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パネルディスカッション(全3記事)

2019.12.17

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ターゲットに届けるために必要なのは「餅は餅屋」の発想ーーDMM林氏が明かすオウンドメディア運営の鉄則

提供:Indeed Japan 株式会社

2019年11月28日、Indeed Japan主催の「Owned Media Recruiting AWARD 2019」が、グランドハイアット東京(六本木)で開催されました。「オウンドメディアリクルーティング」とは、企業が求職者に向けて直接情報発信を行うリクルーティング手法です。本イベントでは、この手法を採用活動に取り入れている企業の中から、とくに先進的な取り組みを行っている企業を数社表彰。グランプリにはサイボウズが輝き、オイシックス・ラ・大地、コロプラ、ディー・エヌ・エー、DMM.comが入賞を果たしました。表彰式の後に開催されたパネルディスカッションには、5社それぞれのオウンドメディア担当者が登壇。運営の苦労話や注力したポイント、その成果などを語りました。

PVだけでは価値を測れない オイシックスが明かした、オウンドメディアで追うべき数値とは

曽山哲人氏(以下、曽山):わかりました。ありがとうございます。では自己紹介も含めて、サイトについても見させていただいたので、実際のトピックについて少しお話を進めていきたいと思います。

3つぐらいテーマがあるんですけれども、オウンドメディアについては少しお話をいただきました。取り組みについてお話いただいたところがあるとすると、どちらかというと「これから注力したい」「こういうところに力入れてます」みたいなところをお話できればなと思ってます。小川さんからよろしいですか。

小川佐智江氏(以下、小川):注力点を話す前に、これまで注力していたところなんですけれども。私たちもまだまだ手探りな中で、PVを追いきれないということに最初につまずきました。

そこから、興味を持っていただいている候補者の方、サイトを訪れた方に、きちんと情報が伝わるようにしようということを目標に変えました。応募してきてくれた方のメールにきちんと「これ読んでくださいね」とお伝えしたりとか、協力いただいているエージェントさんなどにお伝えをして見ていただく。それらを注力してやっていたので。

今後も、まずはきちんと興味を持ってもらっている方に見てもらえるような導線作りに注力しつつ、そういったPV的な、まだまだ興味を持ってもらえない社外の方であったり、社内のメンバーにももっと読んでもらえて、かつ誇れるようなメディアに育てていく。そのためにどうしたらいいのかを、今まさに注力し始めようとしているところです。

曽山:なるほど、ありがとうございます。やっぱりページビュー問題はあったんですね。

小川:ありました(笑)。

曽山:どんな議論だったんですか? 「ぜんぜんページビューが伸びないね」といったものか、それとも経営陣から「ページビューもっと伸ばせよ」と圧がかかったのか。どういう感じなんですか?

小川:やはり採用のチームにいるので、チームで「採用の人数」というところをKPIで持っているので。

曽山:あっ、そうですね。まず目標ありますもんね。

小川:そういったときに、じゃあこのメディアをどう活かせているのかがなかなか……。数字や定性的なところも含めて、最初のころは言えなかったのが大きかったなと思っています。

カギはたった1人の反応に目を向けること

曽山:それを「興味を持ってもらえる記事を書こう」と目標を変えられたわけじゃないですか。そもそもどうやって測定するのかというか、肌感覚みたいなものがあるんですか?

小川:面接で来ていただいた方に直接聞くですとか、求人の募集の一番最後のところに、アンケートのようなものを付けてまして。

曽山:なるほど。

小川:実際に応募する前にどんなものを見てきたかとか、興味を持ってきたかというところを聞くようにしてます。

曽山:そうすると、実際の反応はやっぱり返ってくる?

