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これからのオウンドメディアリクルーティング ~ニューノーマル時代の採用はどう変わる?~(全2記事)

2020.11.26

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「ジョブ型かメンバーシップ型か」と考えるのは思考停止 ポストコロナ時代の人事・採用の活路

提供:Indeed Japan 株式会社

2018年より始まったIndeed Japan株式会社主催のイベント「Owned Media Recruiting SUMMIT」。3年目となる今年は初のオンライン開催となりましたが、そのサブタイトルは「ニューノーマル時代の採用のあり方」。新型コロナウイルス感染症の影響により激動の時代となった昨今において、今一度、全体の戦略設計から採用サイト制作、コンテンツ制作に至るまで、オウンドメディアリクルーティングの全体像をあらためて理解できるようなセッションが、数多く設けられました。本パートでは、Day1 セッション1の後編をご紹介します。株式会社サイバーエージェントの曽山哲人氏、ソフトバンク株式会社の源田泰之氏、サイボウズ株式会社の青野誠氏が、オウンドメディアの運営体制や重視すべきポイントなどを明かしました。

オウンドメディアは、採用における有力コンテンツ

黒田真行氏(以下、黒田):今日のセッションは、「これからオウンドメディアを始めよう」と思われている、たくさんの企業の方々にご覧いただいていると思います。先駆者として「こういうことに気をつけたらいいよ」「こういう落とし穴があるよ」といったアドバイスをお聞きしたいと思います。源田さんからお願いします。

源田泰之氏(以下、源田):そんなにたくさん大変なことがあったわけではないのですが、少なくとも現場の社員の工数がかかるんですね。これまではソフトバンクも大手の就活メディアにそれなりのお金をかけて発注していたんですけれども、やっぱりそれと比べると、明らかに採用担当などの負荷は上がります。

これをどう乗り越えるかというと、オウンドメディア化により「どういう効果が想定されるか」をしっかりと現場の社員に伝えないといけないと思います。何よりもオウンドメディア化する目的は、例えば学生や中途の求職者とより良いマッチングを実現するために、会社の中身を知ってもらうことだと思うんですね。

もちろんコロナ前なら対面でじっくりやればいいんですが、やはりマンパワーは限られているので「どんな人がどんな思いでどういうふうに働いているのか」という、よりリアルな会社の状況を伝える。

ソフトバンクの未来を作っていくような人たちにとっては、それがすごく重要なことです。「会社にとっても個人にとっても非常に大切なことなのでやるんだ」ということをしっかり共有していく。

そこができれば、社員も「面倒くさい」と思わずに取り組んでくれると思います。もちろん全体の仕事の中での優先順位付けや取捨選択はある程度した上で、「オウンドメディアは採用の中では非常に有力なコンテンツだ」という判断で進めました。

万人受けを狙うと誰にも伝わらない

黒田:ありがとうございます。曽山さん、お願いできますでしょうか。

曽山哲人氏(以下、曽山):記事を書くときにみんなが意識してくれていることなんですが、「万人受けを狙うと誰にも伝わらない」という罠があります。要は「たくさんの人に見てもらったり、PVを稼ぎたいので、すごくウケる記事にしよう」と思うと、残念ながらスベる。

私は2004年からブログを書いていますが、そのブログでも必ずそうなりますね(笑)。「これ、けっこうみんな見るでしょ~!」というものはだいたいスベる。

黒田:(笑)。

曽山:マーケティングの用語で、私が最近大事にしているキーワードが1つあります。「Prime Prospect(プライム・プロスペクト)」と言って、英語で言うとすごくかっこいい感じですが、「優良な見込み顧客」という意味です。具体的な顔がイメージできるまで読者をイメージしながら記事を書くということです。

仮にこういう人が社外にいるとしたら、彼や彼女に読んでほしいとか、“社会人3年目で仕事をがんばっていて、どんどん手を上げて新しいチャレンジをするような人”というように具体的な1人をイメージしたほうが結果的に記事の反応は良くなります。そういったポイントを大事にしています。

黒田:ありがとうございます。最後に、青野さんからアドバイスをお願いします。

青野:オウンドメディアは乱立気味でいろいろなコンテンツがあります。その中でバズらせることをみんな狙っていくと思うんですけど、普通の社員紹介を載せてもけっこう難しいと思うんですよね。一方、いきなり大きなものを作って大ホームランを狙うというのも、やった結果が無駄に終わる可能性が高いと私自身は思っています。

