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星野リゾートのIT戦略に見る経営者が持つべき覚悟(全2記事)

2020.03.06

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優先順位をつけて取捨選択できるか 星野リゾート情シス担当が明かす、プロジェクトを成し遂げるのに必要な覚悟

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が開発するツールの活用事例や、チームビルディングのノウハウなどを紹介する総合イベント「Cybozu Days 2019」が、東京、大阪、名古屋の3都市で今年も開催されました。2019年のテーマは「モンスターへの挑戦状」。同社代表 青野慶久氏の近著『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』に端を発し、会社に巣くう“思い込み”による支配への挑戦をメッセージに掲げています。この記事では、12月5日に大阪会場で行われた「星野リゾートのIT戦略に見る 経営者が持つべき覚悟」の模様をお届けします。セッションに登壇した星野リゾートの久本英司氏が、急成長する経営にまつわる試行錯誤の数々を明かしてくれました。

経営者が自ら理解したうえで意思決定し、徹底して実行する 施策のトレードオフは経営者にしかわからない

久本英司氏(以下、久本):この一連のエピソードから、私が思う経営側が持つべき「覚悟」を4つ挙げました。やってみて気づいたことなんですけど、やはりIT戦略をうまく進めるには、覚悟が必要だと思っています。

IT戦略は経営者自ら理解し、意思決定し、徹底して実行する必要があると思います。実行策のトレードオフは経営者にしかわからないですね。それをやるべきか、やるべきでないのか、どれよりも優先順位が高いのかというのは、経営者にしかわからないです。

当然この判断をするには、ITがもたらす効果のことを、リスクのことをわからないといけないです。それがもたらした結果は、例えばセキュリティ対策の大胆なトレードオフ、顧客情報以外一切守らないみたいな判断ができたり、イノベーションのために思い切りクラウドに投資しようという判断ができたり。

あとはすぐに効果が出ない守りの機能。例えば、「基盤システムを入れ替えたいです」「プラットフォームを入れ替えたいです」とか、そういったところを代表自らが判断できるように、今はなってきています。

システム改善に予算の22パーセントを投資

久本:あとは計画通り、設計通りに維持運用する力を手に入れる。ここも非常に大事な覚悟です。設計通りに維持するにも、人もお金もものすごくかかります。そういったところを経営陣は覚悟する必要があると思っています。

これは金額は書いていないですけど、星野リゾートが投資している情報関連費用となります。すべての私たちの人件費も入っています。開発、改善、運用、サーバー、通信費用いろいろあるんですけど、この改善に実は22パーセントの投資をしています。

この改善とは何を言っているかというと、既存のシステムを手を入れることです。プログラムの改修すべてを指しています。実際には、新しい機能の追加の開発とは別に、既存機能を直していくための予算を持っています。

どうやるかというのは、予算を確保して、ポイントを定義して、やることを決めて、製造能力をモニタリングして、予算を常に見直す。こういったことをやっています。

なぜやる必要があるかというと、ITは驚愕するほど未成熟だと思っているんですね。みなさんもやっているのでよくおわかりだと思いますが。例えば、3年くらい前に作ったWebのシステムは、今だとフレームワークが古すぎちゃって機能の追加ができないとか、2年後には保守が切れますとか、そういうことがしょっちゅうありますよね。今度、Windows7の保守が切れますけど、あれも同じ話です。

例えば昔だと、5年、10年経つと古すぎちゃって、保守するエンジニアが1人もいなかったりしますよね。そういったところを考えると、ITというのはまだまだ未成熟で、毎年良くなり続けているというのが背景にあるのかなと思っています。

なので、システムで作ったソースコードは毎年劣化している。こういう覚悟が必要なんだと思っています。よく「枯れたシステムのほうが安定していい」といいますけど、私はどんどん状況が変わっているのだと思っていて、枯れたシステムは生きていないということを普通に理解したほうがいいと考えています。

こういったことを経営的にも判断します。例えば、「去年いくらかけたじゃないか」「あれはどうなるんだ」ということを言わないということが非常に大事な覚悟だと思います。

エンジニアを内部に持たなければ実現しないという覚悟

久本:最後は「IT組織を作る」です。実行するための私たちのチームだけではなくて、「意思決定・遂行プロセスを自ら強く関与して、作る手間を覚悟する」というところが大事だと思っています。