小川:はい。最近、徐々に。「noteを見ました」という声ですとか、「こういった記事を見て、すごくよかったです」という声を聞けるようになりました。

曽山:そういう意味では、今日Indeed Japan代表の高橋(信太郎)さんからもありましたけど、服部(泰宏)先生のお言葉に「共感の醸成が採用サイト・広報活動に大事だ」とありました。面接で「見ましたよ」と言われるとうれしいですよね。

小川:うれしいですね(笑)。

曽山:やっぱりページビューの1とか2という数よりも、たった1人の反応を見るほうが大事というのは、さっきのソーシャルの青野さんの話もそうですよね。そういったところがカギになるなというところで。

小川:はい。

曽山:「そんなにページビューって見なくていいんだよ」ということを、これをきっかけに。

小川:(笑)。

曽山:それよりいい記事書こうというのが1つあるという。わかりました。ちなみにもう1個、注力のところで。「誇れるメディアにする」なんて話もありましたけど、これは「社員が」「その家族が」という意識があるんですか?

小川:これも最近なんですけれども、まずは社外の興味を持ってもらえる人に届けようと思って作っていったんですけれども。最近「うちのチーム取り上げてもらえませんか」と声が社内で出てくるようになりました。そういうふうに、取り上げられるとうれしいんだと思ってもらえるメディアになってきたんだなと、社内のメンバーから聞いて気付きました。

であれば、もっともっと社内の人が載ったときに「うれしい」と単純に思ってもらえて、思わずお父さんやお母さんにも言ってしまうような(笑)、メディアにきちんと作ろうと思いました。

曽山:それはすばらしいですね。サイバーエージェントでも、「家族にシェアしてもらえるか」という(ことを意識しています)。なので、1枚目の写真をいかにきれいに撮るかは、僕らもすごく大事にしています。ご家族にも見てもらえる。そういうかたちですね。

小川:はい。そうです。

コロプラ多家氏が語る、数値を追うことへの違和感

曽山:わかりました。ありがとうございます。コロプラさん、どうですか? 注力とか、これからしようと思ってるところについて、どのへんがあるんですか?

多家:みなさんもPVのお話をされているので、弊社もそのお話をしたほうがいいのかなと(笑)。

曽山:無理に合わせなくても大丈夫ですよ(笑)。

多家文葉氏(以下、多家):とんでもないです(笑)。やっぱり最初の指標としてPV数はあったんですね。記事の本数とか。

曽山:やっぱり見ているんですね。

多家:私、この会社に入る前にオウンドメディアを裏側から見ていまして、いろんな企業さんで担当者の方が苦労されているのをわかっていたんですね。それで一番大事なのはPV数を稼ぐことじゃなくって、たった1人の求職者の方に響く記事を書いて、入社いただくことですよね。

曽山:そうですね。

多家:ですので、そもそも数字を追うのは目標としてちょっと違って。しかも求職者の方って、例えば新卒でも中途でも自分の入社が終わったあとって、その会社のメディアを見ないですよね。常に読者が変わっているんですよね。それがまず前提としてあるけれども、じゃあ一体何を追っていったらいいんだろうという話になると思うんです。

曽山:はい。

多家:やっぱりそのたった1人の求職者の方が本当にほしい情報を丁寧に伝えることと、あと(小川さんが)おっしゃっていたように、導線を大事にすることだと思っています。

曽山:導線。

多家:ですので、募集要項のところに面接官の記事を貼るとか。

曽山:なるほど。

多家:それは緊張を緩和につなげますし、あと実際に働いているチームメンバーを伝えるとか、いろんな使われ方があって。もちろんご家族に喜んでいただくとかもあるんですけれども。社内でもコミュニケーションツールの1つになるとかですね。いろいろあって、大事さもある。

締め切り日はゆるめにリマインド 運営方針で重視している“現場ファースト”

多家:あとはプラスで、HR管轄でやっているので、見てくださる方もすごく大事ですけれど、弊社の社員を大事しなきゃいけないですよね(笑)。ですので、運営方針として一番大事にしているのは、「現場ファースト」なんです。

曽山:現場ファースト?