逆に、社員のTwitterやnoteでの情報発信はすぐにできるので、何もやっていない状態であれば、まずはそこからやっていったほうがいいですし、むしろ率直な情報発信で共感してもらえる方は必ずいると思います。小さいところから始めてみるやり方もあるんじゃないかなと思いますね。

求職者のための「受け皿イベント」と「オンボーディング」

黒田:第2問は、「ポストコロナ時代のオウンドメディアリクルーティングにどう対応していきますか?」という問いかけです。抽象度が高い質問で申し訳ないですけれども、次は青野さんからお願いいたします。

青野誠氏(以下、青野):2つ書きました。オウンドメディアリクルーティングに限ったことじゃないんですけど、「受け皿イベント」と「オンボーディング」と書いています。いろいろな情報発信をしたときに、応募者さんは必ず質問や疑問を持つと思うんですね。その解消は、オンラインコンテンツだけではなかなか難しいだろうと思っています。

まず、1つ目の「受け皿イベント」ですが、私たちは、説明会動画などをいつでも見られるようにしました。一方でイベントで社員と会える場も作っています。具体的には「集まってくださったみなさんの質問にとにかく答えますよ」と、1時間で100~150個ぐらいの質問に答えまくるというイベント「サイボウズQ&Aライブ」をやったんですけど、よい反響をいただきました。みなさん何らかの疑問を持っていて、「働いている人から率直な回答を聞きたい」というニーズはかなりあると思っています。

もう1つの「オンボーディング」ですが、候補者の方は「入ってからどのようにして会社の一員になれるのか」を気にしていると思います。

私たちは、エンジニアの新卒研修で使う資料を全部公開してるんですけど、そういった取り組みも好評です。「オンラインでもこんなふうにトレーニングしてくれるんだ」「チームの一員になれるんだ」という、一種の安心感にもつながっているんじゃないかと思いますね。

黒田:やはりコロナでリアルな接触が減っている分、そういった安心感があることですごく救われる方が多いんだろうなと思いました。ありがとうございました。曽山さん、お願いいたします。

ファクト&リアリティを出していく大切さ

曽山:「ファクト&リアリティ」ということで、ファクトをもっと出さなきゃだめだということをすごく意識しています。具体的には、「うちの会社はたくさんの新規事業をやっていますよ」というときの「たくさん」という形容詞を全部数字に変えることです。

例えば「子会社が150社あって、そのうちの7割に当たる100人ぐらいが20、30代です」と伝えることで、20代の人はよりピンとくるかと思います。まずは「気持ち・気持ち・気持ち」ではなくて、「ファクト・ファクト・ファクト」。

もう1つはリアリティがすごく大事です。オフィスに行けない中でリアリティをどれだけ感じられるかということで、僕らが取り組んでいいるのは「動画」です。実際にどんな仕事をしているのかや、話しているときの目や口の動きが見えることで、機微がすごく伝わるんですよね。

動画を活用することで、うまくいけば普通のテキストで伝えることの10倍~50倍ものパワーがあると考えます。

黒田:リアリティを徹底されているんですね。

求職者の不安を払拭する手段

黒田:ありがとうございます。源田さん、よろしくお願いします。

源田:私のキーワードは「コミュニケーション」です。コロナの状況で、コミュニケーションのあり方は大きく変化してきています。

今年はたぶんみなさんの会社にも、まだ会社に出社したことがない新入社員がたくさんいると思うんですね。そういう人たちとどんなコミュニケーションをとって、チームとしての一体感を出すのか。これは非常に重要なテーマだと思いますが、解があるわけではありません。

学生も就職したい会社に行ったこともなく、社員に直接会ったこともないまま会社を選ばないといけない。非常に不安な状況の中で就職活動を進めないといけないと。ソフトバンクは、この課題を解決したいと思っています。直近の数字ベースで言うと、実は今年のソフトバンクへのインターンの応募数は過去最大で、昨対比でも165パーセントでした。

黒田:おぉ、すごいですね。

源田:応募者が1万人を超えたんですね。やっぱり不安だと思うんです。だから、学生がいろいろな会社の情報を見に行ったり、今まで以上にインターンに申し込んで、その中から情報を得ようとする可能性があると思っているんです。

