバウンド系の施策、例えば広告とかDMとか展示会とか、採用であれば転職サイトに出稿したりとか転職エージェントを使ったりとか、そういうことは基本的にはしていません。
その成果は、マーケティング面では(スライドを指して)こんな感じですね。
この成果をどう評価すべきかは分かりにくいと思うんですけれども。20人ほどのウェブ制作会社で、このぐらいの問い合わせや資料ダウンロードが来るというのは、結構な異常値なんじゃないかと思います。
このような成果はマーケティングだけではなく、採用でも出ています。2019年の一年間で年間70人ぐらい、自社の採用サイトから応募が来ました。今年はさらにハイペースで、6月までで60人以上のエントリーが来てて、おそらく1年間を通して120人ぐらいになるんじゃないかと思います。
この成果のポイントは、外部媒体はまったく使ってない点です。いわゆる転職サイトなどは一切使わず、自社の採用サイトからの申し込み、あるいは自社で開催するイベント、あるいはSNSで話しかけてくるとか、そういったことだけで、これだけの応募を獲得しています。これこそ、我々のオウンドメディアを中心とした取り組みの成果なんじゃないかと思っています。
小さい会社だと、転職サイトとかを活用しないと人が来ない、と思われがちなんですが、オウンドメディアを駆使すればそうではないということを、我々自身で証明しているわけです。
オウンドメディアを活用するというのは要するに情報発信なんですが、闇雲に情報発信をすればいいわけじゃなく、根幹に必要なのは、組織としてしっかりしていること、良質なサービスを持っていることだと思います。我々であれば、良いウェブ制作のサービスを提供していることが前提になると考えています。
良いサービスを提供していると、それを作るための良いノウハウが溜まってきます。それを市場に向けて情報発信すると、市場の中にファンができるわけです。ファンと言ってもミュージシャンとかタレントのファンほどの熱量ではないんですが「ベイジの情報はよくチェックする」という方が出てきます。
こういう人の一部が(スライドを指して)、左側にあるようなリードになって顧客になる。また一部は求職者となって、社員になる。こうして良いお客さん、良い社員が、また良いサービスを作ってくれて、そのノウハウをまた情報発信をする。こういうサイクルで、情報発信を噴水のように市場に吹き上げてファンを作って、そこから良い社員、良いお客さんに繋げるという、こういう概念モデルでやっています。
なので私たちの場合、オウンドメディアや情報発信を、マーケティング目的、リクルーティング目的、と明確に分けていないです。もちろんある記事は完全に採用向け、完全に顧客向け、というのはあるんですが、情報発信活動全体としては、これらを混ぜこぜにしているのが、我々の特徴ですね。
リクルーティングについては、(スライドを指して)こんな感じのファネルも意識しています。
マーケティングではよくこういうファネルを使いますが、我々が重視しているのは、この潜在層という「現状、転職あるいは就職の意向すらない人たち」です。
こういう人たちにオウンドメディアやSNSを使い、ベイジという会社を知ってもらうことを日常的に行っています。そうしてベイジを知った人たちが転職や就職を考えた時に「そういえばベイジという会社があったぞ」と思い出し、採用サイトからエントリーする、という流れを生み出しています。
ポイントは、(スライドを指して)この1番上のファネルのトップに働きかけるということです。潜在層への働きかけがないと、2段目の顕在層にアプローチをしなきゃいけない。これがいわゆる転職メディアとか媒体にお金を出して自分たちの名前を乗せて知ってもらう活動です。
大きな会社になると、そこまでしないと望むスピードで人が集まってこないと思うので、こういうことももちろん大事な活動だと思います。
しかし、我々のように小さな会社の場合、大企業ほどの経済的体力も時間的余裕もなかったりするので、情報発信を通じた潜在層へのアプローチにリソースを投下することで、媒体などにお金を使わなくても十分なエントリーを生み出せる環境つくりをしています。
