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キーノート|トランスフォーメーションの時代に(全2記事)

2020.01.21

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ジャック・マー氏ら一流経営者も参画 「世界経済フォーラム」が掲げる、デジタル時代を生き抜く企業経営のヒント

提供:SEMIジャパン

2019年12月11日〜13日、東京ビックサイトにて「SEMICON Japan 2019」が開催されました。SEMICONは、世界を代表するエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会。半導体製造における最先端技術の展示や、国内外のトップエグゼクティブ、技術エキスパートによる講演などが実施され、3日間で5万人を超える来場者で賑わいました。この記事では、世界経済フォーラム日本代表の江田麻季子氏が講演したオープニングキーノート「トランスフォーメーションの時代に」の模様をお届けします。官民連携のプラットフォームを築く国際機関・世界経済フォーラムの活動を紹介しながら、社会課題解決への取り組みの一端を紹介しました。

トランスフォーメーションの時代に生きる私たちができること

江田麻季子氏:みなさま、おはようございます。世界経済フォーラムの江田でございます。浜島(雅彦)様をはじめ、SEMICON Japanの開催、誠におめでとうございます。

私はインテル出身ですので、毎年この会には参加はしていたんですけれども、今年は世界経済フォーラムという、違う立ち位置で参加させていただくのを非常に楽しみにしております。

「トランスフォーメーションの時代に」というタイトルでお話をさせていただきますけれども、今日は少し世界経済フォーラムの取り組みについて、みなさまにお話をさせていただいて。ぜひみなさんと一緒に、世の中を良くしていく活動をできればいいなと考えております。

今も申し上げましたとおり、実は18年間、インテル株式会社に勤務しておりまして。世界経済フォーラムには、2018年に日本の代表として移りました。技術の世界はとても楽しくて、新しい世界を開拓していく、そういった非常におもしろい仕事をずっとさせてもらっていたんですけれども。私たちの生活の中に技術も大きく浸透していく中で、なにかパブリックプライベートパートナーシップの取り組みで貢献できることがないかということで、1年半前に移りました。

(スライドを指して)今日はこの4つの点でお話をさせていただきたいと思っています。世界経済フォーラムといって、よく新聞では「ダボス会議」であったりとか、あるいは「世界経済フォーラムの統計によると」みたいなかたちで、名前は知っていただいてるかもしれません。

いろんな背景ですとか歴史も含め、少しご紹介をさせていただいたあと、私たちの今の取り組みのアプローチ、そして1月に行われます年次総会、通称「ダボス会議」でございますけれども、そちらのテーマ。最後に、みなさんとそういった課題をどうやって共有していくか。そんなトピックでお話しをさせていただきます。

官民両セクターの協力のもと、グローバルな問題の解決にあたる

世界経済フォーラムというのは、スイス連邦政府下の国際機関でございまして、官民両セクターをもって地球レベルの課題を解決していくということで、来年50周年を迎えます。

「Improving the state of the world」と書いてありますけれど、それがモットーでやっており、独立・中立、そしてインテレクチュアルに、世界規模の問題をどうにか解決していこうと活動している組織でございます。

ここに映っているのが、世界経済フォーラムの創設者であり現会長であります、クラウス・シュワブ教授です。彼はドイツの経済学者なんですけれども、1971年にジュネーブに本拠地を置いて「ヨーロッパ経営者フォーラム」を設立しました。

その当時はおそらく、アメリカの企業がどんどんと出てきていて、それに対してヨーロッパはどうしていくんだ、というのが最初の会議体であったのだろうと推察をします。

「世界競争力レポート」などを発表し、徐々にシンクタンクとしての評判を高めてまいります。そして80年代後半には、ヨーロッパということではなくて、世界レベルの話をしなければいけないということで、名前を「世界経済フォーラム」に変えました。

おそらくマイルストーンになった年かなと思うんですけれども、92年のダボス会議で、そのころアパルトヘイト下にあった南アフリカのネルソン・マンデラさんが、デクラーク大統領と初めて国外で会って。そこから国の変革のための活動が始まったと聞いております。