多家:それは、原稿の締め切り日についても「(希望)」と書くんです(笑)。

曽山:渡すときに(笑)。

多家:例えば11月20日と言って、20日までに返してくれる人が多めなんですけれど。返せない方はゲームを一生懸命作っている方であって、そっちにもちろん集中していただいて、お客様にゲームを楽しんでほしいですよね。

だから20日が過ぎたら、21日にゆるめのリマインドをするんです。「1週間ぐらい延ばしますね~」って(笑)。

曽山:なるほど(笑)。

多家:結局このサイトによって、弊社の社員に負担をかけたくない。気持ちでもストレスを感じてほしくないので、メディアとしての見栄えも大事なんですけれど、社員をまず大事にします。それによってみんなが安定して協力できるというところがありますよね。

記事本数としては一応、毎月6本ぐらい公開できるようにと思っているんですけれど、11月に関して申しますと、(スライドを差して)「Be-ars」の最初のページにいっていただくことは可能でしょうか。

11月は21日まで、1本しか公開できなくて(笑)。先週の金曜日までですね。だけれど、22日に一気に2本公開しているんですね。今週1本と今日で合計5本ぐらいになりそうなんですけど。そういう内側の人たちが回せなかったりすると、このようにはなります。

良い記事を書くための「希望締め切り日」制度

多家:採用関連って、「どうしても今日見たい記事」が少ないんですよね。なので、即時性じゃない。今エンジニアが載ってますけど、エンジニアのほかの記事もあります。まだ出ていない記事はもちろん見せられないけれど、過去の記事を見せることによって、求職者の方の役に立てるという側面はあります。

曽山:なるほど。

多家:新しい記事はもちろん大事なんだけれども、あんまり急がないようにする。ですから社員を大事にするし、プロダクトを大事にするし、できればメディアの見栄えとして6本ぐらい出したいですけれど、優先順位はあります。

曽山:「ページビューよりも、1人に響いて入ってもらうことが大事」というのは名言ですね。

多家:本当にそうです。だって弊社、シナリオライターの方とかサウンドクリエイターの方に入ってほしいですけれど、そもそも求職者の母数がすごく少ないんですね。ですからファンの方に読んでいただくことによって、すごくPV数をいただいたりもするんですけれど、結局それって真のターゲットではないファンの方が喜んでいて(笑)。

シナリオライターの方はその中の数人。その中の方に入っていただいてるので、「惑わされないようにしないと」というところは日々思っています。

曽山:わかりました。即時性、締め切りよりも良い記事。これも大事ですね。

多家:良い記事と、社員が困らない。

曽山:「希望締め切り」というね、すべてのオウンドメディア編集者が導入したほうがいいですね(笑)。そうするといい記事が書けます。

多家:そうです(笑)。

カルチャー先行のサイボウズ 課題は仕事内容の具体性を伝えきれていないこと

曽山:ありがとうございます。じゃあ青野さん、お願いします。

青野:「サイボウズ式」でずっと情報配信をしてきて、「サイボウズに共感する」「サイボウズみたいな働き方がしたいです」という方に来ていただけるようにはなったと思っています。逆にそこが強くなっていて、「サイボウズって何の会社だっけ」とかですね。「じゃあ何やるんですか?」と聞いたときに、なかなか明確なものが出てこなくなる人も出てきているので。

逆に言うと、私たちが事業のおもしろみや、仕事内容の具体性を伝えきれていないんじゃないのかなと思っています。多くの会社さんはそっちのほうが先に出て、カルチャーがなかなか出てこないんじゃないかなと思うんです。私たちだと逆に行き過ぎているところもある。

曽山:カルチャーがはっきり出ている。

青野誠氏(以下、青野):カルチャーや働き方などのほうがニュースになっていく。逆の事業面も出していかなきゃいけないなというのが1つです。

あといくつかあるんですけども、やっぱり採用でいくと、募集して「これは勝手に来るな」という職種と、そうじゃない職種が明確にあって。「サイボウズ=エンジニア・マーケティング」というイメージがつきやすいんですけど、法務とか財務系とか(は薄い)(笑)。