その不安を払拭する1つの手段が、オウンドメディアだと思っています。直近でやっていることは、働き方改革や在宅勤務をしていく中で、働き方をどう変えていくのかということ。

もう1つが曽山さんもおっしゃいましたけれども、やはり動画を充実させないといけないと思っています。コロナの中でさらに動画を交えて働き方のリアルをどう伝えていくのか。

これもまだ解があるわけではないんですけれども、テクノロジーがどんどん発達している中で、私たちの働き方やチームのコミュニケーションの取り方、上司とのコミュニケーションの取り方もどんどん変わってきていると思うんですよね。将来的にはテクノロジーを活用して、学生の不安の払拭につなげたいと思っています。

オウンドメディアということでは、今はとにかく「この状況下で、学生が知りたいリアルな情報をいかにタイムリーに伝えるか」を考えて、設計している状況です。

ジョブ型とメンバーシップ型のハイブリッド

黒田:ありがとうございます。このまま第3問に入ります。この状況で、にわかに「ジョブ型雇用」というキーワードが叫ばれるようになっています。特に日本独自の総合職のメンバーシップ型から、リモートワークによってセルフマネジメントをしなければいけなくなった背景もあると思うんですけれども、ズバリ賛成ですか? 反対ですか?

それぞれのご見解をお伺いできればと思います。源田さん、よろしくお願いします。

源田:「条件付きで賛成」と思っています。これは、そもそものジョブ型やメンバーシップ型が、単純に「ジョブ型=欧米型の雇用スタイル」とか、「メンバーシップ型=年功序列をベースとした日本型の雇用」と考えると、恐らく思考が停止すると思っています。

ソフトバンクでは、ハイブリッド型のようにしています。人事の役割は基本的に、会社の事業戦略に合わせて人や組織をマッチングさせて、どう事業にドライブをかけるかだと思うんですね。

今は世の中的にはジョブ型がいい、こうしないとまずいんだと、メンバーシップ型はあまりよくないといった風潮がありますが、そもそもなんのために人事の仕事があるのを明確にしておかないと、言葉に惑わされるなと思っています。メンバーシップ型では、一般的に年功序列や終身雇用と言われていますけれども、ソフトバンクで言うハイブリッド型は、少なくとも年功序列ではありません。年齢・国籍・性別もまったく関係なく、あくまでも役割と成果に応じて正しく報酬が支払われることを大事にしています。

一方で、ジョブ型とは少し離れるかなと思っています。新しい事業がどんどん生まれてきて、ソフトバンクの事業の変化は非常に激しい。なので「ジョブディスクリプションにないから私はこの仕事をやりません」ではなく、事業の状況に合わせて柔軟に役割を担ったり推進していくことに対して、正しく報いるというのがソフトバンクらしいなと思っています。

経験やスキルに合わせて、バランスよく適用

源田:ただ終身雇用についてですが、実はソフトバンクは過去に一度もリストラをしていないですし、個人の成長につながる教育制度もかなり充実させています。そういった面だとメンバーシップ型に近いこともやっています。一方で、報酬面や成果に正しく報いるという考え方は、どちらかと言うとジョブ型に近いと思っております。

「ジョブ型がいい」「メンバーシップ型がいい」というよりは、基本のポリシーのようなところですね。当たり前ですが、中途採用はジョブ型に近いですよね。少なくとも入り口はジョブ型に近い中で、ソフトバンクでのカルチャーフィットや柔軟な働き方ができるかどうかを見ながら、最終的に来ていただくかどうかを判断する意味合いが大きいです。

やはり中途の方は経験やスキルといった、俗に言うジョブ型の部分を大事にしています。また、新卒採用でも、エンジニアを中心に専門性が非常に高い学生もすでに出てきています。そういう方には、特定の仕事をアサインするようなジョブ型に近い採用もスタートしております。

配属先のコミットもセットでやっているんですけれども、その割合がすごく多いかと言うとそうではありません。企業の長期インターンなどで働く経験を十分にしたことがある学生の割合はまだまだ少なく、ゼネラリストとして会社で育成していくという考え方もあります。

新卒採用で年間400~500人が入社していますが、スペシャリストかゼネラリストのどちらかじゃないとだめだというよりは両方必要だと思っていますので、バランスを見ながら採用活動を進めている状況です。

