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新生銀行が目指す「価値共創型ビジネス」とは(全2記事)

2019.12.26

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異業種の金融事業参入のハードルを下げる 新生銀行の金融プラットフォーム「BANKIT」が目指すもの

提供:株式会社メンバーズ

2019年11月6日、株式会社メンバーズが主催する、「EMCカンファレンス2019 秋~企業はデジタル施策を通じて、顧客と社会にいかに向き合ってゆくか~」が開催されました。市場のコモディティ化が進み、顧客個人のニーズが細分化・複雑化している現代、企業は顧客にデジタル施策を活用することで新しい体験やエンゲージメントを構築する必要性に迫られています。デジタル専門人材が不足する中で、商品・サービスを通じて「価値」や「体験」を提供し、顧客との接点を改善し続ける事例を紹介します。本パートでは、「新生銀行が目指す『価値共創型ビジネス』とは」と題し、株式会社新生銀行 常務執行役員 個人ビジネスユニット長 兼 株式会社アプラスフィナンシャル 代表取締役社長の清水哲朗氏が登壇。株式会社メンバーズ 常務執行役員の西澤直樹氏とともに、新たな金融プラットフォーム「BANKIT」の目指すものについて語りました。

お客さまと1to1でつながれるコミュニケーションツール

西澤直樹氏(以下、西澤):どう体験設計をしていくかというコミュニケーションの事例は、清水さまからご紹介いただいてもよろしいですか?

清水哲朗氏(以下、清水):このコミュニケーションアプリは、まだ一部でしかリリースしていませんが、来店するお客さまにアプリをダウンロードしていただくものです。LINEやFacebookのようなクローズド版として、お客さまと営業担当者が1to1で繋がることができるため、ものすごく強いツールになっていくと思っています。

先ほど、メールを出してもお客さまはなかなか開いてくれませんよね、電話してもつながりませんよね、という話をしました。このアプリの運用は、特に親しいお客さまから始めていくことを想定しており、このアプリを使ってまさに“1対n”のコミュニケーションのかたちを作っていこうとしています。

コミュニケーションとは、誰かとつながっていくということを意味しますが、一方で我々からすれば、お客さまがこれを開きました、これをクリックしました、という反応を見たいという側面もあります。「見ませんでした」というのも、お客さまの一つの反応になります。そのためにも、お客さまとどのように繋がっていくかという仕掛けを作っておかなければいけません。

顧客のデータベースをもとに、直接アプローチが可能

清水:反応しなかったお客さまに対しては、"次にどういうシナリオを走らせていきますか"、“メールを開けたものの滞在時間が短いお客さまについては何をしますか”、“開けてクリックしてページに行っただけで終わってしまったお客さまはどうしますか”といったシナリオをさまざまなパターンで持ちますが、シナリオ作りのきっかけの一つとしてコミュニケーションアプリを使いたいと考えています。

我々は、お客さまが新生銀行のどの金融商品をお持ちになっているか、どの金融商品のページをよくご覧になっているかといったようなデータをすべて持っており、担当者と共有できる仕組みを構築しています。

このデータベースの活用についてお話すると、お客さまからの同意が得られた場合には、例えば、特定のファンドや投資信託をご覧になられているお客さまに対して、投信会社のスタッフがこれを通じて、直接的に何かアプローチをかけるといったことも可能になってきます。いずれは、運用会社やマーケットアナリストにも広げることができれば、お客さまにとってより良い価値を提供できるようになると考えています。

オペレーション・マーケティング・サポート・営業の各業務はすべて、その裏側にあるそれぞれのシステムと紐づけられています。

我々は金融事業者の目線から、各システムをどのように活用していくか、またどのように組み上げるかといった観点を持ちながら一つのパッケージを作ろうとしています。まずはシステムを自らで運用できる体制を作り、そのうえで(これからご紹介する)外部のパートナーと協働して新たなビジネスを行っていくための仕組みを構築したいと考えています。

「信用スコア」に基づいて融資額を決めるサービスをリリース

西澤:ありがとうございます。ここからが本題とも言える、ネオバンクプラットフォーム「BANKIT」について、ご紹介と取り組み内容をお話しいただきたいなと思います。

一部の方はご覧になったかもしれないですが、先日リリースが出ておりまして、スマホだけで完結する融資サービスを新生銀行さんがドコモさんと開始されています。回線の利用期間やドコモさんのコンテンツ・金融サービスの利用状況などから、ドコモさんが“信用スコア”を算出して、新生銀行さんが融資を行っていくサービスです。