採用観点でいくと、けっこう探しづらい。サイボウズにそういう職種があるんだということ自体、応募者さんが気付きづらい。そのへんをイベントであるとか、こういう仕事をしてますよというのを、とくに弱い職種に対しては出していきたいなと思ってます。

曽山:なるほど。

青野:もう1個、いろんな募集枠を設けてきて、多様な人を採りたいなと思っています。例えば副業採用。「サイボウズを副業にしてもいいですよ」という採用ですね。あとはユニーク採用。今はポテンシャル採用という名前に変えましたけれども、「違う業界から来てもいいですよ」という。

こういうことをやってきて、例えば障がい者の方向けだとか、多様な方向けの採用方法はやっていきたいなと思ってます。

曽山:もともとこの「サイボウズ式」は、最初のころは「採用目的というよりは事業目的だった」とお話をされましたが、今だと本当にカルチャーや働き方が強いじゃないですか。だから、狙いがある意味違うところにいって、爆発した。今度はもっと事業を伝えなきゃというのが、むしろ課題なんですね。

青野:実は「サイボウズ式」は、あんまり社内のことは出さないんですよ。

曽山:外の人からの。

青野:ちょっと間接的に。サイボウズって自立を大事にしています。じゃあその自立のことを考えて、「そうだ為末(大)さんと一緒に話してみよう」とかですね。

曽山:確かにそうですね。

青野:こういう感じなんですよ。なので、社内でこんな人が働いてこんな仕事してますよ、というものが出ていかないんですね。なので、自然と「サイボウズって実際何やってるんだっけ」ということになりがちなんですね。

曽山:これから差し支えない範囲でいいんですけど、「事業をもうちょっとこうやって出していけるといいな」となにか考えていらっしゃることはあるんですか?

青野:そうですね……。先日、採用サイトのほうに営業本部長のインタビューを出して、サイボウズで営業するおもしろみを出させていただいたりしました。こういった感じで、各事業部の人に考えを語ってもらったり、直接イベントの場でお話をするのはいいんじゃないかなと。

入社者の約9割が「フルスイング」の読者 オウンドメディアが意思決定の一助に

曽山:わかりました。ありがとうございます。榮田さん、ディー・エヌ・エーはどういうふうに?

榮田佳織氏(以下、榮田):ちょっと慣れてないもので、手元のメモを見ながらでよろしいでしょうか(笑)。

曽山:ぜんぜん(笑)。

榮田:ありがとうございます。まず注力して見ている成果に関しましては、まず入社者に対する認知と理解促進につながっているかを見ています。

ここの数値感的なところで申しますと、現在ディー・エヌ・エーに入社される方々の約8割から9割程度が、入社前に「フルスイング」を読んでいる状態。

あとは理解の促進というところに関しては、「フルスイングの情報が応募のきっかけ、もしくは入社の意思決定の助けの1つになった」と回答してくださる方が、今半数近くとなっています。

曽山:すごいですね。

榮田:現在だと2年ちょっと続けてきて、ようやくここのあたりまできたんですけれども。この数値自体ももともと低くて、そこをどうやって上げてきたかというお話をさせていただければなと思います。まず、立ち上げて1年ぐらいは話題になりやすい記事を作ることに注力していまして。

曽山:やっぱり狙うんですね。

榮田:狙っていました(笑)。KPIというわけではないんですけれども、どれだけはてブされたかとか、ソーシャルシェアされたかを見たりしていました。もちろんターゲットに寄せた記事にはしているんですけれども。

(スライドに表示:「DeNA流リーンスタートアップ。『3年間で24事業立ち上げ19事業を閉じた』新規事業チームが語る、10の経験則」)

それもけっこう今でもシェアされたり、スタートアップ系の方とかによく、参考になるというかたちで見ていただいているんですけれども。章立てなどもけっこう工夫していました。あとで見直してきても、この記事の章立てなどですね。

