2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
提供:株式会社リクルート
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中村天江氏:リクルートワークス研究所の中村です。本日はどうぞよろしくお願いいたします。我々の研究所からは「多様なつながりを尊重し、関係性の質を重視するマルチリレーション社会の到来」というお話をさせていただきます。
リクルートの雇用領域の研究機関であるリクルートワークス研究所では「一人ひとりが生き生きと働ける次世代社会の創造」というミッションを掲げて、調査・研究・提言活動を行っています。
研究所の設立以来、誰もが自分らしく働ける『モザイク社会』というコンセプトを大切にしてきました。2015年に『2025年 ―働くを再発明する時代がやってくる―』という冊子をまとめ「これから10年をどう過ごすかで、日本の未来は変わる」と提言しました。
結果的に2016年から政府の「働き方改革」が始まり、9つのテーマについて10年の工程表が出たことや、この20年で多様な働き方やダイバーシティが進んだので、我々の研究所としてはもう1歩、次の未来像を探るためのプロジェクトに着手しました。
それが『マルチリレーション社会』という提言ブックです。マルチリレーション社会とは、人々の「多様なつながりを尊重し、関係性の質を重視する社会」のことです。われわれが人々の「つながり」に注目したのには、2つの問題意識がありました。
1つは個人側の変化です。
「日本的雇用」では、男性は会社員として一生長く働く一方で、女性は家族を支える存在として主婦でい続ける。この伝統的な在り方が変わってきており、男性であってもワークライフバランスを、女性であってもキャリアアップを求めるようになってきています。
実際、すでに「終身1社」でキャリアを築くことも瓦解しています。我々の研究所の万人単位のパネル調査でも、正社員の50パーセント以上の方々が退職経験をお持ちです。最近では独立、副業も行われているので、人々がたった1つの会社だけで長く働き続けるという社会は、もう現実的ではない。このようにつながりの多様化が起きている一方で、もう1つ私たちが考えなければならないのは、これから孤立・孤独という問題がとても深刻になる可能性があるということです。
スライドにも書いているように、世界では孤立・孤独が暴力・貧困・健康と並ぶリスクとして、国連や世界経済フォーラムといったさまざまな場で問題提起がされています。イギリスでは「孤独担当相」が2018年に設置されたことも大きなニュースになりました。
孤独・孤立の背景には、2つの環境変化があります。
まずテクノロジーの発達です。OECDは2018年に「テクノロジーによって約14パーセントの仕事がなくなる」と発表しています。ほかにも今回のコロナのような経済危機のたびに、雇用に揺らぎが生まれます。つまり個人にとって会社との関係性というのは、決して安定的なものではないのです。
加えて、高齢化に伴って、孤独はより深刻な問題となることが懸念されています。日本でも2040年には高齢世帯の約4割が単身世帯、1人暮らしになるかもしれないと推計されています。
職場との関係も家族との関係も、もうこれからは決して当たり前ではない。そのときに、個人がどうやってやりがいを感じながら日々を楽しく将来に展望が持てるような社会ができるかが、極めて重要だと認識しています。
もう1つの大きな変化は、企業経営に抜本的な転換が起きているということです。
近年、SDGsやESG投資への注目が高まっていますが、画期的なところですと、2019年8月にアメリカの経済団体ビジネス・ラウンドテーブルが「行き過ぎた株主資本主義を是正して、ステークホルダー資本主義に転換する」と表明したことです。このような経営の在り方の見直しは、ダボス会議でも議題になりました
企業は今後、多様なステークホルダー、具体的には、株主、従業員、地域のコミュニティ、それから取引先、すべてとともに発展していく、と舵が切り直されたのです。
さらに足元では、企業の人材獲得難が極まっています。2019年のハローワークにおける新規求人の充足率はデータが残っている56年間で最低でした。もう全く人が採れない。
企業は人口減少の中で意欲的な人材を獲得し、さらに地域、人々とともに発展していく人材活用の在り方を探る必要がある、という状況になっています。
以上のように、個人側も企業側も大きな変化の過渡期にあります。これにともない、個人と企業の関係性についても再定義したいというのが、このプロジェクトの問題意識でした。
このような問題意識のもと「5ヶ国リレーション調査」や企業へのインタビューなどを行なって『マルチリレーション社会』の報告書をまとめました。
調査対象とした5ヶ国は関係性が異なる国です。和を重んじる日本、契約社会のアメリカ。それから、連帯を重んじていて雇用保証が強く、平均勤続年数が日本と同じくらい長いフランス。幸福度ランキングで何度も1位を取っているけど、実は企業の解雇権も認めているフレキシキュリティのデンマーク。そしてグワンシ(血縁や人脈などの関係)が公私共々に影響する中国で、民間企業で働く人を対象をに調査を行いました。