新しいかたちの企業間コラボレーションの1つの事例かなと思っているんですけれども。新生銀行さんがこのような取り組みを進めていくうえで、なぜ取り組もうとされているのかという背景も含め、ご説明をいただけるとありがたいと思っています。

清水:古くは2000年初頭に、ジャパンネット銀行や当時のイーバンク銀行(現在の楽天銀行)がネット銀行として台頭し、イートレード証券(現在のSBI証券)などオンライン証券といった新たな業態も出てきました。

時代はそこから大分進みますが、ここ1年くらいの間に“コード決済”がかなりの勢いで普及してきており、銀行は目下オープンAPI化を進めなければいけない状況になっています。こうした時代の変化に伴い、新しい金融サービスをどんどん提供していかなければいけないということで、我々もさまざまなチャレンジをしています。

また、大手証券会社においても現状のままではいけないといった危機感を自ら示されており、地方銀行や異業種との提携といったこれまでにない新しいビジネスの話も増えてきています。

相次ぐ異業種からの金融事業への参入

清水:一方で、私自身がセブン銀行や楽天(Edy)にいたときの経験を踏まえても、当時はこうしたネット銀行のような新しい業態が既存の金融機関にとってそれほど脅威になるとは想像していませんでしたが、最近では特に異業種が運営する金融機関の存在は怖いと実感しています。

異業種による金融事業への参入が始まってから10年超経つ中で、これまで積み上げてきた経験や時代の流れを踏まえつつ自らの強みやテクノロジーの進化を通じて、さまざまなかたちでの参入の仕方をしてきています。

これも一例ですが、高島屋が外商部を活用して投資信託の販売に参入することを発表しています。他にも、丸井グループが証券事業に参入しているように、異業種による金融事業への参入の話題が尽きません。

NTTドコモと新生銀行グループとの取り組みも然りで、NTTドコモが貸付という新たな金融事業に参入するにあたって、一緒に組むことになりました。NTTドコモは、自社で有するお客さまの一部の取引データを自社のみで活用することを前提として、新生銀行が実行する融資に対する保証業務を行っています。新生銀行グループは、再保証という形で本ビジネスに関わっています。

ほかにも近時に新生銀行グループでは、不動産賃貸業のAPAMANグループから、同社グループが賃貸管理する不動産物件への家賃保証を行う子会社を買収しています。本業の不動産賃貸業に専念する傍ら、金融事業は新生銀行グループに任せながら協業していこうというコンセプトで取り組んでいます。

非金融企業も参入できる金融プラットフォーム「BANKIT」

清水:一般に異業種が金融に参入するにあたって、まずは銀行業や貸金業などの各種金融ビジネスに関わるライセンスの取得が前提となります。それから、システムが必要であり、それを運用していくためのオペレーションの構築も必要になります。当然にこの3つのポイントを、自ら解決できる大手企業もありますし、金融機関と組んで新たな金融システムを作り上げていくといった方法もあり得ます。

これまで、法人のお客さまから「もう少し手軽に金融業に参画できるようなものは作れないか」というお声をいただくことがあり、そうであればもっと簡単に金融システムが提供できるものを作ったらよいのではないかということで、(一連の金融システムを)パッケージ化して提供しようということになりました。

それが、我々が開発した"BANKIT"という金融サービスプラットフォームです。いわゆるウォレットがあって、その下にさまざまな機能をAPIで繋ぎ込んでいます。例えば、A社ではウォレットとレンディングと保険の機能が欲しいので、この3つの機能だけ付けるというような設計もできます。まさにカフェテリア方式で、それぞれの会社さんが欲しい機能を選んでカスタマイズし、イージーオーダーできるプラットフォームです。

機能の面では、例えばお金を貯めるためのウォレットに後からチャージできる機能を付けたりしています。ウォレットの仮想口座にお金を入れておけば、それを他人に送金することも可能になります。

一般のコード決済や電子マネーでは、一度キャッシュや電子マネーを入れるとなかなか現金で払い出すことができません。BANKITは、ATMでの入出金や送金の機能に加え、銀行の口座に対して直接入出金できる仕組みを作ろうとしています。

また、ペイロール(給与支払いシステム)などにも対応できるプラットフォームを作り、その上にほかの金融サービスをAPIで繋げていけるようなシステム構築も検討しています。

企業規模にかかわらず、独自の金融サービスを提供可能に

清水:近時よくいただくお話として、地域通貨や特定の企業や店舗でしか使えないハウスマネーを簡単に作りたいというものや、自社ビルのテナント等に対して共通する金融サービスを提供したいといったものがあります。