「企画編」「グロース編」とか、見たいところだけ見てもいけますし。かなりお得な内容になっているので、はてブしていただいたり、そういったものは伸ばしていたんですね。

候補者目線に立ったコンテンツ作りを意識した

榮田:ソーシャル上で見ると、潜在的な方々にはいい反応をもらえている気はするし、PVも伸びていっていたんですけれども。ふと社内で話しているときに、もっと顕在層というか、「ディー・エヌ・エーに興味はあるんだけれど、もう少し知りたい」という方とか、後押しできるような方々に届いているんだろうかと。

それが実際わからない状況だったんですね。それをどうやって特定するかというところで、調査対象は難しかったんですけれども、もっとも読んでいてほしい「入社者」(に絞った)。さっきもお話にあったように、たぶん各社様が見られてるかもしれませんが。結果的に入社された方が読んでいたというかたちになりますが、入社者に対する調査を始めました。

曽山:なるほど。

榮田:そこで、先ほどちょっと申しました指標ですね。今8割から9割ぐらいの方が読んでくださってると申したんですけれども、1年半前ぐらいは約3割でした。

曽山:ぜんぜん違うんですね。

榮田:そうなんです(笑)。ソーシャルでなんとなくバズっている気はするんだけれども、入社者に読まれてないね、みたいな感じで……。

曽山:めっちゃシェアされているけど、実際に入社してくれる人は意外に見てない。このギャップがあったということですね。

榮田:重なる部分はあると思ったんですが、まだやっぱりギャップがあるなというところで。そこで立ち返って、候補者目線に立ったコンテンツの制作により振ったかたちですね。

その方法としては、入社者にヒアリングをしました。「入社前にもっと知りたかったことありますか?」「他社と比べて相対的に、うちのどういった点がいいと思ったからですか?」「それって発信されていましたか?」「どのように調べましたか?」とか、そういったことをヒアリングしました。

榮田:ほかにもリクルーターや採用担当者、転職のエージェントの方々にもお話を聞いて。それで実際、ディー・エヌ・エーが他社よりメリットに感じてもらっているんだけれども、発信できていないことなどを作っていきました。

自社の魅力を伝えながら、読み物としてのおもしろさにもこだわる

榮田:例えばそれでできた企画例で申しますと、この(スライドの)ちょっと下のほうにですね、「Feature」とあるんですけど、その左と真ん中のとか、エージェント様から求職者目線で切り込んでもらうコンテンツ。「ディー・エヌ・エーはこう思われてますけど、どうですか」とか(笑)。

曽山:有名なヘッドハンターの高野(秀敏)さん、ディー・エヌ・エーの「激務なんじゃないか」というところのリアルを聞いてみたと。

榮田:そこに関して、実際のリアルな数字感も出していまして、もしかしたらみなさんが気になるかもしれない離職率とかもありますし。

曽山:それはオープンに。

榮田:そうです、そうです。良い点も、もしかしたら課題と思われるかもしれない点も、できるだけオープンに出していこうということで、こういったものを作っています。

曽山:なるほど。

榮田:おもしろいもので、こういった記事を作るとみなさんシェアをしにくいのか(笑)。ソーシャルの反応は少ないんですけど、PVはけっこう高い。

曽山:確かにそれはありますよね。けっこう生々しいし、ちょっとシェアするには憚られるんだけどすごい見るという。実際そういうのありますもんね。

榮田:そうですね(笑)。これをシェアすると「あれ? ディー・エヌ・エーに行きたいのかな」と現職の上司に思われちゃうかもしれないですし(笑)。

曽山:そうですよね(笑)。社外の人にシェアしにくい。

榮田:そういったコンテンツの作り方にもこだわっていまして、今だとチームの体制で言うと今年度から、編集経験者もチームに入りました。

曽山:未経験から経験者に。

榮田:私以外に入ってもらっているので、自社の魅力をわかりやすく、また読み物としてもおもしろく届けていくことには、かなりこだわってます。

「このメディアは何のために社内で存在しているのか?」という問いの重要性

榮田:ほかにあと2点あって、じゃあいいコンテンツが作れてきたとすると、あとは届け方ですね。

曽山:そうですね。

榮田:届け方というところに関しては、この「フルスイング」が、職種と事業がすべて入っている感じになっているので、エンジニアさんも見られますし、もちろんビジネス職も、デザイナー職の方向けの記事もあります。それにゲーム事業部の記事もあれば、ヘルスケア、オートモーティブの記事もあるという状況です。

