2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
提供:Indeed Japan 株式会社
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黒田真行氏(以下、黒田):ルーセントドアーズの黒田と申します。本日はよろしくお願いいたします。
今日はニューノーマル時代の採用がどう変わっていくのかについて、人事採用の最前線で実績を残していらっしゃる3名の方にお話を伺う機会をいただきました。全体で50分と短い時間ですけれども、ぜひ実りある情報を共有いただければと思っております。
冒頭5分ほど、私からおさらいを含めてオウンドメディアリクルーティングの状況を共有させていただき、その後本題に入らせていただければなと思っております。
簡単に自己紹介をさせていただきます。バブル直前の1988年にリクルートに入りまして、昔は『B-ing』や『とらばーゆ』というメディアがあったんですけれども、その後も『リクナビNEXT』や『リクルートエージェント』で、中途採用事業に約30年関わってきました。
6年前に独立し、人材紹介や経営者の右腕人材のご紹介を事業として行っております。ほかに求人メディアや人材系のサービスの開発のお手伝いをしており、長く中途採用のサービスを見てきたという視点から、今日のお役を仰せつかっている状況です。よろしくお願いいたします。
黒田:まず、オウンドメディアリクルーティングは、ここ数年、一般化してきています。オウンドメディアリクルーティングの定義を共有させていただきます。
資料にありますとおり、「自社の運営するメディアを使って、高付加価値な人材に自社が主体となってメッセージを発信していく」と。自社にとっての優秀人材の共感を喚起していくことで採用につなげていく、能動的なリクルーティングと定義されています。
これまではともすると、人事の方もご多忙で、採用業務を求人広告メディアや人材紹介会社に依存してきた部分も大きかったところ、この2010年、Indeedが日本に上陸した時代くらいからSNSなども使った自社で発信していける余地が出てきました。
その中で、いわゆる自社の採用サイト以外にも、FacebookやTwitter、あるいは社員自体がメディアとなってリファラル採用も含めてオウンドメディアリクルーティングが広がってきているという認識でございます。
オウンドメディアリクルーティングは、ツールとしては大きく2つあります。1つは職務要件を詳細に記述した、いわゆる求人票(ジョブディスクリプション)。そして、自社の魅力・風土・価値観などを伝えるシェアードバリューコンテンツです。この2つのパーツで、オウンドメディアリクルーティングが展開されていく流れになっています。
ジョブディスクリプションとシェアードバリューコンテンツによって、いかに自社にとって必要な人材と出会って選ばれる展開を作っていくかということです。
過去30年で言うと、景気の山谷がいろいろとあります。直近では、安倍首相の辞任報道が賑わっておりますが、今年になってからで言うと、新型コロナウイルスによって大きなインパクトが生まれてきているということです。
今回のNew Normalという言葉の根っこにあるのが、新型コロナ感染症のショックということで、いろいろな業界が影響を受けています。ご承知のとおりアパレルや旅行や外食、ほかにも悲喜こもごもと言うか、会社の戦略によって業績も大幅にまだら模様になってきているという状況です。
黒田:コロナショックがあったことで、特に7月以降は一見求人が激減したので、人を採用する企業によっては「買い手市場になったんじゃないか」という声も一部あるんですけれども、一方で求職者側も大きく変化してきています。
この過去10年ほどの変化で言うと、一般的な口コミサイトでは食べログやカカクコムなどがありますが、転職系についても口コミサイトが一般化してきています。
2000年頃に規制緩和があって、急激に人材紹介が増えてきており、情報を知っている側と知らない側の差がどんどん少なくなってきています。結果的に求職者側が仕事を選んだり、会社を選ぶ際の情報リテラシーが急激に進化してきているという背景があります。また、価値観の変化として、給与や年収を重視する金銭的報酬重視型から、社会的意義や自己充足度、成長といった心理的な報酬を重視する流れも出てきています。
こうした中で、オウンドメディアリクルーティングをどう進めていくかが今回のテーマでございます。それでは、今日ご登場いただくお三方について、それぞれ自己紹介をお願いします。まず曽山さんからよろしくお願いいたします。
曽山哲人氏(以下、曽山):はい。サイバーエージェントの曽山と申します。みなさん、今日はよろしくお願いします。黒田さん、今日は貴重な機会をいただきありがとうございます。
15年人事をやってきた中でも、このコロナによって採用が大きく変わるなと思っています。今日のテーマはオウンドメディアリクルーティングですけれども、自社の発信をどうしていくかがとても大事です。求職者の方はWebサイトを中心に情報を集めますので、今日はたくさんディスカッションができるといいなと思っています。
