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マネジャーにすべてを背負わせるのは、もうやめよう。多様な働き方時代の「新マネジメント論」(全2記事)

2019.12.10

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マネジャーの仕事は「頼むこと」と「謝ること」 サイボウズ山田氏が語る、“最軽量”のマネジメント術

提供:サイボウズ株式会社

2019年9月4日、サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2019」が開催されました。サイボウズの商品やサービスを紹介する総合イベントで、今年は東京・大阪・名古屋の3都市で開催されます。テーマは「モンスターへの挑戦状」で、実体はないのに支配されているさまざまな“思い込み”に立ち向かうというメッセージが込められています。本パートでは、取締役副社長の山田理氏による『マネジャーにすべてを背負わせるのは、もうやめよう。多様な働き方時代の「新マネジメント論」』のセッションの模様をお届けします。11月7日に書籍『最軽量のマネジメント』を上梓した山田氏。新しい時代へのパラダイムシフトが進行している現代における、優秀さの定義について語ります。同氏が解説する、新しい時代のマネジャーに求められる役割とは。

何が常識かわからない時代だからこそ、非常識にトライしよう

山田理氏:その次、今度は「常識から非常識へ」。常識というのは、基本的には今までの成功体験に基づいて、これが成功だったから同じようなことをやれば成功になる、という考え方です。だから、これが正しいんだろうなと思うことが、常識と呼ばれるものなんだと思うんですよね。

でも一方で、先ほど申し上げたように時代はパラダイムシフトしていきます。情報、とくにビジネスの世界というのは、組織の作り方自体が昭和に作られているものなんですね。昭和より前に作られているものなんです。

インターネット前に作られている組織だから、あれはあれでよかったんです。でも、それでよかったものが、そこから変わっていくわけじゃないですか。その変わっていく過程で、そういう過程の中で何が常識かは、もうわからないんですよ。何が常識かというのは、僕にはわかんないんです。

たぶん今の僕らのような昭和世代が思っている常識も、ひょっとしたら一昔前、大正生まれ明治生まれの人にとったら非常識と呼ばれるようなこともたくさんあると思うんですね。時代は、加速度的に変わる可能性があるんです。だからその常識にとらわれて、「これが正しい」「これは常識です」と言うんじゃなくって、どんどん非常識にトライしていくことが大事なのだと思います。

思考から行動へ

そして、「思考から行動へ」。考えるというのだって、結局は「これが成功すると思う」というものから、成功の確率を上げるために考えるわけじゃないですか。でも考える元になるのは、先ほど言った「過去」なんですよ。未来というのは、誰にもわからない。

多少考えないといけないですよ。なんですけれども、考えるよりもまずやってみるということのほうが、すごく大事になってくる。そうすると、行動を促していかないといけないんで、古くから言われてるように失敗を許容していかないといけないんです。成功がわからないから。

何が成功か、何が失敗かさえもわからない。これから行動していって、うまくいったら続ける。うまくいかないんだったら、変える。こうやって行動をして学ぶ。計算して考えて行動をしないとか、100点を取ることが優秀だと言われていた時代から、行動していくことができる人のほうが優秀と呼ばれていく世の中になっていく。時代は変わっていくんです。

混沌とした世界を受け入れるために、個性をいかに磨いていくか

そうすると今度は「同調から個性へ」。今までは正解がわかっていたわけです。こうやったらうまくいくという、高度成長期の中で自分たちの先人たちが作ってきてくれたものを、効率よく、継続的に作っていくためには、同じような人が集まって同じように行動してくれるほうが、マネジメントとしてはやりやすかったんです。

答えがわかっていたから。でも、これからは答えがわからないので、いろんなチャレンジをしていかないといけない。基本的には多くの個性、いろんな役割、いろんなパターンを出していったほうがいい。

イノベーションという言葉がありますが、常識の中では、当たり前ですけどイノベーションって起こらないじゃないですか。今までになかったことが起こったことを、イノベーションと言うわけですから。

だからこれから新しいものを作るというのは、いろんな個性が混じり合っていくという、わけわからない混沌としたカオスみたいな世界を受け入れていく。そういうことがこれからの新しい時代になっていくんだろうと。それができるのが優秀といわれる人たちです。