そして2015年には、官民両セクターの協力のもとグローバルな問題を解決していくということで、国際機関としてスイス連邦に認められ、新たな発展をしております。

来年は創設50周年。来月のダボス会議も50回目でございます。シュワブ会長はますます元気で、82歳でバリバリと仕切っております。

ジャック・マー氏やマーク・ベニオフ氏も参画 世界経済フォーラムを支える、強力なマルチステークホルダーたち

私たち世界経済フォーラムには、重要なことが3つあります。1つはグローバルの、世界レベルの課題へ活動すること。それからもう1つは、未来志向で物事を捉えること。そして3番目、ここは必ず重要だといって話しているのが、マルチステークホルダーの協力体制でございます。

メインには各民間会社の年間会費で成り立っている組織でございまして、1つの国からの拠出金だけで成り立っている国際機関とは違います。それもあって、ある程度中立的な立ち位置はとれるんですけれども、同時にふつうにあるガバメントの枠組みでは解決できないようなことも解決していきたいと思っております。

パブリックセクターの参加、それからシビルソサエティという言い方をしますけれども、市民社会ということで、アカデミアの方ですとか。

それから若い世代の方たち。ヤンググローバルリーダーという言葉を聞いたことがあるかもしれません、40代以下の次世代のリーダーの方たち、それから30代以下の組織ということで、グローバルシェイパーズといったコミュニティも持っております。若い世代の声を積極的に、そして世界のトップリーダーと公平な場で議論をしてもらう。そんな活動をしております。

ガバナンスというのは、今ホットなトピックでございまして、シュワブ会長が50年前に作って、シュワブさんが1人でやってるんじゃないか、みたいな印象がちょっとあるようなので。私たちの取締役というか、評議員のメンバーを持ってまいりました。彼らは四半期に一度、世界経済フォーラムの活動を確認し、方向性にご示唆をいただいております。

中にはOECDの(アンヘル・)グリアさんであったりとか、Salesforceのマーク・ベニオフさん。それから竹中平蔵先生、そして(クリスティーヌ・)ラガルドさんも非常にアクティブな評議員であります。アル・ゴアさん、今環境問題のところで大きなクライメートアクションが必要ですので、リーダーシップを発揮していただいております。

そのほかジャック・マーさんであったりとか、チェリストのヨーヨー・マさん、いろんな角度からこの世界経済フォーラムの活動のガイダンスをいただいております。

世界のリーダーやコミュニティを通じて、世の中に大きなうねりを生み出す

それでは最近私たちがすごく注意して、「こういったかたちで世の中を変えていくんじゃないか」と思っているプラットフォームアプローチについて、少しお話をさせていただきたいと思います。

いろんな問題が世の中にはあって、私たちが取り組まなきゃいけないと思っているのは、一個人、あるいは一企業、どんなに大きな会社でも、どんなに大きな一国でも解決できないような、野球だとポテンヒットでみんなでお見合いしちゃうような問題です。

誰が始めていいのかわからないようなものを、ブレストしながら先ほどのマルチステークホルダーの枠組みで解決していくのが、私たちの役割だと思っております。一旦それが軌道に乗ったら、担当の国際機関にそちらを渡してやってもらう。そんな立ち位置をとっています。

例えば「世界経済フォーラムは何をやるんですか?」と言われますと、私たちがプロジェクトを持って自力だけで回していくと、どうしてもスケールが足りません。正しいことをやっているかもしれませんけれども、大きな世の中のうねりにならないんですね。

ですから、ご参画いただいている世界中のリーダーの方たちのコミュニティを通じて、課題を共有していただくのと同時に、そういったプラットフォームを運営することで大きなうねりにしていきたいと思っています。

