2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
株式会社オンリーストーリー 代表取締役インタビュー(全1記事)
提供:株式会社オンリーストーリー
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――株式会社オンリーストーリーは創業5年目を迎えたそうですね。さっそくですが創業時のことをうかがえますか?
平野哲也氏(以下、平野):まず自分の話からすると、僕は大学を卒業した後で就活せずに、社会人1年目の時に会社を設立したんです。
起業しようと思ったときに、そもそもどんなビジネスをしようかと考えました。それまでテニスばかりしてきた僕は、お恥ずかしながら、そもそもビジネスについてどう考えたらいいのかすら、わからず……。
そんな時にいろいろ学ぶ中で、どうやら「WILL(自分がやりたいこと)」「CAN(自分ができること)」「NEED(市場、顧客から求められていること)」の重なる部分でビジネスをやるといいらしいぞ! ということを知りました。
――WILL・CAN・NEEDのビジネスフレームワークですね。
平野:はい、それです。他に情報もなかったので、自分に当てはめながら、そこから考えてみようかなと思いました。
当時考えたのが、WILLは「経営者や会社の力になること」。僕の父親や叔父が経営者で、近所もわりと経営者が多かったので、いつの間にかそういった想いをもっていました。
CANは「取材に関わること」。学生時代の終わりらへんから、取材に携わる長期インターンをしていたので、取材はできそうという感覚が少しだけありました。
NEEDは「自分の会社や商品の想いを広めたいというニーズ」。いろいろな経営者と会う中で、いい商品やサービスをつくってもそれを知ってもらえない問題って、思いの外大きいんだなーと気づきました。それと同時に、自社商品を広めたいというニーズも多く、それが無料でできたら強いんだなと思いました。
そこから「その3つの重なり合う点はこれや!」と思い、経営者向けの無料のインタビューサイトの運営をはじめました。
――経営者や会社を支援するための広報活動を取材を通して行う。きれいに3つが重なっていますね!
平野:ただ後ほど、考えが甘かったことが分かるんですけどね……。
――そうなんですか(笑)。
平野:そうなんです(笑)。
平野:そんなこんなで事業をスタートさせていったわけですが、意外にも最初からインタビュー先の獲得にはあまり困らず、少しずつ取材先が増えていったわけです。
というのも、「無料で取材する代わりに、次の社長を紹介してください」という『笑っていいとも!』作戦を使うことで、マーケティングっぽいこともできていたんですね。
そうして取材数も順調に増えていくと、「あ、意外とうまくいくかも……!」なんてことをちらりとでも思うようになっていたのは、ここだけの話です。当時の自分、ダサすぎるなあ(笑)。
――取材数が増えていけば、事業としても成功なのではないでしょうか?
平野:それがですね、サイトをリリースしてから、4~5ヶ月ほどたった時に、あることに気が付くんです……。「あれれ、お金ないぞ」と。銀行の預金残高がすごーーく減っていたんです。「やばいかも!」と、そこで初めて気付くわけですね。
――確かに、これまでの話の中で利益のお話はまったく出てきていないですね。
平野:そうなんです。そしてそこから、迷走シーズンの到来です。ランサーズで記事作成の案件を請け負ったり、チラシをつくらせてもらったり、電話番させてもらったり。いろいろやっていましたね。
そういう仕事をやっていく中で、「自分がやりたかったのってこれだったっけ」とか「これまでやってきたこととの親和性が低い気がするなぁ」とだんだん気づいたりするわけです。ただそんなときでも「お金ないから、やるしかないんやあ!」と自己催眠をかけ続けるしかないと。
そしてそんな中で、少しずつ気付いていくわけです。「あれ、WILL・CAN・NEEDだけじゃビジネスってうまくいかないんじゃね?」と。
――他にも必要な要素があると、実体験から気づかれた。
平野:はい、自身のしくじりから、“成功するモデル”と“成功し続けるモデル”は違うと痛感したんです。ただそんな状況でしたが、僕のビジネスアイデアには、たまたま1つだけ強みがありました。
それが“情報戦略”です。ここでいう情報戦略とは「ビジネスを進めながら、知を効率的かつ継続的に得られる仕組みのこと」です。
――ノウハウを得られる仕組み。取材事業のことですね!