だから1人ひとり、自分たちは個性を磨いていくことがすごく大事です。個性とは、人と人との違い。足が速い、計算が速い、話がうまいとかだけじゃない。個性というのは、積み重なっていくものだと思うんですね。年輪とかバウムクーヘンみたいなものなんだと思うんです。僕みたいに銀行員だった、銀行員からベンチャー企業に転職する、ベンチャー企業で今度は人事をする、人事をしながら海外法人の立ち上げに行くとか。

このトータルが僕の個性を作り上げている。元銀行員という人はいっぱいいるんですね。たぶんベンチャー企業で経営している人もいっぱいいるんです。人事を長いことやっている人もいっぱいいるんです。これを全部積み重ねて、まわりにあまりいないような僕の個性ができてると。

ここで(大切なのは)、ずっと年輪のように重ねた個性で、どう違いを作っていくかというところ。そういうのを自分で理解するか、認識するか、表現するか。そこがすごく大事になって、人との違いを作り出せる人が、これからは優秀だとなっていく。

能力を発揮するために情報共有が必要

そういう背景、新しい時代の中で、自分がこういう人たちをどうマネジメントしていくのか。1つは、「情報の伝達から共有へ」。今「情報共有してますか?」と誰かに聞いたら、多くの人が「しています」と言うんですけれども、多くの会社でみなさんがしている情報共有は、「伝達」なんですよね。

インターネットがなかった世界では、自分が持っている情報をコントロールしながらほかの人に渡していけばよかった。それしかできなかったので、一対一で情報を渡していったんです。メールができても、その文化を引きずって、TOとCCで情報を回していく。TOで送った情報は、その情報があるかないかさえ、周りの人は知らないんです。検索しても出てこない。

そういうかたちでの情報共有から、これからはオープンにしていくわけです。検索したら引っかかっていく。なにかを見に行ったら見られると言うような、オープンな情報共有の時代になっていく。なぜなら、もう世界中に情報が行き渡るようなツールがすでにあるわけです。情報が当たり前のように簡単に手に入る、手のひらに世界中の情報があるという人たちがもういるんです。そういう中で生まれ育っているんです。

その人たちが欲しがるのは情報です。簡単に情報にアクセスできないことがすごくストレスになるし、その人たちが能力を発揮していけなくなると。とにかくオープンにしていくことがすごく大事。もう少し言うと、情報をオープンにしていくことは、組織をフラットにするということじゃないですか。

僕はなんか、ヒエラルキーをなくすことと組織をフラットにすることは、イコールじゃないんじゃないかなと思っていて。だから、基本的には組織のヒエラルキーって情報のヒエラルキーだと思うんですよね。

上司が(物事を)決めることを本当に嫌がる人って、あんまりいないと思うんですよ。しょうがないなって思うんです。でも、同じ情報を与えられてないことに対してすごくストレスを感じる人は多かったりする。

会社の中で、同じ情報を与えていないことによって、その人たちの能力を発揮させられていないことはすごく多くあるんじゃないかなと思うんですね。なので、基本的には情報をフラットにしていくこと。そのためにはオープンにしていくことがすごく大事だなと。

平等に分配するのではなく、必要な人に必要なだけ渡していく人事制度へ

次は「平等から幸福へ」。平等というのは、基本的に同じように分け与えるといった人事制度がそうですよね。1万人の会社があったら、真ん中ぐらいにいる人たちを1つのターゲットとしてイメージして、人事制度や評価制度は作られているんですね。

「もっと人事制度を変えたらいいじゃない。人事制度を変えたらというか、サイボウズみたいにしたらいいじゃないですか」と言うと、「いや、うちは工場があって」「うちは営業と開発がいて、いろいろ不満が出るんで、簡単には変えられないんですよ」となるんですけれど。

基本的に人事制度は変えるものじゃなくて増やすものだと思うんです。全員に同じものを渡すんじゃなくって、必要な人に必要なものを渡していく。

例えばここにケーキが1個あって3人で分けます。3等分にするのが平等ですが、その3人が、それぞれお腹が減っている人、ダイエットをしている人、甘いものが嫌いな人だったとします。その人たちに対して全員平等だったら、嫌がらせでしかないですよね。「僕、ダイエットしてんねんけど」みたいな(笑)。「私、ケーキとか甘いもの苦手やねんけど」みたいな。

それだったらもう、お腹が減っている、ケーキが好きな人に全部やったらいいですよね。僕はこれが幸福・公平なんだと思うんですね。だから会社の中は、まだまだそういうふうに平等の世界に行こうとしていて。そうではなくって、これからは幸福の世界へ行ったほうがいいんじゃないかなと。