サイバーエージェントの場合は、『FEATUReS』というオウンドサイトで、社員インタビューや企業文化、独自の取り組みなど会社や採用に関する幅広い情報について発信しています。また私個人もSNSなどで積極的に情報を発信しています。アカウント名はソヤマンです。ぜひよろしくお願いします。
黒田:はい。ありがとうございます。続きまして源田さん、よろしくお願いいたします。
源田泰之氏(以下、源田):みなさんこんにちは。ソフトバンクの源田と申します。私も人事歴12~13年ということで、だいぶ人事が長くなってきています。
ソフトバンクには、兼務をたくさんする文化があります。かなりグループ会社が増えてきましたので、直近でもグループ人事統括室というものを作って、グループ会社全体の人事の力でグループの事業を発展させていこうという取り組みの一環としてスタートし、この組織を兼務しています。
あとは少し変わったところで言うと、ソフトバンクイノベンチャーという新規事業開発の仕組みを設けています。まさにオープンイノベーションを創出するための仕組みで、社員が社外の人ともつながりながら自分のやりたい事業を実現していくという制度です。
最後にもう1つ、公益財団法人 孫正義育英財団の事務局をやっています。これは孫さんが個人資産で行っているもので、世の中の異能や異才と言われる人たちが才能を開花できるようにするために何ができるかということで、ソフトバンクの取り組みとは別に、ノンプロフィットの活動としてやっています。
今日は採用のお話ができるということで、非常に楽しみにしています。まさに冒頭で黒田さんや曽山さんがおっしゃったとおり、採用のあり方が大きく変わってくる中で、オウンドメディアをどう活用して、学生や求職者に自社のことをどうわかってもらうか。
しかも、必要以上に良く見せようとせずにリアルな姿をどうわかってもらうかということは、非常に重要だなと思っています。今日はそのあたりをディスカッションできればと思います。よろしくお願いいたします。
黒田:よろしくお願いします。ありがとうございます。それでは青野さん、よろしくお願いいたします。
青野誠氏(以下、青野):サイボウズで人事をしております、青野と申します。私は2006年に新卒でサイボウズに入社しまして、最初は営業やビジネス側をやっていたんですけれども、2011年頃から人事に携わっています。
今は社内では採用や育成、制度の企画などをやっております。ずっとサイボウズに所属しているんですけど、たまに副業をしてみたりというキャリアです。
サイボウズは、昨年のIndeedさんのオウンドメディアリクルーティングアワードでグランプリに選んでいただいて。積極的に情報発信をしていたんですけれども、そこもコロナをきっかけにかなり変化してきました。
また、働き方も変わって、私自身ももう4月からオフィスには2回ぐらいしか行っていないですし、オンライン中心でいろいろな活動をしています。今日は、そのあたりの取り組みをお話しさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
黒田:よろしくお願いします。ありがとうございます。それでは、これから3つの大きな問いをみなさんに投げかけさせていただいて、それを元にお話をおうかがいできればと思っております。
第1問は、オウンドメディアリクルーティングが当たり前になってくる時代に、みなさんはそれぞれ先端の動きを支えておられます。そこで、自社のオウンドメディアを使った採用を自己評価して、点数をお伺いできればなと思います。
お手元のフリップに点数を書き込んでいただき、お話をうかがえればと思います。今映っている青野さんから、順番にお願いできますでしょうか。
青野:画面にうまく出せるのかな(笑)。70点と書きました。
黒田:ありがとうございます。
青野:実は私たちは自社の発信として、採用文脈だけではないんですけれど、会社として初めてテレビCMなどを大々的にやりました。「がんばるな、ニッポン。」というちょっとキャッチーなタイトルで出させていただいて、テレビで取り上げられたりもして、実は採用の応募数では、今年7月が会社創業以来過去最高の応募数になりました。
黒田:おぉー、すごいですね。
青野:オンラインで説明会をやると、オフラインよりも集客数は非常に良い状況なので、けっこううまくいってそうなところはあります。
私たちはBtoBの会社なのですが、「サイボウズの存在を知った」という認知フェーズまでは一気に行けたかなと思っています。ただ、サイボウズがやっている事業や、私たちが目指している方向まで理解して応募いただけているかというと、そこの数はそんなに変わっていない実感があります。
オンラインなんですけど、もう少しサイボウズのことを本当に理解していただいたり、共感を高めるような活動をしていく。そういう情報発信をしていかなきゃいけないところに、少しフェーズが変わってきたと感じていますね。そういう意味でまだ課題があるということで、70点をつけました。
黒田:わかりました。ありがとうございます。昨年はオウンドメディアリクルーティングアワードでグランプリを受賞されましたが、『サイボウズ式』はもっと長くやってますよね?
