
2025.02.18
「売上をスケールする」AIの使い道とは アルペンが挑む、kintone×生成AIの接客データ活用法
提供:株式会社LINE
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高口太朗氏:みなさん、こんにちは。LINEのData Science 2チームでデータサイエンティストとして働いています、高口です。本日のこのセッションでは、コミュニケーションアプリ「LINE」の機能改善プロジェクトにデータサイエンティストがどう貢献しているか、具体的なプロジェクトの実例を交えてお話ししたいと思います。
このセッションのアジェンダです。まずは我々Data Science チームの組織構成について。次に、LINEアプリをデータを用いて改善していくことについて、LINEアプリならではのチャレンジについてお話ししたいと思います。
そして、具体的なプロジェクトの実例として、みなさんもお使いいただいたことがあると思います、グループ作成機能を改善した事例についてご説明します。最後に、データサイエンスの業務を支える社内の内製の分析基盤と、分析のためのツールについてご紹介をします。
このセッションでみなさんにお伝えしたいメッセージは、このスライドに集約することができます。
LINEアプリの機能改善プロジェクトを表す4つのキーワードです。
まずUsers First。データを見るだけではなくて、常にユーザーのみなさまの実際の声を聞くことを具体的に行っています。そこから得られたニーズに基づいてプロジェクトは進んでいきます。
次にData Driven。改善のためのいろいろな意思決定は、常に客観的なデータに基づいて行われています。
そしてDiverse Teamです。我々データサイエンティストがもちろん中心になって動くのですが、データサイエンティストに限らずさまざまな専門性を持った社内のいろんなチームが一緒に動くことによって、個々の能力を超えた成果を実現しています。
会場のみなさんにおうかがいしたいんですけれども、業務としてデータサイエンスやデータアナリストとして、データを使われている方はどれだけいらっしゃいますか?
(会場挙手)
ありがとうございます。では、同僚にデータを扱うような業務の人がいる方はいらっしゃいますか?
(会場挙手)
こちらはそんなにいらっしゃらないですかね。ありがとうございます。
まず、ご自身がデータサイエンティストやデータアナリストの方には、我々LINEの取り組み、どんなことをやっているか、参考にしていただければと思います。また、ご自身が直接データ分析をされていなくても同僚にいる方でしたら、御社のデータサイエンスのチームはこういうことを考えて業務を進めているのかな、というイメージを持っていただければと思います。
そして、4つ目のキーワードは「In-house Development」です。我々データサイエンティストはただツールを使うだけではなく、社内のデータ分析ツールにフィードバックを行ったり、あるいは自分自身で開発をすることによって、日々、より効率的な業務ができるように改善を続けています。
これらの4つのキーワードについて、今からお話しする具体的な事例から共有できればと思っています。
では、最初に我々Data Science チームの組織構造についてご説明します。
Data LabsのData Science チームは、Data Science and Engineering センターに所属しています。このセンターはデータ全般を統括するCTO直下の全社横断の組織で、データ基盤の整備や運用、データ活用のためのあらゆるサポートを担っています。
その中で、Data Science チームはMachine Learning チームと合わせてData Labsとして、データに基づいて新たな事業価値を生み出す、攻めのデータ活用を行っています。
Data Science チームは、担当する事業の領域に合わせて、内部的には4つのチームに分かれています。
左から順番に、まず1チームは「LINE公式アカウント」「LINEマンガ」「LINE MUSIC」などのファミリーサービスを広く担当してます。次に、私の所属する2チームは、LINEアプリ、LINEスタンプ事業を主に担当しています。3チームは「LINE Pay」をはじめとしてフィナンシャルのサービスを担当します。4チームの担当は広告事業になっています。
データサイエンティストのふだんの業務は、これらをそれぞれ担当する事業部とのやりとりによって進んでいきます。具体的にData Science チームがプロジェクトの中で一緒に仕事をする関係部署は、全社を通じて多岐にわたっています。
サービスの企画、あるいは開発をはじめとして、UI/UXのデザイナーやデータプラットフォームのチーム、時には法務や情報セキュリティの部署と直接やりとりをすることもあります。
ここでお伝えしたいのは、LINEにおけるデータサイエンスのプロジェクトは決してデータサイエンティストの単独プレイで行われるのではなくて、さまざまな専門性を持ったチームの協力体制によってはじめて実現されているということです。
では、これらのチームによって実際のプロジェクトがどう進んでいくか、これをいくつかのフェーズに分けて見ていきたいと思います。
まずはUser Researchです。何をするにしても、あらゆる手段を尽くしてユーザーのニーズを探り出します。次にPlanです。見い出されたユーザーニーズを実行可能な企画のかたちに落とし込んでいきます。そしてDevelopmentです。企画された内容を技術的に実現するために開発を行います。
次にTestです。ここで言うTestでは、機能を実際にユーザーのみなさんに一部提供して、その反応や施策の効果を数値的に検証します。最後にFeedbackです。プランをした当初の想定とテストの結果とを比較して、次のプランをどうすればいいかという議論につなげていきます。
これらのサイクルを継続的に回すことによって、プロダクトをより良いものへと継続的に改善しています。
ここからは、先ほどご説明した各フェーズについて、もう少し詳しくご説明していきたいと思います。
まず、User Researchでは、ユーザーのみなさんから直接対面でご意見を聞くインタビュー調査やオンラインのアンケート調査を行っています。これらの調査はデータサイエンティストも質問する側として実際に関わることがあります。