やはりプロセスは人を動かします。IT部門だけで動くIT投資はもうないです。事業部門、経営者一体となって実行していく必要があります。そこを理解した上で、きちんと社内に組織を作っていくことが、経営者が必要な課題、覚悟だと思っています。

もう1つは私たちの能力。最終的に安定はエンジニア人材を内部に持たなければ実現しないということを覚悟することは、すごく大事だと思います。先ほども言ったように、毎年ソースコードは古くなります。その都度、システム会社に発注なんかしていられないですよね。内部にいるエンジニアがどんどんそれを改善していく必要があります。

これは別に社内にエンジニアがいる必要はとくにないと思います。とくにサイボウズさんのパートナーの方たちみたいに、事業の方を並走するパートナーって、外部で協力しているエンジニアさんでもいいと思います。そういったかたちで、自分たちの社内の近いところにエンジニアを配置することが大事だと思っています。

そこまでやったら、ITチームの成果が出るまで我慢して待つ。これが経営者の最後の覚悟かなと考えております。

「説明しきる覚悟」と「選択する覚悟」、そして「失敗し続ける覚悟」

久本:最後にまとめです。経営者とIT担当、今回は経営者に対する覚悟というお話をさせていただきました。経営者の星野佳路に覚悟を(持つよう)私は迫ってきたというと、社内に帰ると怒られそうですけど、覚悟を持ってもらいたいと思って活動をしてきました。

経営者に持ってもらいたかった覚悟は、理解して判断する覚悟。だから、理解する覚悟。あとは決断する覚悟ですね。自ら決断する覚悟。「IT担当が決断したんで知らないよ」じゃなくて、自分が決断した覚悟だと思ってもらいたいと、私はずっと思ってきました。

そのときに、当然私たちはITの専門家です。なので、ITの素人である経営者に「なぜこれはこうなんだ。こういう判断をしなければいけないのか」と説明する覚悟が必要だと思いました。

当然経営者の覚悟は、わかりやすい事業戦略をきちんと立てて、私たちがIT戦略を立てるときに指標になるものを立てる。そこも大事な仕事です。私たちは事業戦略に呼応するかたちでIT戦略を作る必要があります。そして、そのIT戦略を説明しきる覚悟が必要です。

そのとき、新しい技術、新しい知識、新しい経験を積み重ね、そういったものを私たちはインプットとして説明する能力を成長させていく必要があると思っています。

それは当然、私たちが決断するのは代表だったり経営者だったりするかもしれないんですけど、それが決断できるように選択肢を提示するのは私たちの仕事になります。だから、選択肢を提示する覚悟というのもあります。

当然、それが正しいかどうか学び続ける覚悟があり、失敗し続ける覚悟(もあります)。失敗の中からしか経験は生まれないので、失敗してもめげない覚悟というのが必要になってくると思っています。

なので、私はずっと経営者に覚悟を持ってもらいたいと思っていましたけど、それをやりきるには自分たちも覚悟が必要だと気付きました。

ITは未熟なテクノロジーである kintoneが教えてくれたこと

久本:もう1つ、経営者とIT担当。これは説明して判断する。そういう関係ではなくて、やはり1つのチームとして、1つの目標に向かってやっていく仲間であるという意識が大事なんだと思います。これは、予算や提案を挙げて判断してもらうじゃなくて、一緒に同じテーブルに乗ってディスカッションしてそれで決めていく。そういう関係でしかないんだなと。

これは星野リゾートの組織文化で大事にしていたフラットな組織文化、フラットな組織構造とまさに呼応する関係だと、やっていて思うようになりました。

そうすると、サイボウズさん的に言うと、経営者は私たちIT担当に質問する覚悟が必要。質問する責任があるし、私たちは経営者に対して説明する責任があるんだと考えるようになってきました。

私は当初、3~4年くらい前は、自分たちのITケイパビリティさえ、自分たちの能力さえ上がってしまえば、そこから必ず結果はついてくると思って、あまり社内に説明をしてきませんでした。