青野:そうですね。オウンドメディア『サイボウズ式』を立ち上げたのが2011年になります。
黒田:『サイボウズ式』というオウンドメディアを中心に、そのメディアを見たからサイボウズに応募されたという方が、非常に大勢入社されているとうかがったんですけれども。自社メディアを作られていない企業さんもたくさんいらっしゃると思うので、その辺のコツとか考え方とか。また、運用についてもすごく手間がかかると思うので、なぜそれができたのかを、お伺いできればと思います。
青野:私たちは他社さんとちょっと違うかもしれませんけれども、事業を加速させる文脈でオウンドメディアを始めたところがあります。要は「サイボウズが何を大事にしているか」を伝えにいかないと、売っている商品、グループウェアだけでの差別化は難しいという、企業ブランディングの文脈で始まっています。
なので、そこをしっかり伝えるために、短期的なPVや注目度にはあまりとらわれずに、まずは自分たちが出したいメッセージを継続して続けようと。立ち上げた最初の頃は、「なかなかPVが出ないね」「しんどいね」「やめよう」という企業さんは多いと思いますが、あまりPVにとらわれずにやってきたところが非常に大きくて。継続しているオウンドメディアと言えば『サイボウズ式』という感じになってきたかなと思っていますね。
黒田:視聴していただいているみなさんも、ぜひお時間があれば『サイボウズ式』をご覧ください。昨年キャリア採用で入社された方の多くが『サイボウズ式』を見ていたと。
青野:(笑)。そうですね。非常に効果を感じているところです。ただ、先ほど申し上げたように、やはり働き方やキャッチーな部分がどんどん先に出ていく部分があります。実際に入ってやる仕事は、グループウェアの販売やITソフトウェアに関わるところなので、実務に近い話を含めてもうちょっと出していって、共感いただかなきゃいけないと思います。
黒田:ありがとうございます。続いて曽山さん、お願いできますでしょうか。
曽山:とりあえず70点と書いたのですが、いつも70点ぐらいがちょうどいいんじゃないかなと思っています。満点とは少し言いにくいんです。なぜかというと、技術革新で情報も変わっているので、常に満点はないと理解しています。
ただ、「今求められている情報をちゃんと出せているのか」という点に注力しなければいけないなと思っています。オウンドメディアの『FEATUReS』でも、最近はまず記事の本数を増やすようにしています。
週に1本ぐらいかなと思っていたところ、週に2〜3本出るようになっています。月10本ぐらい出していると、わかりやすくPVが倍ぐらいに伸びました。たくさん書くと、当たり記事が出る可能性も上がりますから、どちらかというと小さく継続。これはもう青野さんのおっしゃるとおりだと思います。そういう部分で積み重ねている感じです。
黒田:過去の曽山さんのお話をうかがっていると、経営者や社員の顔を見せたり、職種別というキーワードで、細かくリアリティを高めていくことを意識されているのかなと思います。
曽山:そうですね。内容によっては複数人の場合もありますが、1名の社員に焦点を当てたインタビュー記事が多いですね。そして社員の生の台詞を載せることをすごく大事にしています。
記事ってきれいに見せようとすると、広報や編集で凡庸な言葉にしてしまったり、逆に本人の言葉ではないかっこいい言葉を作ってしまうと、書かれた本人がシェアしなかったりします。基本的には「書かれた本人が自分でシェアしたくなるような記事になっているか?」ということがすごく大事なポイントです。そうすると、周りにいた同僚も「おぉ○○くん、出てたじゃん」と会話が盛り上がりシェアが始まりやすいです。
シェアしたくなるコンテンツにするには、タイトルが大事です。タイトルが自分の価値観と違うとシェアしにくい。それから、1枚目のサムネイル画像がすごく大事。サムネイル画像が自分らしく写っていないものはシェアしたくないので、タイトルとサムネイル画像の2つがすごく大事だと思います。
黒田:広報的にきれいにまとめようとするところと、リアリティを追うときに、仕事でしんどいところやマイナス面をどこまで出すかという悩ましいところがあると思います。その辺りはいかがお考えでしょうか?