5カ国調査では最初に、「人とのつながり」の重要性を改めて確認しました。(下の)スライドを見ていただくとわかるように、まず人々が幸福と感じる割合は人とのつながりがない人とある人では3倍近い差があります。
現在の経済危機のような不確実な局面で「突然に仕事を辞めることになっても、希望の仕事に就けると思う」と感じる割合も、人とのつながりがない人とある人では、ほぼ倍の差があります。つまり環境が不確実になるほど、個人が長く充実した人生を過ごしていくためには人とのつながりが欠かせないのです。
次に各国で、どのような人とのつながりがあるかを比べたものがこれです。赤が家族やパートナー、青は職場の同僚です。まず、どの国でも家族と職場が二大人間関係になっている。
ところが日本は真ん中のグラフがすべて短い。これは何を意味しているかというと、趣味やスポーツの仲間、地域の仲間、一緒に学んだ仲間、社会人になる前の友達ではなくて大人になってからの学びの仲間。これらが少ない。つまり社会に出てからの人間関係の広がりが、日本はすごく狭いということです。
結果的に交流のある人間関係の種類も、各国6種類くらいあるんですけれど、日本は4.6種類しかありません。
なので、つながりの話に正面から取り組みたいということで、我々は多様なつながりを尊重し、関係性の質を重視する社会のことを「マルチリレーション社会」と呼ぶことにしました。
マルチリレーション社会というのは社会の在り方なので、個人にとっても、企業の人材マネジメントや社会制度においても、さまざまな仕組みが必要です。そこで『マルチリレーション社会』の報告書では、プロローグと4つの章に分けて、5つの大きな提案をさせていただいています。
今日は時間に制約があるので、個人や企業のお話はせず「個人と企業の関係は[FESTimeリレーション]で豊かになる」という、個人と企業の関係のところだけお話をさせていただきます。
個人と企業の関係に大きな揺らぎが生まれていることは、御承知の通りです。
伝統的な日本的雇用では、個人と企業が「縦の関係」にあるんです。日本的雇用では企業が長きに渡って個人の雇用を保証する代わりに、異動や配置転換、もしくはどんな仕事をするかについての強い人事権を持つので、個人側はどうしても受け身のキャリア形成になってしまう。
そういう受け身のキャリア形成をうまくやっていこうとすると、昔いわれた「24時間365日転勤厭わず」というような、ある種の滅私奉公で働くということが期待される。これが長時間労働や過労死の原因になっているといわれてきました。
しかしそのような関係では、企業が優秀な人材を獲得することが困難になりつつあります。さらに個人側も、家族や自分自身の学び、趣味といった仕事以外に大切な要素が出てくる中で、この「縦の関係」が今じわじわと「横の関係」に変わり始めています。
個人には多様なつながりがあり、企業はすべてのステークホルダーとともに発展していく社会。それをマルチリレーション社会では標榜しています。
個人と企業の関係が縦から横に変わりつつある今、日本企業がどういう状況にあるのか、5カ国調査から調べました。(スライドを指して)見ていただくとわかるように「会社の経営理念に共感している」「仕事にのめり込んでいる」「給与に満足」し「人間関係に満足」「スキルと才能が活かされている」。こういった評価項目は軒並み、日本の赤い線だけが小さくて、日本の働く人たちがまったく満足していないというのが一見して明らかです。
さらにこのデータの一番まずいところは、個人の不満が高いだけではなくて、これほどまでに不満が高いにもかかわらず、今の会社を辞めたいというスコアだけは日本は他国と同じだということです。どういうことかというと、本来これだけ不満が高ければ会社を辞めたいというスコアが飛び抜けて高くなるはずなのに、そうなってない。それは、辞めても今よりも良い環境に移れる労働市場や仕組みがないからです。これは会社側からすると、労働者にぶら下がられている状態が起きてしまっています。
一方で企業から見た場合に「経営理念に共感して仕事にのめり込んでいる」ような、いわゆるエンゲージメントが高い人たちがどれだけいるかを見ると、各国3〜6割あるところが日本はわずか10パーセントでした。「これから競争力を生み出す源泉は人材だ」といわれながら、人材の意欲や能力が十分に発揮されていないという。
これは会社から見てもアンハッピーな状態ですし、個人側から見ても不満はあるけれどもなかなか次へのチャンスがないので居ざるを得ない。Win-WinどころかLose-Loseな関係になってしまっているのが、今の個人と企業の関係です。
こんなことがこれからずっと続くのは、個人にとっても企業にとっても不健全だということで、我々はもう一度個人と企業の関係を再定義するところから始めました。それを”FESTimeリレーション”と呼んでいます。どういうことかというと、みなさん「トータルリワード」ってお聞きになったことありますでしょうか?
