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なぜ、取締役自ら英語を学ぶ必要があったのか?(全2記事)

2020.04.01

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経営層は英語で話す機会を避けられない 弁コム取締役が語る、英語力の衰えがもたらした問題

提供:株式会社レアジョブ

日本企業のグローバル化が進むなか、圧倒的な課題となるのが「英語力の不足」。語学研修制度の導入、外国人人材の採用といった事例もまだ少ないのが現状です。今回は、こうした課題を解決してグローバル化を目指す個人・企業に向けて行われたセミナー「2020年代の『グローバル人材』を考える」の模様をお届けします。本パートでは、弁護士ドットコム株式会社 取締役の田上嘉一氏が登壇し、英語を学ぶ必要性を実感した経験について語りました。

なぜ取締役自らが英語を学ぶ必要があったのか?

司会者:弁護士ドットコム取締役の田上嘉一様にご登壇いただきます。田上様よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

田上嘉一氏:こんにちは。今ご紹介に預かりました弁護士ドットコム株式会社取締役の田上と申します。本日は昨今の情勢、不要不急の外出は控えるように通達があった中、これだけの方にいらしていただいて非常に感謝しています。先ほどの汾陽さんのお話を聞けば、到底この集まりが不要不急のイベントとは言えないと。非常に示唆に富んだイベントだったなと思っております。

それを受けて、セッションのテーマが「なぜ、取締役自ら……」と自分が言ってると恥ずかしいんですけど。このタイトル自体は僕が言ったんじゃなくて、レアジョブさんからご提案いただいたタイトルです。僕自らテーマをつけたわけじゃないことだけ、先につけ加えたいと思います。とは言いつつ、このタイトルでお話しします。

簡単に自己紹介です。弁護士ドットコム株式会社は弁護士の法律事務所じゃないんですね。弁護士を紹介するサービスを扱う会社でございます。ただ、私自身は弁護士を15年ほどやっております。

経歴は、大学を出たあと日本で今2番目に大きな法律事務所であるアンダーソン・毛利・友常法律事務所に8年間在籍しておりました。当時は企業のM&Aや不動産証券化をずっとやっておりました。いわゆる弁護士をイメージしたときの刑事裁判や離婚、交通事故の相談や裁判はほとんど経験してきていないんですね。

2010年に、英語を仕事で使うこともかなり多かったので、だいたいこういった事務所にいる人は4、5年すると「留学に行ってこい」というかたちで送り出されます。だいたい多くの方はアメリカの大学へ行くんですが、私はサッカーが好きでヨーロッパの歴史が好きだったので、ロンドンの大学に行きました。

先ほど汾陽さんの会社でエンジニアを奪い取ったという話がありました。ロンドンから戻ってきたあと、当時はGREEとDeNAがガチャゲームをたくさん作って、エンジニアを高収入で引き抜いていた時代でした。当時の汾陽さんを苦しめていたのは僕だったんですね。GREEに入って法務などをやっていました。

法務をやっているうちにだんだんビジネスに興味が出てきました。GREEでは、法務よりも事業開発、新規事業作りをしていました。そんな中で、法律のサービスを扱っている弁護士ドットコムという会社であれば、自分もサービスドメインがわかるので、貢献できると思って2015年に入社しました。そのあと執行役員、取締役となっております。

もともと、弁護士ドットコム創業者の代表(元榮太一郎氏)がずっとテレビのコメンテーターみたいなことをしていたのですが、彼が参院選に出馬したんですね。参院選に出馬するとテレビに出られなくなります。「お前が出ろ」という感じでなにも準備してない中、TOKYO MXというローカル局の朝の番組『モーニングCROSS』にもう5年くらい出演しています。月に1、2回くらいのペースで出させていただいています。

一番の自慢は『弁護士といっしょです』という番組に出演していたことです。今田耕司さんと指原莉乃さんという非常に有名な方々と、深夜バラエティ番組を半年間やっていたんですね。ただ残念ながら、半年間で番組は打ち切りとなってしまいました。

この番組に出演していたことは家族やじいちゃん、ばあちゃんも大喜びでした。深夜番組だったのでブラックバイトの中に潜入するとか、パパ活の実態を調査するような、あんまりゴールデンタイムに家族に見るような番組ではなかったので、ちょっとスポンサーも付きづらかったと聞いております(笑)。

そのほか弁護士ということで、世の中でニュースがなにかあれば法律の解説が必要なので、そういったときにテレビ、新聞、雑誌、ラジオなどでコメントすることもあります。こういうところは、まあ自慢でしたと。

弁護士ドットコム、創業からの歴史

弁護士ドットコムという会社は、冒頭に申し上げたように法律事務所じゃないんですね。株式会社で、Webのサービスをやっているのでヘンゲさんと同じようにIT企業です。人数としても220人くらいで、アルバイトや派遣の方も入れるともう少しいます。15期目を今終えようとしております。

