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アカマイから見た20年間のインターネットの進化(全2記事)

2020.09.29

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博士課程で学んだ知識を実務にどう活かす? アカマイの技術者が語る、複雑な課題を解決するためのスキルセット

提供:アカマイ・テクノロジーズ合同会社

2020年6月23~26日にかけて開催された、アカマイ・テクノロジーズ合同会社が主催するオンラインカンファレンス「Akamai TechWeek 2020 Japan」。キーノートセッション「アカマイから見た20年間のインターネットの進化」では、アカマイの立ち上げからアカマイの技術の進化を支えてきたAkamai Technologies Inc. FellowのErik Nygren氏が、インターネットの歴史とテクノロジーの進化について語りました。本対談では、アカマイの未来を担う若手技術者としてアカマイ・テクノロジーズ合同会社 セキュリティサービス部セキュリティソリューションズ・アーキテクトの齊藤聡美氏を迎え、各々が博士課程で学んだことをどう実務に活かしているのかを聞きながら、セッションのテーマをさらに深掘りしていきます。

「ゼロトラスト」が必要になっていく

モデレーター:用意していた質問はあと3つあります。1つがテクニカル系で、残り2つはそれ以外になるんですが、まずはテクニカル系の質問からいきたいと思います。

今は2020年で節目の年なので過去10年の振り返りをやらせてもらったんですが、次の10年間を見たときにテクノロジーで何が重要になりそうか、コメントをいただいてもよろしいでしょうか。

Erik Nygren氏(以下、Erik):これから10年間はとくに双方向、インタラクティブなインターネットのアプリケーションにおける低遅延というのが極めて重要になってきます。ゲーミングやVR、ビデオカンファレンスといった双方向のアプリケーションが増えてきますので、帯域やスケールも相変わらず重要ではあるんですが、とくにこの低遅延というのが重要になってくると考えます。

それによってプロトコルスタックも変わってくるでしょう。まずラストマイルのネットワークにおけるBufferbloatや遅延を防ぐ必要がありますし、より多くのコンテンツやアプリケーションをエッジで動かすというのが重要になってきます。

そしてもう1つ、企業が処理するセキュリティモデルが大きく変わってくるでしょう。今までは間にVPNやファイアウォールがあって、その中であれば信頼できると思われていたのが、ネットワークの仕組みがより複雑になり、さまざまなデバイスが出てきて、かつコロナウイルスの影響でテレワークが多くなったということで今までのセキュリティモデルが立ち行かなくなっています。

ここで、ゼロトラストという仕組みがますます求められるようになります。つまり、「ここの境界の中であれば安全」ということではなく、一人ひとりのユーザやデバイスごとに認証・認可を行って、それをトラストしていくことが重要になってきます。自宅など社外にいるユーザと会社の中にいるユーザなど、多様なユーザのセキュリティレベルを適切に分けていく仕組みが必要になります。

アカマイは、こういったモデルへの移行に20年間かけて移行してきまして、ゼロトラストセキュリティの概念に基づいた製品を世に出しています。お客様はアカマイの製品やテクノロジーを通して、このゼロトラストを実感していただくことができます。

また、このモバイルの世界において、IoTやConnected Deviceが増えていくことでセキュリティの課題はより深刻になってきます。齊藤さんもおっしゃっていましたが、例えばConnected Carは、セキュリティを維持するために常にパッチを充てるなどというのは簡単なことではありません。

またIoTのデバイスやモバイルデバイスが増えていくに従い、インターネットも拡張していく必要があります。そういった意味でIPv6の重要性が増していくでしょう。今はIPv6が必須ではなくても、10年後にはIPv6はなくてはならない存在になっていると思います。

IPv6の普及について

モデレーター:Erikさんありがとうございます。非常に興味深いストーリーで、Erikさんのプレゼン(「Akamai TechWeek 2020 Japan」のキーノートセッション)でも、IPv6は日本でももう少し早く普及しないのかという質問が出ましたが、おそらく今後の流れを汲んでいくと自ずと普及していくものだということですね。

Erik:ネットワークプロバイダ、コンテンツプロバイダ、そしてデバイス側の3者が進化しなければIPv6の普及は進みません。だからこそIPv6の普及には何十年もかかっています。この3者がみんなしっかりとIPv6を包含できるようになって初めてIPv4からの移行が進むようになります。