実際に読者の方が流入されたときに、新卒エンジニア志望の学生さんと、あとヘルスケアで研究したいという、今メーカーで研究されているような方とかだと、まったく見たい記事が違います。

あとその接点もぜんぜん違うかなと思っています。人力にはなるんですけれども、各記事を作るごとに、例えばビジネス系のマネジメント系の記事だったら、それをピックアップしてるメディアさんもあるので、そういった方々にお話して、「こういう記事を出したんですけど、もしよければ届けてもらえませんか」みたいな。

曽山:お願いするんですね。

榮田:親和性があれば載せていただいたりもしますし、あともしコミュニティマネージャーの記事を出したときは、そういったコミュニティマネージャーのハブになるようなグループに投下したり、いろんな導線を日々考えています。

あとは届け方とちょっとつながるんですけれども、Web上の届け方を毎回考えるのと同時に、社内からどうやって手渡ししていくかもけっこう大事かなと思ってます。

実のところ、私が異動してきたとき、そもそもメディア自体の運営に携わるのも初めてでしたが、HRも初めてでして。最初はもしかしたら、リクルーターの方たちとちょっと壁があったかもしれない(笑)。

曽山:「人事のこともわからないのに」と現場が思うかもしれないということですね。

榮田:私からもそんなに採用を担当する方々のほうに入っていってなかったですし、メディアを作るのでいっぱいいっぱいだったところもあるんですけれども。ふと立ち止まったときに、「このメディアは何のために社内で存在するか?」と考えると、採用活動の助けとなるためです。

曽山:そうですね。

榮田:ということで、当たり前のことなんですけど、そう思いまして。採用担当者らと密にお話したり、「『フルスイング』って実際どう思いますか、(採用のときに)使いますか?」みたいな。「いいと思ってるけど、こういう記事もあればいいな」とか。

社内メンバーが「フルスイング」を“手渡し”しやすい状態を作る

榮田:あと「候補者さんと接するときに、『フルスイング』の記事、よかったら紹介してもらえないですかね」という話をしたときに、「いい記事だと思うんだけど、候補者さんと接しているときにパソコンを開きにくいから、なかなか紹介するまで至らないんだよね」というかたちになって。紹介するためのちょっとしたカードがあればいいかもしれない、という話が上がって、フルスイング紹介カードを作りました。

曽山:カードというのは紙ですか?

榮田:名刺サイズのカードですね。それを作って、リクルーターの人たちに渡したり。

曽山:へぇー。

榮田:イベントがあるときに、リクルーター自身も候補者様に持って帰っていただけるおみやげがあるとうれしいというのもあったりするので、そういったカードを作ったり。あとは、フルスイングがにぎわっている(雰囲気が伝わる)ような、手渡せるペライチのものを作ったりして。社内の人たちが「フルスイング」を手渡ししやすくなるように、ということをやっていきました。

曽山:カードはいいですね。あとはやっぱり入社者とかリクルーター、エージェントにヒアリングされているというのが、すごく大事だなと思って。どういうところが強みで、どういうところが伝わってないかを聞くのは非常にいいですよね。そこ、すごくポイントだなと思いました。

榮田:ありがとうございます。

生々しい情報を届けたい DMMが重視している2つのポイント

曽山:林さんは注力しているポイントとか、これからの取り組みですね。

林英治郎氏(以下、林):大きく言うと2つかなと思っています。1つは、ちゃんと生々しい情報を届けたい。

曽山:生々しい情報。

:リアルな情報を届けたいな、というところを思っているのと。あと、届けるべき人に届くということを、ちゃんと見ていきたいなと思っているというのがあります。

どの内容もみなさんもう話したような、かぶるところも多いんですが(笑)。「生々しい」というところで言うと、例えば人事で書いたものだと、検索で「フレックス」とカタカナで調べると思いますけども。少し前にいわゆるフレックスの制度を入れたりはしたんです。あ、その時計が出ているやつですね。