元榮太一郎がもともと私のアンダーソン・毛利時代の先輩弁護士でした。当時、僕がアンダーソン・毛利に入ったときに彼は3年目の弁護士で、僕は司法試験を勉強して大きな事務所にようやく入ったので、これからグローバル企業の資金調達などができると思って張り切っていたときに彼に会いました。

そうしたら、彼が事務所を辞めちゃったんですね。「なんで辞めるんですか」と聞いたら「俺は今からIT企業を作るぞ」と言っていて。僕はまだそのときIT企業の意味がわからなくて、これから立派な弁護士になろうと思っていたので、「こういう人にあんまり関わっちゃいけないな」と思って。そのときは「がんばってください」とだけ言いました。

そこから10年くらい経って一緒に働くことになったので、不思議だなと思っております。今、彼は国会議員なので、内田陽介が社長をやっている状況です。

弁護士ドットコムは「専門家をもっと身近に」を掲げて、弁護士だけではなく税理士などの専門家の方々の知恵が、世の中を生きていくうえで役立つので、そういった方々とお悩みを抱えている一般の方々をつなぐポータルサイト「弁護士ドットコム」を15年間運営しております。

15年前は当然スマートフォンもなかったですし、インターネットもそこまで浸透していない状況でした。しかも弁護士は紹介でつながるんですが、なかなか一見さんお断りみたいな、京都の料亭みたいな風潮があって、簡単に見つけることができなかった時代でした。創業者が「これからはインターネットだ」「インターネットで弁護士を探す時代が絶対来る」と言っていて、無料相談サイトを始めたんですね。

それが、スライドのサイトです。離婚のお悩みを抱えている方がここで「ちょっと離婚を考えています」「親の相続で親族で揉めてます」と書くと、弁護士が即座に(答えるので)だいたい一両日以内には回答がつきます。

無料で弁護士が答える。昔は30分で5,000円、1万円だったのに、今ならネットで無料で答える。こういうことで非常に成長してきました。月間で1,200万人の方がサイトを訪れるかたちになっております。

弁護士の回答がついた過去のQ&Aのデータはどんどん貯まっていきます。サイト内にコンテンツがあるんですが、パソコンでは全部見られるんですね。スマートフォンで見る場合だけ、月額300円かかる仕組みになっています。

最初のころはスマートフォンは本当にアクセスが少なかったんですけど、今は圧倒的に逆転しています。(閲覧の)8割くらいがスマートフォンですね。会社のパソコンや家族共有のパソコンで、離婚の相談をされる方はなかなかいないです。やはりスマートフォンで相談される方が多いと思っております。

弁コムのビジネスモデルと、グローバル化への傾倒

今、日本には弁護士がだいたい4万1,000〜2,000人くらいいます。そのうちの1万7,000〜8,000人くらいが、うちに登録してくれています。

メインの収益としては、サイト内で上位表示されるために弁護士さんからお金をいただくような有料登録弁護士が4,800人います。一応、日本では最大級の法律相談ポータルサイトと謳っております。

それからは新しいサービスを作ろうということで電子契約のサービス「CLOUD SIGN」を3〜4年前に作りました。今年の秋に初めてテレビCMを放映しました。テレビのCMは本当にお金かかると考えているところです。

CLOUD SIGNは、紙の契約から電子の契約に変えると印紙税もかからないという特長を持つサービスです。今、非常に伸ばしている新規事業です。

弁護士ドットコムの現状なんですが、先ほどのHENNGEさんの話を聞いて、非常におもしろいし、勉強になるなと思っていたんですが、それを聞いてちょっと頭を抱えていまして。

というのも、今うちの会社はサービスも完全にドメインが日本のみです。なので本当にドメスティックな会社です。外国人の従業員も10人いない程度で、5〜6人いることはいるんですが日本語が非常に堪能というか、全員がほとんど私と変わらないレベルです。

会社内で英語が飛び交うことはぜんぜんないですし、公用語はもちろん日本語という状況です。さっきの1,200万人という訪問者も、ほとんどは日本語で質問をしてきます。英語で質問しても、弁護士がなかなか英語で答えられないこともあります。完全にドメスティックサービスですね。CLOUD SIGNも本当は世界に向けていきたいところではありますが、現段階ではまだまだ日本のユーザーが使っている状況です。

そんな会社がなぜ英語が必要と考えるのか? 本当は僕が聞きたいくらいで、なぜ今日僕がここでしゃべっているのかよくわからないですけどね。

なぜ英語なのか? 結論から言うと、私はこの夏に「SMART Method」(受講者のスピーキングレベルの向上を保証した英会話研修プログラム )を受講したんですね。それで今回しゃべらせていただいているわけです。なぜ日本語しか使っていない会社で、わざわざ時間を割いて英語を学んだのか。

スライドは講演している私です。半分会社の業務、半分自分の業務みたいなんですが、弁護士のイベントや、リーガルテック業界のイベントが非常に多くなってきています。日本人のみ向けのイベントもあるんですが、例えば、アメリカの弁護士会が先日あったんですけれど、「パリの弁護士会と一緒になにかしましょう」という、世界で同じような契約サービスをやっている会社のイベントに呼ばれることが増えてきたんですね。