主要なOSやWebブラウザやモバイルクライアントではだいぶ前から既にIPv6は入っていますが、家電やゲーミングコンソールといったところにもこれからIPv6が入っていくでしょう。また、世界中の主要なネットワーク事業者もIPv6化が進んでいますし、こういったかたちでIPv6の普及が進んでいます。

アカマイのお客様もどんどんIPv6の普及を進めています。また、たとえばインドではストリーミングのイベントを開催するとトラフィックの半分がIPv6になっています。IPv6がどんどんマジョリティになって、IPv4のほうが小数派になっている状況です。インド以外の国でもこのようなかたちで進んでいくと思われます。

モデレーター:まさしくインターネットの裏側からみた進化と今後の10年というコメントだったと思います。Erikさんありがとうございます。

モデレーター:齊藤さんから見て、これからの10年間で技術的な重要性はどこにありそうでしょうか?

齊藤聡美氏(以下、齊藤):そうですね。やはり先ほどのスライドに出した通り、IoTはますます大きな課題になってくるのかなと思っています。それは先ほどErikさんもおっしゃったように、IPv6と一緒に取り組む課題です。加えて、IoT機器を使っている人が知らぬ間につながって、情報が送られるというのも、今後課題になってくると考えています。

音声アシスタントが知らない間に情報を収集している・していないの議論がありましたが、インターネットにつながるデバイスが増えてくるとそういった議論もますます増えてくるはずですし、知らない間につながるということに抵抗感や恐怖を覚えてくる人の声も大きくなるのではないかと思っています。

「つながらない権利」を主張し出す人も出てきたりするのではないでしょうか。

モデレーター:まさしく私も四六時中つながっているので若干病気になりそうで、つながらない権利があったら本当に使いたいなと思います。

(一同笑)

博士課程で学んだ経験がどう活きるか

モデレーター:齊藤さんありがとうございました。用意した技術的な質問はあと2問になります。ErikさんはPh.D(博士課程)の途中でアカマイに入られたんですが、日本のPh.Dに行かれている人向けのメッセージをいただければと思います。齊藤さんは現在アカマイで活躍中ですが、日本ではPh.Dから民間の企業に入って活躍するというケースがまだまだ少ないように思えます。

一方で、アメリカやアカマイを見ていると、Ph.Dに限らずそういう学術機関で突き詰めていったところが評価されて活躍している例が増えています。こういった日本の博士号をもつ方たちに対して、Ph.Dでの経験が役立った等あったらアドバイスいただけないでしょうか。

Erik:そうですね。アカマイには博士課程で学んでいた方々、もしくは博士号を取得した方々がいろいろな役職で働いています。

私個人の経験を言いますと、博士課程に行っていなければアカマイが現在解決しているような複雑なシステム上の問題を理解できなかっただろうと思いますし、そういった問題を分析するためのツールを博士課程の勉強が与えてくれました。ですので、Ph.Dが私にとって非常に有用な背景知識となっております。

こういった博士課程においては、データの分析手法や非常に複雑な問題に取り組む方法、またテクニカルライティングなどを学びます。これはすべて今のアカマイの仕事で役に立っています。パフォーマンスの問題やセキュリティの分析を行う際も、こういった分析のスキルが不可欠になっていて、これはすべて博士課程で学んだものです。

博士課程で実際に分析していたインターネットのデータなんですが、そのデータを見るやり方が、まさに今アカマイでパフォーマンスの改善や分析、またはサイトの最適化を行う際のスキルとまったく同じなわけです。

また、アカマイの開発部門、エンジニアリング部門のPh.Dホルダーのリーダーにはさまざまな分野で博士号を持っている方がいます。それは物理学や生化学、もしくはコンピュータサイエンスなどの複数の分野でPh.Dを取っている方々が今のアカマイの幹部にいます。代表的なところで、アカマイの創業者兼CEOのトム・レイトンは博士であり、MITで数学とコンピュータサイエンスを教えていた方です。

モデレーター:力強いメッセージで、もしかしたら日本でPh.Dを取って民間企業に行こうかと迷っている人に対してはすごく元気付けられるメッセージだったのではないでしょうか。ありがとうございます。

低レイヤーを理解することの重要性

モデレーター:では最後になります。今日の対談で齊藤さんがErikにぜひ聞きたいことが2つあるということで、その2つの質問をもって終わりにしたいと思います。

齊藤:はい。私が初めてパソコンを触ったのが10代の小学生のときで、Windows 95だったんですね。Windows 95で初めてインターネットにつないだことを覚えています。なので、個人的にはつながることがある意味当たり前の感覚で今まで来ているんですね。