マネジャーの仕事は「頼むこと」と「謝ること」

次は「管理からオーガナイズへ」。情報が行き渡っていて、かつ、もう支配されるのが嫌だと。忠誠心じゃなくて基本的には距離感を保ちたいと。いろんな価値観の中でいろんな多様な個性が1つのチームを作って、チームワークでやっていく中で、今度はマネジャーは何が大事かと言ったら、今までみたいに「俺は権威がある」「マネジメント部長なんで、俺の言うこと聞け」というのでは、誰もついてこなくなる。

そうじゃなくって、「うちの次の営業戦略は、こんなの考えようと思ってんねん」「うちの会社はこういう状況で、過去はこう。俺が持っている経験を全部出したらこう。みんなのアイディアも出して」と、持ち寄って議論するみたいな。

そうやって新しいものを議論し合って、「ごめんな」って。でも、その中で僕が決めなあかんから、時間も限られているから、決めさせて。「その代わり責任は僕がとるから」という感じに変わっていく。

なので、1人の人が全部の知識を持っているふりをして、権限を持って、すべてを管理していく。自分は偉い、下の人は偉くない。自分はサボらない、下の人はサボるかもしれない。そういう話じゃなくて、自分もサボるかもしれない、自分も失敗するかもしれない。そういうところも全部含めて、みんなを集めてフラットに情報共有をして協力し合ってやっていく。まさにオーケストラの指揮者みたいな感じ。オーガナイズする。

もうちょっと言ったら、上司やマネジャーがやることは頼むことです。「ごめん、困ってんねん、手伝って」と。最後に謝ることです。「ごめん。俺が決めたことや、それはみんなで議論して最終的には俺が決めたことやから、うまいこといかへんかったのならごめん、僕の責任やから」と、謝ると。

マネジャーの役割は、こんな感じで変わっていく。だから、権威から役割に変わっていくようなところかもしれない。じゃあ、それを聞いて明日からどうすればいいんですか、と。

自分自身をありのままに“公開する”ということ

「ありのまま」でいると(笑)。

じわじわと笑いがきましたね(笑)。「公明正大」が大事です。やっぱりマネジャーになると、肩の力が入るんですよね。バカにされちゃいけないとか、権威を維持しないといけないとか。だから、「できない」と言えないとか、わからないということを言いにくいとか。

だけど、そうじゃなくって、自分が何を知っていて何を知らないのか。何をしたくて何をしたくないのか。自分が持っている情報、自分自身を本当にありのまま公明正大に共有していく、オープンにしていくことが、やれることの1つですね。

これはスキルはいらないです。別に、みなさんが持っている情報を全社に公開しろと言っているわけでもなんでもないです。みなさんのチームのメンバーに、自分が持っている情報を伝える。自分が部長会や役員会に出て知った情報、役員としゃべったときにたまたま知った情報、お取引先の偉い人としゃべったときに、たまたま知った情報を公開するだけです。別に全員の評価を公開しろと言ってるわけでもなんでもなくって。

今日公開するべきものや公開できるもので、公開していないものを公開する。これで失うものは自分の権威ぐらいです。自分が知らなかったという、ちょっと恥ずかしい思いぐらいです。それをまず公開してみることが1つ。

もう1つ、僕らは経営会議の議事録を公明正大に全社公開しているんです。僕が会議でで反対している、賛成している、こんなことを言ったということがだーっとここ(ディスプレイ)に出るわけなんですよ。全社公開されているので、いろんな社員から「なんでそこでこういうふうに言わなかったんですか?」「なんでですか?」とバーっと質問がきたり。

こういうかたちで公開することによって、逆に社員からもいろんなフィードバックをもらえたりする。若干恥ずかしいです。説明しないといけなくて、グッと辛い思いもあるんですけれども、基本的には公開することでいいことのほうが多い。

マズローの5段階欲求と「雑談」の役割

「ザツダン」。そもそも「ザツダン」の目的なんですけれど、1 on 1って最近流行っているんですけど、業務の進捗管理的な面談とはちょっと違っていて。何のためにやるかというと、このマズローの5段階欲求説って僕、大好きなんですけど。人の欲求は5段階あって、下から順に上がっていきます。

一番下が生きるか死ぬかというところの、生理的欲求。その次が安全が確保できるという、安全の欲求。日本で普通に働いてる限りは、生理的な欲求とか安全の欲求は、だいたいクリアされています。