平野:はい。僕は取材を通して、いろいろな社長さんのお話を聞けたんですね。これがすごーく良かった。というのも、自分一人ではたどり着くのに時間がかかりすぎる話などをここで学ぶことができたからです。
自分で経営しながらアウトプットベースで学ぶのと、経営者の話を聞いてインプットベースで学ぶのとで、バランスが良かったのかなと思います。そしてそうした学びから、このままのやり方で進めてもだめだな、と気づくことができました。
要はそれまで僕が考えていたことって、ビジネスモデルでなく、あくまで“ビジネスアイデア”だったんです。そして学びました。ビジネスアイデアを支える、資金戦略・人事戦略・情報戦略の3つの戦略があるかどうかが、一時的にうまくいくか、うまくいき続けるか、すなわちアイデアとモデルを分ける差なのだと。
――ビジネスモデルには、WILL・CAN・NEEDのビジネスアイデアを支える3つの柱が必要だと。
平野:はい。アイデアどまりで3つの戦略のどこかが欠けていると、アイデアが崩れて、点で短期的にうまくいくことはあっても、線で中長期で見ると、成長が継続しにくい。
ただこんな話を当時の自分にすると「いやいや、そんなのわかってるし、その3つの戦略も僕はこういうふうに考えているんですよ!」とか言いそうですね(笑)。
そんな当時の自分を振り返って思うことは、「性善説シミュレーションしかしていなかったんだな」ということ。でも起業してみて感じたのは「起業ってうまくいかない性悪説シチュエーションのほうが多い種目なんだな」ということなわけです。
だからこそ3つの戦略について、性悪説でも考えなければいけなかった。
――資金・人事・情報について、性悪説で考える。どういうことでしょうか?
平野:例えば当時の僕は、「無料インタビューして社長さんに会っていったら、10人に2人くらいは仕事をくれているので、月にこのくらいの人に会えれば大丈夫」とか考えていたんですが、明らかに性善説すぎるわけですよ。それ以外にも、性善説で考えすぎると“細分化不足”という弊害が出てくるのが良くないかな、と思っています。
例えば資金戦略の中でも、BSをどうするかというお話とPLをどうするかというお話があるかと思います。でも片方は性悪説で考えていても、もう片方は性善説でしか考えていないとかはわりとあるのかなーと思っていて。
会社によって、資金調達してBSドリブンでいくのが得意めな会社と、営業得意で、PLドリブンが得意めな会社がいたりします。でもいずれにせよ、どちらかだけの視点でどちらかが欠けると、性悪説の時にお金がなくなって事業を続けにくくなってしまうな、と。
僕はその辺を全部ごりっと性善説で考えて、細分化していなかったので、まさに性悪説の時にうまくいかなくなってしまったと。
で、今は取り急ぎ3つの戦略の中で資金戦略の話だけでしたが、他の2つの戦略でも性善説すぎたわけですし、細分化不足だったわけですね。
――性悪説の状況になった時に支えてくれるのが3つの柱であると。
平野:そうですね。せっかくテニスで「試合では練習の50パーセントの力しか出せないんだから、練習では試合を想定してやりなさい!」とか、性悪説でシミュレーションする大事さを口酸っぱく教わったのに、僕はその学びをビジネスに全然再現できていなかったんですよね。
平野:結局、僕が当初つくったアイデアは、3つの戦略を“考えているふう”でしかなくて。そのくせ言い訳やそれっぽいロジックで語れてしまっているあたりも、まためんどくさくて。だから性悪説の時に、事業を続けられなくなってしまったわけです。
ただ、たまたま自分のアイデアに情報戦略に近いものがくっついていたから、「それに支えられて課題に気づくことができました!」という話で。
――そもそもこの学び自体も、情報戦略があったからこそ得られたものだと。
平野:はい。そこからについては長くなるので少し省略しますが、実際にその日々の学びから僕は「無料で取材しながら、収益化できる方法はないか」と考えるようになりました。そんな背景から生まれたのが、今弊社の主軸事業となっている「チラCEO」というサービスのビジネスモデルです。
このモデルにより、死にかけていた僕の会社は、なんとか息を吹き返すことができました。その時の学びを活かして、無事成長を続けていくことができましたとさ……って、そんな簡単なわけないんですよね(笑)。ハッピーエンドで終わらせたいところですが、そんなに甘くない。
というのも、そうしてつくった自分の努力の結晶のようなモデルが、ここからたくさんの困難を迎えていくんです。実際に0→1のフェーズと1→10のフェーズと10→100のフェーズで、マネタイズモデルも組織形態も変更しなければならないんだとか、そういうことを学んでいくわけです。
実際「チラCEO」も1.0時代、2.0時代などを経て、当時とだいぶモデル変化してきています。ポケモンで言うと「あれ、俺四天王くらいまで来ているんじゃね?」と思っていたのですが、「トキワの森にギリ入ったくらい」だったわけです。
ただ、どんな時でも自分のWILLはずっと変わらないもの。経営者や会社の力になるような事業をしていきたい、というのはずっとあるんですよね。そのためにも、この想いを形にできる“アイデア”でなく“モデル”としてのビジネスをしていきたいと思います。
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