経営者に対して、なんで我々はこういうシステム投資をしたいのか、なんでこういう人材を育てたいのか、きちんと説明してこなかったんですけど、実はそれは間違いだったんじゃないかと気づいたのがここ1年くらいです。

不確実性の高い世の中に、経営と一体となってITを使って、どういうふうに市場環境の中を泳いでいくかというところを、一緒に歩んでいく必要があると思っています。

「経営者はITのことなんてわかんない」と諦めるのではなく、経営者だってちゃんと私たちがわかる言葉で説明すれば、一緒になって判断してくれる存在になるんだということが、この1~2年の私の大きな気付きになっています。

お互いに覚悟を持っていくことで、私たちはもう1つ大きな覚悟をしなければいけないと思っています。それはやはりシステムの話で、先ほど「ITはまだまだ未成熟」と言ったとおり、毎年毎年劣化していきます。これはもうしょうがないことで、シンギュラリティの世の中になるまでは、もしかしたらずっと続くかもしれないとやはり思っています。

このITが未成熟なテクノロジーだということを、経営者も私たちIT担当も同じく覚悟をして、捨てながら走り続ける、そういった覚悟を持つ必要があると考えております。

となると、もしかしたら「kintone」ってとても向いているツールだなと思って、「kintone」の話をするつもりはぜんぜんなかったんですけど、最後は「kintone」の話で終わるというかたちで、私の発表は以上までとさせていただきたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

覚悟=取捨選択 IT担当がもつべき説明責任

青野慶久氏(以下、青野):久本さん、ありがとうございました。最後の絵をもう一度映してもらっていいですか? これ久本さんがお描きになったって聞いて。

久本:今朝4時半に起きて描きました(笑)。昨日この会場に来て、ど真ん中にモンスターがあったので。

青野:え?! 今朝描かれたんですか! すごい。ありがとうございます。さっそく今日のお話についてなのですが、星野代表とは何度か対談させていただいたことがあって、昔はITなんか語る人じゃなかった。

久本:一度サイボウズさんのイベントに呼んでもらって、一切ITの話をせずに帰るという、大変失礼なことをさせていただいたことがあります。

青野:当時お話を聞いていたのは、情報システム部門がすごく少人数で。

久本:そうですね。当時3人でやっていましたね。

青野:そうですよね。けっこう規模が大きくなっても「3人です」とか。今は人数的にもだいぶ増えたんですか?

久本:現在29人でやっていて、来年末で36人まで増やそうと。

青野:すごい勢いで増やしていますね。すごいですね。「覚悟」というのは、私のとても好きな言葉で、チームのことだけを考えて「覚悟、覚悟」と言っているんですけど、非常に厳しい言葉ですよね。

久本:そうですね。相手に対しても厳しいですし、自分に対しても厳しい。やはり、相手に覚悟を求めるときには自分もそれなりに覚悟しないとダメなんだという、当たり前のことに、この1年ですごく気づけた感じですね。

青野:あの覚悟の矢印がまさにそうですよね。覚悟って言葉がありますけれども、ちょっと意味が難しい言葉で。でも「死を覚悟する」なんていう、あれ非常にわかりやすくて、死ぬの諦めるということですよ。

要は「覚悟する」というのは何かを諦めて、何かを取りに行くというまさに取捨選択(という意味)。今日おっしゃっていましたけれども、優先順位(をつけることです)。「こっちが得られなくてもしょうがないや。でもこっちはなんとか取るぞ」と。

ITに関する覚悟というのは、「他に時間割かなくてもとにかくITだけは理解しよう」。その覚悟を説明によって引き出すというのがすごいですね。よく情報システム部門の方とお話していても、「経営者がITを理解してくれない」と言われるんですけど、よくそれをやりきりましたね。

久本:まずは、最初は説明責任がある。説明しなきゃいけないって、実はそんなに考えていなかった。もうちょっと甘く考えていたんですね。一緒になって経営判断さえできればいいと思っていて、そのプロセスを作ればいい、その場を作ればいいと思ってたんですけど、思った以上に(星野社長が)知りたがりだったというのが実は誤算でした。