これまで独自で金融サービスを提供できなかった比較的小規模の事業会社や組織体であっても、BANKITのようなプラットフォームを活用することによって、先のお話のようなニーズにも応えられるようになるのではないかと考えます。

また、事業会社が本格的に金融事業へ参入する場合には、各種金融ライセンスの取得が必要になります。新生銀行グループは、銀行業免許のほか、割賦販売法、資金移動業や貸金業の各登録業者であり、あらゆる金融事業をサポートすることができます。

最後にオペレーションに関し、銀行事業を営む我々自身でも、インターネットやデジタルを活用したオペレーションスキルを持ってやるのは正直言って無理があると思っています。

もともと銀行には「金融商品の販売をしたい」「事業性の融資をしたい」といった希望で入社する社員がほとんどであり、そのような人たちにインターネットを活用したマーケティングの話をしても、予備知識や経験がまったくないためあまり通用しません。「勉強させればいいじゃないか」という話もありますが、もはやそのようなスピード感ではやっていけません。

運用フェーズにおいては、数十名単位で担わなければサービスとして成り立たないため、その点も新生銀行グループでサポートしていきますし、メンバーズさんにも裏側ではお手伝いいただくこともあるかもしれません。

したがって、新たに金融サービスを提供したい事業者は、具体的な提供サービスの内容やマーケティングについて考えていただき、そのサービスの裏側のシステム、オペレーションやライセンスは新生銀行グループでサポートします、といったことをBANKITという一つの金融プラットフォーム上で展開していきたいと考えています。

金融に関する専門分野は新生銀行、運用はメンバーズがサポート

西澤:ありがとうございます。僕は最初にこのお話を聞いたときに、新生銀行さんが銀行以外にもいろいろな金融業をやられている中で、そのグループシナジーをどう作っていくかという1つのやり方としてすごくいいなと思いました。あとは、非金融系の企業さまでも手軽に金融業を始められるという点で、企業さまにとってもメリットが大きいなと。

また、昨今“老後資金2,000万円問題”というかたちで人々の金融リテラシーがすごく問われている中で、より金融を身近に感じてもらえるサービスになり得るんじゃないかと思います。それは、メンバーズが掲げている社会課題にも紐付くような思想を持ったサービスだなとすごく感じています。

正式なリリースは年度末くらいですかね?

清水:それぐらいのスケジュール感を目指しています。

西澤:ということなので、正式なリリースが出て来次第、いろいろとご案内できるかなと思うんですけれども。簡単にそのサービスを3つにまとめています。先ほど言ったように、カフェテリア形式で企業さまに機能を選んでもらうかたちで提供できますよ、ということ。

あとは金融に関するライセンスや事業者登録はすべて、新生銀行さんのほうでサポートしますと。そういった通常のサポートも新生銀行さんのほうでやっていただくようなサービスです。

また、先ほど少しメンバーズのお話にも触れていただきましたけれども、やっぱり運用面がすごく大事になってきます。こういったバックエンドの部分や、実際にユーザーさんに見せるフロント面のUIの部分は、我々もお手伝いできる部分かと思っております。

このサービスが立ち上がるのをすごく楽しみにしています。ちなみに、今日はたくさんの企業さんにお越しいただいていますが、具体的にどういった企業さまだったらBANKITを導入いただけそうなのかというイメージがあれば、教えていただければと。

清水:お金にまつわる金融サービス、つまりお金の流れを取り込んだり、付随する金融取引データを活用したいと考えているような会社であれば、どの会社にでも合うかたちにもっていけると思っています。リソースさえ間に合えばですが。

今いろいろなところに当たっている営業担当から話を聞いていると、あちらこちらで「非常に関心があります」という声をいただいています。

一体感を持って取り組んでいけるパートナーの重要性

西澤:もしご興味のある方は、のちほどネットワーキングタイムで詳細を伺えればなと思います。金融業界全体として、いろいろな金融サービスが登場していますし、銀行そのものもサービス業化しています。

その中で、いわゆるメンバーズのようなデジタルマーケティングを支援する会社に求めることや、もっとメンバーズにがんばってほしいことがあれば率直にお聞かせいただければなと思います。

清水:グループ内の社員、メンバーズ、外部事業者の方も然りですが、「他人のサービスをやっている」「業務委託を受けている」という気持ちで仕事をされるのは困ります。

やや青臭いと言えば青臭いですが、1つのプロジェクトや商品を、あたかも自分たちのものとして一緒に育てていただけるようなマインドを持つ人が集まっている集団、もしくはそういう強いリーダーシップを持ってまとめていける人がいる集団がベストだと思っています。

