2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
提供:Japan Venture Awards
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司会者:株式会社Lily MedTech代表取締役、東志保様です。ご準備よろしいでしょうか。それではスピーチスタートです。
東志保氏:はじめまして、弊社はLily MedTechと申しまして、乳がん用の画像診断装置の開発を行っています。東大発ベンチャー企業になります。弊社は痛みのない安全で快適な乳がんスクリーニング検査を実現するべく、現在開発を行っています。
こちらがコンセプトイメージになっています。ベッド型をしていて中央に丸い穴が開いており、この穴の中にリング型の超音波の送受信器、超音波振動子が搭載されています。
検査時にはこのように、女性にうつぶせになっていただいて、片側ずつ乳房を入れていただくと、乳房を取り囲むようにリング振動子が上下に動くことで、簡単に3次元画像が取得できます。特徴としましては、マンモグラフィーのように乳房を押しつぶすことがないので、痛みも被ばくもなく、裸の乳房を誰かに触られることもありません。
誰にでも操作可能で再現性の高い、乳房全体の3次元画像が取れますので、精度管理も容易です。教師データの安定性という観点でも、機械学習による自動診断支援機能の開発に向いています。
現在も臨床研究を行っていまして、こちらが実際のがん患者さんの乳房の3D画像になります。手前が乳頭側、奥側が大胸筋側で、行って戻ってくる方向にリング振動子が動くことで、このような画像を撮っています。
こちらはがんを含む断層面になっています。赤い枠線で囲った部分の黒いところが実際のがんになります。またその周辺の白く雲状のものが乳腺や乳管というお乳を作る場所で、ほとんどの乳がんは乳管内から原発(最初に発症)することがわかっています。
マンモグラフィーでは乳腺とがんが共に白く映るので、乳腺が豊富な方は発見精度が下がるケースもありますが、こちらの超音波ですと乳腺は白く、がんは黒く映るのでコントラストがあって見やすいと(読影をされる先生には)おっしゃっていただいています。
また、これまでの臨床研究で受け心地のアンケートを取りました。マンモグラフィーに対して、弊社の装置は97パーセントの方が「受け心地が良い」と回答いただきました。ハンドヘルトエコーの既存のエコー検査に対しても、81パーセントの方が弊社の装置の「受け心地が良い」との簡易回答をいただきました。
マンモグラフィーやハンドヘルトエコーの検査装置市場になりますが、グローバルで3.4ビリオンの市場があります。英国で1,100ミリオン、ヨーロッパが700ミリオン、アジアパシフィックが1,000ミリオン、日本が200ミリオン弱の市場があります(注:単位はUSドル)。今後はアジアや中東、アフリカへの進出を考えています。欧米は日本と同じように規制が厳しいので、順次規制をクリアしながら進出を予定しています。
これまでの受賞歴、メディア取材ですけれども、日経BP、Forbes Japan、テレビ東京、エル・ジャポンなどに取材をいただいています。EY Winning Women(イノベーションにあふれた女性経営者を表彰するアワード)、経産省のJ-Startup、 Forbes Japan RISING STAR AWARDS(高い志と理念を持つ、創業3年以内のスタートアップを対象にしたアワード)もいただいています。
最後に弊社のミッションです。乳がんを早期発見すれば、ほぼ確実に助かります。乳がんの早期発見、検診率向上に貢献することで、世界中の女性と、そのご家族を助けてあげたいということを目標に起業していまして、これからもまい進していきます。ありがとうございました。
(会場拍手)
司会者:東さん、ありがとうございました。続いては、株式会社Emotion Tech代表取締役今西良光様です。それでは今西様、ご準備はよろしいでしょうか。
今西良光氏:はい、大丈夫です。ただいまご紹介いただきました、株式会社Emotion Techの今西と申します。本日はこのような素晴らしい賞にノミネートいただきまして、誠にありがとうございます。Emotion Techという社名のとおり、人のEmotion、つまり感情をテクノロジーで紐解いていく技術をコアにしている会社です。
みなさまもご存知のとおりだと思いますが、サービス産業は他の産業と比べまして、生産性が低いと言われています。その一方で、就業人口やGDPは全体の7割以上を占める非常に大きな産業です。こういう産業ですので、サービス・生産性をちょっと上げてあげると非常に経済的なメリットが大きいと、マクロ的な構造の中ではよく語られます。
一方、ミクロといいますか、現場の話をしたいんですが、私は前職でユニクロの店舗マネージャーをしていました。毎日毎日やることがたくさんありまして、3〜4つを並行してなんとか店舗を運営している状況でした。そこで痛感したのは、実はサービス業はこんなに大きなマーケットにかかわらず、ITやテクノロジーがまだぜんぜん入ってきていないということなんですね。
では現場の人たちは、何を拠り所にがんばっているか。私は勝手に「サービス業の3K」と言ってるんですが、「勘と気合いと根性」なんです。これを拠り所になんとか毎日の店舗運営をがんばってこなしているのですが、それが大きな視点で見ると、実はサービス業の生産性の低下につながっているなぁという体感から、この会社を創業しました。