最初は例えば、30万円くらいの小さな会計システムの機能追加みたいな、30万なんで2分くらいで「いいよ」と言いそうじゃないですか。「なぜその業務が必要なのか」「その業務全体の流れを教えろ」と言われたんですね。言われると思っていなかったので、まったく用意してなかったんですよ。

そういうのが何回か続いて、「もしかしてこの人、経営判断は1,000円でも1,000万円でも一緒なぐらいのボリュームでやるのかな?」と思い始めてきて。そこから説明をしなければ、そもそも何も通らないということが続いたんですよ。説明の責任を感じたというよりも、説明させられたみたいな。そんなかたちが最初ですね、

青野:説明し切る覚悟を求められた。

久本:求められたという感じ。振り返ると、覚悟を要求されてたんだなみたいな感じですかね。

「クラウド化したい」では伝わらなかった 言い換えを工夫して星野氏を説得

青野:お互い覚悟の切り合いですね。星野さんはホテル運営に関しては、まさに先ほどおっしゃられたように、業務プロセスをマルチタスクでやられるみたいな、新しい業務プロセスを開発・発明されましたからね。そういった意味では、業務プロセスは彼の関心分野だったのかもしれないですね。そこに久本さんの説明がちょっと入ってきたら、こう食いついてきたみたいな。

久本:そうですね。最初は確かにITというよりも、業務、オペレーションのことを知りたいのかなと思って。オペレーションの話もしていたんです。オペレーションも知りたかったみたいなんですけど、ITのことも知りたかったみたいで。

例えば、「クラウド化したいです」みたいな話をするときに、「なんだ? クラウドって」みたいな話から始まって、クラウドが理解できないと先に進めなかったんですね。私たちはクラウドを説明するために一生懸命時間をかけていたんです。それに近い概念が、「リモートデスクトップ」ってわかりますか?

青野:はい。

久本:セキュリティを高めようとしたときに、パソコンでやるとセキュリティが低くなっちゃうから、リモートデスクトップで遠隔で操作することで安全性を保とうみたいなのがあるんですけど。私たちは顧客情報保護の対策を打つときに、リモートデスクトップでやりたかったんです。

それを説明するときに、「技術がわからない」と言うんですね。僕は最初、「技術の力で守れるんです」って言ったんですけど、ぜんぜんそれは許してもらえなくて、「どういう技術か全部説明しろ」と言われたんですね。

当然、技術を説明してもわからないから、それを言い変えることを何度も何度も広げて。それは僕が説明したのは、「すごく高い壁の向こうにある情報に対して、望遠鏡で覗いて操作するようなもんですよ」みたいに言ったら、「それ、わかるね」みたいなかたちで。

青野:なるほど。

久本:納得してもらったんですね。未だに望遠鏡方式とか言われたりするんですけど、望遠鏡方式で、3年前に通した投資計画なんですけど、未だに望遠鏡だけは覚えていて。「セキュリティは望遠鏡でしょ?」と言われて、「はい。望遠鏡です」みたいな。

青野:遠くにいけば安全だ。

久本:成り立っていますね。

青野:おもしろい。

久本:そういうイメージで捉えて理解しないと経営判断ができないと強く思っていたみたいです。

青野:やはりそれは、逃げずに手を変え品を変え、表現工夫をしながら、経営者が腹落ちするまで重ねていって重ねていって。説明し切る覚悟をもっているからこそ、「ITをちゃんとやろう」という覚悟も決めてくれる。こういう関係なんですね。

久本:やはり、システムがちょっとわかっちゃっていると、言い替えも思いつかないんですよね。自分のチームにいる異動してきたばっかりの人たちの前で同じ説明をして、「わかる?」って言ったら誰もわからないんですよ。情報システムユニットなのに。

それで、「例えばこうだ」って言って、「望遠鏡なら一番わかりますね」というところから実はスタートしていたりします。そういったところで説明するテクニックは磨けたかなという気はしています。

現場の言語を理解したメンバーが「kintone」を運用したおかげで、圧倒的なスピード感があった

青野:そういう意味では、情報システム部門の30人くらいの方というのは、内部からと外部からとおっしゃいましたけど、情報のシステムのプロばかりではないんですか?