黒田:ありがとうございます。曽山さん、お願いいたします。

一律でジョブ型にする必要はまったくない

曽山:これは「ANDで統合」していくことが大事で、どちらかじゃないんですよね。源田さんもおっしゃられていましたが、とにかく手段論を始めた瞬間に自爆するのでやめたほうがいいです。経営の目的は何かを決めて、今どんな課題があって、何のためにやるのかを決めると、人事制度は非常にうまくいきやすいので。

今ジョブ型のウェイトが高い会社は、メンバーシップ型をうまく使わないといけないかもしれないし、逆も然りです。サイバーエージェントはチームを大事にするのでメンバーシップ型の側面もありますが、たとえば中途採用ではジョブ型に近いです。ですので、ANDで会社ごとに統合するのが一番いいんじゃないかなと思います。

黒田:ありがとうございます。青野さん、よろしくお願いします。

青野:私もほとんど一緒ですね。「完全移行は反対」です。ハイブリッドでやっていくのがいいんじゃないでしょうか。源田さん・曽山さんがおっしゃられたように、年功序列ではなくちゃんと評価をするとか、強制転勤ではなくテレワークで対応していくとか。目的を見失わずに、本質に立ち返って「本当は何がやりたいんだっけ」というところから議論していくと、おのずとやり方が見えてくると思いますし、一律でジョブ型にしていく必要はまったくないと思います。

オウンドメディア運営の体制づくりとKGI・KPI設定

黒田:ありがとうございます。会場からたくさんの質問をいただいています。時間をオーバーしてしまったんですが、多くいただいた質問はオウンドメディア運営の体制に関するものです。

「どんな体制でやるのか」「KGI・KPIは何を設定するのか」という質問をいただいているんですけれども、企業規模や段階にもよると思うので、決まったものはないとは思います。オウンドメディアを一番長くやられている青野さんから「どんな体制がいいんですか?」という質問へのアドバイスをいただけますか。

青野:体制としては、私たちは広報がメインでやっているところがあります。定期的に人事との共有会があるんですが、基本的には広報がメインの企画をしています。ライターや専門的なスキルが社内に足りないところは一部外注しながら、外の力も借りてやっています。

KPIについては、先ほど申し上げたようにPVなどはそれほど追っていません。どちらかと言うと、どういう反応があったかですね。「SNS上でこんな意見があった」とか「賛否両論が巻き起こったかどうか」を注視しています。

それは、ターゲットにちゃんとメッセージを届けられて、議論が巻き起こるような一石を投じられるほうが価値が高いと見ているので。逆に「PVがすごかったです」というほうはあまり注目していないです。

とりあえず3ヶ月、記事を出す実験をしてみる

黒田:なるほど、わかりました。曽山さんに「まずは3ヶ月ぐらい記事の本数をがんばってみたら」というコメントを書いていただいたんですけれども、どういうことか教えていただけますか?

曽山:やりようがなかったら、とりあえず3ヶ月実験してみるのがいいと思うんです。基本的には、エントリーした人がどれだけオウンドメディアを見てくれたかが一番大事だと思うんですよ。内定者やエントリーしてくれた方々に、面接で「オウンドメディアってご覧になりました?」と「どんな記事が記憶に残っていますか?」ということを聞いてみる。

そうした回答を1つ1つ束ねていくことがすごく効果的だと思います。さきほどの「バイネームでやったほうがいい」という話とまったく同じなんですけれども、1人に響くことがまず大事なので、そういう部分を考えてもらうのがいいんじゃないかと思います。

黒田:最後に源田さんから、人事の実践力というものに絡めて一言いただければありがたいです。

源田:私はいつも、こうした人事向けのセミナーに出させていただくと、「とにかくやってみよう」ということを伝えています。あまり大きな失敗をしないものなので、とりあえずまず1歩を踏み出して、それで改善点があればPDCAを回していけば結果は良くなると思いますし、オウンドメディアはまさにそういうものだと思うんですよ。

お客様や求職者、学生にどんな有益な情報を届けられたか。それを相手側がどう思うのか、試行錯誤しながら変えていけばいいと思っています。

体制などを一生懸命に組み立ててやるよりは、本当に1人でもまずはやってみることが非常に大事じゃないかなと思っていたりします。

黒田:みなさん、ありがとうございます。めちゃめちゃ濃いお話をいただいて、ぜんぜん時間が足りなかったなと思って反省しているんですけれど、またこういう機会をいただければありがたいです。本当に今日はどうもありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

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