本日のスライドにもう少し追加したかったのですが、メンバーズとの合宿では、2000年から足元の2019年までの新生銀行の歴史や、過去からの中期経営計画に関するスライドをほとんど引っ張り出して使用しました。

「この時はこういうことを考えて、なぜこのようなアウトプットを出したのか」ということについて、私からメンバーズのスタッフの方たちに約2時間かけてレクチャーしました。また、新生銀行グループはなぜ今この戦略を取っているのか、また戦略の背景には企業としての流れがあることを理解いただき、そのうえでこれから私たちがやるべきことについて、相互理解をしていただいたのがその趣旨です。

こうしたことをきちんと受け入れていただけるパートナーこそ必要であり、要件定義して設計書を書くだけであれば、真のパートナーとしては似つかわしくないと思います。

今一緒にやらせていただいている方々は非常に頼もしいですし、正直誰が行員なのかメンバーズの方なのか、わからなくなっているような状態です。スタッフの方をさらに追加していただくとともに、もう少しお安くなるといいなと思います(笑)。

(会場笑)

おそらく会場のみなさんも思っていらっしゃるはずですよ。(株式会社メンバーズ社長の)剣持さん、よろしくお願いいたします。

(会場内の剣持氏、笑)

海外と日本のスピード感の違い

西澤:ありがとうございます。がんばります(笑)。本日はいろいろなお話を通じて、改めて顧客とのコミュニケーションや体験設計をどうやって作っていくのかをテーマに、一例をお話させていただきました。

その中で、今の足元の最終形態はBANKITというサービスに集約されてくるのかなと思っています。清水さんから、BANKITの今後の構想や、業界に対する想いなど、最後に一言いただければなと思います。

清水:繰り返しになりますが、ここ10年くらいの間で、我々が当時まったく想像しなかったようなことが実際に起きています。

先ほどコード決済の話をしました。1年半くらい前には日本でこれほどコード決済が普及してくるとは、たぶん誰も思っていなかったですし、PayPayや楽天やNTTドコモがこのようなかたちで金融ビジネスに参画してくるとは、思ってもみませんでした。

さらに、今後5Gなどが入ってくると何が起きるのか想像もできません。金融業界で言えば、よくAmazonやAppleの銀行参入も報じられており、5年後には本当に実現できているかもしれません。

私ごとですが、先週カンボジアのプノンペンに仕事で行きましたら、現地ではコード決済がとても浸透していました。電子マネーを提供するeMoneyやWingなどの店舗が街のあちらこちらにあり、彼らはもはや固定電話ではなくスマートフォンから入っている世代であり、スマートフォンで当然に決済していました。

AlipayやWeChat Payは有名ですが、そのあとに行ったベトナムなどでもそういう世界にどんどん移行しているなか、帰国すると、日本のスピード感の無さを実感してしまいます。日本だけが昔ながらのクレジットカードで、さすがに磁気ということはないですけど(笑)。最近イギリスやオーストラリアに行かれた方はわかると思いますが、ほとんど非接触のタッチペイメントで、地下鉄もVISAタッチで乗れたりします。

日本だけが取り残され感というか独自の進化を遂げており、それ自体は構いませんが、もっと変わらねばならない、もしくは変わっていかざるを得ないのだろうと思います。

常に新しいものを提供できることが1つの価値になっていく

清水:BANKITについて、今のかたちが最終形ではなく、変えていくものだと思っています。一方で、銀行でサービスを作ろうとすると非常に重厚な作りになるため、アプラスで手掛けようとしています。より軽いシステムで、外部のパートナーと共創しながら、とにかくスピード感と柔軟性をどれだけ持てるのか、ここが一番のポイントです。

今起きていることは、1年後にはもはや古くなっているのが当たり前の時代になっています。それに対応できるサービス、常に新しい金融商品を提供できることが一つの価値になっていくものと実感しています。

新生銀行グループはそこを目指し、実現していきたいと思っています。ぜひ我々にご関心がありましたら、ひとこと声をお掛けください。本日はありがとうございました。

西澤:清水さん、ありがとうございました。まさにスピード感というところに我々もちゃんと追いついていけるよう、がんばってまいりたいと思っております。それでは今日は清水さん、どうもありがとうございました。

清水:ありがとうございました。

(会場拍手)

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