アジェンダを形成し体系的な解決に繋げる、18のプラットフォーム

私たち世界経済フォーラムは、物事が全部繋がっていて、(スライドを指して)「システムリーダーシップ」と書いてありますけれども、1つの問題が「データは誰の持ち物か」みたいな話から、地政学的な話にもなります。それから企業の競争の話にもなって、その先には格差の問題もあるかもしれない。そういったものを繋げて、連動して考えながら、枠組みを作ってまいります。

そうした活動の中でみなさまとアジェンダを形成し、そして体系的な解決に結ぶ活動を進めていく。そういったことをプラットフォームと呼んでおります。

今18個のプラットフォームを設定して注力をしているんですけれども、すべてをお話できませんが、この中には健康とヘルスケア、あるいはモビリティ。

モビリティと言うと、昔は車であったり車両であったり、そういったトランスポーテーションみたいな考え方でお話をしておりましたけれども。もうインダストリーを越えて、ここにはドローンも入ってくるし、いろんなものが入ってきます。

それから消費のあり方。今いろんなかたちで、消費者の動きというのも変わってきているので。この未来はどうなっていくんだろうと、未来志向で考えています。この中にはウェルビーイングの考え方であったりとか、サスティナブルな消費はどうなんだっけ、といったことを考えております。

シティインフラ、アーバンサービス。ここも「街がどんどん大きくなって、このままじゃ困るよね」という議論は多々あるものの、なぜ大きく増えていく人口は、みな都市に住むのか。そういった疑問も投げかけている。

日本でも見ますけれども、おそらく地方だとなかなかオポチュニティが足りなくなってきている。じゃあなぜ、仕事のオポチュニティであったりとかサービスが行き渡らないんだろうか。アーバンサービスという考え方ですね。そういった議論をしております。

また、もちろん今ホットな貿易の話。どうにか解決の糸口にならないか、ということで活動をしております。

グローバル・パブリック・グッズ。ここは私たちがみんなで共有していく物という考え方ですけれども、メインに環境の話を議論しています。2年ぐらい前にマイクロプラスチック、海洋プラスチックの話、「魚の重さよりもプラスチックのほうが増えるかも」みたいなヘッドラインが出ましたけど、それも2年ぐらい前にこのグループで出しています。

今は循環エコノミーの話であったりとか、バッテリーですよね。今後モバイルの話がどんどん広がっていくときに、バッテリーのソーシングからリサイクルまで、どうやって新しいチェーンを回していくのか。そんな議論をしています。

それからニューエコノミーとソサエティ。第4次産業革命と呼ばれているほど大きく経済の構造とか社会の構造が変わっていく中で、私たちが生きている間にする仕事はおそらく1個ではないだろうと(言われています)。間違えると、5個か6個になるかもしれない。ただ大学を出てそのままでいいんでしたっけ、という話があって。

キャリアチェンジを何回もやっていくだろう。その中で十分にスキルを得る機会が与えられているかどうか、そういったことも考えていかなければいけないし、デジタル化が進む中で取り残されている人たちもいっぱいいるのではないか。成熟国の中でも分断が進んでいる。そんなところをどうやって解決していくべきなのか。そんな話をしています。

サイバーセキュリティ、それからテクノロジーガバナンス。この中にはブロックチェーン、AI、機械学習、データポリシー、IoT、ロボティクス、スマートシティとありますけれども。

ここは今新しく生まれてきている技術、どんどんイノベーションが進んできて、できることはどんどん増えています。実はそれを使うガイドラインであったり、基本的な法整備は追いついていません。できるだけそこのポリシーを多国間で共有して、イノベーションを削がないかたちで技術をうまく取り込めないか。そんな活動をしています。

新時代の企業経営を推進する3つの取り組み

「デジタルエコノミーと新しい価値の創造」ということで、今どの企業でもこの話になっていると思いますけれども、例を持ってまいりました。企業の平均寿命は、その昔は75年あったものが、今はわずか15年。どんどんとビジネスモデルが変わって、収益の運用が変わってきています。