私たちの採用活動・情報収集の中心になっているのがオウンドメディアです。オウンドメディアは今まで4つくらい立ち上げて、今、力を入れているのが、去年の10月にオープンした(スライドを指して)こちらのオウンドメディアですね。
このオウンドメディアの特徴として、記事の質に非常にこだわっている点があります。現時点で30記事ぐらいアップしているんですが、だいたい1記事あたり平均1.8万PVを記録しており、これは質に拘ってるからこその成果だと考えています。
あと、オウンドメディア以外にSNSも力を入れてて、Twitterも私だけじゃなく社員も積極的にやりたい人にやってもらっています。こういう活動も、先ほどのエントリー数には影響があるのかな、と思います。
それと、スライドの公開も積極的に行っています。講演で使ったスライドや、社員向けの社内資料なんかは、どんどん外に出しています。社内のコミュニケーションをなるべく外から見て分かるようにするのは、意識しています。
私たちはウェブ制作会社なので、(スライドを指して)顧客向けの採用サイトも、もちろんそれなりに作っています。
我々が作る採用サイトの特徴は、動きなど派手なアニメーションではなく、しっかりしたコンテンツ作りに力を入れている点でしょうか。なのでけっこう文章量、情報量が多い採用サイトを作ります。これが我々が「ベイジ流」と勝手に呼んでいるような、採用サイトの作り方ですね。
このように、自社での採用サイトの運用実績、そしてお客様の採用サイトの支援実績を通じて、採用サイトには明確な成功法則があるんだと思っています。なのでここでは、その成功法則を今日お伝えできればと思っています。
ここから本題に移ります。まずは求職者の行動と心理ですが、これはみなさん、どのくらい分かっていらっしゃるかということをチェックしながら、解説していければと思います。
全8問の質問があります。まず第1問。「採用サイトに訪問し、最初にユーザーが遷移するページは?」という質問。10個の選択肢がありますけれども、正解はどれだと思いますか?
これは、自社および顧客サイトのアクセス解析、それからユーザーテストの結果からみられる傾向です。
(回答中)
そろそろ集計結果を見てみましょうか。みなさんどう答えましたか?
みなさんの回答では「募集要項」が33パーセントで1番多いですね。次は「仕事内容の紹介」とありますけれども、みなさんさすがに素晴らしいですね。正解は「募集要項」です。
なので、ここから言えることは。みなさん、ちゃんと採用サイトのトップページ、そのファーストビューに「募集要項」は置いてますか?
グロナビ(グローバルナビゲーション)に募集要項を置いてることは多いですが、ユーザーの視線って300ピクセルから500ピクセルぐらいから始まると言われているので、ちゃんとメインメッセージの下に募集要項。それからはエントリーですね。これを置いてあげるというのは大事かなと思います。
これをちゃんと満たしているサイトは「あ、わかってるな」という感じですし、けっこう凝っててもここが満たされていなかったり、グロナビに募集要項という文字すら出ていないと「あぁ、求職者心理がわかっていないなぁ」と、私なんかは思ったりしますね。
次は2問目。「求職者が求めているのは、以下のどの情報ですか?」。これは株式会社ディスコさんの調査結果を元にしていますので。もちろん人によって、会社によって変わるとは思いますが、このディスコさんのアンケートだと、どれだったと思いますか。
(回答中)
結果は。「実際の仕事内容」が1番多いですかね。次に多いのが「給与水準・平均年収」というところですね。これもけっこうみなさん、さすがにおおむね間違ってないと思います。
実際はこんな感じです。「実際の仕事内容」が1番多かったんですね。次は「社風」ですね。「給与水準」もけっこう高いですね。高いのでそんなに外してはいないんですが、1番が「仕事内容」で2番が「社風」という結果です。
問題は、じゃあこの順番を意識して採用サイトに情報を掲載していますか? ということですよね。求職者は「実際の仕事内容」「社風」という順で知りたがっているのに、十分な量や質を満たしたコンテンツを載せていますか?というところです。
次、2つの問題を一緒にやりますが「求職者の要求が高いのに企業があまり見せていない情報は?」。もう1つの問題は逆ですね。「求職者の要求がそんなに高くないのに、企業は見せたがる情報は?」。要するに、企業と求職者の認識のギャップに関するアンケートです。