英語力の衰えがもたらした問題

こういったサービスをやっている会社で取締役、そして事業の責任者をやっていますから、「じゃあ、お前行け」となります。行かなきゃいけないので行きます。こういうふうにしゃべらなきゃいけない機会がどうしても増えてきます。

さらにユーザーの方々のほとんどは日本の方々です。マーケットにおいては、外国人の投資家が当社の株を徐々に購入することが多くなってきます。そうすると「買わないでください」と言うわけには当然いかないですから、「お買い上げいただいてありがとうございます」という感じで、外国の投資家の方々に、事業モデルや今後の事業のプランを説明する機会があります。社長や経営企画の担当、場合によっては私が外国人投資家の前で説明をします。

数はそんなに多くないですが、海外にいる投資家のところに回って説明する機会も増えてきています。知ってもらわなきゃいけないので、そのときに自分はどういう人間なのかという説明をします。お金を投資してもらっている以上、将来的にどういうリターンを返していくのかを説明しなきゃいけない機会が増えてきているんですね。

こういうことがあって、先ほどのプロフィールにもあったように過去に私は留学してるんです。(スライドを指して)これはまだ若くてかっこいいころの僕ですけど(笑)。留学してる写真といっても、飲み会をしている写真です。ロンドンのロースクールに1年だけ行ったんですね。

当時は30歳くらいだったと思います。仕事で英語の契約書を見たり、外国人に日本の法律を英語でひたすら説明していましたが、そこまで英語をしゃべる機会はなかったです。

当時は若いアソシエイト弁護士だったので、会議とかでメモを取る係というか、パートナーの先生を聞いて「ふんふん」「そうだな」という感じでした。ほとんどの日本人と同じように受験してきているので、読み書きはできるんだけど聞いたりしゃべったりはなかなか苦手でした。

自分も1年間行けばそれなりにできると思って行きました。一緒に留学していた大学生の子は、若いから外国の友達と毎日クラブに行って遊んで、観光する感じなんですけど。

自分は30歳を過ぎて海外に行ったので、妻と子どもも一緒に行きました。週末は家族で過ごすと、ロンドンが環境があまり良くなかった。ロンドンは日本人がたくさんいるんですよね。なので日本人コミュニティができてきて、駐在妻の謎の意地の張り合いに巻き込まれたりしました。それはそれでいい出会いだったんですが、そういうところもあったりして、30歳過ぎてから行っても習熟度が上がらなかったんですよね。

それなりにこのときは授業で発表などもして、ある程度はしゃべれるようになっていました。でも、英語は筋トレというか下地作りと同じだと思っていて、留学が10年前となると、トレーニングを日々してないと衰える一方なんですよね。

とくにしゃべるときの言葉が圧倒的に出てこなくなってきているなと痛感しました。ロンドンから帰ってきた直後であれば、会議でもっとリードできたのに、「う~、あ~」と迷ってしまう機会が増えて、助け舟を出してもらうことが増えました。

インタラクティブに話すことが重荷に

外国のイベントでは、日本みたいに外国の方とパネルディスカッションになるんですよ。イベントでプレゼンするのはいいんですよね。事前に日本のリーガルテック環境のプレゼン資料を作って、メモ欄にトークスクリプトを最悪全部書けば、ある程度しゃべること・発信はできます。

「第2部はパネルディスカッションでやってください」みたいな感じで、香港やロンドン、南アフリカの誰々さんと話すとなると難しいです。「(話が)ここらへんで始まっちゃって、ちょっと振ってくれる」みたいな。日本語であれば100パーセントしゃべればもっともっと深い議論もできるし、討論もできるなと思ってるんですけど。

英語という足枷をはめられることによって、語彙力や表現力が下がります。一応英語で言ってるんですけど、稚拙な英語で、観客の立場で聞くと「小学生が1人だけいるぞ」みたいになってしまっていると痛感し始めました。

結局ロンドンから帰ってきてからも、英語でしゃべる機会が減っていて、そういうイベントに出たあとに「やばいな」と思いました。ロンドンに1年間も行って、お金もすごく使ったのに、日本に戻ってきて結局しゃべれないことになってないかなと感じました。

その後1週間くらいは「よし、英語を勉強しよう」と思って、行き帰りの通勤電車でポッドキャストでBBCとか聞いたり、Kindleで日本語で読んだことある本を英語版で買って。Kindleだと辞書をダウンロードできるので、最悪日本語もわかるので。でも、だいたい3日、もって1週間でした。「来期の○○で忙しい」、会議が続くとなると、そんな元気はなくなってきて続かないですよね。

こういうことがあって、そうするとまた次のイベントが入ってきて、憂鬱になる。そうすると、英語を話すこと自体が非常に心の重荷になる。「やりたくないな」と思ってしまっているなと感じました。

とくにディスカッションの部分がどうしても重荷だったんですね。一方通行はできるんだけど、相手に対して受け答えして、インタラクティブに話すことが非常に難しいなと思っていました。

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