外国企業のホワイトカラーや上級管理職の報酬体系ではよく出てくる概念なんですけれども。トータルリワードというのは、金銭的なお給料やボーナスだけでなく、例えばストックオプションや住宅の補助、不妊治療や養子縁組のサポートだったり。あとレコグニション。認知や承認というような表彰の仕組みです。
要は、その個人が働くうえで報酬だと思われるものを、広範にトータルで見る報酬パッケージのことをトータルリワードといいます。各社各様かつ、相手によっても違うものが海外では見られます。
そのトータルリワードを、我々は2つの軸で再定義しました。1つ目の軸が「個人のハピネス、幸福」の最大化。2つ目の軸が、個人が長い人生でキャリアを形成していける「キャリアの時間軸」です。
具体的に言うと、まず縦軸の幸福の方向は、(スライドを指して)ここにあるように、金銭的報酬だけでなくて、環境的報酬。いわゆる成長機会や雇用が安定しているなどの、人事制度全般のものが入っているもの。
それから関係的報酬。これは人との関係に由来するもの。例えば差別やハラスメントがないことだったり、一体感のあるチームだったり、上司が成長を支援してくれることだったりします。将来に渡って人脈が作れるような、人との関わりも報酬と考えます。
国連が2012年に世界幸福度ランキングを発表し始めたとき、事務総長が「ハピネスっていうのは、ソーシャル、エコノミック、エンバイロメンタルなウェルビーイングの総和で決まる」といいました。まさにそれと連動するようなかたちで、我々なりに置いてみたものです。
もう1つは横軸のキャリアの時間軸です。これは日々安心して働けるということだけでなくて。毎日喜びを持って明日も会社に行きたいと思えて、さらに2〜3年たつと成長できて、10年後の人生にも展望が持てるという、長い時間軸で考えたものです。
スライドを見ていただくと、同じ金銭的報酬でも基本給は左上の部分ですし、退職金は右上です。さっきお話したように、人間関係の意味もさまざまなので、こういう枠組みをつくることで、個人と企業の関係が今までとは違う解像度で語ることができるようになります。
”FESTimeリレーション”で重要なのは「これを全部を充実させてください」とか「すべてがいい会社を選びましょう」ということを提案するためのものではないことです。「我が社はどこが強みです」とか「私は何を重視して会社を選びます」という優先順位付けをしてもらうための枠組みだと捉えていただければと思います。
”FESTimeリレーション”という枠組みで個人と企業の関係を再定義しました。再定義したときに、じゃあ日本はどうなっているのでしょう。どこに伸びしろがあるのでしょう。ということなんですけれども、(スライドを指して)見ていただくとこんな結果でした。
上のグラフが、安心、喜び、成長、展望というキャリアの時間軸に関する報酬の獲得状況です。どういった項目で集計したのかは、スライド右下にあります。
ピンクの「安心」は日本と他国でほぼ同じなんです。ですが「喜び」や「将来の成長」や「展望」になると、日本のスコアはかなり下がっています。日々の安心については、コロナ禍のもとでも経団連が「雇用維持を最優先する」と発表されてました。日本では雇用安定などの安心については、非常に高い社会の期待と制度化が進んできています。しかし、それ以外のところが実は脆弱なままになっている。
下のグラフは、幸福に関する報酬の獲得状況です。金銭的報酬や環境的報酬は、日本は他国と同じくらいですが、関係的報酬になるとがくんと下がる。日本は「メンバーシップ型雇用」なのに「人との関わりにもとづく報酬」が、個人の期待に沿うレベルに達していないのです。
”FESTimeリレーション”の5カ国比較からいえることは、日本は多様な働き方が進んだようでいて、個人と企業の関係性にはもっと拡充すべきところがある。働く私たち一人ひとりも、人材マネジメントする企業の側も、互いの望むものを十分見られていないのかもしれない。まさにここに、個人と企業のLose-Loseだった関係を、Win-Winにするトリガーがあるのかなと思います。