久本:半分くらいはもともとサービスの現場に出ていたスタッフですね。サービスの現場でマルチタスクを全部こなした人も何人もいますけど、彼らがプログラマーになっていたりとか、例えば大きなシステム開発のPMをやっていたりだとか、システム運用をやっていたりとか。それこそ、「kintone」の担当者も全員現場出身のスタッフですね。

ついこの間まで、星のや軽井沢でサービスしていたメンバーが、情報システムで「kintone」を一生懸命いじったりということを、今、一生懸命やっています。それが半分くらいで、残り半分がキャリア採用として中途で採りました。

青野:半分の方は現場におられるわけですか?

久本:もともと現場にいて異動してきている。

青野:現場をわかった人が。

久本:そうですね。ほぼ全員現場がわかっているので、例えば、新しい開業施設とかにサポートに行くときは、なんならお皿も洗って帰ってくるとか平気でやっていますね。人がサービスの開業時にスタッフがいないと言うとフロントに立っちゃったりとか、そういうことも普通にできるスタッフが今多いですね。

青野:すごい。聞きました? 情報システムの人がホテルの窓口に立っている。すごいですね。

久本:カッコイイなと思って。

青野:マルチタスクもここまできたかという感じも。

久本:あえてそういう人材登用をずっとしていたんですけど。

青野:それも強さかもしれませんね。ある意味、現場をよく知っているからこそ、現場の意見がわかるし、経営者にどんな言葉で説明したらいいのかもわかるし。

久本:やはりそういうメンバーは、現場と一緒にシステムを作るときには現場の言語がわかるので、ものすごく早いんですね。私たちみたいにずっとITの世界にしかいなかったスタッフは、これで一般の人がわかるだろうという言葉で、ぜんぜんわかりづらい言葉でどうしても説明してしまうんですよ。

逆にITの人しか通用しない言い回しとかどうしてもしてしまうんですけど、そういったところは現場出身メンバーのおかげでだいぶ緩衝材にはなっていると思いますね。

システムの“あるべき姿”を作りたかった 久本氏が「kintone」を使いたかった本当の理由

青野:ああ、素晴らしいですね。ちょっと残り時間が少なくなってきましたんで、もしよろしければ今後、星野リゾートさんもずいぶん大企業になってきましたけれども、久本さんが思い描いている未来のビジョンみたいなのは、どういうことを見ておられるんですか?

久本:やはり企業のIT担当としていろいろやらせていただいている中で、優れた企業システムを作りたいという気持ちが強いんですね。とくに10年くらい前に言われていた企業システムの正しい姿って、今もうぜんぜん正しくなくなっていて、新しい考え方がどんどん出てきていると思っています。

とくに、10年ぐらい前までは、ずっとやってきたレガシーなシステムや基幹システムをそっとしておいて新しい機能を足そうみたいな考え、あったじゃないですか。でもそれって、実際には50年くらい前に、まだメモリが64キロバイトしかなかったときのコンピューターシステムで考えられた仕様が前提になっていることが多いんですよ。

今、ぜんぜん技術が進んで、何の制約もないのにこれがシステムとして当たり前だと思いすぎていると思っているんですね。それはホテル業界も一緒です。今の技術を元に、技術だけじゃないんですけど、本当はこの業務はどういう業務だったんだろう? システムの制約があるから作られちゃった仕様なんだけど、本当は業務を突き詰めていくと、ぜんぜん違った仕様だったんじゃないかってどこかで思っているんですよ。

僕らはそこに取り組んでいきたくて、もう1度、システムのあるべき姿じゃなくて、業務のあるべき姿からシステムのあるべき姿を作りたいと思っています。そこは当然、試行錯誤の世界になっていくと思うので。

やはりサイボウズさんの「kintone」を使いたかった最大の理由はそこで、日本全国のスタッフが自由に「kintone」でアプリを作っていった中からヒントが出てくると思っていまして、そこに今、うまく取り組んでいきたいなと思っています。

青野:ありがとうございます。「kintone」の宣伝までありがとうございます。素晴らしいですね。このシステムの中にもたくさんの私たちの古い思い込みがありますけれども、このモンスターを駆逐しながら、素晴らしいシステム構築を続けていってください。どうもありがとうございました。最後に久本さんに大きな拍手をお送りください。ありがとうございました。

(会場拍手)

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