このように、定性的なユーザーの声を知識として知っているといないとでは、分析のアウトプットの質も大きく変わると考えています。また、直接の調査と並行して、ふだんからサービスの状態を表す数値を見ていて、気になったことは適宜モニタリングして共有するようにしています。このように定量の調査と定性の手法とを組み合わせることがユーザーニーズを探る上でポイントであると考えています。
次はPlanとDevelopmentです。
これらはプランナーや開発者のメインになる仕事なんですが、データサイエンティストがどう関わるといいますと、Planについては、ユーザー調査の結果に基づいて立案された企画をデータでどう測ればよいか、どのような指標に設定すればよいかをプランナーと一緒に考えます。
また、Developmentのフェーズでは、データ分析のために必要なログの定義や、実際のログの内容を、プランナーや開発者と一緒にチェックします。このフェーズにおいては開発者や企画者とデータサイエンティストが協業することが非常に重要であると考えています。
最後にTestとFeedbackです。ここがデータサイエンティストの専門能力が発揮されることを一番求められるフェーズです。LINEでTestと言うときは、基本的にはオンラインのA/Bテストを指します。つまり、ランダムに選んだ一部のユーザーに対して変更前の機能と変更後の機能を一定期間提供してみて、行動の変化を統計的に分析します。
我々のチームでは2018年以来、軽微なものから重大な変更まで、LINEアプリに関して、合わせて20回を超すA/Bテストを行ってきました。典型的なテストの規模感は、グローバルでおよそ1,000万人ほどが対象となる規模になります。一つひとつのテストでは単一の指標だけを追いかけるのではなく、100個を超える指標を網羅的に同時にモニタリングしています。
LINEにおいて、A/Bテストというのは、1次元的にこのプランの勝ち負けを決めるだけではなく、ユーザーの求めているものをデータ分析を通じてより深く理解するための機会であると考えています。
ここまでお話ししてきたようなデータ分析によるプロダクトの改善は、LINEでなくてもWeb系の企業であればどこでも日常的に実施されていることかと思います。あるいはLINE社内であっても、多くのサービスが同様の改善サイクルを回しています。そのなかで、LINEアプリならではの改善のためのチャレンジがあると考えています。
まず1つ目のチャレンジ、それは端的にユーザーが多いことです。LINEアプリは多くの国と地域でグローバルに提供されています。日本だけにおいても非常に多くのみなさまにお使いいただいています。
そして、ユーザーの人数が多いだけではなくて、使い方もさまざまです。例えばLINEアプリのメッセンジャー機能では、テキストやスタンプをはじめとして多くの種類のメッセージをやりとりすることができます。
つまり、「LINEユーザーとはLINEアプリをこう使う人」ということをデータ的に1つに定めることが難しいということです。
もう1つのチャレンジは、LINEアプリを評価する単独の指標は存在しないということです。
LINEアプリは基本的に無料のメッセンジャー機能を提供していますので、それだけで売上や直接的な経済価値には結びつきません。
また、主要な国と地域においては大きなユーザーシェアをすでに獲得していますので、それらの地域において、例えば今後ユーザー数が何倍になるということは、物理的にも現実的ではありません。そうなると、そのような単純な指標ではなくて、LINEアプリが提供している価値をどうデータで測るかを常に考えていく必要があると言えます。
これらのチャレンジに対して我々が取るアプローチはとてもシンプルです。それは、LINEのコアバリュー、つまり「LINEアプリがユーザーのみなさんへ提供している根源的な価値とは何か?」に立ち戻って考えることです。
LINEのミッション、それは「CLOSING THE DISTANCE」。
つまり、人と人、人とモノの距離を近づけていくことです。このミッションをLINEアプリのメッセンジャー機能に置き換えると、どう言えるでしょうか?
我々は、LINEアプリによって身近な友だちと気軽に楽しくコミュニケーションができること、それこそがLINEアプリにおける「CLOSING THE DISTANCE」が実現された状態であると考えました。これこそがLINEアプリの機能改善において我々が追求していくべき価値だと言えます。
LINEアプリによって「CLOSING THE DISTANCE」の状態が実現されること、このコアバリューを実現するために改善すべき機能は何でしょう? それを導き出すために、LINE上での友だちネットワークの概念を考えてみたいと思います。
図の中心にいるのが私だとします。そして、私はLINE上で7人の友だちとつながっているとします。その友だち同士はその人同士もまた友だちだったりするでしょうし、あるいは、共通の友だちがいない、別々の友だちかもしれません。この友だちネットワークによってLINE上の私のコミュニケーションが形づくられていると言えます。
この共通の友だち関係に注目すると、おそらく現実の社会的な関係性を表していると考えられます。
あくまで概念ですが、例えば家族だったり親戚だったり会社の同僚ですとか、あるいは地域の関係だったりするかもしれません。このような多様な社会的な関係性がLINE上に反映されていて活発にコミュニケーションが行われていること、これこそがLINEアプリにおいてメッセンジャー機能で「CLOSING THE DISTANCE」が実現されている状態であると考えました。
では、これを実現するために注目すべき機能。それは、みなさんもお使いかと思いますが、グループの機能です。
グループの機能を使えば、複数の友だちにメッセージを送ったり通話をしたり写真を共有したりすることができます。そして、グループにはグループの画像やグループの名前を設定することができて、まさに社会的な関係性を表すラベルになっています。
つまり、ユーザーのみなさんがグループ機能をもっと使いやすくなれば、それによってLINEメッセンジャーのコアバリューである「CLOSING THE DISTANCE」を実現できるはずだと考えました。
こうしてグループ機能の改善がデータサイエンスによる機能改善のターゲットに定まりました。
株式会社LINE
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