実際、個人と企業が雇用契約を結ぶときに、どういう項目をすり合わせているのかというのを調べたのが(スライドを指して)これなんですね。これは転職経験がある人だけのデータなんですけれども、入社時に企業と交渉している項目がすごく少ないのは、日本だけです。
日本は「交渉項目がとくにない」が半数なんですけれども、他国は「交渉しない」が多くても2割を切っています。10%を越える項目の数も、日本と他国ではまったく違います。個人が働くにあたり企業と交渉できる項目は、本当ならば極めて多岐に渡る。例えば入社後のキャリアパスや役職、それからチームのメンバー、オフィスの環境。そういったものでさえすり合わせる余地があることが、国際調査からは浮かび上がります。
このように、個人と企業の関係をつぶさに見てみると、いろいろ伸びしろがありそうです。それを充実させると、どういうことができるかについて、2つご報告します。
まず企業側です。(スライドを指して)見ていただくとわかるように、先ほどお話した成長に関する報酬や展望に関する報酬、人との関わりに関する関係的報酬というところを充実させると、エンゲージメント人材の割合がどこの国でも増えます。
とくに日本に関しては3つの報酬いずれも、エンゲージメント人材の割合が2倍以上に増えます。今まで日本企業があまり重視してこなかった、正面から向き合ってこなかった報酬にこそ、意欲的な人材を引きつけるためのフックがあります。
そしてもう1つは、個人側からもより良い関係を作っていく方法があるということです。(スライドを指して)見ていただくとわかるように、これは入社時に転職経験ありの人が「賃金交渉をしたか」「その結果、希望の賃金が得られたか」をまとめたものです。
赤とオレンジが自分で要望を伝えてその希望が叶った人たち。青と水色が伝えたけれどもそれよりも低かったという人たちです。どこの国でも、やはり声をあげたら希望が叶う割合が高いんです。
つまり、個人の方々もひたすら受け身で企業に提示された条件を受け入れるよりは、自分の要望を口に出してみることが、実は望む働き方を手に入れるきっかけになる。ということが明らかになりました。
個人と企業の関係について5ヶ国で調査をした結果、わかったことをまとめまると、個人と企業がWin-Winの関係をつくるには、雇用の継続やお給料がいくらであるかを超えて、幸福やキャリアの時間軸を重視してFESTimeリレーションを結んでいくことが大事です。
そのFESTimeリレーションは、どうすれば充実するかというと、個人の方にとっては、主体的に自分の希望をボイスにして伝えるということ。企業側にとっては、キャリアの時間軸を重視した関係的報酬を充実していくこと。
お互いのそういった取り組みを通じて、個人と企業のLose-Loseな関係がWin-Winな関係に変わっていくのです。
というわけで、リクルートワークス研究所からのご報告はここまでです。詳細の内容については報告書『マルチリレーション社会』をご覧いただければと思います。
マルチリレーション社会の実現に向けて、個人と企業の関係性をFESTimeリレーションという枠組みで拡充すると、個人の方が意欲的に満足して働けるようになります。
実際、リクルートグループの雇用領域でも、まさにこういったキャリアの時間軸を重視する職場の関わり方において、新たな兆しが生まれています。
このあとお話させていただく「ふるさと副業」は、セカンドキャリアをつくる方法として注目さている副業を、ふるさとの人との関わりの中で行うものです。
「健朗シニア」は、超高齢社会の日本の中で、なかなか就労機会がないシニアの方が安心して喜びを持って働ける職場ができてきている。「アルダイバー」は外国人アルバイトのことですが、彼ら・彼女らが日本でただ働くだけでなく、職場にに定着して活躍していくような周囲のサポートの在り方も生まれている。
「出勤オフ派遣」は、派遣社員は社員と雇用形態が違うのでテレワークが難しかったんですけれども、実はコロナの話が出てくる前から出勤オフ派遣という兆しが生まれている、といった話です。
というわけで、このあとは各事業からお話をさせていただきます。
株式会社リクルート
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