それと同時に働いている人たちは、やはりその企業に社会的責任をもっと果たしてほしい(と思っている)。とくに若い人たちはそう思っていると聞いております。そしてビジネスの根幹がデータを基準にしたものになってきています。こういった環境の中、私たちはどう企業を経営していったらいいんだろうか。

ということで今、3つの取り組みをしています。1つは会員の企業の方たちが集まって、ひざを突き合わせて議論してます。産業横断的な視点というのはとても必要で、今までの産業が変わってきているので、横に見たときにマーケティングディスラプションがどこから来ているのか、来る価値があり得るのか、そんな議論をしたりですとか。

新しいビジネスモデルに移行するにあたって、どういうかたちで移行すべきなのか。スキルセットをどう付けていくのか、どういう枠組みにしていったらいいんだろうか(という議論をしています)。

そして3つ目、レスポンシブル・デジタル・リーダーシップということですけれども、今教科書がない時代、そしてデータがプロフィットの7割であると言われているときに、どのようなかたちで責任のあるリーダーシップを発揮すべきか。悩ましいところですけれども、積極的に議論をしていく必要がある部分だと思っています。

先ほど「一生の間に5つも6つもキャリアを積むのではないか」みたいなお話をしましたけれども。「AIが仕事を奪うんじゃないか」みたいな議論って、よく新聞の見出しで見ます。私たちは、おそらくそうなるかもしれないけれども、同時に準備することはあるだろうと。

必要とされるスキルが変わるのであれば、その新しいスキルを身に付ける時間、投資。今まで以上に、政府とかガバメントに頼るのみならず、企業が積極的にスキルを付けていく。そういったことが必要なのではないかと。

それが起これば、トランジションはそれほど甚大な、深刻なものにはならないのではないだろうかと考えています。同時にリ・スキルをする間のセーフティネットを用意してもらえるように、各国政府に問いかける。そんな活動です。

あるいはギグみたいな新しい働き方が出てきていて、最近ニュースになっていて。労働者が保護されていない。じゃあどうしたらいいのか。ベンチャーとは言わないですけれど、アントレプレナーシップの精神を持って、時代に遅れないかたちで議論を進めていく。そんなことをやっています。

よく聞かれるのは、国際機関というと「国連とかほかのところは競争相手なんですか?」みたいなことを言われるんですけれども。「いえいえ、すべての人を巻き込んで、一緒に協力体制でやっていこう」と思っています。

「サマーダボス」では、SDGs達成の取り組みをシェアリング

SDGsは、大きなゴールとして非常にすばらしいと思っていて。私たちの役割は、そのゴールを達成する取り組みのやり方は、いっぱい方法があるだろうと思っております。山に登っていく途中のベストプラクティス、あるいはテストプラクティス、いろんな経験を横で共有することで、SDGsの達成に貢献していきたいと思っております。

またここにあるダボス会議、一番左側で、ここが一番メディアに出ていくので。「あの『ダボス会議』の世界経済フォーラム」ということで、年に1回だけ季節労働のように働いているかのようですけれども。いえいえ、年間を通じて先ほどのようなプラットフォームの運営をしております。

ASEAN、ラテンアメリカ、アフリカ、中東などの地域会合もしておりますし、企業のストラテジーオフィサーの方たちに業界を越えて集まっていただいて、今の時代に何が必要なんだろうか、そんな議論をしていただいたりですとか。

夏、「サマーダボス」ということで、SEMICONの方たちにも今年は来ていただきましたけれども、中国での各ニューチャンピオン年次総会、そして国連総会が9月の末にニューヨークであるんですけれども、そこに合わせたかたちで「持続可能な開発インパクトサミット」(を開きます)。今お話したように、SDGsを達成するために必要なこと、取り組みのシェアリングをやっております。

(スライドを指して)新しくテクノロジーの話を先ほど申し上げましたけれども、そのテクノロジーのガバナンスを議論する。こういった会議も新しく来年の4月から始めようと思っております。

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