私たちや私たちより下のいわゆるデジタルネイティブ、インターネットネイティブの世代に対して、低レイヤーの研究開発を行ってきているErikさんの立場としてメッセージです。今の私たちが低レイヤーに触れることや考えることはあまりなくなっているように思えるんですが、そこでどういうときに低レイヤーのことを考えるのが重要なのかを話していただきたいと思います。

Erik:実は私自身もデジタルネイティブだと考えています。なぜかというと、初めて私がパソコンに触れたのがまだ子どもだった頃で、父が勤める会社で初めて導入するコンピュータを会社に導入する前にいったん家に持ち帰ってきたことがきっかけでした。ですので、私自身も非常に若い年齢からコンピュータに触れるということができました。

当時、SNSの前にあった掲示板でいろいろな書き込みをしていて、そこでも今のSNSが持っているさまざまな課題は既にありました。いずれにしても、システムがどう動くか理解するには、下から上までの規格について理解しておくというのは非常に有用です。

一番下のレイヤー1のシリコンから無線回線、そして一番上位のアプリケーションのレイヤーまで知っておいて決して損はありません。また、このレイヤーを下から上まで理解しているということは、パフォーマンスやセキュリティの問題をより理解することにも役立ちます。

通常、パフォーマンスの問題というのはどこかのレイヤー、もしくはレイヤーの間で起こっているわけです。そういったパフォーマンスが劣化する理由というのは、例えばケーブル自体が壊れていたり、ケーブルで再送が何回も行われていたり、電子レンジとWi-Fiの間で無線LANの干渉が生じていたり、Webブラウザの問題であったり、さまざまな理由が考えられます。

また、とくにセキュリティにおいては、攻撃者はレイヤーについてはまったく気にしていないので、どこのレイヤーでも弱いところをどこでも突いてきます。それは現実世界でも言えます。1つのこと、1つのレイヤーについて、1つの要素についてだけわかっているのではなく、全体についてわかっていることによって、より多くの問題が解決できるようになります。

ダークウェブとテクノロジーの倫理

齊藤:ありがとうございます。2つ目です。インターネットの普及によって私たちの生活が便利になったと思うんですが、個人的に気になっているのがダークウェブです。ダークウェブは違法物の取引とか、犯罪者にとってとても便利なインフラになってしまっています。

インターネットに限らず、新しい技術には良い面と悪い面があると思うんですが、インターネットの進化の最前線で活躍されてきたErikさんに、このダークウェブについて考えをお聞きしたいです。

Erik:そうですね。インターネットが進化したことによって、悪意のある人たちがよりパワーを持ったというのは正しくないと思います。ダークウェブは他の人たちがアクセスできず、彼らだけがアクセスするものです。

インターネットのテクノロジーは進化することによってどんどん民主化されてきていて、参入障壁が低くなってきています。つまり、高度なテクノロジーに誰でもアクセスできるようになってきています。それに伴って悪者もアクセスできるようになってきていて、インターネットを使うさまざまなユーザがセキュリティの危険に晒される。

それでいいのだというのは決して正しくありません。私たちが取るべき立場は、セキュリティの能力を上げていって、人々が攻撃リスクに晒されないために、強固なセキュリティによって守れるよう最大限努めていくことだと考えています。

また、こういったテクノロジーを作る上で、倫理の側面は常に考えておかなければなりません。単にテクノロジーが可能であるから実現するのではなくて、倫理を考えた上で本当に作りたいのか。そこを鑑みた上でテクノロジーを実現していくべきだと思います。

齊藤さんがおっしゃったIoT、Connected Deviceのことに関しても本当にこのようなテクノロジーを人々の家に入れていいのか、常に倫理的なリスクを考えていく必要があります。とくにこのIoTの領域ではたセキュリティがしっかりと確保された上でのみ人々に提供していくべきものだと考えます。

また、テクノロジーの倫理を考えると同時に、できる限りセキュリティを高めていくことも大切です。セキュリティを高めることによって犯罪者が攻撃を仕掛けるのが難しくなります。

いつでもセキュアな状態でインターネットが使えるようになる世界を実現していくことが重要だと思います。

モデレーター:ありがとうございました。

齊藤:ありがとうございました。

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