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デンソーが描く未来の快適車内空間 社員講演②(全1記事)

2020.09.29

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快適な車内空間を作るには認知・判断・作用の3技術が必要 デンソーが描く未来の快適車内空間とは

提供:株式会社デンソー

デンソーのビジョンや取り組みを紹介するイベント「DENSO Tech Links Tokyo」。第8回は、「デンソーが描く未来の快適車内空間」をテーマに、「心地よく過ごせる車内空間とはどいうものなのか」について、3人の社員がオンラインで講演しました。サーマルシステム先行開発部将来キャビン開発室の松岡孝氏からは、将来の快適なキャビンを実現するための技術について紹介します。

未来の車に求められる車内空間の過ごし方

松岡孝氏(以下、松岡):サーマルシステム先行開発部の松岡です。よろしくお願いします。本日は「体験価値を高める車内空間の過ごし方とその実現技術」についてお話します。

先ほど八木から、未来の車内での過ごし方についてのコンセプトムービーの紹介がありました。私からは、私たちが考える快適な車内に関わる技術を少しだけブレイクダウンしてお話しします。

まず初めに「未来のクルマに求められる車内空間の過ごし方」ということで、私たちは「シーンに応じて人に合わせた五感作用でココロも身体も満たされる」ということを考えています。

このような考えに至った背景として、今私が所属しているサーマルシステム事業グループでは、カーエアコンを始めとした熱機器製品や、熱マネジメントの製品を開発しています。

カーエアコンの開発では、夏の暑いときには車内を涼しくするとか、逆に冬の寒いときには車内を温かくするといった技術を作り、車内の快適に貢献してきました。

しかし、先ほどのコンセプトムービーにあったような、自動運転だったり、シェアカー、ライドシェアが広がった時代を見据えたときに、運転というタスクが少なくなって、車内の過ごし方は多様化していくと予想されています。

そこで、カーエアコンでの温熱的な快適はもちろんべースにありますが、状況に応じて快適の感じ方は人それぞれで変わるということで、「シーンや人に合わせて」という言葉が出てきました。そして、車内の使い方が多様化し、クルマの中ではどのようなことをしたいか考えたときに、ココロも身体も満たすために、ここに示した4つがユーザーにとってうれしいことなのではと考えました。

1つ目がフォーカスです。これは、運転や作業への集中を維持することを指しています。運転中眠たい人を起こす機能や、完全に自動運転になると、その時間に仕事をしたいという人もいると思いますので、より集中しやすい環境にすることを考えています。

2つ目はエナジーです。これは、ダルさを軽減して活力を上げることを指します。昨今疲れが溜まっている方も非常に多いと思うので、クルマに乗ることで元気になれるとうれしい、ということですね。肉体的な疲れだけでなく、心がウキウキしてくる・ワクワクしてくるようなエナジーも、ここに含まれます。

3つ目がリラックスです。皆さんリラックスできる空間、場所をそれぞれお持ちだと思いますが、クルマの中でももっとリラックスできるようにしたい、クルマの中だからこそリラックスできるという空間づくりをしたいですね。

4つ目がスリープです。先ほど「完全な自動運転が実現したら、クルマの中で仕事をしたい人がいるのではないか」と言いましたが、逆にその時間は寝たいという人もいると思います。私たちは、クルマに乗っている時間で効率よく睡眠できることを目指しています。

今回このセミナーの前に「クルマの中でこんなことしたい」というアンケートに回答いただいたのですが、その中で「クルマの中で寝たい」という人が非常に多かったので、ニーズは高いのかなと考えています。

認知・判断・作用の3つの技術が揃うことが必要

次に、先ほどのような空間や過ごし方をするために必要となる技術について紹介します。「シーンに応じて人に合わせた五感作用でココロも身体も満たされる」と説明したのですが、そういった空間を作るために私たちが必要だと考えている技術としては、人の状態を認知・判断する、そして人の状態に作用する、これら3つの技術が揃うことが必要と考えています。

「認知」は乗員に関する情報を取得する。「判断」に関しては乗員の状態を推定する。これらはシーンに応じてや人に合わせた機能を実現する技術です。最後は「作用」で、五感作用で心も体も満たされるために、乗員を理想状態に誘導する。こういった認知・判断・作用の技術が必要になると考えています。

ここからは認知・判断・作用について、どんな技術開発が行われているかを紹介します。

「認知」の技術

まずは「認知」の技術ですね。ここでいう認知は、乗員に関する情報を取得することです。先ほどのムービーに登場したシーンですが、寝ている女性のところに何かバイタルデータのような数字が出ていました。これを実現するためには、クルマの中に乗員情報のセンシングデバイスをいろいろ載せないといけません。