具体的にやっている事業ですが、従業員の方、それからお客様から、その企業や商品・サービスに対して「あなたたちはどう思っていますか」というフィードバックデータをいただきます。それと企業が持っている収益のデータを掛け合わせます。私どもで特許を取っている、独自の解析のアルゴリズムを搭載したシステムで、そのデータを分析すると、例えば「A店舗では商品の提供スピードを少し上げると、リピート率が1.5パーセント改善する」といった、収益につながる改善策を見つけることができるシステムです。
もちろん、このシステムの提供を通じて、企業の持続的な収益改善を支援していくのですが、その前段として、従業員の方々がどれだけイキイキと働けるかの総量を増やすことや、その企業の商品・サービスを使うファンをどれだけたくさんつくれるかということを意識しながらサポートしていきたいと思っています。
引き続き、このような活動をしながら社会を良くしていきたいと思っています。本日はありがとうございます。
(会場拍手)
司会者:今西さんありがとうございました。それでは続きましてEAGLYS株式会社代表取締役社長、今林広樹様です。ご準備はよろしいでしょうか。それではスピーチスタートです。
今林広樹氏:みなさんこんにちは、EAGLYSの代表をしております、今林広樹と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。EAGLYSという会社は、最先端技術の秘密計算とAI技術の2つを取り扱っている研究開発ベンチャーです。
企業のデータ活用を促進するといった大きな枠組みの中で、この技術をどう活用するかということで事業をやっております。例えば、物流業界は上流から下流まで、各参加者がデータ出し合いたくないから、なかなか需要予測ができません。
金融業界だったら、クラウドを使うとコストが削減されて、もっとデータの活用ができるようになるし、計算コストも削減できるんだけど、クラウドが使えません。医療業界だったら、個人情報、遺伝子情報、電子カルテの情報を突き合わせできると、「どういった個人がどういった病気になって、それはどういった遺伝子だから」という相関関係が取れる。こういった分析ができるんですけれども、(クラウドが使えないせいで)そういったことができない。
このデータ活用・AI時代に、どこの業界でも実際にデータ連携にまつわる課題として、こうしたことがいつも起こっています。96パーセントという数字があるんですけど、これはAIのプロジェクトの失敗率なんて言われてまして、どんどん投資は進んでも、なかなか成果は上げられない。結果的にプロジェクトはおしまいになってしまう。
セキュリティーがその原因のトップに来ていると言われています。自分たちがAIの事業をする中でそれを実感しておりまして、そういった課題感で取り組みをしているのが我々EAGLYSという会社です。
我々が目指したい未来の世界は、暗号状態であらゆるデータを連携して、クラウドに集めて分析することができるようになる。ときには競合であっても、お互いのデータを見せ合わず、データを暗号状態で出し合って、その暗号データに対して分析、統計処理を行う。こんなことができたら、お互いが見えないデータを連携し合えるので、みんなにとってWin Winなシステムになるわけです。
スライドにあるような秘密計算プラットフォームを作っていくのが、我々の目指している世界なんです。そのためには、左下の秘密計算プラットフォームというものが必要で、これはまさに我々が開発している商品になります。
このプラットフォームは、大きくセキュアDBとAIというコンポーネントから成り立っています。データベースの中に、何かよくわからないデータがあります。
それを、そのまま検索し、解析できたりするサービスです。暗号状態でAIに学習させて、暗号化したものを予測させることができたら、クラウドに機密なデータやAIシステムを置くことができる。常に自社の安全性を確保した状態で、運用できるようになる世界観になります。
我々が目指している世界観は、スライド右下のあらゆるデータを安全に活用できる社会の実現に向けて、例えばスマートファクトリー(工場をAIやIoTなどの最先端のテクノロジーで省力化して総合的に管理する構想)。自動運転や医療・ヘルスケア、スマートシティ。こういった業界で活用されるプライベートなデータを、我々のプラットフォームが整理して、我々にも見えない暗号状態にします。暗号化した状態で、誰もがそのデータを解析できて活用できる世界に持っていきたいと思っています。まだまだ我々は創業4年目の若いベンチャー企業になります。技術だけでまだリソースもないベンチャーです。
ですが今、秘密計算の性能においては世界ナンバーワン、それから製品に関しても世界で初めて商業化に成功したので、優位性を持っております。負けないくらいのところにおります。
この優位性をいかし、今後どういうふうに世界に対して展開していくかが直近の経営課題でして、国内だけじゃなくて世界を目指す前提の中でどういうふうにやっていくか。みなさま方のご支援をいただけますと幸いです。
今回、そういう意味では、この「JAPAN VENTURE AWARDS」をいただいたこともありますし、これを糧に、起爆剤のような気持ちで大きく推進していきたいと心から思っております。このたびはありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