その次が所属と愛の欲求。ここに自分がいていいという、役割が認められている。そんな状態。その次に、役割を果たした時に「ありがとう、君がいてくれて良かった」と言われる承認の欲求がある。

そこから次に、自己実現の欲求があるんです。何がやりたいとか、夢がある、という。この目標とか夢というところをやっていく。その段階で管理するものが1 on 1と言われるようなものなのかな、と思ったりしているんですけれども。

僕はそこじゃなくて、この下(承認の欲求と所属と愛の欲求)だと思うんですね。今はどんどん核家族化が進んでいたり、多様な選択肢が広がっていたりする中で、チームに属しているということ。とくに、競争というところで言うと、そこに対してすごいストレスや不安を感じている若い子も多いんじゃないかな、と思うんですね。

選択肢が多いので、「私はここにいていいのかな」って。「僕はもっと他のところに行ったほうがいいんじゃないかな」って。「ダメ、またあんた評価下がったよね」というようなところで、学校では競争競争。会社に入っても競争競争。「お前のキャリアプランは? 目標は何にすんねん、どうやったら成長できんねん」というような中で、「自分はここにいていいのかなぁ」「人に必要とされてるのかなぁ」って、すごく不安に感じている人が増えているんじゃないかなと思うんですよね。

まず大事なのは、この2つ(所属と愛の欲求と承認の欲求)をクリアした上で、自己実現の欲求に行かないといけない。まずはここをクリアしようよ、と。だから、ザツダンでやるべきことは、自分のメンバーが何を考えてるのか、どんな個性があるのか、そこを把握することでいいんだと思う。

「最近どうよ」って。本当に何が楽しいか、何がやりたいか。なにが辛いことがあるのということを確認しあう。一人ひとりの顔を見る。(スライドを指して)「100人100通り」。石垣を作るように、その個性を組み合わせてどうやっていくのかがすごく大事なんじゃないかなって。

「人に何をさせたいか」ではなく「自分が何をやりたいか」

最後に「キャンプファイヤー」はなにかと言ったら、今までの会社は囲いを作って、この囲いの中に来い、という世界でした。「真ん中に寄ってこい。忠誠心は、クレドは」と。「お前は会社に忠誠を誓うか!?」みたいな。それで「誓います!」というと「優秀やなー!」って。この囲いから出たら「裏切り者」と言う。「二度と帰ってくんな」みたいな。そうじゃなくて、今は多様な個性があるところで、経営者やマネジメントがやるのは、「自分が何をやりたいか」を大事にするということです。

人に何をさせたいかじゃなく、自分がこんなことをやりたいから、僕はこのチームでやっているんだと。この会社でやってるんだと。自分がこのチームをどうしたいんだと。自分が歌うことや踊ることによって、キャンプファイヤーに参加したいなと思う人は寄って来るし、そうじゃないなという人は距離を置いていく。

真ん中の火が消えているにも関わらず、自分にはやりたいことがないのにも関わらず、人にやらせよう、人にやらせようと。上から降りてくるやつをそうやって人にやらせようとするから、どんどん人が離れていくんです。

そうじゃなくて、まずはキャンプファイヤーで、自分が火を起こしていかないと。それは小さくてもいいんです。

非常識のフィルタをかけないこと

やっぱり、「やりたいことをやりたい」と言えるリーダーやマネジャーになったほうがいいんじゃないかなと思います。

新しいマネジメントの時代はいつ来るんでしょうか? 「知らんがな」(笑)。僕もわかりません、もう来ているのかもしれない。来ないのかもしれない。来ないことはないと思うんですけれども。

でも、僕はあきらめない。もう時代はそういう流れになっていっていると思いますし、少なくとも10代、20代の子はそれをすごく直に感じているし、そういう時代が来てほしいと思っている。

その上の世代、昭和の世代がやるべきことは、自分が変わることじゃないんです。そういう子たちが「新しい時代が来るかも」と言っていることを、非常識だなというふうにフィルターをかけて潰していかないことが、すごく大事だと思うんです。どうせ世代は変わるので。そして、新しい世代の子たちはあきらめないことです。

新しい時代が来るので、この時代を新しい時代にしていくんだと。「こういうマネジメントがありなんだ、こういうチームワークを作っていくんだ」ということを信じてやっていく。そういうことがすごく大事なのかなと思っています。新しい時代のチームを創りましょう。ご清聴、ありがとうございました。

(会場拍手)

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