どういったセンシングデバイスが今開発されているか紹介します。1つ目が一番左にある赤外線センサーで、こちらは赤外線を使って乗員の体温表面温度を計測するセンサーです。

2つ目がドライバーカメラで、デンソーではドライバーステータスモニター、略してDSMという名称で技術開発しているのですが、ドライバーの顔の映像を撮るカメラです。

3つ目が生体センサーです。乗員のことをよく知るためには、体の中もしっかりと見てあげなければいけないので、心電図を測ったり脈波を測定するようなセンサーの開発も行っています。

最後は車両情報で、やはりドライバーを知るためには、ドライバーがどのように車両を運転しているかが非常に重要な情報となりますので、そういった情報を取っています。

「判断」の技術

「判断」の技術を紹介します。ここでいう判断は、乗員の状態を推定する技術のことです。先ほどのムービーでは、男性と女性が座っていて、その間にエージェントがいるようなシーンがありました。ムービーを見ていただくと、このエージェントが「エナジーモードを入れておきました」というような提案をしてくれていて、実際にそういうモードが自動でONされています。

エージェントは、恐らくこの男性の状態をセンシングして、疲れているだろうと推定して、エナジーモードを提案してあげています。これを実現するためにどんな技術が必要かというと、先ほどの乗員情報のセンシングデバイスに加え、乗員の状態推定アルゴリズムの開発が必要となります。

どのようなアルゴリズムを作っているのかというと、赤外線センサーで取った情報を基に、乗員が暑いもしくは寒いと思っている、部位ごとに温熱感を推定するようなアルゴリズムの開発を行っています。

その他フォーカスに関わるところであれば、ドライバーカメラで瞼の開度などを測ることで眠気を推定するアルゴリズムや、カメラがあればドライバーの顔向きや目線もわかりますので、そこから運転にしっかりと注意を向けているのかという推定のアルゴリズムも作っています。

他にリラックスであれば、ストレスや感情をみたりとか、エナジーに関わるところであれば疲労感などをみて、乗員の状態を推定するアルゴリズムも盛んに行っています。

「作用」の技術

続いて「作用」の技術です。ここでいう作用は「乗員を理想状態に誘導する」ことで、ムービーの中でも非常にリラックスしたような女性の映像が出てきます。乗員の状態を知るというのも非常に重要なんですが、やはりこの作用の部分がないと、乗員を理想状態にもっていけません。そのためにはどういった技術開発をしていくかを紹介します。

まず1つ目が、左側にある五感作用デバイスですね。クルマの中にはカーエアコンを始めとしてシート空調や、あとはフレグランスと書きましたが、香りの出る装置とか、イルミネーション、オーディオ、表示、のように五感を刺激するようなデバイスが非常に多く載っています。デンソーでも、こういったさまざまなデバイスの開発を行っています。

ではこういうデバイスがあれば、理想状態に導けるかというと、それだけではまだ足りません。右側の制御アルゴリズムで、先ほどから言っている通りフォーカスや、エナジー、リラックス、スリープという目標となる状態を実現するためには、五感作用デバイスをどのように動かしたら一番いいのか、適した制御はどのようなものかといった技術開発もしっかりと行っています。

認知・判断・作用の技術を車にどう載せていくか

次にシステムの構成で、先ほどからご紹介している認知・判断・作用の技術をクルマにどう載せていくかを紹介します。認知のセンシングデバイスや、作用の五感作用デバイスなどはハードウェアがあるので、車載化するところはイメージしやすいと思うのですが、状態推定のアルゴリズムや五感作用デバイスの制御アルゴリズムは、どのようにクルマに搭載されているのかを紹介します。

クルマの中には、ECUという小さなコンピューターのようなものが非常にたくさん載っています。そういったコンピューターに状態推定のアルゴリズムや五感作用デバイスの制御アルゴリズムを載せて各種デバイスの制御を行っています。将来的には、クルマの外にあるサーバとコネクテッドの機能で通信してデバイスを動かす未来も来るかもしれないですね。

最後にデンソーのコックピットやキャビンの開発の強みについて紹介します。強みの一つとして、幅広い技術領域を活かして、認知・判断・作用の技術や製品開発を一貫して開発できるところだと考えています。

開発段階では、人間特性の基礎研究であったり、状態を推定するアルゴリズムではAIの技術なども取り入れたりとさまざまな専門部署と連携しながら開発をしています。

これからも、幅広い技術領域を活かして安心で快適な車内空間を創出していきたいと考えいています。

私からの発表は以上です。ありがとうございました。

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