司会者:今林様ありがとうございました。それでは続きまして株式会社アストロスケールホールディングス創業者兼CEO、岡田光信様です。ご準備はよろしいでしょうか。それではスピーチスタートです。
岡田光信氏:アストロスケールの岡田でございます。こんにちは。2050年の社会には2パターンしかありません。持続可能な社会か、持続不可能な社会になっているか。人口は97億人、食料不足、水不足、温暖化、大気汚染。その他の問題が複層的におそらく関わっていると思います。
今トップ企業に求められているのは、2つあります。1つは、利潤を追求して株式価値を高めていくこと、もう1つは会社としてどうやって持続可能な社会を作り上げていくことに貢献するかです。
7年前に宇宙ごみ問題を知りました。今までの宇宙開発の歴史の中で、打ち上げた衛星やロケットの上段などがそのままゴミになって、地球の周りをぐるぐる回っていて、衝突したものが破片になって、また別の衛星を破壊している事実です。
そして、もう一つ知ったのは誰もその解を持っていないということでした。まず技術は非常に難しいです。誰も解を持っていなかった。秒速7キロという弾丸の10倍以上の速さで、しかも回転しながら飛んでいる物体をどうやって捕まえるのか。次に、ビジネスモデル。一体誰がお金を払うのか。そしてレギュレーション(法規制)。宇宙には非常に難しいです。複雑なレギュレーションになります。これらを解く解を誰も持っていなかったことを知りました。
それを知って、それを解こうと思って立ち上げたのがアストロスケールです。7年弱になりますが、現在では資本金157億円、従業員110名の精鋭たちが集まっています。世界に拠点を持っていて、いよいよ今年、世界はじめての宇宙ごみデブリ除去実証衛星が打ち上がります。
今、最終的な試験をJAXAの施設をお借りして実施しているところです。もうすぐ、その最後の出来上がりです。難産でした。
また、この2年間で世界中のレギュレーションが大きく変わっていこうとしています。アメリカ、ヨーロッパ、日本も含めて、スペースデブリ問題に対するレギュレーションが活発化してきて、これが直接的に我々のビジネスモデルに望ましく働くわけであります。
我々は2030年には……この2020年代には多くのデブリ衛星を打ち上げると思いますが、2030年には世界が「宇宙は持続利用可能になる日が来た!」と思っていただけるように、この10年間突っ走る予定でおります。
その意味でこの2020年代の最初に、このような素晴らしい賞にノミネートいただけたことは本当に我々のチームやサプライヤー、協力していただいている各国の宇宙機関、世界の政府にとって大きな励みになると思います。がんばってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
司会者:ありがとうございました。続きまして、Varinos株式会社代表取締役桜庭喜行様です。ご準備はよろしいでしょうか。それではスピーチスタートです。
桜庭喜行氏:みなさんこんにちは、Varinosの桜庭です。我々はゲノム検査を提供している臨床検査会社です。みなさんにお聞きしたいんですけれども、日本の医療の分野で遺伝子検査、あるいはゲノム検査会社で思い浮かぶ企業は何かありますでしょうか?
(会場から手が挙がらず)
残念ながら少ないんですよね。実はこの次世代シーケンサーを販売する「イルミナ」という会社に3年前まで所属していた中で、私の役割は医療の分野にゲノムの技術を届けていくことでした。なかなかやってくれるための企業がベンチャー・大手を含めて見つからなかったんですね。
それでしょうがなく、自分でやったらいいんじゃないかと思いまして、同じくイルミナにいた、長井陽子と一緒にVarinosという会社を立ち上げました。
Varinosでまず最初に取り掛かったものが不妊の問題です。
今、6組に1組が不妊と言われています。体外受精の件数も非常に多くて、日本は45万件もあります。これはアメリカの約2倍で、世界ナンバーワンです。ですから、日本は不妊大国なんですね。この不妊の課題が2つほどありまして、費用が非常に膨大にかかることと、あとは今も1回当たりの成功率がそれほど高くないということです。
それらの課題を解決するのにゲノムが役に立ちます。まず取り掛かったのが「子宮内フローラ検査」という検査です。これは我々が世界で初めて実用化をしました。
少し前まで、子宮の中は菌がいないと言われてきたんですね。それでも最新の技術を用いることで、菌がいることがわかりました。それだけじゃなくて、そのバランスが実は妊娠の成績を左右することがわかってきました。これを臨床検査として立ち上げました。これを実は治す方法もありまして、ある治療をしてきちっとした妊娠成績が高い環境を作るということもできております。
もう一つの受精胚ですね。これは次の事業になります。受精胚の染色体の異常を見るような検査も、まさに今月から立ち上げているところです。子宮内フローラと着床前ゲノム検査の2つを組み合わせることで、より高い治療成績を目指す、というところを今がんばってやっております。
実は子宮内フローラ検査は、先ほども申し上げたとおり世界で初めて実用化したものですから、海外からもかなりお問い合わせが来ております。今、海外の医療機関にも提供できるような準備をしている最中です。こうやってがんばっていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。
(会場拍手)
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