曽山:基本はなるべくそのまま出す。ただ、誤解されてしまうようなものはやっぱり出さないほうがいいので。誤解されるかどうかを判断するところが、広報として一番大事じゃないかなと思います。
できればきついことはきついと言ったほうがいいですし、例えば私たちはスタートアップ企業をたくさん作っていて、若手社員が社長をやっているケースもあります。はっきり言って、経営者として決断することは大変なんです。けれども、それがどれぐらい大変なのか、生々しさもちゃんと書いたほうがいい。この勇気があればあるほど、ちゃんと伝わるんじゃないかなと思っています。
黒田:ある種のスクリーニングでもあるわけですよね。
曽山:やはり「サイバーエージェントはこういう価値観の会社ですよ」ということが生の声だと伝わります。それを見ていただいて、「あぁ響く」という人もいれば、「別の会社を探そう」という人もいる。それは入ってから問題が起きるより、ある意味すごく健全なことだと思いますね。
黒田:わかりました。ありがとうございます。源田さんお願いできますでしょうか。
源田:はい。私は、じゃじゃん。
黒田:おー、65点。
源田:他の2社が70点を出されていたので、まぁ65点かなというところがあるんですけれども……それは冗談で、本当に最初から65点かなと思ったんですね。
オウンドメディア化して良いところと悪いところのお話を少ししますと、これも当たり前の話なんですけど、まず良いところはタイムリーにリアルな情報を出せること。曽山さんもおっしゃっていましたけれども、飾った言葉ではなく、その人の言葉で情報が出せると。
最近は、コロナの影響で働き方も大きく変わってきています。ですので、働き方の記事をタイムリーに出すなどの取り組みができることはすごくいいなと思っています。例えば新卒向けに、「どんな事業をやっているか?」という事業責任者のインタビューを載せていたんですけれども、あまりそういうのはPVが伸びないんですね。
一方で、その事業に従事している3年目、4年目の社員のインタビューを載せるとPVが伸びていく。そうした数字を見ながら試行錯誤して、より学生のみなさんにとってためになるものができれば非常にいいなと思っています。
ソフトバンクの場合はオウンドメディア化して比較的すぐに成果が出て、PVで言うと1.5倍になりました。今はコロナの影響もありますが、まだどんどん伸びている状況ですね。
源田:課題については、もしかしたらオウンドメディアに限ったことではないかもしれませんけれども、ソフトバンクは通信事業のほかにも、いろいろな新規事業に手を広げている状況で、役割も事業もたくさんあります。
例えば、エンジニアの中でもいろいろな働き方がありますし、ひとくくりに営業とも言えないと。さらに事業も多岐に及んでいる中で、全員の仕事内容を載せるわけにもいかないので、学生が本当に知りたい情報は「どういう職種の、どういう年齢層の、もしくは国籍の、どんな情報なんだろう」ということを、ある程度予測をつけて出していかないといけないんですね。そのターゲット合わせが非常に難しいなと思っています。
もう1つは、学生がソフトバンクのオウンドメディアサイトからリクルーティングサイトに入ってきたときに、その人の興味に合ったものを見つけやすいようなUI・UXの工夫には、まだまだ課題があるなと思っています。
黒田:なるほど。ありがとうございます。源田さんの以前のインタビューを拝見して、ソフトバンクユニバーシティという社内教育の制度で、スキルを持った社員から講師を募集して研修を内製化するという取り組みを伺いました。
採用についても、そうした現場の方に出ていただいて、PRをされているんでしょうか。
源田:そうですね。たぶんいろいろな会社と同様に、私どももリクルーター制度を設けています。その部門で活躍する社員や、学生に働き方を伝えたいという思いのある社員に手を挙げてもらうほか、毎年合計で200名~300名ぐらいを各部門からリクルーターとして推薦してもらっています。そうした人たちに、先輩社員面談や学生のフォローに従事していただいています。
黒田:なるほど、わかりました。
Indeed Japan 株式会社
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