これなんかも、導入したあとに実際どんな効果があったかを、バーッとデータをまとめて見やすくはしているんですけど。下のほうにいくと、こういう図が出てきたり。

曽山:ほうほう。

:要は「平均何時間でしたね」「ピーク時間がどうずれていきましたか」ということとか。その下のほうで言うと、アンケートの結果ではよく言っていることもあれば、そうじゃないという人もいるという。デメリットも7人に1人は感じているよねということであったり。

曽山:なるほど。

:このようにリアルな声を出していく。それも人事領域なんですけど、ちゃんとデータで出していこうとやると。それで届き方がわかりやすくなっていくので、そういった取り組みはしたいなと思って、生々しい広報というのをやっていますと。

そういう意味で言うと、人事がこう書いているのと、あとはほかのエンジニア領域・デザイナー領域も、それぞれの人間が記事を書きます。それをちゃんとわかっている人間が書いて、届けていくということをしていく。

2個目の、届けたい人に対して届くかというところも、うちも入社者に対してヒアリングはしているんです。「見てますか?」と聞くと、まぁ「見てます」となるんですよね。でも辞退した人は見ていたかはわからないと。でも、そこの測定までは課題があるというだけで、なにかできてるかというとできてないんです。そこにちゃんと届けていく。

もしかしたら選考プロセスの途中でこういう記事を読んでいれば、認識がどこか変わっていて、それに適した人間を当てていたら口説けていたかもしれない、とか。いい出会いになったかもしれないとかという。そこをなんとか追及していけないものかなと思っていたりする感じです。

:あとは、届ける人に届ける点では、やっぱり専門領域は「餅は餅屋」というところがあると思います。エンジニアが書いて、エンジニアがシェアしたくなるというか、書いた人間がちゃんとシェアしていく。そういうことをこちらからサポートしていく。

なので、従業員が自分で、自社のこと・自分のやっていることを発信して、それ自体も学びだし、それをシェアしていく行為がポジティブなものである、という作りをしていきたいなと思っているところですね。

あとちっちゃいところで言うと、「テクノロジー」「カルチャー」とあったんですけど、「人」がないんですよ。「ピープル」もちょっと出したいなと思っていて。

曽山:なるほど。

:オウンドメディアはゲームのインサイドやテクノロジー、カルチャーなんですけど、コーポレートサイトのほうでは「ピープル」という括りで人を特集できるような場所を作っていこうかなと。今もちょっとずつあるんですけど、増やしていこうと思っている感じです。

ありのままを曝け出すことで、読み手のリアクションがとれる

曽山:数字を出しているのは、すごく特徴的だなと思ったんですけど。あそこまで全部出しちゃうんですか。

:出します。

曽山:けっこう勇気がいるんじゃないかなと思って。

:めちゃくちゃネガティブなものは出さない(笑)。まあ、ないですけど(笑)。実際は、やっぱり読んでればわかるじゃないですか。私なんかもWebの記事見ていて、「いいこと言ってるな」というのは、自分でいろんなものを見ていても思います。

それよりも、ここが今こうであると。「こういう取り組みをして、こんな改善が出たんだ」ということのほうが、やっぱりそれを直していく仕組み・取り組みを会社としてやっているところなんだと伝わりますから。なるべくリアルなものを伝えていくとしています。

曽山:確かにこういうオウンドメディアだと、結論いいことを書きたくなっちゃうので。

:そうですね(笑)。

曽山:「こういう制度入れました!」となりがちですけど、そのあとまで含めて出すことで、これだけ取り組んでいるという苦労の様も含めて、伝わるほうが生々しいということですね。

:そうですね。記事も人事の担当が全部作っています。なので、データやビジュアルもできる人間がいてやっているんですけど、オウンドメディアの記事の中にもPVというか、「いいね!」というか、リアクションがかなりあった記事です。

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