これは2014年のマイナビさんのアンケートを元にしています。2014年って今から6年前で少し古いですが、この辺の採用に関する求職者の心理が、大きく変わることはあまりないので。割と今でも通用するじゃないかなと思います。
(回答中)
ではみなさんの回答を見てみましょうか。はい、求職者が見たがっているのに企業があまり見せてくれないのは「入社後の待遇」ですね。一方、求職者がそんなに求めていないのにやたらと企業が見せたがる情報は「経営者の話」。そうですね。やっぱりみなさんちゃんと、求職者のことは理解されてますね。
調査データだとこんな感じですね。
企業が見せたがっているけど求職者がそんなに知りたいわけではないのが「企業理念」と「自社の製品サービス説明」ですね。この2つは「0.数ポイント」の差なのでほとんど同じと思っていいでしょう。
一方、求職者が知りたがってるのは「入社後の待遇」「キャリアモデル」「採用スケジュール」なのに、それに対してはあまり企業の人が教えない傾向は見受けられます。
ここでの学びは「求職者のニーズより、企業側の思い・都合を優先して情報発信してませんか?」というところです。
私たちが採用サイトを作るとき、必ずその会社の社員さんのアンケートを取っているのですが、そのアンケートからの問題です。
その会社の社員さんは数年前まで求職者だった方たちなので、必ず社員アンケートをとらせていただいています。これまでだいたい300人ぐらいのアンケートがたまっているんですが、その中での傾向から見えるところですね。
アンケートは自由回答なので定量的にとっているわけではないんですが、傾向としてどれが1番多いかを聞いている質問です。どれでしょう。「求職者が特に評価している採用サイト」。
(回答中)
じゃあみなさんの回答を開けてみましょう、はい。
「悪いことも正直に書いてある」。そうですね。これは、まさにそうになります。それから「情報量が多くて具体性がある」。本当にこれも多いですね。やっぱりみなさん、よく掴めていると思います。結果はその通りです。
ここで一つ注目したいのは、2番目の「アットホームで仲良しな雰囲気が伝わる」ですね。これ、むしろ嫌われる傾向が、我々の調査の中では多いです。
アットホームで仲良しだと、なんか壁を感じるとか、入っていけない感があるとか。逆に「アットホームで仲良ししかウリがないのか」と捉えられることもあります。アットホームって、案外ネガティブに捉えられる傾向がある気がしますね。
そんなポイントもありつつ、一番大事なのはやっぱり「正直さ」ですよね。
良いことばかりじゃなくて、悪いこともちゃんと書いている。誤魔化さないで書いている。そんなことを採用サイトに求めているし、そういう採用サイトにいい印象を持つ傾向がありますね。
次の質問、これは逆ですね。「特に評価していないサイトはどれでしょう」です。今のお話を裏返せばいいので、わかると思いますが、まずみなさんの回答をとってみましょうか。
(回答中)
どうでしょう、みなさんの回答は、やっぱりそうですよね。さっきの質問の回答の通り、正直さを求めるということは、キレイごとや精神論しか掲載してない採用サイトのことはやっぱり好まないと。こういう傾向が言えますよね。
あと、この「演出アニメーションが多いことに対する嫌悪感」というのはわりとよく聞くんですよね。たまに大企業さんでお金をかけた、ビュンビュン動いてるようなサイトとか、映像みたいな処理が施されているサイトとか、手間と時間をかけて作っている気がするんですが、あれはけっこう逆効果ですよね。
嫌われちゃう可能性を高めているんじゃないかな?とか、お金の使いどころが間違っているんじゃないかな?とか思ったりしますね。
そして実際の社内アンケートでは、こういう回答をいただいています。ここに書いているようにやっぱりきれいごと、キラキラした話とか理念ばかりで具体性がないみたいなのとか、アットホームとか精神論ばかりみたいことに対しては、けっこうみんな辛辣な回答を寄せることが多いですね。
Indeed Japan 株式会社
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